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−→パトラッシュの家へ向かう道−
[道中もなんとか自分の足で歩いていけたのはパトラッシュが気遣って傍にいてくれたおかげもあってのこと、
そうでなければとうに恐怖で足がすくんで動けなくなっていたかもしれない]
パトラッシュ……ありがとう……
[何度目かのお礼の言葉、パトラッシュから流れてくるものが暖かい。
そこで鳴り響く電子音、見上げる姿と端末を見比べてからうれしそうな笑顔で]
おかーさんからだっ!おとーさんも一緒だって。
[端末には近くにまで来ていることを知らせるもの、
父親も一緒であること、そして今自分がいる場所とおかーさん達の場所を示す地図があった。
すぐ近く走っていけばたどり着けそうな場所]
─ 雑貨屋 ─
っ……なっ、何があったのこれ…。
[雑貨屋は無残な姿になっていた>>28。
ひん曲がったシャッターをくぐって中へと入ると、中もずいぶん荒らされていた。
物取りというよりは、本当に争った跡がリアルに残されていて背筋を冷たい物が走った。
祖父を心配して奥へと上がるフランに、危ないからと声をかけて止める事すら忘れてただ変わり果てた店の中で立ち尽くしてしまった。]
少ししか離れなかったってのに…。
[視線を店の隅に逸らすとゴミ箱が倒れて、ついさっき飲み干したブラオシルトクレーテの缶が転がっていた。
もとの位置に戻して、中にもう一度缶を入れた。
カランとした音が、なんだかやけに響いて。]
― 街中 ―
んなっ。
[交差点に踏み込むと同時、銃口がこちらに向けられてるのが見えて、その場に伏せた。背の上を何かが通り抜けていく。
後方で悲鳴が上がり、周囲は一気に騒然となった]
「何しやがるんだ手前エ!」
「死ね!PSMかもしれない奴はみんなしんじゃえヨォォッ!!」
[怒鳴られてもヘラヘラ笑って銃を構えている女の表情は、何かを突き抜けてしまっていた。スラム方面ではたまに見るもの]
緊張に耐え切れんで、使ったこともないンが手ぇ出したな。
[すぐに身を起こして近くの車の陰に転がり込む。
そこから交差点内を確認して、舌打ちした。撃たれた者の連れが応戦したのだろうか。腕や足から血を流しながら、まだ笑ったままレーザー銃を撃ち続けている女。
違法薬物を使ったな、と自分は判断するのだが]
「撃たれても倒れない。人間じゃない」
「人間じゃない、ならPSM?」
「嫌ああぁぁぁ!」
[狙いも甘く撃ち合い始める人々。再び倒れる別の人影。
響いた悲鳴が集団理性の最後の糸を引き千切った。
後は混沌とした銃撃戦が始まってしまう]
あぁっ、会社辿り着けんかった……!
[現実逃避の嘆きを散らして、スゥと息を吸い込んだ。
その一言で会社のことは忘れておく。もうそれどころじゃない]
─ 雑貨屋 ─
[名前を呼ばれると顔を上げる。>>29
通話中かと思っていたが、どうやら奥にも居ない、連絡もつかない状態らしい。]
ふーちゃんの爺さん、何処行ったんだ…?
[まさか店の中に居た所を襲われて逃げてったとか……なんて事が過ぎって慌てて首を振った。
勢いで少しずれた面を、片手で直しながら。]
俺ちょっとその辺見てくるよ。
ふーちゃんはここに居て。外出るよりはマシだと思うし…。
[雑貨屋の奥にいても、時折外から悲鳴や銃声が聞こえてくる。
そこに連れ出す気には到底なれずに、一人で出て行く事を決めた。
心配だから傍にいる、という選択肢もあったが、あえて選ばなかった。
ずっと肩にかけっぱなしの鞄を斜めがけにして、両腕が自由になるように、中に放り込んだ銃が取り出しやすいようにすると、曲がったシャッターの影から外の様子を伺い、人気が少ない時を狙って外に出た。]
― 街中 ―
drei...twei...eins...
[0カウントと同時に車の陰から飛び出す。
少し後、後方では爆発音が響いて炎が高く吹き上がっていた]
一番最悪のパターン。
「御姉様」はどう収集つけるつもりだか。
[直接聞きたいと思うけれど、そんな余裕も今はない。
逃げ惑う人波に紛れて会社とは逆方向に走り、とりあえずは混沌の交差点から逃げ出した]
─ 街中 ─
[走り出した背に向けられる銃口。
そこから走った火線は状況を把握できていない者を捉え、その報復に引鉄が引かれて]
……これ、収拾つくのかよ……って、邪魔すんなっ!
[前方に立ちはだかり、こちらを狙う人影。
殺られる前に殺るのは基本事項にして鉄則。
だから躊躇う事無く懐から愛銃を引き抜き、左手に握る。
大型のリボルバーは、一般人ではお目にかかる機会もほぼない軍仕様のもので、しかも自前でカスタマイズした一品物。
反動の大きさから、両手でホールドしたとしても、生身では扱えないシロモノだった。
撃鉄を起こして引鉄を引く。
飛び散る紅は、一顧だにせず、開いた道を先へと進む]
─ →自宅へ移動中 ─
[口に袋を銜えてしまっているために、お礼は耳にするだけにして。
連絡を受けて少女に笑みが浮かぶ>>38のを見ると、犬は耳をピンッと立て尻尾を大きく左右に振った]
おんっ
[袋を銜える隙間から鳴いた声はくぐもったもの。
けれど共に喜ぶ感情を載せていた。
地図を見せてもらえたなら、今居る場所からの距離を測って案内するように移動しようとする。
普段から街を駆け回っているため、それなりに地理には明るかった]
[その後直ぐに周囲は喧騒>>#0に包まれ、驚いて周囲を見回していると、少女>>40がそれに反応していて。
心配げに見上げると、少女は小さく呟いた後に傍を離れ駆けて行ってしまった]
! わんっ!!
[思わず大きく吠えてしまい、銜えていた袋が地面へと落ちる]
[地面に落とした袋から零れる、ペンのような細長いもの。
それが何なのかは未だ分かっていなかったが、とにかく鼻先で袋の中に押し込み、再度口で袋を銜えて持ち上げた]
……… きゅうん
[その頃にはもう少女の姿は見えず、不穏な空気を纏った街の住人達しか見えない。
その住人達は猜疑の視線を犬へと向けていた。
犬は思わず身を低くし、身構えてしまう]
─ 雑貨屋 ─
え、あ。
で、でも外は…
あの、気を付けて、下さい。
それと、おじいちゃんに会えたら、私は店にいるから、って。
伝えてくれますか?
[外を見てくると言って出ていくケイジに危ないと止めようとしたが、此処も危険に変わりはない。
かと言って、外に出ることも怖くて一緒に行くとは言えなくて。
結局、出ていくケイジに勝手なお願いを託して見送り、自分は店に残った。]
─ 雑貨屋 ─
[ケイジが出ていって完全に一人になる。
壊れたシャッターの見える外は、まるでパニック映画のようだ。
聞こえる銃声、罵声、殴る音、落ちる音、色んな音が聴こえてきて、恐怖が増していく。
何でこんなことになったのだろう、ついさっきまでは普通だったのに。]
こ、わい。
[小さく呟いた声は、不自然に歪曲したシャッターのせいか妙に響いて。
ぱきり、外の足音が止まった。]
おかーさん、おとーさん!
[パトラッシュを置いてきてしまったことよりも、
両親のことがただ心配で、周囲の凄惨な様子も流れてくる嫌な思いも、必死に両親の元へ向かう気持ちの為にいくらかやわらぐだろうか。
足元や服のあちこちが血に濡れていく。道の端や真ん中に正視に堪えないものとかが転がっている]
「カレンっ!」
「無事だったか」
[そんな中無事な姿の両親を見かけて、泣きながら飛びついた]
おかーさんっ!
─ →自宅へ移動中 ─
『こいつだ、さっき武器の支給場所で端末弄ってた犬』
『普通の犬があんなこと出来るはずが無ぇよな』
『それにアイツの前足、さっき変形してたぜ』
『てことは……───アンドロイド、なんじゃね?』
[怪しいと睨んで支給場所から後をつけてきていた住人達の会話。
それは周囲にも十分聞こえるもので。
先程の喧騒で混乱していた者達までが犬へと視線を向けていた]
『アンドロイドだって?』
『じゃあそいつがPSMか!』
[そんな叫びが聞こえ、周囲が更にざわめいた]
ぐるるるるる ………
[敵意を向けてくる住人に対し、犬は抗議するように唸り声を上げる。
その間にもざわめきは広まり、犬を取り囲む者が増えていった]
『PSMって動物にもなるのか?』
『分からねぇけど……殺しちまえば同じだろ』
『そうだよ、たかが犬じゃねぇか』
『殺せ殺せ!!』
[言うが早いか銃口を向けられ、犬は更に身を低くする。
その場に留まるは危険と判断し、撃たれる前に地を駆け。
震える腕で銃口を向ける一人の腕の下に潜り込むと、地面を蹴って腹部に頭突きを食らわせた。
思わぬ反撃に住人はバランスを崩し、尻餅をつく形になりながら、遅れて引鉄を引く。
発射されたレーザー光は離れた場所で犬を囲んでいた、運の悪い住人の頭を貫いていた]
『いやあああああああ!!』
『この犬っころ!!』
[頭を貫かれた住人の近くに居た女性が悲鳴を上げる。
別の住人が尻餅をついた住人の上に乗っていた犬に銃口を向けて引鉄を引こうとしたところで、犬は開けた道へと身を躍らせた。
結果、転んだ痛みに呻いていた住人が銃弾を受けることになり、断末魔の悲鳴が辺りに響く。
犬はそれを背に、振り返ることなく全力で自宅のある方へと疾駆して行った]
─ 雑貨屋 ─
え…
[今の呟きを聞き止めたらしいその人が、中に入ってくる。
何でこんなところに隠れてる、と問われて返答しようとして。
けれど、それは問いではなかった。
こんなところに隠れるなんて後ろめたいことがあるんだろう。
生き延びようとしてるPSMに違いない、とわめきたてられて。
向けられた銃口に、背筋が凍った。]
いやっ!おかーさんじゃないっ!
[感じたそれは、自分に聞き取れた、流れてきたそれは…、
自分の知る母親の姿をした何か別のもの。
すぐに離れようとした体をつかまれる]
「何を言ってるのこんなときに」
「よっぽど怖い目にあったんだな。お父さん達と一緒にいればもう大丈夫だぞ」
[なだめようとする、両親から動揺の色が感じ取れる。
それはやっぱり、自分が困らせたりしたときの両親からいつも感じるものではなく、知らないもの]
離してっ!離してーーっ!
おかーさんとおとーさんをどこにやったの?
[PSMという言葉を思い出す、のっとるとか言ってた]
PSM?PSMとかいうわるいあんどろいどなの?
[その言葉と騒ぎを聞いた回りのまだ動けるものが、こちらに意識を向けるのにそう時間はかからず……]
─ 雑貨屋 ─
や…っち、が、
[ここは私の家で、おじいちゃんを待っているだけ。
それだけの言葉なのに、口が動かない。
恐怖に引き攣るのは喉だけでなく、足もその場に縛り付けられたようで。
逃げなきゃ殺される、でも動けない。
こわい、こわい、こわい。
恐怖にすくむ中唯一自由に動く手が、ベルトに備え付けられた膨らみに触れて。
それを取り出したのは、ただ、無我夢中で。
我に返ったのは、目の前のその人がどさりと倒れた音でだった。]
[何かの爆ぜる音、とても大きな音。
そして何かを貫いて、硬い金属にあたるような音と同時に、目の前の母親の姿をしたもの頭が……]
……ぁ……
[声が出ない、怖い、とっても大きな負の感情が同時に周囲からこちらへと向かってくる。
火花を散らす、母親だったものが倒れるのを見ながら……
悲鳴を上げるよりも先に、意識が落ちて倒れこんだ……]
─ 街中 ─
とはいえ、無駄弾は撃てねぇしな……。
[銃弾の補充はしておいたが、無作為に撃ち続けるわけにはいかない。
この先、何がどうなるかわからないのだから]
っつーか、どこもこんな感じ……っとお!
[呟く所に、再度の火線。
振り返った先、レーザー銃を握る女の視線は、左腕から除く機械部分に向けられていた]
「……化け物……化け物なんだろ、アンタっ!」
だから、ちゃうわいっ!
アンドロイドとサイボーグの区別くらいつけやがれ!
[突っ込みを飛ばしつつ、距離を詰めて遠慮のない拳を一撃、腹部に叩き込む。
ここで意識を手放す事がどうなるか──までは、考える余裕はない。
むしろ、他者を気遣う余裕なんてものは売り切れ寸前だ]
─ →雑貨屋外 ─
ん、わかった。
ふーちゃんの爺さんがいてもいなくても、しばらくしたら戻るから。
そっちも気をつけてね。
[なるべく心配かけないように、声は努めて明るかった。
勝手と思っていないお願い>>50には、ひとつ頷いて返してから、外に出るとまず周囲の確認をする。
ほど遠くに赤いペンキのような色と、人形みたいな死体がちらと見えるが、生きた人間の気配はない。多分アンドロイドも居ないだろうと判断すると、鞄の中から端末を取り出した。
一見するとマーズラボでよく見られる端末と変わりないが、自分たちの所の品である。
器用に片手を滑らせるように操作した後、シャッターへと近付けると、先端の通信部から青色の光が出て壊れた部分を照らしだした。
程なくして、壊れて曲がり空いたままだったシャッターは、普段と同じ状態に直される。
ただ直ったのは見た目だけで、実際は壊れたままである。
触れれば擬態してある事はすぐバレるだろう。
声が通る事>>51>>56までは考慮外だった。]
─ 雑貨屋 ─
あ…わ、たし…
[手に握ったままのそれに視線を落とす。
セットされたパックのエネルギーが減っているのが見て解る。
今、自分が使った分だけが、減っている。
目の前の、誰かを撃った分だけが。]
い、や、
― 街中 ―
[パニックのまま逃げる集団からは途中で離れて別の道へ。
左手に拳銃を引き抜き、補助用の片眼鏡をかけて。端末を手に取るより先に、何かが走ってくる気配を感じた]
止まらないと撃つよ!
[銃を持ち上げ、それでも警告の声を上げたのは訓練の賜物。誰に対しても即座に撃ってしまったら「警備員」は出来ない]
は!?
[しかし駆け込んできたのは、人間ではなかった。
銃口は向けたまま、その白い影を思わず見つめた]
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