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…ん、まぁね。
ちょっとそういう気分だっただけ。
[銀のスプーンにのった冷たいジェラートは、舌の上でひんやりと溶け、滾りかけていた力をゆっくり冷やしていく。
って言うか、某誰かさんは「甘いもの"を"喰う」だが、
こっちは「甘いもの"も"喰う」という違い。]
ご飯食べると元気になる。
甘い物はもっと元気になれるよね。
[そういえば食事そのものが多いのだけれど。
自分の興味が甘い物にあるので、甘い物仲間認定したらしい。
出してもらった小ぶりなジェラードをスプーンですくって]
甘いけれど、冷たくてすっきり。
これもなんだか落ち着けるね。
[機嫌よくスプーンを口に運んでいる]
―遺跡―
そう、そうだ。それは正しい…恐らく。
だが。解っている。それなのに、解っていることを、知らないとはどういう事だ。…まるで謎掛けではないか。
解っていることを知らない、というのは解っていたのか。つまりそれは忘却したという事か?
いやまて、それ以前にお前は同族と暮らした事は無いのか。
[深まるばかりの疑問に、表情はいよいよ険しく
痴話喧嘩ともまた違った様子に、若い自警団員がふたりへ声を掛けるべきか迷っているのも意識の外へ]
−北の通り−
[ベアトリーチェは道をまっ直ぐにあるいて、門の前で、ぴたりと足をとめました。
世界はとても広いと云いますが、ベアトリーチェの世界はここまでです。天は果てないと云いますが、ベアトリーチェの知るそらはわずかです。
小さな指先に鎖を引っかけ、永久の海蒼に無限の輪を翳して、くるくる、くるくる、回します。始まりも終わりもそこにはなくて、或いは、おんなじでした。]
多分、解っているけれど…いくつも、記憶を捨ててきたから、知らない。
そう、その通り。
同族と?
…暫く、母様と。
でも、すぐに母様は……
[思い出し、俯く。涙こそ零れないが、その肩は少し震えて。]
んむ。
生き物ってのは、喰わないと生きていけないからな。
甘いものは、より効率的にちからになるから。
[精霊などは生物と違い、自身の属性の力の流れを取り込んで、己を満たすとは教わっている。
歳を経た竜も、それに近い存在になるとか。
だが、横で同じ物を口にする少女が、意識を持った力の流れで出来ているなんて気づいていないわけで。]
[幾つもの記憶を捨てる。それ程ながい時をひとりで生きてきたのだろう。そう聞いても、ミハエルには同情の気持ちは起こらなかった。そうして生きる事を厭む心は無かったから。]
[だが、彼女の言葉尻が消え、その震える肩先に]
嗚呼、済まない
[戸惑って、かける言葉無くイレーネから目を逸らした。
そうして自警団員がこちらを不審がって居るのにようやく気付き、更に困る。困っていただけなのだが、眉間へ深い皺を刻むと怒ったような表情になった。]
………仕事だと言っていたな。いつまでもこんな所へ居る訳にはいかないだろう。私も、酔漢の喧嘩を見に来た訳ではない。特に何も無いのだったら、戻る。
[謝られて少し驚き、言葉に記憶の遡流が止められて、僅かにほっとした表情をして顔をあげた。]
…仕事は、ここで終わり。
多分、特に何もない。
今は。
[ふい、と遺跡の方へ視線を移して目を細める。]
さて、ご馳走さん。
[空になった硝子の器に、スプーンを置いて立ち上がる。
アマンダとブリスの分も含めて、代金を払うと、*散歩へ。*]
ん、それもあるけれど。
甘い物は嬉しくもなるから力になるの。
[食べ物から取り込むことだって出来ないわけじゃないけれど、どちらかといえば彼女にとって重要なのはそっちだった。
目の前の人物は竜の気配をしているのに違うのかと、ちょっと意外感が混じっていたかもしれない]
あ、いってらっしゃい。
[また奢ってもらっちゃった、とぼんやり考えながら。
食べ終わったなら彼女も街へと*出かけるだろう*]
…そうか。私は
[イレーネの目線の先を見る]
もう遺跡へ用は無い。では、さらばだ。
[さっさと(またはそそくさと)踵を返し、街へと*戻りゆく*]
−Kirschbaum・庭−
[火炎の竜を残し、扉をくぐり抜けた後。
アマンダは、そのまま立ち去らずに庭へと足を踏み入れていた。
それは、眠るオトフリートの気配を感じて惹かれたからなのか。
それとも、やってくるユリアンの気配を感じて避けたからなのか]
…やあ、ヴィンター。昼寝日和だね。
[眠りの帳の奥にある主には声を掛けず、番をする白梟に微笑む。
千花は喉で小さく唸るも威嚇の声は出さず、澄まして横を向いた]
[油壷を抱えたまま、遺跡の前に立つ。
人々が入ったり出たり、これだけの人がいるのであればもはや探されている「お宝」なんで無いんじゃないか、と思えた。]
[アマンダは、土を踏んで近づく。足音はしない。
白梟が警戒するように首を傾げる様子に、目を細めて笑う]
ん、大丈夫。
少し、毛繕いするだけ。
[おかしな物言いをしつつ白い指を伸ばす。
悪意がないのを感じ取ったのか、今度は白梟は止めなかった]
[虚無を溶かし込んだような彩な髪が、元通りに背へと流れる。
アマンダは金緑石が映える様を目を細めて眺め、白い指先を離す。
その間際、大地の癒しを少しだけ置き土産にしたけれど、受け取られたかは判らない]
ふふ、お邪魔したね。
さ、行こうか。
「チッ」
[白梟が何を考えているかなど気にせず、その場を立ち去る。
淡い薄紅が、整えられたばかりの虚無の髪へと舞い降りた]
[仕事を終えると、そのまま森へ散歩に出かけた。
自然の中にいる事は、とても安心した。いつもと何も変わらない、木々。
踏みしめる土の下には、もうじき現れようとする新しい息吹。
大きな鳥に食べられる小動物。
あふれかけた記憶を再び飛び出さないようにゆっくり抑えつつ、ゆったりと自然を泳ぐ。]
−→西の桜−
[暖かな午後の日差しの中、ゆっくりと西の通りを歩く。
花の盛りの今、シンボルツリーとされるその樹には、大勢の人がやって来ていた。
アマンダは樹から少し離れた場所で、その艶姿を眺める]
うん、きれいだね。
今年も、とてもきれい。
「チッ、チチチチチ…」
[千花の同意する声に、笑ってその場へと座る。
まるで後ろに凭れるように手の平を地について、踏み固められた土が樹の根を痛めぬ様にと、柔らかく変化させ――]
「アンアンッ!」
[薄れ掛けた意識が、傾ぎかけた身体が、急激に戻って。
アマンダは包帯の巻かれた手で額を押さえ、小さな息を吐いた]
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