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……リディア……は……。
[小さく、呟く。
上手く表せない事への苛立ちを抱えながら]
まだ……聞こえない……よ?
[ようやく言えたのは、それだけ。
正確には、視たくない、聞きたくない、という感情が、遮っているのだろうけれど。
その自覚は、多分、なくて]
[パトラッシュが入って来ると扉を閉めて。しゃがんでわしゃわしゃと顔を撫でて]
居ないと思ったらやっぱり外に行ってたんだね。
[何か食べる?といつものように訊ねながらカウンターの席へと戻る]
・・・そう。分かったわ。
だけど、聞こえるようになったら教えてもらえるかしら?
どれだけ人狼を殺したのか分からない限り、この村全てを賭けての殺し合いになるのですから、お早めにね?
[そう言って立ち上がりかけたが、フと思い出したように、懐に手を入れて、薬を取り出した]
・・・忘れていたけど、この風邪薬返すわね。
もう私には必要ないし。
後は、貴方を守る王子様に全てまかせるわ。
お大事に、ね。
うふふ。
[薬を手近なところに置くと、シャロンはゆっくりと部屋から出て行った]
……聞こえたら…………。
[ぽつり、と呟く。
頭はまだ痛くて、上手く言葉がでなかった。
取りあえず一つ頷き、置かれた薬の包みを見やり]
……ふぇ?
王子様……?
[最後に残された言葉に、きょとん、と瞬いて]
[ランディとレッグとの遣り取りに、もしかして何か邪魔したか、と思いながら。
二階へ上っていく二人を見送る。一緒にリエータも上がっていくのが見えて、少し不思議そうな表情に。
エリカはどうしたんだろうか?
と、わしゃ、と頭に温もりを感じて目を細めた。
質問には尻尾を振ってイエスのサイン。
ディーノの柔らかい声が、昼間自分の心に突き刺さった、人々の視線の冷たさを取り去っていくように思った。]
[部屋を出て、後ろ手で扉を閉めると、階段から足音。
くるりと首をめぐらせると、先ほど品物を頼んだレッグと、それに付き合うランディの姿]
二人とも、お疲れ様。
エリカはどうやら具合が悪くなってきたようなので、しっかりと診てあげたほうがいいわよ?
大切な人がそばにいたほうが、症状は楽になるようですしね。
〔シャロンがこちらを向き、言葉をかけてくるのに驚き、足を止める〕
…ああ、わかった。
忠告ありがとう。
〔それだけ返すので精一杯だった。シャロンから感じる何かに気圧されていたといっても過言ではないだろう〕
[肯定の返事が返ってくると主人に頼んで牛肉のグリルを作ってもらう。それをパトラッシュの前に置いて]
何かね、エリカが熱出したんだって。
起きて下に下りてきたらリエータしか居なくておかしいなー、とは思ったんだけど、そんなことになってたとは。
[パトラッシュの疑問を知ってか知らずか。2階へ上がっていくグレッグとランディを見送りながらそう呟いて]
〔レッグに視線を移し、固まりそうになる自分をほぐすかのように軽い口調で囁く〕
おい、大切な人、だってよ。
誰がエリカの大切な人なんだろうな?
…は?
[言われて、きょとんと目を見開いて。]
いやその、エリィは幼馴染でーってぇか、その…
べっ、べつにそんなんじゃないんだからな!
[とか、わたわた言いつつ多少赤くなったりならなかったり。]
[そういえば昨日の夜からろくに食ってねぇや、と思いながら夕飯にありつくことにする。
こんな時でも肉を食べるのに抵抗が無いのは『パトラッシュ』の本能だろうか。
ナイスタイミングで疑問に応えてくれたディーノに、少し驚きながら納得する。まぁこんな状況じゃ体調悪くもなるわなー…。
はぐはぐとグリルを頬張っていると、食堂にシャロンが下りてきたのが見えた。
こちらに気付いていないのか無視しているのか、少し離れた場所へ行くその姿を横目で見遣る。
あいつを占うのか? と、ディーノに目で問いかけ。]
……え、と……。
[シャロンが最後に残した言葉やら、やって来た二人に投げかけた言葉やら。
それを受けてのランディとレッグのやり取りやら。
それらの意味が読めないのは熱のせいか、それとも素の反応なのか]
……うん……。
[それでも、大人しくしとけ、という言葉には、一つ、頷いた]
〔赤くなってわたわたしつつも、かいがいしくエリカの世話を焼く姿をほほえましく見つめつつ、自分も食事のプレートをベッドサイドに置いてやる〕
食うもん食って、それからだな。薬は。
リエータが淋しそうにしてたぜ。
〔にゃぁ、と一鳴きして、ご主人様の元へ〕
[階段を見ていると入れ違いでシャロンが下りて来て。その姿が目に入ると僅かに眉を顰める。視線を逸らし前を向くと、パトラッシュがこちらを見ていて]
…僕は他を調べたいんだけどな。
彼女が人狼のようには思えない。
もし人狼なのであれば、彼女は大事な存在を自分の手にかけたことになる。
そうとは、思えない…。
でも他を調べたらきっと彼女が納得しないだろうね。
一応、調べるつもり。
[僅かに瞳を伏せ、冷め切ったスープを喉に流し込んだ]
さて、後は若い二人に任せますか。
俺は風呂に入ってくるわ。
今日も蒸したし。
じゃ、ごゆっくり。
〔レッグの背中を鼓舞するかのように軽く叩いて、エリカの部屋を出ていった〕
ですね……食べないと、薬も効きにくいし……。
[ランディの言葉にこくり、と頷いて。
戻ってきた黒猫の頭をそっと撫でてやる]
……ごめんね、リエータ。
御飯、ちゃんともらえた?
[問いかけに、黒猫は頷くような素振りと共に、また鳴いて]
[ディーノの返答に、そうか、と頷く。
そして、少し思案して。
マスターが奥のキッチンに居ることを確認、シャロンもこっちのことを気にかけてない(……よな?)ことを確認して。]
俺はお前を信じる。
お前の思うようにやればいい。ついててやるからさ。
[ごく低い声で言葉を紡ぎ。
あとはそ知らぬ顔をして、食事を続ける。]
……ふぇ?
任せる……って?
[こて、と首を傾げて瞬き一つ。
出て行く背には、ありがとうございました、と声をかけ]
……なんか……ヘンなの。
〔階段を降り、宿屋の主人に自宅へ戻る旨を告げる。宿の風呂を使うよう勧められたが、着替えを持ってきていなかったので、やはり自宅に帰ることにした〕
〔ディーノとシャロン、それからパトラッシュに向かって〕
エリカのことは、騎士に任せてあるよ。
役立たずの親父は早々に退散してきたさ。
一度自宅に帰るわ。また後で、な。
〔そう言うと、宿の扉をくぐり、宵闇の中へまぎれていった〕
[皆の居る場所では喋らないと思っていたため、聞こえた言葉に少し身を硬くし。さりげなく周りに視線をやり、誰も気付いていないことに安堵すると、そ知らぬ顔で食事を続けるパトラッシュの頭を撫でて]
…ありがと。
僕も、君を信じてるよ。
[自分を支えてくれている存在。無条件に信頼を寄せられる相手。その相手にそう言ってもらい、ホッと安堵の笑みを浮かべる]
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