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[三人三様の反応を見てから、言葉を発すために小さく息を吸う。エルザの返答には一つ頷き]
……竜王様達が所持せし「力ある物」。
数ある中でも強大すぎるが故に分かたれた二つの剣。
「力ある剣」の存在を、聞いたことは無いかの?
[再びの問い掛け。目の前に居る三人を順繰りに見る]
― 竜皇殿・中庭 ―
……また。
[ 投げられるそれぞれの科白に、ノーラは首を縦に振るか横に振るかで応じて、一人、また一人と離れ行くを、再会を願う別れの言葉を短く告げ、見送った。
誰の――対の一たる闇竜オトフリートの感謝に対しても、それは同じだった。
異なる様子を見せたのは、心竜アーベルのレンズ越しの紺碧へと向けた、物問いたげな眼差しくらいなものだったが、問いが明確に発される事はなく、合わぬ視線故に、彼が察したかも分からぬ。
話し相手が去ろうと、影は其処から動く様子もなく、樹の傍らに、再び*腰を下ろすのだった*]
や、謝らなくてもいいんだけどー。
[エルザに向け、困ったように言って。
ザムエルの言葉に、軽く、首を傾げる]
力ある……剣?
人間界の伝説で、たまーに聞いたりする、あれの事かな。
……あれって、竜王管理だったんだぁ。
[場違いなくらいしみじみと言ってみたり]
剣?
…………あー!あるある。聞いたことくらいは。
興味ないからド忘れてた。
[元々、長き時により蓄えた知識は膨大。故に多い引き出しから該当するものを選びだす事は容易ではなく。
また傷をつけるものにはあまり興味をしめさなかったからか、奥底にしまわれた知識はすっかり忘れられていた。
ぽんと手を叩いて。]
…で。
それを揺れるものが狙ってるってことでいいのかね?
はい、私は我君より聞いたことが。
その力は半端な者では支えることもできないと。
[ティルやクレメンスの反応を見ながら*そう答えた*]
[再び三人の反応を確認してから]
「揺らすもの」が狙っているかの確証は無いが、影響を与えるに十分な代物ではないかと思うて居る。
分かたれた二つの剣の片方だけでも大きな力を有する。
そして「分かたれた」と言うことは、元は一つであったと言う事。
仮にそれが一つとなり揮われたとしたら……。
[一度言葉を切るが、直ぐに調子を戻し]
と、そこまで行くのは考えすぎやも知れぬが。
しかして強大な力を有する物が奪われるは事実大事。
狙うに値するものなのではないかとは思うのぅ。
んでも便利っちゃ便利だよな。
こっちは向こうの、生命の海の詳しい様子も不明瞭だし。
1日2日で腐るようなもんでもないが。
ちと他の奴等にも状況話してやらんと、姐さん信者が悲鳴あげてるだろうし。
[信者=側近だが。
ティルが見た空を、こちらもちらりと見上げる。
今は疾風竜が吹いた笛の音の為か、見える範囲で変容は見当たらない。]
[基本的に剣は使わないせいか、やっぱり興味は薄かった。
更に、伝説の類にもさほど興味があるわけではないため、必死で記憶を辿りつつ]
んー……。
人間界で聞いた伝説じゃ、最終兵器扱いだったしなぁ。
っつか、そーゆーのが飛び込むとか、それだけで人間界とか大揺れだし。
世界揺らすのが目的なら、それ狙いってコト、なのかなぁ。
影輝ほどじゃねーけど、どこにでもあるのが疾風の特徴だしな。
つか、やっぱどこも騒ぎになるよなぁ……。
あー、事情説明とか、頭いてぇ……。
[クレメンスに返して、ため息一つ。
そも、風竜の一族は竜郷各所に散らばっているわけで。
それぞれが風聞を拾い集めたら、どれだけ尾ひれがつくのかとか、考えると、ちょっと頭が痛い]
―中庭―
[流水の竜が現れた時も一歩引き、青年は口元に穏やかな笑みを浮かべ話に耳を傾けていた。唇を舐める妖艶な誘いは短くも丁重にお断りしたが。
その間にやって来た生命竜の二度目見かける暴挙を止める事は出来ず、しかし見事に凹まされた顔面からすれば手出し無用であったかもしれない。
やがて去っていく者達を見送り、影輝竜の物問いたげな眼差しに無言のまま樹の傍らに腰を下ろす姿を見下ろした。目を合わせる事はなく彼女の髪に隠れた右に焦点を合わせながら]
……何か?
そう言うことじゃの。
[ティルの言葉に頷いて]
尤も、これはあれこれ書を読んでみての儂の推測に過ぎんが。
当たっているのであれば、それなりに対策も立てれようかの。
[何度か頷いたために額のバンダナが徐々にずれてきた。おっとっと、などと言いながら左手でバンダナの上から額を押さえ、右手で後ろの布端を絞るように掴む。上げた左手の手首に、黒光りする何かが僅かにローブから覗いた]
―街角―
[集中力尽きたし、お腹すいたし。
サボ…いやいやいや補給に街へ。
流れから力を得ることは身につけたものの、肉体の維持とかほらそのへんが。]
あ、師父。
教えを請おうと探しておりました。
[老竜の姿に声をかけて。
真面目にやってるふりしても、手にはかじりかけの林檎があるから説得力皆無。]
[きゅ、とバンダナを締め直したところでもう一人の教え子の姿を目にする]
おお、ダーヴィッド。
……それが教えを請おうとする態度か。
[その姿勢は評価出来るが、齧りかけの林檎で上がった評価はすぐさま下がる]
そいつを手にして何かに使って、こんな世界揺れちまえ!
ってやるつもり、なのかねぇ。
[ザムエルの言葉に、そういう流れなのかねと頭の中で整理していたが。
ザムエルの、ローブの中から、何かが見えた。
よく見れば黒い腕輪。
老竜にはいわゆるハイカラに見えて。ちょっとにやりと笑いながら。]
おーお、ザム爺なんだこれ。
カッコイイのつけてるじゃねぇか?
爺さんが買ったわけじゃないよなぁ。
どこぞの婆さまからの贈り物か?
[しげしげと、それを眺めた。]
そりゃそうだろ。15竜王、どれが欠けても世界は安定しねぇだろうし。
あー、同じく。面倒だろなぁ…。
[ティルと同じように軽い頭痛を感じるのは決して気のせいではない。
おそらく、おおよその事情だけは宮殿に伝わっているはずだが。
それでも戻れば姐さん命の竜らに何を問い詰められるか分かったもんじゃない。
泣きつくで済めばいいが。
度がすぎて殺傷沙汰にならなきゃいいなとこっそり遠い目で思った。]
んーんーんー……。
だとしたら、騒動起こしたヤツの狙いはそれで……。
んでも、閉じ込めちゃったら、とてもじゃないけど剣とか奪えないよねー。
一対一だって、ふつーに考えたら勝てる相手じゃないじゃん、王って。
なんか、すっげー本末転倒な気がするんだけど、封印するのって。
……王の手元に、剣がない、ってんなら、話は別だけどさぁ。
[素朴な疑問を口にしたところで、目に付いたのはザムエルの手首の腕輪。
先ほどはなかったような気がするそれにきょとり、としつつ]
あ、火炎の兄さんだ。
[興味は、現れた若焔の方へと向いていたり]
[しどろもどろしながら紙袋に林檎をしまって、]
あ、いや、これは、そのっ。
ええと…アレなんすよ。結界側から辿ろうにも、巧妙にごまかされてて…
干渉されてる可能性のある方を個別に読み解く方がわかりやすいかなと思ったのですが…。
誰から調べるべきか迷ってるもんで。
[教えて?せんせー、と縋る目。]
詳しいところは儂も分からんわい。
剣の所在もどうなっておるやら。
力あるもの故にぞんざいには扱っておらんはずじゃが。
[クレメンスに返しながら指摘される腕輪を目の前へと掲げて]
…数居る教え子からの贈り物じゃ。
儂には合わんと言うたのじゃが、どうしてもと言うのでな。
[答えを返すまでに微妙な一拍が挟まる。気恥ずかしいためか、はたまた別の理由があるのか。
良く見るならば、その装飾にはサファイアとアメジストが一つずつ、対極に位置するようにあしらわれているのが分かるだろう]
……、いえ。
[ 問われるとは思っていなかった様子で、黒の瞳を瞬かせた。
暫し、思考の沈黙を落とした後、手を持ち上げ、無作法にも伸ばした指先が銀縁の眼鏡の奥を指す。視線は彼ではなく、影自身の指を見詰めていた。]
其処には何が映るのだろうか、と。
うあー、なんつーか。
命竜さんたちにゃ、落ち着いててほしいんだけど、今のオレ的には。
[どこか遠い目をしているようなクレメンスの様子に、思わず呟いた。
こちらは、刃傷沙汰にはなりはしないだろうが。
やっぱり、身重の姉の事とか考えると、そこは落ち着いててほしいらしい。
ちなみに、クレメンスの遠い目の真の理由にはさっぱり気づいていない]
さて…何を思いこのような状況にしたのかはさっぱり分からぬ。
閉じ込めて尚奪う算段があったのやも知れぬしのぅ。
[ティルの疑問に答えつつ、軽く肩を竦めた。
おろつくダーヴィッドに小さく嘆息を漏らしつつ、訊ねられることには顎鬚を撫でながら]
ふむ、結界からは辿りにくいとな。
個から結界からの干渉を読み解く方が良いと。
…誰から、と言われてものぅ。
儂とてさっぱり目星はついておらん。
その可能性があると思える者を調べるのが良いじゃろうが…。
[縋る目に流石に困り顔]
おー、孝行な教え子もいたもんだな。
見せて見せて。かーっくいー。
[ザムエルの静止は入ったろうか。
だがその前に、腕につけていた、サファイアとアメジストのそれに、触れた。
いつもの軽いへらりとした笑みを浮かべたまま。
だがその笑みの下、思い出すのは昨日の飴を握っていた爺の左手。
あの時は確かに"これはなかった”
ダーヴィットを始めとした、竜皇殿で久しぶりに会った竜らの可能性は無くはない。だが。
その事実に気づいた事はおくびにも出さない。
何時もの軽薄な笑みに様々なものを隠したまま、ザムエルが止めるまで『綺麗な黒い腕輪』に触れ観察しているだろう。]
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