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―果樹園―
[私は差し出された手に捕まり、緩やかに立ち上がる。
密やかに尻尾を出して払えば、服に付いた土も落ちようか]
……私は…そなたが力の恵みを…無為とは思いませぬ。
そこな双葉を見れば、気が和らぎまする故に…。
私も…何時しか何れお役に立つ時が…来るやもしれませぬの…。
[消えそうな声で呟き、幾度か瞬いて潤む視界を散らす。
未だ足取りは鈍りがちではあれど、促されれば大人しく付いてゆく]
[綺麗な歌声の余韻を。
その波動をかき消すように響いた音]
エルザさんは違うのに!
そんな気配なにもなかったじゃない!!
なんで連れてっちゃうの?
無差別ってどうしてっ!?
[微かに聞こえた声のようなものに向かって叫ぶ。
それは無駄であるだろうとは思っても]
…大丈夫、そんなに焦りなさんな。
世界ってのは、意外と何とかなるように出来てる。
[ナタリェの手をとったのはわずかに翠樹の気配が潜んだ手。
幾種類にも幾重にも腕に連なる輪はさらさらと澄んだ音を立てただろう。
ちょうど、ナタリェが立ち上がるのと、闇の竜の気配が消えたのは、同じような頃合で。
わずかに、表情が凍ったようにも見えたかもしれない。
葡萄酒色の瞳はわずかにうつむき、翳り]
…何が、どうなってんだ。
[かすかに呟いて顔を上げる。いつもどおり]
[目の前で、膝をついた青年。そこに意識が向かう前に、時空竜の声が届く]
ダーヴ殿?
[闇の中飛び交う雷光が、一瞬、屋敷の真上に集まって…霧散]
[かくりとバランスを崩すアーベルに気づくと]
ちょ、危なっ。
[そう言って、咄嗟に倒れるアーベルの懐に身を潜らせて支える。
しかし、咄嗟のことでこちらの体勢も崩れており]
ふぎゅっ。
[こっちもこけて、下敷き。]
[マテウスの方へと振り向き]
火の気配が唐突に消えたものですから。
広間を見直してみましたけど、やっぱりいませんね。
これも機鋼竜のしわざ・・・・?
――炎竜?
[部屋の中から、オトフリートの声が聞えて。
少し驚いていると同時に、強い炎の「声」が消えて、きょとんと瞬く。
まるで、そこから突然居なくなったみたいに。前にも、似たような――]
[呆然としていた従魔が、服の裾を引くのに、我に返り。
その傍らに膝を突き、ぽむぽむ、と背を叩きつつ支えてやる]
……機鋼竜……か。
[ぽつり。零れた言葉は、やや唐突だろうか]
…何ここ……
[次第に闇に目が慣れる。
点在するスクラップは、魂持たぬ鋼の獣の残骸か?
嫌に響く足音以外は無音。]
―廃棄エリア・第二集積室―
……こんなところまで、再現してみせるこたねえだろう……くそったれ!
[低く、らしからぬ悪態が、その唇から漏れたのを聞いたものはあったかどうか]
―屋敷二階・個室―
[階下からの喧噪と、ややあって悲鳴。
それがブリジットのものだと気付くまでに少し時間が掛かった]
……。
[窓の外を雷光が掠めて行ったようだった。
欠伸をして、目を擦る]
[ユーディットの言葉、マテウスの問い。それを聞いて彼女に視線を向け。途端に聞こえたのはオトフリートと幼き従魔の声の重なり。異変を感じ視線を向けると、見えたのは数字の羅列の最後の一欠けが消える様。そこに居たのは大食らいの赤髪の青年ではなかったか]
んな…。
何が、起きた?
[彼の青年の姿は既にそこには無い。地の底から響く何かの音。それは声か機械音か。従魔の呟きは風がしっかりと傍へと運び]
…原因、もしかして分かってんのか?
< ねえ、ところで。
何なのかしら。
あのこえは。ううん、声じゃないのかもしれません。
白の猫は、黒の猫を見ました。不安そうな、なきごえでした。
――ねえ、なんなんでしょう。
ひびいているんです、地下から。なにか、音が。
猫の耳は、しゅんと、たれました。とても怖く、かんじられたのです。 >
[ふわふわ、ぽかぽか。
猫は猫同士、陽だまりの中。
ふわふわ夢見心地。
だから、赤いでこっぱちさんが数字になって消えてしまったのは、最初は黒猫の夢だとおもったのだけど。
みんな怖い顔してでこっぱちがいたところを見ていたから、きっと夢じゃないんだってそう気づいて、だから猫はにゃー、と鳴いた]
< そして、オトフリートのことばに >
機鋼竜?
< 声が。
こぼれました。
人だったらきっと、たずねていられたことでしょうけれど。 >
って、わ。 ふたりとも。
[アーベルの下敷きになった形のミリィに気付いて、慌てて駆け寄る。
一人で、起こせるか自信ないけど…そのままよりは、マシかな。]
大丈夫?たてる? 平気?
[アーベルが立ったようなので、ミリィへ手を差し出して]
これが二幕目ってことでしょうか。
毎日イベント起こしてくれる気の使いようには頭が下がりますが身がもたないかもしれませんね。
[唐突に立ち上がると広間の外へ*立ち去った*]
[私は刹那の時の後、元の表情を浮かべた麗人へと、問うように見上げた。
葡萄酒色の瞳を淡い菫色が見つめる]
…何か、あったのですか…?
[自らは異変を掴めなかったなれど、仄かな不安が過ぎる]
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