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[エーリッヒの声が聞こえれば。ヘルミーネとオトフリートからそちらへと視線を移す]
エリちゃん、大丈夫ー?
[死人相手に大丈夫も何もない。
自分を殺した相手とわかっている筈なのに、その表情は生前と変わらずのほーんとしてるだろう]
―集会所・階段傍―
[これで夫婦だったら問題になると思う。DV的な意味で。
という突っ込みがローザに入ることもなく]
…元、じゃない。
お前なんか、一生病人でいりゃァいいんだ。
この莫迦。
[俯き、表情に蔭が落ちる。
先程よりも弱い力で、拳を相手の胸に当てた]
[名を呼ばれた少年は、ゆっくりと、少女へと向き直る]
……なぁに? レーネ。
[その顔に浮かぶ笑みは場に似つかわしくないほど、柔らかなものだった]
―一階・階段付近―
[エーリッヒは動かない。たぶんきっと、事切れてるんだと、思う。
赤い血の色にくらりと後ろに倒れかければ、痛みが叩き起こした。
『魂の色を見極めろ―――』
誰の声だか、内なる何かはそう告げて。
エーリッヒの方をじっと凝視すれば、その体から、黒いもやが立ち上っていった。]
………ああ……人狼……。
あれが、人狼の魂、なのか?
[始めてみる、人狼の魂は、黒い塊をしていた。だがその顔は人と殆ど変わらない。
目をしばたかせてその表情を見ると、まだどこかぼんやりとしている風に見えた。]
…フォルカーみたいなのは見たことある。強い衝動に逆らえないとか聞いたが…ま、具体的な中身を聞くのはできれば遠慮したい。
[疲れたように笑みを浮かべ、そして事が終わったところで、また埋葬のための仕事をした後。自分の部屋へと*戻るだろう*]
─集会場・階段─
[周りの声は、聞こえなかった。良かったのか悪かったのか]
……そう、いわれても……。
[言いかけた言葉は、表情の変化と、伝わる衝撃に遮られ]
…………ごめん。
[代わりに零れたのは、こんな呟き]
お手伝いできなくてすみません。
今日は、
…手伝いますね。
[今日は、と口にした時に、今日も、といいかけてやめた。
過去を聞いて良いか、考えるようになったのは、エーリッヒのことがあるからだろう]
……そう、なんですか。
思い出したく、なかったです?
[溜息に、元気出してください、と。
フォルカーの名前を聞いてそちらを見て、視線を落とした]
そうですね。
僕には、多分、理解できないし、理解できないほうが、良いんでしょう。
やすみます、か?
[椅子とか近くにあるだろうかと思うけれど、階段の段差くらいしかない。
彼がしたいようにするのが良いと思って、あまり口出しはしなかった]
─ 一階廊下─
───!!
[向けられた笑みに息を飲んだ。場にそぐわぬそれは身体の震えを助長させる]
フォ、ル、何で、笑って───。
[足が、一歩下がる。この場から逃げろと深層の意識が言う。けれど、身体がうまく動かない]
なんで、って。
[不思議そうに、少年は瞬いた。
疑問の意味が理解出来ないと言うように]
……人狼は、いなくなった。
死んだんだ。
終わったんだよ。
レーネは、嬉しく、ないの。
[意識は、他者の声を捉えるまで浮上したようだった。
ダーヴィッドの声を聞きつけた少年は、顔を動かす]
人狼の、魂?
……ダーヴィッドさんには、なにか、見えるんですか。
―集会所・階段傍―
…喧しい。
[謝罪に返るのは、くぐもった小さな声。
もう一度同じところを叩いてから、背を向ける。
周囲は歪んで見えた]
――お前なんか、きらいだ。
[子供じみた言葉を残して、女は粒子の群れに姿を変えて、何処かへと消える。
昔馴染の前で涙を零すなんて*癪だった*]
大丈夫というか…、気分は最悪だが…。
[死ぬ間際に感じたことは、今でも強い不快感として残っていた。
声をかけてくる人物は自分が殺したはずの、
いや、今そこにいるのは自分が手をかけてきた人物達]
ああ、幽霊ってやつか……。
[なんとなくそれを、理解した]
自分を殺した奴相手に、呑気なものだな…。
[呟いたのはそんな言葉、今はもう獣としての意識はない。
皆を見て浮かぶのは罪の意識ばかり、視線を逸らす。
ダーヴィッドと一瞬目があったような気がした]
─ 一階廊下─
嬉しいとか、嬉しくないとか、そうじゃ、なくて。
怖いよ、フォル───。
[ただ、恐怖だけが身を支配していた。それは終わらぬを知るが故の恐怖か、それとも純粋にその様子に恐怖したのか]
[フォルカーがダーヴィッドに問う言葉が耳に入る。そちらへフォルカーの意識が向いた隙に、足を動かした。廊下に居るものの傍を擦り抜け、階段へと向かう]
終わり…そうだな、終わりなんだ。
人狼が死んだから、これで。
[フォルカーの言葉が耳に届けば、ぽつりそう呟く。
フォルカーに問われれば、ちょっとヘルミーネの言葉が思い出されたものの、もう終わりなら隠す必要もないのかと。]
ああ、俺は人の魂…うん、幽霊だな。幽霊が見えるんだ。
団長に、先に死んだグラーツ殿、エルザ、ローザの魂は、人のものだった。
でも、そっちのグラーツ殿のは…
[そう言って、ちらとエーリッヒの死体を見る。
赤い血に、かくんと頭が後ろに倒れかけたものの、何とか持ち直して。]
…狼の魂だ。
[口にして告げれば、頭の奥がすっと冴えていった。]
─集会場・階段─
[返される言葉と衝撃には、何も言えずに苦笑して]
……ミーネ?
[背を向けるのを訝り、名を呼べば、返されるのは子供じみた言葉]
……あー……。
[消える姿。
追う事もできずに、散るのを見送る。
浮かんでいるのは、なんとも表しがたい──困ったような、苦笑い]
[エーリッヒが視線を逸らせば、ハインリヒの傍らで首を傾げる]
そうー?
恨んでも憎んでも、生き返れる訳じゃないもの。疲れるだけだと思わない?
そもそもあたし、人のこと嫌いになるのは苦手ー。
[食べ物の好き嫌いはあるけどねー。と言葉を続けたなら、呆れられるだろうか。]
……ヘルさんって器用だよねー。
どうやってやるんだろ、あれ。
[粒子となって散っていくさまが見えたなら、瞬いて首を傾げるだろう。
その上で、苦笑しているオトフリートには]
……オトちゃん、旦那さんおっかけなくていいのー?
[などと言うだろうか]
[翠をゆっくりと周囲に巡らせる。
いつの間に現れたのか、エーリッヒの姿が見えた。
死して器を離れた事で、『真視の血』の呪縛から逃れる事ができたのか。
それとも、喪ったものと、多少不本意な形ではあるが、再びあえたからか。
先に、あれほど強く感じていたざわめきは、今は感じなかった]
[ユリアンやウェンデルの会話までは、届かない。
ダーヴィッドの口から為される説明に、少年は興味深げに相槌を打っていた]
……力を持つ者。
他にも、いたんだ。
[独り言のように漏らす言葉も、終わったと思っているがゆえだろう。
魂が見えると聞いた折には、己の首元を飾る赤石に目を落とした。もっとも、そこに宿るものは、“魂”といった存在ではないから、彼にも見えはしまい。
彼に釣られて“人狼”の遺体に目を向けれど、フォルカーの表情は変わることもなかった]
だいじょうぶ、ですか?
[倒れかけたダーヴィッドに、瞬いて、問いかける]
暢気かしら。
[ローザとは逆方向に小首を傾げる]
私はローザちゃんほど達観できてはいないけれど。
でも、賛成したいわ。
[憎みたくない。どこかで憎めない。
そんな気持ちを籠めて言う]
……レーネ?
[別の話題に気を取られていたから、イレーネの動きに気付くのは遅れた。
怖い、と評されたのが少年自身であると気付くのは、更に。
ただ、不思議そうにして、去ろうとする少女を見ていた]
―一階廊下―
[オトフリートへ近寄って、彼に触れればそこに命がないことを知る。
そばにいるユリアンとウェンディに向かって]
…埋めてやろう。
[短く告げ、視線ではウェンディへ手伝え、と命令調だった。
ユリアンがフォルカーのことを衝動に逆らえないというのを聞き、一度そちらに目を向けた]
―。
[ダーヴィッドがエーリッヒの魂が人狼のものと言うのを聞けば
血塗れの遺体を見下ろして―
それから、改めてダーヴィッドが自ら力について話すのを聞いた]
で、この行商のにーさんが人狼なら、もう終わりなんだろう?
[オトフリートの横で腕を組み、そう言った]
……だーから、誰が旦那で誰が嫁だと。
[ローザの声に、何となくぐったりとする。
死しても変わらぬその様子に、違う意味での苦笑を浮かべて]
……今、追いかけても、意地になって逃げる、の繰り返し。
だから、少し、間を置いた方がいいんですよ。
ローザちゃんは出来ない?
[ヘルミーネを器用だというローザに不思議そうに言った。
特にどうすれば移動できるとかは意識していなかった]
よく理解し合ってるのね。
[オトフリートの言葉には素直に頷いた]
[ダーヴィッドの言葉は聞こえていた。けれど今は返す余裕も無くて。階段を上る前にウェンデルに声をかけられると、怯えるよな表情を向けた]
っ───。
[問いに、碌に答えることも出来ないまま、階段を駆け上がって行く]
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