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そうですか。ならいいんですよ。呼びたいようにで。
それほど狭量でもないですから
[涼のほっとした様子には気づくわけでもないが、柔和に述べた]
ん、それがいい、少しずつで。
[静かに繰り返して。見上げる視線と、疑問の声には、微かな苦笑]
ああ。
こうやって……生きて、ここにいてくれる事で。
救われてる、かなり。
[消え入りそうな呟きは、雨音にかき消されたか、それともぎりぎりで届いたか。
いずれにしろ、瞬間の陰りは、すぐに掻き消え]
いると信じて、急ぐとすっか!
[早口の言葉とともに、足を速めて旅籠の前へと向かい]
あ、やべ。
おーい、誰か、いるかあ? いたら、開けてくれっ!
[現状、両手が塞がっているので戸が開けられないと今更気づいて声を上げる。
榛名を下ろして開ける、という発想は、何故か抜けているらしい]
孝博は分からないが。
小百合さんは、落し物を探しに行っていて。
聡には、西行院家に伝言を頼んだんだ。
村と外を繋ぐ、一本道に崖崩れが起きた、とね。
[ふうっ、とわざとらしく溜息]
ま、俺は玲ちゃんの細工を見せてもらうまで帰る気はなかったから問題はないんだけど。
ここの電話も故障しててさ。色々変な感じなんだ。
変わって…いますね。やっぱり。
ちょっと必要があって。
[裕樹には苦笑を返す。仕来りを知らなければ通じないであろう、この時期の白姿。さてどう言えばいいものかと少し悩んで]
外…?
[眉が寄る。それは疑い半分、心配半分の心]
…いいえ、戻ってくるでしょうね。
でなければ探すまでもなく、ということ。
[呟きは不安で思ったより大きいものになって。
慌てて口元を押さえた]
ッ晴、
[開いた扉から見えた姿、その名前を呼ぶ前に、
臭い故か色故か、片手で口許を覆った。]
な、
・・・・此処も?
[視線を逸らせば、塊が一つ。
つい先程、傘をくれた使用人が転がっていた。]
[生きていることで。その呟きは耳に届き、聞いて視線を少し落とした。
史人も、身近な者を失った。自分も肉親を失った。何を示すかはすぐに理解出来た。何も言わず、同意するように小さく頷いた。
急ぐと言う言葉に再び頷き、旅籠の前へと着く。開けてくれと中へ叫ぶ史人を見上げ]
私、下ろせば、良いんじゃ…。
[至極真っ当な突込みを入れた]
風情があるのは認める。
俺も、そういう村だから来た訳だしな。
でもさっき電話を借りたときに、黒電話だった瞬間に、時代とのギャップに驚きはしたよ。
留守電とか、入らないんだろう…あれは。
[何か、違和感を感じて、少し首を傾げた後]
蓮実。
ま・た、敬語に戻ってる。
[ちょっと睨んでおいた]
ああ、連絡に。
それなら大丈夫ですね。
だとしたら晴美さんと一緒に来られる、かな。
[裕樹の言葉に軽く頷いて。まっさきに疑いがその人に向いてしまうのは、流石にどうしようもない]
電話も途切れています、か。
ええ。
…全部が。
……落ち着いたら。
[細工を見せる、には少しだけ遠い微笑を浮かべて。
外から響いた声に驚いて振り返り、扉を開けようとした]
[閉じられた扉の先に視線を投げる。
噂となっていた人物の誰とも異なっていて]
…まあ、誰かあけてやってくれ。
お客さんが増えたし、増えるし、ご主人にお茶を頼んでくるさ。
[告げて、厨房の方へ歩き出す]
―――。
[飽きるまでタバコを吸いだめしておき、数十本を消費してから、やっと利吉が会話に参加しようと、みなの周りに移動した]
宮司の死亡。
崖崩れによる閉鎖。
やれやれ。全くマンガの世界だね。
そうすっと、次の展開は「この中に犯人がいる!」かな?
[冗談交じりに言うが、あまり精彩はない。
―――と。そこで、今まで会ったことのない人物―――玲―――の顔に気がついた]
お……っと?
初めて会う人かな?
俺の名前は九重 利吉。探偵をやってる。
まあ、殺人事件の解決とかは、俺の手に余ると思うがね。
ええ、確かにはるちゃんでは紛らわしいですね。
[ぐっとこぶしを握っていう涼を子供を見るように微笑ましく見ながらも
旅籠の外から声が聞こえたが玲が応対するようで任せつつ]
電話があるだけいいほうです
ない家もありますからね
[時代のギャップについて更に深めさせたが]
癖というのもあるが、村に戻ったのだから仕方ないでしょうが
[思わず反論。怯みながらだけど]
[帰りぎわに、一応村の中を見て歩いた。
予想通りと言ってよいのか。匂いの元には死体、屍、骸。大小いくつもの肉の塊が転がっていた。]
…思ったより多いわね。
まさか村人全員、って事はないだろうけど。
[そう確認し。ようやっと旅籠へとむかう。]
[開いた扉の向こう、兄の両手が塞がっていた理由は]
…うん、まあ、そうね。
でもこの雨の中だし、正解だと思う。
[榛名の的確すぎる指摘に小さく笑いつつ、扉を支えて]
[そこにいたのは孝博とたしか聡とか言った青年。
息を呑み、玄関に転がっていた死体を見る孝博の言葉に]
ああ、どうやらそうらしいな。
此処もと言うことは。そうか、被害は村全域か。
[そう言って目を伏せる。]
玲ちゃん。
[無事な姿に安堵するように微笑んで。しかしすぐにいつもとは違う姿に瞳を瞬かせた]
何で、その、格好…?
[不思議そうにじっと見つめる]
[覗いた厨房に、宿の主人の姿はなく、勝手に借りる事に。
準備の後、皆のいる場所へ戻って、湯飲みに注ぎ始める]
ご主人が見当たらなかったから勝手に持って来たが。
まあ、いる人は、どうぞ、と。
[改めて玲の姿を見て]
服装に、必要……?
それに、探すまでもなく、って…何で?
[口を押さえる様子も見逃さず、眉を寄せた]
九重、利吉さん。
[利吉に声をかけられれば向き直って]
はじめまして。
葛木玲と申します。
[ゆるりと頭を下げて挨拶を送った。
この人がもう一人の、と内心で思いつつ]
そうですか。
それでも一緒に考えていただかなければいけませんね。
この状況では、道が塞がっていなくとも。
え?
[榛名の突っ込みに、惚けた声を上げる。
言われて見れば、その通りなのだが。
が、それを実行に移す前に、扉は内側から開かれるか。
中には数人の姿が見え、一番近くには]
……玲。
[無事に安堵しつつ、名を呼んだ]
[何はともあれ、旅籠の中に入り。
そ、と、榛名を下ろして、中を見回す]
……取りあえず、ここにいる面々は無事……か。
[小さく呟き。
ラブラブ、という利吉の突っ込みに、ぐしゃ、と前髪をかき上げる]
……あんたはいきなり、なんつー突っ込みを……。
[旅籠に居る者達に抱えられたままで頭を軽く下げて。
茶化すような利吉の言葉には]
私が、歩けない、状態、だった、から…。
[ただそれだけを告げた。恥ずかしそうにする素振りは今は見えない]
うん、綾姉の代わりになれたらって。
[榛名と史人に笑顔を返して。続いた榛名の言葉には睫を伏せた]
…間に合わなかったけれど。
それなら、探さないといけないから…。
まだ暫くはこの姿で、ね。
[裕樹の声には溜息を吐いて]
…他の方も戻られたら。
[どこか憂鬱な、重たい声だった]
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