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──穏やかでいられないような理由があったもんでね。
[ひざの上に尻尾の長い黒猫をおろすと対の女を見る。
不機嫌さマックスの視線は少しだけゆらめきを見せたライデンと生命の子のほうへと向けられただろう]
あくまー。
ごめん、じゃあもう言わない。
[ユーディットをちらっと上目遣いに見て、小さく頭を下げた
それからユリアンに、耳打ちするように首を伸ばして]
ねね、ライデン。
何か変な感じしない
[鴉が地面へ着地と同時に、その姿をするりと大型の黒犬へ変える。
慌てる少女の言葉に、鴉が僅か溜息を零して。]
…別に、俺に使用することは構わないんだが。
あの餓鬼が、あまりにも疎いのでな。
[既に妖精ともバレているし、隠すことも面倒になったらしい。
平然と人語を話し始める。駆ける少年の後は、特段追う気は無いようで。]
[頭を下げた状態で届く無情な声。心に去来するのは、ああやっぱり、と言う一種諦めの念だっただろうか]
…もうやらねぇってだけじゃダメなのか?
どうすりゃ良いんだよ、ったく。
[頭を上げればその表情は困惑に近いものになっていて。右手でくしゃりと前髪を掻き揚げた。左手はジーンズのポケットに捻じ込まれ、立った状態でソファーの背凭れへと腰を下ろすように寄りかかる]
そっか、季節が全部一緒に来てるようなものよね。
そう考えると違和感あるかもなぁ。
あっ、いってらっしゃい。
[ミリィにはどこかズレた答えを返し。
イレーネが駆け出すのを見送って]
あ、うん。ありがとう。
イレーネに対して不用意すぎたのかな?
[良くそうやって怒られるの、と苦笑い。
話しかけてきた鴉より変じた黒犬にそう笑いかけようとして――]
へんなかんじ?
[リディの言葉に、首を傾げかけ…て、]
……て、おい?!
[今までのざわめきとは違う感覚が襲う。機鋼の力が…いや、機鋼界そのものが、動いた、と感じた]
勘弁しろ…よお…
[そして、この界が閉ざされたことも]
[雷撃王の気より産まれ出で、別個の存在となった今でも、根幹の繋がりは断たれずにいた、その気の断たれた故に]
[中枢から感じた、力の波動。それは、辿るまでもなく]
……っ!? 機鋼王!?
[届かぬのは承知の上で、叫ぶ。
それに答えるように弾ける機鋼の力。
だが、現れたのは、今呼んだ王ではなく、その側近と頼まれる機精]
機精殿、一体何が……!
[問いに、機精は珍しくも取り乱した様子で答える。
機鋼王に起きた異変。最後の言葉。
そして、界が閉ざされた事を]
……って……何の、冗談っ!
――……………、
[天を仰いでいた眼差しが地に下ろされる]
[傍から見えるのは凪いだ海の青ばかり]
ん、
[追ってきた少年の姿を認め]
[不思議そうに首を傾げる]
――…、
[アーベルを追いかけていた足を
ぴくりと、止める。]
[何だろう。何か。 何かがおかしい。
今まで感じていた「違和感」みたいなものが、一瞬――]
ていうかね、何かこう、鼓動……?
[大きな力(それは機鋼のものだといまでは知っている)が、何度か激しい動きをみせて、次に界全体が動いた。そういった風に、リディには認識された]
なんな訳……。
[ユリアンに説明を求める]
さぁね。
その頭は何のためについてんの?
[自分で考えろとばかりに切り捨てる言葉と、猫が尻尾をくるんと持ち上げて背筋を伸ばし中の何かを見るのは同時だったろうか]
…シシィ、どうしようか。
[めんどくさいなぁ、と煩わしそうにぼやきながら猫の背を撫でた]
[前髪を掻き揚げた状態で動きが止まる]
[はっきりとは分からないが異変を感じる。この界に存在する風が僅かにざわめいた。この世界に詳しくない自分にも分かるくらいに]
…何か…起こったのか?
[視線は無意識に異変を感じた方向へと]
「……ああ」
[屋敷の前。佇む従魔がか細い声を上げる]
「……ダメ、だよ……」
[その言葉は、果たしてどこへと向くのか]
「……こわれる……から」
[呟きは夜風に紛れるよに、消えて]
ありがと。
[にこと微笑み、置かれたグラスに手を伸ばし、ワインを一口。]
[そうして、女の視線には相変わらず平静を装ったままで。]
――あら奇遇ね。
こちらも、あまり穏やかではないようよ?
[言い放ったその時に、感じた。揺れる、力。今度は露骨に眉を顰め。]
今の……何?
……まあ、これはこれで面白くはあるんだけどね。
[そう言って、こちらも話を濁す。
その時、突如何もないところからギュンターが現れ、先ほどあったことをオトフリートに話す。]
……それって。つまりは……
お前が気にすることじゃない、あの餓鬼が未熟なだけだ。
[苦笑を零す少女に、黒犬が鼻を鳴らして。
と、現れた機精と、時竜の会話を捉えて、僅かに眉を寄せた。]
…フン。想像以上に、随分と面倒な事になったな。
[後で、あの餓鬼にも伝える必要があるだろう。
尤も、あの方は――既に気付いていらっしゃるだろうが。
そう思いながら膝を突いたブリジットへと、黒の身体を歩み寄せる]
おい、大丈夫か。
[雷撃の精霊力が、機鋼のうねりに呼応するように波打ち、一瞬、膨れ上がって…しかし、かろうじて、外には放たれずに、急速に身内へと収束する]
……感謝します……翠樹王……
[片手をバンダナに添えて、はあ、と大きく息をつき]
…ん!?
[スプーンくわえたまま、その力に反応。
自分が扱う封呪に似て、それより遙かに大規模な。]
…封鎖結界?
[構成を読もうとするも、暗号化されたそれは解読不能。]
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