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――そうよ、
扉を開いて、 行かなくちゃ。
外に、行かないと。治さないと。いけないのよ。
[包帯の巻かれた両の手を
包むように握り締めた。
落ちた花に、ブリジットは気づかない。
退いて、退いてベッドにぶつかる。
足元、老人の千切れた頚の輪があるか。]
行かなくちゃ。
[謂うと、踵を返す、医務室の外へ。]
───リーチェ。
[耳に聞こえたのはベアトリーチェの声]
[二つの足音]
もう少し、だと思う。
[掌が痛い]
[強く鉄剣を握りしめすぎた]
[ダーヴィッドが加われば]
[音が増えて、押す力もきっと増える]
[ず、と重たい響き]
[強く強く吹きこんでくる風]
[ベアトリーチェの頬を撫ぜるのは、そんな風]
………、
[ブリジットの様子に、驚いたように目を見張って。
足元に落ちる花びらにはまだ気付かない。
一歩退く様子に一歩、ブリジットへと近付くと
彼女に向けて手を伸ばして…]
─三階・休憩室─
……そういう問題か。
[そらされる瑠璃と、その反論>>498には、ため息一つ。
けれど、続いた言葉。
『…弾けなくなる前に。』
それにこもる想い自体は、理解できた。
『見せられなくなる前に』
『見えなくなる前に』
そんな思いから、研究に没頭していた頃の自分が重なり]
…………。
[無言で、なだめるように頭を撫でた]
でも、見間違いで断定するのは悩みます、ね……。
しかし、本当にいたときにとてもとても困りますです。
どうしましょう、一度戻ります、か?
[ピアノの音が止まったのが気になった。
不安がある以上、一人ならともかく女性を連れて先に進むのは難しいと感じた]
……っ
[自然、女の頬は無意識にか緩んでいて。]
……そう。
病気、……ね。
[けれどそっと毛布を奪っていく言の葉。
其れは『メデューサ』という名の葉。
せんせいの言葉に重ねるように、
思い出して居たのは自身の回りでも起きた、
同じ様な、発症と、事件と、その末路。]
……うん。
[わからない、という声には。
相槌を打つ、しか出来なくて。
相槌すらも、良かったのかどうかわからないほどに。]
[ゲルダを振り返った。]
うん、難しそう。
[ユリアンが戻ると言うなら首を振る。]
あたしはもう少しここにいる。ゲルダを連れて戻って。
いけない…――。
[――パニックを起こしかけている
そう、医師の卵は思う。何がきっかけか。
自分が向かうより前、ハインリヒが伸ばす手が空を切って。
踵を返し、医務室の外へと向かう姿を唖然と見る。
視線は、見合わせるつもりで星詠の人を見るが、
果たして交わったかは知れず。]
追いましょう。
[それでも、自分が取る行動はそれだと。
ほぼ無意識に言葉を零すと、
令嬢の背を追うように足を動かした。]
[ブリジットに自分も手を伸ばそうとしたが
ハインリヒがそれを先にしていた。
彼女が医務室の外へ行くのを見てから
振り返り、ハインリヒを新緑は真っすぐに見る。]
彼女のこと…気になる?
[返事が返ってきても来なくても]
私「も」なの。
[そう言い、医務室に落ちていた白い花を見つめてから
ブリジットの後を追うように、エーリッヒにも行こうと
目配せしてから医務室を後にするだろう。]
……風が、吹いてる。
[頬を撫でていく風は先ほどより強く。重い、重い音がして扉は開いたのか]
開いたの?
外の空気が、中とは全然違う空気の匂いがする。
[立ち上がると、扉の方へ向かって一歩、一歩上がっていく]
こういうの得意そうなのは…
エーリィとか、ツヴァイさんとか、…ヘムルートさんとかかな?
[しっかり教えて貰ったのに、さりげなくまた間違えた。]
っ、でも…さっきのまたいるかもしれないよ?
[一人で残るというのに、ふるふると首を振る。]
[しんどかった、でしょう?]
[ただその一言が胸の奥で]
[ぐちゃりと何かを握りつぶして]
……っ
ひっ、 …う!
――っ!
[堪えようとして、失敗]
[情けなく歪んだ目元から雫が零れ]
[蒼はきつく閉じられて]
[きゅ、と噛む下唇は小さく震え出す]
───あい、た。
[その言葉は、きっと間抜けな響きだった]
[ベアトリーチェの声にこたえた声]
[暗かった通路の中に吹きこんでくる風]
[視界に飛び込んでくる空]
[眼を細めた]
[カメラに伸びた手が、衝動的にシャッターを切った]
[鉄剣を置いて]
[ゆっくり上がってくるベアトリーチェの手をやんわりととる]
おいで。外だ。
あたしは大丈夫。
[なんの根拠もない事をきっぱりと言い切ってゲルダを撫でた。]
ゲルダを泣かせたら、メイスでぶん殴るから。
[ユリアンを見て言った。]
[ブリジットのことは、追いかける二人に任せることにした。
握る拳と同時に零れる咳、]
……気になるさ。
[振り返るノーラには、そう言って見送る。
――…脳裏が、揺らぐ。
まただ…カルメンの時と同じ。]
…皆、気になるさ。
護る為に…救う為に、この仕事に就いたんだ。
[数値が上がっていく…時間がない。
ゆっくりと息を吸って、吐いてから次いで医務室を出た。]
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