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[だが、撫でた手が止まる。
不可解な…だが最近では慣れ親しんだ感覚。例えるなら、己の知覚する範囲より外から、球体が爆ぜる音と明滅する色彩。その色彩が何者かを教えてくれるようで]
本当に…要領が悪い…ツケでしょうかね
[落ち着いているつもりで、本当は一切落ち着いていなかったんだろう。涼の言葉、史人がどうするか。考えればわからなくもなかっただろうに
幾度でも繰り返される後悔はまた今日も順調に続いて]
少し、離れますね。すぐ、戻りますから
[笑みを形作れる余裕がある内に、もう一度榛名の髪を撫でれば、立ち上がる
向かう先は既に決まっている]
ここにいる、か。
大切なことだね。
[声のする方を見てはいる。だがまだ視界は白くて]
何?
[境界で迷ったまま。不思議そうに首を傾げた。
視線は…合わない]
うん……。
出来ること、探して、みる。
[蓮実に小さく頷いて。撫でられ、感謝するように微笑んだ]
…え…?
[その後に聞こえた言葉の意味が分からなくて。疑問の声を漏らすも、蓮実はどこかへ行くようで]
うん…分かっ、た。
[撫でられるままにし、離れると言う蓮実に頷く]
ニンゲンノ、ワッパフゼイガ
[襲いかかられればひらと避け、その魂に傷をつけようと黒狼は膨れ上がり、半人の形を成す。
黒い人狼と化したソレは、聡の肩に爪を建て押さえつけ、喉を引き裂こうと]
……あー……。
[紅の中、ただぼんやりと]
そいや、随分、煙草吸ってねぇ……。
[零れたのは、ある意味場違いな呟き。
ごそり、と左手でポケットを探り、箱を探す。
幸か不幸か、濡れて全滅、は免れているようで。
無事な一本をくわえ、いつもよりも緩慢な動作で火を点けた]
[階段を登る。ノックもせずに扉を開ける。
映る光景は予想していたけれど]
人…でした
[なぜ。とも聞かずに呟けば、裕樹の近くに膝を着く]
ただの…恨みでは、なかったのですよね?
……ふーみんせんせーのところに、戻ろう。
りきっちゃんもいるし、
[でも、いない気がしてならない。
ぎゅっと手を強く握る。]
きっと、だいじょうぶだよ。
[肩に爪が食い込む。しかし、]
退く…かよ、このくらいで!
[抑えつけた人狼の牙が自分の喉を狙っていると知るや、喉を庇うのではなく逆に思い切り頭を突き出す。鼻面に頭突き。]
何なんだよテメェは!
…うん。ありがとう。
[強く握られた手は少しだけ痛い。けれどその分震えも逆に伝わりにくかったかもしれない]
……だいじょうぶ。
[返した言葉は小さく小さく。頼りなかった。
それでも足は踏み出して]
[蓮実を見送った後、ゆるゆると床から立ち上がり。そのまま椅子へと座り込む]
[がらんとした食堂内。今、ここに居るのは自分だけ。二階に史人達が居るのは分かっていても、がらんとした中に一人だけ居ると寂しさが募ってきて。無意識に、椅子の上で膝を抱えていた]
[その状態で考えるのは、心の中で引っかかっている疑問。彼に問うつもりが、自分が取り乱してしまったためにタイミングを失った。彼の姿も、ここには無い]
[心配が募っていく。
でも、りきっちゃんなら大丈夫だよね、と。
そう信じるように、願うように、思って。
やがて辿り着いた旅籠。]
玲ちゃん。ハタゴ、ついたよ。
[扉を開けて、手を握った先の玲ちゃんを引く。]
[入ってきた蓮実の問い。
向けるのは、緩慢な視線]
……ん。
……なんか、やるだけやっちまったら、よくわからなくなった。
[ぽつり、呟いて]
取りあえず、後悔は、してねぇ。
……そんだけ。
良かった。
[安堵の声。景色は見えなかったが、明るさの違いでその通りなんだろうと思う]
ただいま…?
[けれど予想より更に人の気配が少ない。どうしてだろう]
[中に入る。
はるなちゃんがいる。]
――りきっちゃんは?
[玲ちゃんをまずは、椅子のほうにつれていってあげないと、と、思いながらも、尋ねた。]
[こちら側に頭が向かってくると知れば、体は霧散し霧となる。
するりと聡から離れ、そのまま少し距離を保った場所に集まり再び固まると、くすくすと、今度はおそらく知っただろう女の声で語りかける。]
相変わらず、さっちゃんは短気ねー。
ちょっと齧られるくらい我慢すればいいのに。
[黒い霧は集まり、小百合の姿へと変わる。
だが瞳は金色の禍々しい輝きを持ち、耳は黒犬のそれ、両手の指と爪は変わり果てた形に、丁度腰の上あたりからは、黒く長い尾がゆらりと垂れ―半人の形を成していたが。
湛える笑みだけは、生前のころのそれと変わらない。]
[じっと膝を抱えていると、出入り口の扉が開く音がした。顔を上げ、視線をそちらに向ける]
…涼、ちゃん。
玲ちゃん、も。
[涼に対しては先程のことで若干警戒の色を強めたが、続いて手を引かれ入ってくる玲の姿を見ると、それもすぐに消え失せ。椅子から足を下ろし、立ち上がった]
外、行ってた、の…?
無事で、良かった…。
[二人が外へ向かったことは気付いていない。外から戻ってきて無事であるのを見ると安堵の色を浮かぶ]
そうか…
ま、あなたに、後悔は、似合わないですしね
[幾分声を震わせながらいって、大きく息を吐いて]
さすがに、余裕がないな
こうも続けて、大事な存在を亡くすのは辛いな、やはり
[裕樹の顔を覗き見て、指でそっと目を閉ざす]
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