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―広間―
[フォルカーとの間に、微妙な空気を生じさせながら、
何が合ったかは言わないつもりでいた。
パンをかじりながら、出ていくオトフリートとローザに僅かに残念そうにし]
うまいもん頼むぜー。
[そう言って手を大袈裟に振った。
どう見ても、カラ元気なのだが]
ああ、寒いなぁ。
[そう言って暖炉の方へにじり寄りかけ、ふと、ぴた、と止まった。
それは不意に湧いた不安のせいだった]
─ 一階・廊下─
あ、そっか。聞いてなかったね。
……あれ、ボクの隣じゃないか。
[場所を聞いて隣と知り、縹色が瞬いた。場所を理解した旨を伝えると、一度別れ台所へと戻る]
―広間―
覗いてた。
覗いてましたよ!
僕、見たんですから…!
不潔です!
[手は冷たくてもちゃんと口が動いているので問題はないらしい。口はよく回り、声も熱がこもっているのに、視線はとても冷たい。もしかしたら指先よりも。
不潔とか言うときに、オトフリートがいないかどうかその場所もちらりと見た。残念ながら台所のようだが]
ヘルムートさんの風呂を覗いてたじゃないですか…!
よぉ、ウェン。
さっきは悪いな。
[ある程度暖まった自分はウェンに席を譲りながら、
ダーヴィッドをさす言葉には]
ああ、なんか言ってたな。
ダーヴィー、俺お前のこと意気地なしとか、根性なしとか、そんな印象あったんだが、
お前にそんな勇気があったんだな。
[感心したような言葉]
─台所─
[台所に戻るとオトフリート達が料理を作っていて。出しっぱなしにしていたカップなどをトレイの上へと寄せた]
あ、出しっぱなしでごめん、邪魔だったでしょ。
紅茶はもう行き渡ったっけ?
[広間に居るものにも確認して、用意した紅茶で間に合っているようなら、別のティーポット出してきてトレイに乗せる。クッキーを小皿に盛り分けさせてもらうと、それもトレイへ乗せて台所を出ようとする。何かを問われたなら、ちょっとね、とだけ返すことだろう]
で、どうだったんだよ、感想は?
[ダーヴィッドにそう言ったところで、ヘルムートにすっごい勢いで睨まれた。
固まり、なんとか口を開く]
いや、やっぱ、いいや、なんでも、はい、ありません。
すみません、調子こきました。
[暖炉の前で大人しく縮こまった。]
―二階:自室―
[一足先に部屋に戻り、暖炉に火を点す。
衣服を燃したせいだろう、中には随分と煤が溜まっているようだった。
最低限の家具だけ置かれた部屋は、他と変わりない。
寝台の上に腰を下ろして、ゆっくりと息を吐き出した]
─台所─
[広間から聞こえる、賑やかといえば賑やかな声。
料理を手伝うローザからは、例によって突っ込みやら何やらが飛ぶか。
自分に向けられたなら、物によってはいつものように反発しつつ、リゾットと、軽く摘める料理を数点作り上げる]
ん、いいえ、大丈夫ですよ。
お茶も大丈夫……かな?
[途中やって来たイレーネにはこう返し。
広間に行くのとは異なる様子に、何かあったか、と問うものの、返されるのは曖昧な返事。
とはいえ、何かあったのは察しがついたので、特に止める事はせず。
作り上げた料理を広間へと運び、一時、落ち着いた時間を過ごした**]
―広間―
[オトフリートは後で絞る、とか心に決めたかも知れない。
ウェンデルが隣に来るならまた場所を開けたりしながら、暫くはぼんやり暖炉の火を見つめていたが]
覗き魔?
[唐突に上がる声。
動揺しきった声。
感心するような声。
自分の名前が上がったものの、なんだかフォローに入るのも面倒臭かったので、そのまま猫を撫でていた]
…何か言ったかい?
[それでもエーリッヒのことは睨んでおいたが。
どちらかと言えば蒼花について口を滑らすのではないか、という不安が強かった]
―広間・暖炉傍―
いえ、大丈夫ですよ。
エーリッヒさんも、大丈夫です?
[もうちょっとあったまっていたほうがいいんじゃ、と、首を傾げる]
立ってても、僕は大丈夫なので。
[しかしダーヴィッドに対する時は、声音もちゃんと変わった。つめたく。
そして感想とか言い出したエーリッヒにも、冷たい視線は、しっかり向いた]
─二階・個室─
[広間で一時、落ち着いた時間を過ごした後、部屋へと戻る。
猫はどちらの傍にいるかで逡巡していたようだが、結局、普段から危なっかしい同居人の監視を選んだようだった]
……さて、と。
[部屋に戻れば、最初にやるのはノートへの書き付け。
ふ、と、万年筆を動かす手が止まる]
……これ。
先生に送れんかもしれんなぁ……。
[呟いて、手を当てるのは胸元。
生命の源であるそこは、それと同時に、病魔の棲み処でもある。
病の治療の全てを打ち切り、帰郷した理由。
それは、未だに誰にも話してはいない事]
……ま、これが俺の選んだ道。だしな。
[小さく呟いて、ノートを鞄に放り込み、代わりに出すのは波打つ短剣。
白を散らし、真紅を満たした後。持ち込んだ本を読んだりしている内に、疲労から意識は闇へと落ちた]
[明けて翌日、目覚めが訪れたのは早朝。
それを呼び込んだのは、異様な胸騒ぎだった]
……なん……だ?
[呟きながら起き上がり、それでも最初に確かめるのは、机の上の小皿。
真紅は果たして何色に転じたか、と覗き込んだ翠は大きく見開かれる]
……漆黒。
[零れた呟き。身体が震える。
それは寒さによるものでも、発作によるものでもなく。
全身を巡る血が沸き立つような──そんな感覚のもたらしたもの。
以前にも、感じた覚えのあるものだった]
見てな―――い!!!!
そもそも事故だ!!うっかり鉢合わせただけだ!!
[かなり自分に非があるうっかりもいい所だが。]
青い花の刺青ばっか目立って体の線とか見えてないからな!!!
[思わず口にした事実に、ヘルミーネの顔色がさっと変わった。
こちらはそんな事気にもとめずにエーリッヒの方を向いて。]
誰が意気地なしで根性なしの甲斐性なしの間抜けだよグラーツ殿!!
[勝手に自分で増やしているのにも気づいていない。
どうだと言われたら素直に考え込んだ。]
………意外に多い?
[何とどこが意外なのか、口にする前にコップが後頭部に飛んできて跳ねた。]
見つけた……って事か。
[微かに上がる口の端。その様子を見ていた猫が不安げな声を上げた後、服の裾を噛んで引っ張った。
僅かな衝撃が何処かへ飛んだ意識を我に返らせ、笑みは失せる]
……ユエ……俺?
[僅かな時間、感じていた陶酔感は覚えのあるもの。
それが、漆黒と共に『見つけた』事を裏付けていた]
……とにかく、ハインリヒさんと。
それから、ミーネに、伝える、か。
……さすがに……相手が相手だし、な。
[呟く声には、複雑な感情のいろ。
それは、そこからこの結果を得た事を哀しむ、というよりは、対処方に困る、という雰囲気のもの]
[部屋を出て、廊下へ。
一応、ヘルミーネの部屋の場所は確かめてはおいたから、そちらへ向かいノックをするものの──]
……ミーネ?
[返事はない。
さすがにまだ寝ているのか、と思ったが、そも、室内に人の気配が感じられなかった]
……下、か?
[呟きながら階下へ。
猫が不安げにその後をついてくる。
一階に降りるもやはり、その姿はなく]
……ん……待てよ。
もしかして……。
[一つ、思い当たったのは、外。エルザの墓に行っているのかも知れない、と思い。
昨日、ユリアンが話していた場所へと、向かった]
─台所→二階・フォルカーの部屋─
[深く突っ込まれなかったことに安堵を覚えつつ、頭を下げることを挨拶として台所から廊下へと出た]
[落とさないようにトレイを持って階段を上り。教えられた部屋──自分が使っている部屋の左隣の部屋の扉をノックする]
フォル、紅茶持って来たよ。
─外・エルザの墓付近─
[外に出る。積もった雪の真白が眩しい。
その白の中に、足跡が続いているのを見て取ると、ゆっくりとそれを辿って歩き──]
……え?
[教えられた、質素な墓標。
それはすぐに見つかった、けれど。
翠に、それは映らない。
僅かに見開かれた目が、捉えていたのは、真白の上の]
……ミー……ネ?
[見慣れた金の髪と、その周囲に広がる──真紅]
―広間―
おお、おお、大胆だなぁ。
[にやにやと覗き話に茶々を入れる。
いい加減にしろとヘルミーネの視線を受ければはぁーい、と肩を竦めた]
[やがて料理を作り終えたオトフリートとローザが戻ってくれば、
待ってました、とばかりに運ばれる料理を待ち受けた]
あったまるなぁ。
おまけにうまいし、2人とも俺の嫁になればいいのに。
[へらへらしながら口にしたり。
ローザにはまたからかってると言われるかもしれないが、それには肩を竦め、
やや複雑な表情を返したか]
なん、だよ、これ……。
なに? なんの……冗談?
[零れ落ちたのは、掠れた声。
認めたくない、という思いに反し、歩みは真白の上のいろの方へと。
白の上に広がる真紅は、鮮やかに描かれた大輪の花の如く。
けれど、その中央に倒れる姿からは。
その身に鮮やかに開いてた蒼の花が奪われていた]
……ミーネ。
[名を呼ぶけれど、応えはなくて。
止まりかけた思考を、猫の鳴き声が再び動かした]
……なん……で……。
[答えの予測はついている。
御伽噺で、双花を得た者たちはどうなった?
わかっていても──否。
わかっているから。言葉で表しようもなく、苦しい]
……人に……死ぬな、って、言っておいて。
なに……やってんだよっ……。
人の……人の気も、知らないで……っ!
[ようやく零れ落ちた声は、もしかしたらお互い様、なのかも知れないけれど。
今は、そう、言わずにはおれなかった。
それから無言で羽織っていた上着を脱ぎ、真紅に染まった部分を隠すようにヘルミーネの身体にかける。
声はない、泣く素振りもない。
けれど、その内心を代弁するかのように、猫が哀しげな声で鳴き続ける。
翠の瞳には、静かで、そして。
どこか冷たい、決意の光が宿っていた**]
[ 超 信 じ て な い 目をした。
身体の冷えを取るのは大事だが、冷たい目でダーヴィッドを睨むのも大事である]
普通、ノックくらいするものだと思いますけど。
不潔です。犯罪者です。
――青い?
[言い放った後で、首を傾げる。
ヘルムートへと視線を投げて、それからダーヴィッドをもう一度見た。
さっきより強く睨みつける]
ダーヴィッドさんの……!
変態――!!!
―二階:自室―
[ノックの音に顔を上げ、部屋の扉を開く]
いらっしゃい、……っていうのも、変な感じかな。
[ほんの少し、笑みが浮かぶ。
自然な笑い方は、今日、初めてかもしれなかった。
幼なじみを迎え入れて扉を閉め、机の上にトレイを置くよう促す。
部屋に椅子は一つしかないから、先と同じよう、寝台の上に腰を下ろした]
……レーネは、今朝のこと、全部、知ってる?
[少女が入れる紅茶を受け取ってから、躊躇いがちに口を開く]
俺は大分暖まったから離れてても大丈夫だ。
[ウェンデルの言葉にそう返して、
ダーヴィッドに対する言葉に冷たい視線を向けられれば]
はい、反省してます。
[顔を伏せた。
ダーヴィッドの言葉が聞こえてくる。
勝手に増やしたりとか、色々なことわめいてる様子に返す言葉はなかった]
―広間―
変わらない、ようにも見えるのに。
[賑やかな広間。
僅かな羨ましさを含みながら、それでも穏やかに眺めていた。
それを聞いてしまうまでは]
な…。
[ダーヴィッドに悪意はなかっただろう。
けれどその一言は次の崩壊を容易に予測させた。
元々声は届かないが、絶句した]
─二階・フォルカーの部屋─
んー、良いんじゃない?
[出迎えの言葉にクス、と笑いを零した。いつものフォルカーの笑みを見て、イレーネも安堵の色を見せる。促されるままにトレイを机の上に置いて。ティーポットからカップに紅茶を移す。寝台の上に腰を下ろすフォルカーへと、カップを手渡した]
今朝のこと、って言うと…。
[少し考えて、一つ頷いた。自分の分の紅茶をカップに移すと、椅子へと座る]
───全部を把握してるわけじゃないけど。
エルザさんが人狼に襲われて、……ライさんが、殺されたのは、知ってる。
[誰に、とは言わなかった。実際はその目で見ていた。止めを刺すところまでは見ていなかったが]
大胆じゃないってルデイン殿…。
[カップの一撃は顔を下に向けさせ、後頭部に瘤をつくった。
阿呆で十分とばかりにヘルミーネはぎろりと睨みつける。
それ以後はこちらを見もしない。覗き魔には当然の処置であるが、それよりも苛立っている、どこか心ここにあらずといった面持ちだった。
超信じていない目は、見えてないけれど刺さる刺さる。]
ちっ、があああああう!!!
[変態に反論して叫んだものの、ウェンデルの言葉のほうがより重くかつ重要な響きを醸し出していただろう。]
……。ダメです。
もう一つ椅子を持ってきて座りましょう。
[妥協案を出した。
反省の言葉には、冷たい目をすぐにやめた。
向けるのはダーヴィッド一人だけである]
女性の裸とか、ダメです。絶対。
ふしだらです。
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