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人狼の御伽噺。
知らないのですか?[と言うと一瞬顔を顰めたがすぐに笑みを浮かべ]
…では簡単に。
「人狼の力」と「人の力」の対立。
その時に、特殊な力を持つ人たちが現れます。
人か人狼かを見分ける事の出来る、占い師。
死した者の魂を覗く事の出来る、霊能者。
人狼の脅威から人を守る事の出来る、守護者。
そして…人でありながら人狼に味方する、狂人。
貴女は、私の事を人であると知って声を掛けたはずです。
そして昨晩、ついに狼を見つけた。
そう、つまり。貴女は占い師。
私は先程、獣と戦わずに生きる事が出来る。そう言いました。
そして貴女は私を人だと知っている。
すみません、イレーネ。
貴女を混乱させるつもりはなかったのですが…。
貴女の血を肉を臓を、私が喰らう事で。
貴女は私の中に、一つになる事が出来る。
私は、貴女のように死に立ち向かわなくとも、
人狼たちと戦わずとも、生きる術を持っている。
けれども貴女はその術を持たない。
貴女が生きる為の、その道は極めて困難な物です。
そして貴女が生きるのは、「彼ら」にとって邪魔なのです。
貴女は死が怖いと言った。
私は貴女の力になりましょうと言った。
それなら、方法は一つ。
私の中に入りなさい、イレーネ。
そうすれば貴女が死ぬ事は無い。
私の中に、永遠に留まる事が出来るのです。
[彼がイレーネを喰らう事に拘るのは、
彼の最後の罪悪感を打ち消す為なのかもしれない。
イレーネの中に見る「彼女」を、より強く取り込みたいのかもしれない。
微笑を浮かべ、子供をあやす様に語りかける。
イレーネに向け歩を進めた。]
…………。
[静かに語られる言葉に。蒼の瞳はその険しさを増して]
喰らって、一つになる……。
そんな方法に、なんの意味がある?
殺してしまえば、失う。
……どんな理屈をつけようが、それは確かだ。
俺は、カティアを殺した。
喰らいはしなかったが……血を、飲んだ。
[それは確か無意識の行動だったが。
今思えば、『血脈』に狂わされていたのかもしれない]
だけど……俺の中に、カティアは、いない。
……それは……あんたの自己満足に過ぎねぇよ。
[言葉が届かないのは承知の上で。
それでも、そう、言わずにはおれなかった]
[頭を抑えながら]
その話なら、訊いた事があるわ。
[その物語はいくつもあって。終わりもいくつもあるという]
――そう、あたしは、占い師。たぶん、狼を探す、家系。
[静かに笑いかけるオトフリートの瞳を、悲しげに首を傾けて、見返す。
答えは出ている。]
[もう後ろには下がれず。オトフリートに鋭い視線を向け]
あたしの血肉を、喰らう・・・。
同じ、こと。
そんなの、そんなの生きてるなんて、言えない。生きるって、もっと、自分があるもの、だもの・・・っ
[頭痛がする]
ひどい。ひどいよ。
[子守唄も、お人形も、ランプ作りも、ぜんぶ貴方がくれたもの。
でもそれらは別に愛ではなく。
おかあさん、おとうさん、あたしになんにも、残してくれてないのね]
・・・あたし、まだ、ちゃんと自分を、生きてないのよっ。
[搾り出すように言いながら、咄嗟に、テーブルにある三つ又の銀の燭台を掴む。
微笑みを浮かべこちらへ近づいてくるオトフリートめがけ、振り下ろした]
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