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[アズマはハルヒを狂人と言っていた。
ハルヒが狼側であるなら彼と争うシンタロウは――。
倒れた春陽と、慎太郎の姿を見遣る。
誠が春陽の傍により行った其れに凍りつくような感覚]
――…、……ッ
[幼馴染であると言っていた二人が
こうしている様が佑一郎には理解できない]
[一部聞き間違えがあったのだが、間違えは間違いのまま進んで行く。
そもそもあまり狼探し自体に意識は裂いていない事もあり、其々の配役は確定できずに霧の中。
サクラの声に>>+15ハルヒとマコトをまた苦い顔で見た。
二人の間に何があったかは分らないが、ゲームが進む中でそうさせるだけの何かがあった事だけはわかる。]
詮無き事じゃの…。
[何も出来ぬと苦い顔のまま。]
[川島へと行われる露島の惨劇から視線をそらした。
そして、今まで意識してなかった――否、狼、とわかってから気にすることを本能的に避けていた友梨がかけて行く足音を聞く。
そらした視線は事切れた森の姿を認めて]
――え……っ、そ、んな……
[どうやって、殺したのかは見てなかった。
見れなかったのかもしれない。
きっと殺されたときの恐怖が強くて。
そこだけ靄がかかってなにもわからないのだから]
川島く…!
…つゆしま、くん?
や…やめ、て…!露島くん、やめて!
[倒れた春陽は、傍目からみても既に事切れていて。
彼に近付いていった誠が行った行為は、そんな彼を更に傷つけるもので。
ぞくりとした、理解ができない、けれど。
止まらないその行為に、懇願するように止めてと叫んだ。
だから。
春の声は聞こえなくて。友梨のことも、気がつけなくて。
気付いた時は、全てが遅かった。]
[春の告発が辺りに響いた。
誠へと向けられた意識はその瞬間春の方へと向けられる。
その告発の内容とタイミングに舌打ちして春へと駆け寄る。
庇うように立ち塞がれば友梨の背後から現れる獣]
――…な、…ッ!?
[一瞬何が起こったか分からなかった。
それが何であるかなど考えたくなかった。
当たり前であった現実が崩れるような感覚。
否、もう既に崩れかけていたそれが――。
咄嗟に両の腕を前で構えて衝撃に備えるけれど
力の差は歴然たるもの、男の四肢は容易く跳ね飛ばされた。
受け身を取るも身体に伝う衝撃で息が詰まる]
[静止の声が聞こえた気がする、ボクはそこで、幼馴染の姿に気づいて、
答えられるわけがない、もう彼はすでに、生きていないから]
ねぇ、ハル……なんでなんだよ……?
なんで、ハルが?
なんで、宮町さんだった?
[ボクは血にぬれた手で、カッターを持ったままの手で、その顔を隠すように]
ねぇ、ハルとボクは友達、だよね?
[手で隠れないそこに浮かんでいたのは笑顔で、目から、涙が零れ落ちていく。
投げかける質問の声に答える声は、きっとどこからもない]
[そうして、ボクはほかの騒動がおきていても、それに気づいた様子もなく、
ボクがまともに話せるようになるのはもう少し、後のことだろうね?]
え、ゆ ───森君!
…っ佑!!!
[切羽詰ったような佑の声に、何があったのかと見たその先は。
黒い獣が、春に襲い掛かる姿と、その獣に突き飛ばされた幼馴染の姿で。
反射的に幼馴染に駆け寄った自分と逆に、この場を立ち去り走る友梨を見て。
彼女の影が、獣とつながっているのを見た。]
[強かに打ちつけた身体が痺れて直ぐには動けない。
咳き込みながら柳眉を寄せて探すのは春の姿。
黒紅色の獣が春の喉元に喰らいつく様が
スローモーションをみているかのように眸に映り込む。
飛び散る赤は守りたかった者の、血の雫。
友梨と獣が立ち去る音だけがやけに耳に響いた]
――――……春!!!
[声を張り上げて友の名を呼ぶ。
無理に起こした身体が痛みを訴えていたが
其れを無視して春へと駆け寄った]
─ →調理室─
[走るにつれ、黒紅狼はその形を無くし、影と同化する]
どこか、隠れられる、場所。
少しでも、時間稼ぎ出来たら…!
[皆が自分を探すだろうから、そんなに簡単には行かないかもしれないけれど。
僅かな望みを求めて隠れる場所を捜した]
……そうだ、調理室!
[鍵を持ったままであることを思い出し、走りながら胸ポケットを探る。
記憶の通りに鍵はそこにあり、足は調理室目指し駆け続ける]
[追って来るものが居たかどうかも確認せぬまま、調理室の鍵を開けると崩れ落ちるようにしながら中へと入った。
扉を閉め、床に座り込んで背を扉に凭れ掛けさせる]
っ、はぁ、は、ぁ……。
…ぅ、く……ひっく……。
なん、で……なんで、こんなこと、に…。
[しんと静まり返る調理室。
その中に涙声と嗚咽が響いた。
今まで流れることが無かった涙。
死に直面して、一人になって、底知れぬ恐怖が身を襲う]
…やだ……やだよぅ……。
[膝を抱えて顔を埋める。
スカートから覗いていたクマのぬいぐるみのストラップが力なく床に転がった。
背の扉の鍵はかけ忘れたまま、しばらくの間調理室には途切れぬ嗚咽が*響いていた*]
― 階段付近 ―
むっ?
[サクラの声にそちらを向くと、血を流して倒れた者の姿が見えて目を見張る。]
森…。これは…襲撃か…。
[朧気に、ユリが狼だという声が聞こえた気がしたが、その当人の姿はもう見えない。
そのうち>>+6アズマのそんな声が耳に届けばそちらを見て。]
ゲームに添うんじゃったら墓下に当たるんじゃろうが。
[そう零すように返した。表情は相変わらず苦い。]
…………。
[呆気にとられた。
呆気にとられるしか、出来なかった。
蛍子の制止が届いたのか、動きを止めた誠。
その後の、彼の言動と、表情と。
何があって、どうなって、今があるのか。
わからない事が積み上がる、けれど]
……っ!? ……はるさんっ!
[聞こえた声と、新たに大気を染めた、あか。
それから、走り去る友梨の姿に。
疑問の思考は途切れ、よろけながらも、立ち上がった]
……諏訪、先輩……一之瀬、先輩……。
今の、なに……。
[春と友梨の間のやり取りは、見てはいなかった。
見れたのは、結果だけ。
だから、二人に向けて、問う]
……何があって……桐谷……は。
なんで……はるさん……。
[問いかける声は、自分でも。
酷く掠れているな、と思えた**]
[幼馴染の声が遠く聞こえていたけれど
目の前の悪夢に意識が奪われて返事をする余裕が無い。
そう、これは、きっと悪夢だ。
目が覚めれば何時も通りの日常が――。
逃避しかける意識を現実へと引き戻すのは
抱き起こし支えた春の喉元から溢れる血のぬめりとあたたかさ]
嘘、だ。
また、――…、……ッ
[間に合わない。否、力が及ばない。
自分の無力さを呪い、友を失った嘆きが嗚咽となり零れる]
春、いくな。いくなよ、春……ッ!
[縋るような声は響に向けた其れと似た音。
友の肩を抱き柔らかな髪に顔を埋めて幾度となく名を呼んだ]
―回想・死の直前―
(いぐにす、川島くんは、人間だ)
[吊り縄の数に余裕はない。だから狂人と分かっている人間を吊るより、確実に人狼と分かっている桐谷を吊らなくてはいけない。
もとより、その算段をするつもりで真崎を探していたのだ。]
(どうせ、俺が占い師、ってことは、ばれてる……!)
[宮町が死んだ怒りと混乱から、川島に「視ようと」などと占い師を案じさせるような単語を口走っていたことを思い出す。]
(諏訪に、全てを伝えてある。……保身なんかどうでもいい!)
いぐにす!!
[渇いてひりつく喉をこじ開け、声をはりあげた。]
殺すべき、なのは、キユリだ!!桐谷友梨が人狼だ!!
[その瞬間、体中の血の気が一気にひいた。
音がしなくなった。]
(あ)
[それを認識する前に、勝手に足が駆けだす。
だが、アズマの鈍足で、それから逃れられるわけもない。
喉元が、かっと熱くなって、あとは全てわからなくなった。]
―回想・了―
[喉を食い千切られ事切れた春を幼馴染が抱き起こす。
その声が、悲痛な叫びが、目の前のそれが現実なのだと教えられる。
春が死んだ。
演じる私が好きだと、ずっと応援すると言ってくれた人が。]
ぁ…っ
[また、人が死ぬのを止められなかった。
何も出来ずに。後悔に、視界がゆがむ。
そこにかけられた問いに、ようやく側に慎太郎が来たことに気付き。]
森君、が…襲われ、て。
襲った、のは…キユリ、ちゃんと…影、つながって、た…
キユリちゃん、は、狼、だって…
森君、言って、たって。
[そう答えた声も、また、掠れていたか。]
あ、サクちゃん、やっほ。
……俺、ちょっと、サクちゃんのこと、疑ってた。
ごめん。
[頭を下げて謝る。思えば彼女の死の姿も見ることができなかった。]
っていうか、学長!宮町さんどうしたの!?
宮町さん、大丈夫!?
[学長に背負われている宮町に思わず声をかけたが、反応はあったのかどうか。]
[実のところは、ほんの少しだけ、何処かで期待していたのかもしれない。
それこそマリーがいつか言ったように、これは全て悪い夢で、死ねば目が醒めるのではないかと。
そんなことはないと思いながらも、きっともしかしたらという思いはあって。
だから刃が皮膚を破り、喉に突き刺さった時、その感触に紛れもない現実を思い知った時、
川島は――春陽は、ほんの少しだけ後悔をした]
[声はもう出ない。
慎太郎がどうしているのか、この体勢からでは見えない。
やっぱり彼には敵わなかったと思い、けれど苦笑いは上手くいかなかった。
世界に急に影が落ちる。
薄く開いた視界に映ったのは、幼馴染みの顔だった]
(――なに、)
[彼が口を開き、でも音は聞こえない。
彼が何かを振り上げるのが見えて、でも痛みももう感じられない]
(何で、そんな顔してるの)
[聞こえないけれど、彼はきっと憎んでいるはずで、
だからこその行動のはずで、
それなのに見えたのは笑顔と、零れ落ちる雫]
(何で)
[そして意識は]
――……何で、泣いてるの。
[いつの間にか身体の外にあって、
血に濡れた自分と、幼馴染みの姿を、他人事のように見ていた]
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