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(ベアトリーチェ…、一体――何が?)
[繋がれた糸は切れていない。確かに感じられる。
それが少女は生きている、と不思議と感じられた。]
…ユリアン?
[ダーヴィッドの声が聞こえればそちらの方向へ顔を向けた。]
ユリアン!
[服を裂くと同時に飛び出す一匹の蛇の尾……。
その長い牙がユリアンの胸に刺さっていて……。]
………ッ
[急いで引き抜くが、その身体ががくがくと震えはじめる。]
ユリアンッ………。
[昇っていた熱が醒めてきたのか…
自分が、今…何をしたのかを理解したのか。
俯いたまま、頭を押さえて。]
――…ケホッ……ッ
[顔は上げぬまま、同時に落とした注射器を拾う。
封を切っていなかったおかげか割れてはいない。
伏せたままの眸が探すのは、ベアトリーチェの姿で]
───大丈夫って顔、してない。
[頬にかかった髪]
[ゆっくりとした動きで]
[手を払われなければ]
[髪を直してやるのだけど]
どいつもこいつも───
[呆れた]
[転がる少女]
[止まらない咳]
他人の世話焼く前に、自分の世話焼きなよ。
[微かな、憤り]
ショックか?くっ………。
[蛇に毒があったかどうかはわからない。
ただ、あまりにも噛まれすぎて……の可能性は高い。]
ユリアン、しっかりしろッ!
[痙攣して、ガクリとする身体。
その胸に耳を押し当てて、眉を寄せた。そして、迷いなく心臓マッサージをはじめる。]
[崩れるように倒れたベアトリーチェの姿に、
苦しげに眉を寄せる。]
………、
[微かに開いた口は声は出さず。
けれども、紡いだのは謝罪だったのだろうか。
その場にしゃがみ、幼い手を取ると
注射器から薬を投与して]
…うそ、嘘よ。
ユリアン…目を開けて。
[かたかたと紙を持っている手が震えた。
彼がこうなった原因を作ったのは自分だ。]
…っ、や。
嫌よ、こんなの…
[彼は病ではなかった。
生きて出られれば一番、未来があるはずなのに――]
―― 回想 その時 ――
[混沌とした情動。言葉は遠く。
頭の中は、常に闇の中。霞がかかったよう。
反射ばかりが、優先して、動く]
[違う]
[違う]
[違う]
[意識できない裡の裡。
犯され、食い荒らされ、変質している大脳新皮質の片隅で。
最後に残った言語野が、疲労のふちで断ち切られる]
[知っている。学んだ。叩き込まれた。
………例え、石化が止まっても。
一度死んだ脳細胞は、けっしてよみがえらない。
一度、物理信号に、電気信号にのっとられた人格は、戻らない]
[だから。
だから、最後の理性で、最後の選択を。
頼むから。頼むから、限られたリソースを、無駄うちしないで。
消え行く、最後の内言語]
[人格と、理性と、生命と。それからそれから、理想と夢と。
どの終わりが自分の「終わり」なんだろう。
理性が消えた瞬間、生命も消えた]
[それが、どんなに救いか。きっと、誰にも分からない]
Er wußte nur vom Tod was alle wissen:
daß er uns nimmt und in das Stumme stößt.
(彼は死について、だれもが知ることしか知らなかった。
死がわれわれを奪い去り、沈黙のなかへ突きやるとしか)
[ふと気がつけば。自分は言葉に包まれて。
暖かな羊水の中に丸まっている。
それは、安寧。それは、嵐の夜に子どもを攫う魔王の手。
それは、情熱的な舞を踊るジプシーがもたらす陶酔]
[漏れ出した電気信号のかけらとかけらをかき集め。
ゆっくりと、「自分」は両目を開けた――**]
[イレーネのカルメンへ向ける問い(>>+4)に、
笑みに混じる色が、もう一色加わる。
――引っ掛かりを覚えてでも、喋ることができて良かったと。]
笑顔も、本当に、心からの笑顔が良いね。
[今は少しだけ作った微笑。
自分が酷いというのは間違いではないと思う。
例えば、これから少し先のこと。
――オトフリートとユリアンが死んだと知れば、
それがノーラとベアトリーチェでなくて良かったと思うだろう。
あとは、密やかに、自分が思っている通りなら。
イレーネをちらりと見やる。
ふっと息を吐いて
――見詰める先は、星詠の女性か盲目の少女か**]
もう言っちゃったよ、遅い。
[少しずつ]
[丁寧に]
[自分が触れてしまってよかったのかわからないけど]
[ブリジットの髪を梳いて整える]
そういう風に言えるなら、未だ君は大丈夫かな。
[すっかり鉱石になってしまった左の眼]
[まだ人の目のままである右の青灰簾石]
[両方を細めて]
[ハインリヒがベアトリーチェに投薬している間]
[そちらは決して見なかったけれど]
─ 蛇部屋前 ─
[拾った紙切れについてのノーラとナターリエの会話が耳に入って来る。]
PCで使えるPASSか。
ヘリを飛ばすための
制御装置へのアクセスを知る必要がある。
ヘリの操縦室は大仰な鍵がぶら下がっていて、
オート制御になっているように見えた。
カードキーか何かがあれば、別だが。
[ユリアンに視線を落とした時は、まだ普通に見えた。]
──ユリアン。
もう、あの部屋のものはノーラが見付けたらしい。
だから、大人しくしてくれ。
[ユリアンが答えないのは流石に体力の限界が来たのだろうと、違和感を憶えず。
こちらもライヒアルトに向きなおり、調べたいと思っていたブツが入ったタイピンに手を添えた。その時、]
―― どこか ――
[ゲルダの声が聞こえた。
ゆっくりと、そちらに意識が向いて]
………悲しまないでください。私が望んだことだから。
きっと、ここで死ななくても。
私はこの茨の城から出ませんでしたよ。
カルメンさんを、置いては、いけませんから。
今度こそ、一緒に、残りたいと。そう、思ってましたから。
[もう、触れられない。
辛くても、頬をつねって感じない。
だから、言葉を囁く。届かない言葉を]
ああ、そんな悲しそうな表情をしないでください。
…っ!?
[突然びくりと身を竦ませて。
胸を押さえる。自分のものではない痛み。]
なん、で…
なんで…なの。
…なおってたのに、なんで……
[唯一、病の魔の手から逃れていた、あのひと。
どこかずれてるけど、根っこは優しい人。
感じる。彼の命が失われたこと。]
[何が起きたのか、一瞬理解が追いつかなかった。
動かなくなるユリアンと、心臓マッサージを始めるダーヴィッドと。
天鵞絨が、瞬く]
……なん、で。
運だけはあるって、お前……。
[知らず、口をついたのは、いつかのやり取りの一端]
ユリアン……大丈夫だ。
毒はない、ないはずだ…だから、大丈夫なんだ……。
[ぶつぶつ呟きながら、その胸を押した。
そう、ショックだけならまだしも、おそらく、他にもいろいろな要因があった。メデューサでなくても。
証拠に外傷もさることながら、その身体につく痣…叩きつけられたような……。]
ユリアンッ………。
[そして、息を見るが、しておらず、心臓マッサージと人工呼吸を繰り返すけれど……。]
[ベアトリーチェを一度抱き上げて、
脱いだジャケットの上に寝かせると
立ち上がって今度はブリジット達の下へ寄った。]
…腕、
[俯いたまま、見下ろす形で呟いて。
その場にしゃがんでもこちらから手を伸ばして
ブリジットの手を取ろうとはしなかった。]
…腕、出してくれ。
[痛むか?と口調はいつもと同じもので。]
/*
ぼちぼち眠いのでRPは一旦〆切っておきます。
布団で鳩に移行しますので、
一先ずおやすみなさいと云っておきますね!**
/*
イレーネ>
こちらこそ、多角から全速力で逃げ出すチキンですみません。
よろしく。
エーリッヒ>
な、なんだって。結構派手にピクシーCOしていたつもりが。
まあ、ノーラは溶かすモチベがなかったのでしょうがないです。
ユリアンも、お疲れ様。ログ読んで来ます。
ユリアン?
[ダーヴィッドの声に両眼を見開く。
慌ててユリアンを覗き込んだこめかみから透明な汗が滴り落ち、蛇のうろこに当たってキラキラと光る。
ユリアンの胸に刺さっているのは、蛇の牙。]
……馬鹿な。
この蛇に毒は無い、はずだ。
私も一カ所噛まれている。
[心臓が跳ねた。石化していないユリアンが、ユリアンの心臓が完全に停止してしまったら──。生身のままの死の予感は、石化による死とまた異なる衝撃をもたらす。
けして両眼を逸らす事も、閉じる事も無いが、血の気が引いて行く。]
…ヘリとは恐らく、このメモは関係ないわ。
パソコン…使えるのなら、――調べて見て貰えないかしら。
私は機械に疎くて…。
起動用のパスワードは――「Perseus」よ。
[ヘルムートの言葉に、平静を装うと必死で喉の奥から声を引き出す。カードキー、と言われればダーヴィッドが確か持っていたはずだと視線を投げただろう。
けれどそこには必死に心臓マッサージを繰り返すダーヴィッドの姿があって――止める権利なんて何もない。]
……っ、ごめん なさい。
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