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…うん、わかった。
[心竜の言葉に一度青年の姿をした相手を見上げ、一寸の沈黙の後仔は一つ頷いた。
先程は云う事を聞かずにして此の始末。素直に訊く様はその所為かは定かでは無いが――反省の色が伺えようか。
しかしながら後にきつく言い聞かせなければならぬ。闇竜殿を始め、皆様方に迷惑を掛けたに他ならぬ故。]
…ほんとうに、アーベル、だいじょうぶ?
[さり気無く身体をずらしたのは見て取れたが、四方や仔が気付く様子は見られない。
尤も、気付いた所で恐らくその意図は計り知れまいが。
心竜殿には、心底感謝の念が耐えぬ。
と、掛けられる声に仔と揃い振り向くと、氷竜殿の姿が見て取れた。
ゆるりと仔の腕から頭をもたげ、一礼を返す。]
「氷竜殿、…いえ、お騒がせして申し訳有りませぬ。
御恥かしながら、仔が混沌の欠片に触れてしまい――。
目付け役とは名ばかり、…とんだ失態を。」
お見事です。
虚無の気配も完全に消えたようですね。
[オトフリートへと声を返すのに少し時間が掛かったのは、一度に複数の力が動くのを見て驚いていたからか]
お疲れ様です。
お怪我の方は大丈夫ですか?
今なら血止め程度は出来るかと思いますが。
[左手に滲む朱はそのままに尋ねた]
虚竜王…あぁ。
不機嫌は…時間が経てば経つほど…起こりそうですね。
…え、戦闘?それは…参らねばならないの、では?!
[ばっと体を東殿の方へと向ける。
続いた言葉には、眼鏡の奥の瞳に少しだけ笑みを浮かべた。]
線引きが曖昧な物は、性に合わないのです。
―東殿・回廊―
先刻の、ティルとミリィが退治していたあれ、ですか。
[心竜の忠告を聞いて、本当に間も無く。
時空の力の渦が弾け、大きな穴が穿たれるのが、見えた]
……なんとも、派手ね。
うむ、時間はあまりないのぅ。
[ケリをつけるとの言葉には同意の頷き。続く言葉を耳にし、ふむ、と声を漏らす]
母君譲りのもの、か…。
[内容を聞きしばし考え込む。この子ならば、信用出来るだろうか。否、教え子であるあの二人ともう一人の孫的存在も信ずるに値する。
次にティルに向けた顔は至極真面目なもの]
……ティルや。
もし、儂が誰かと敵対したその時は。
そやつは「揺らすもの」に干渉された者と思え。
おそらく、確率は高い。
[告げた直後、袖から微かに覗いた黒き腕輪を右手で握った]
―― 東殿・私室 ――
[混沌のカケラから産まれたモンスターもどきが無事に討伐されたのを確認して、ほっと息をつく]
さすがに凄いや、みんな。
ユル…そこをはなれ…いや、待って。
[近付く焔の気配に目を眇めると]
あん、の馬鹿…!
[ぼそり悪態]
[同じく片づいたもう一体。
壁の被害は甚大。]
……。
あ、大丈夫ですよ。
あなたも、血を流していますし
[エルザの申し出に、断りの言葉を。]
これくらいならば、包帯でも巻けば大して問題はありません。
無理はなさらないで下さい。ね?
[代わりに浴室を借りようかと、その方向へ目をやりかけ、
流水の姿に目をそらしたのは仕方のない話**]
―東殿・回廊―
[アーベルを心配そうに見つめる翠樹の仔の姿を見ながら。
黄蛇に経緯を聞くと、ほぅと安心したような声で]
過ぎたことを言っても仕方ありません。
それに、もっと他の成竜たちも気を付けなければいけなかったんですから。
[そう呟く。己を責める黄蛇へ、ゆるりと首を振るった]
それよりも、大事に至らなくて何よりでした。
リーチェも、ナギさんも……アーベルも、怪我は無いですか?
[少しだけ、翠樹の仔の傍に歩み寄り、屈んで皆へと尋ねる]
[ 一瞬、波動に足が止まり、再び動く。]
とどめの一撃、といったところのようです。
それに、エミーリェ殿は昨日のものでお疲れでは?
私とて争いは得手ではありませんから。
[ 顔は向けぬが、表情は普段と変わりない。次第に、東殿が近くなる。]
性、ですか。
各々の属性ゆえにその性を持つのか、
性ゆえにそれに属するのか、どちらなのでしょうね。
うん、でないと色々と困るし。
[何が困るか、は言わずに、また尻尾をゆらり]
……うん。
ねーさん、なんか……ヘンだったけどね、話してくれた時。
[長きを生きる大地竜であれば、もしかしたら、噂に聞き及んでいるかも知れない。
200と50年前、唐突に『消えた』疾風の竜がいた事は。
そして、それが嵐竜王妃とその弟の母で会った事も。
それを知らぬは、ただ、若き疾風竜のみで]
……て、え?
なにそれ……どーゆーこと?
[常と違う雰囲気をまとって、告げられた言葉。
青の瞳は険しさを帯びつつ、見慣れぬ腕輪をちらりと見て]
そうそう。
そう言えば―――。
[くるり振り返って、こちらと同じく戦闘を終わらせたオトフリートとエルザを眺める]
―――良い匂いはなっているじゃなぁい?
そのままのほうが魅力的だし、興奮もするんだけど……私が呼び込んできた過失もあるし、癒しましょうかしらぁ?
生命ほどではないにしろ、私にも多少は癒しの力が使えますからねぃ?
[それよりも先に、体を隠せと小一時間(略)]
―― 東殿・回廊 ――
[残念そうな様子の焔竜の頭上に、どこからか機械竜が飛んで来て、通りすがりに焔色の髪を数本、メタルの爪の先に引っ掛けて毟って行ったとか]
まぁ、被害がたいしたこと…
この程度で済んで良かったな、うん。
[混沌の欠片の魔物の被害より、オーバーキルの二次災害の方がでかいとかいう事実からは目を逸らそうとしたよ、うん。]
これは、まあ。
…わざとですから。
[断られれば強引にするわけにもいかず。
右手で左手甲に触れると、小さく血止めのための術を紡いだ。
覆いを破り捨てた以上、血の流れが止まればそこに刻印の痕があるのが一目で分かることだろう。竜卿の外に出たことのある者ならば、その意味までもが]
無理というほどのことはしていない、と思います。
状況からして、必要だと判断致しました。
オトフリート様こそ、あまりご無理をなさいませんように。
[そしてオトフリートの見ている方向を改めて見て。
色々な意味で頭が痛くなり、蟀谷を押さえた]
―東殿/回廊―
[爆発の少し前、かけられた翠樹の仔竜の幼げな心配の心に青年は穏やかに微笑んだ]
いい仔ですね。
……引き際は心得てますから、大丈夫。
[そう告げて間もなく欠片達は退治され、大穴を見ながら氷破竜の言葉に同意に頷きを返した。
視線はそのまま血の匂い漂う月闇の竜達の方を向き、心配そうな色が過ぎる]
………痛み止めくらいなら出来ますが。
[言いながら黒に近い紺の詰襟の長衣を脱ぎ、流水流の後ろからその肩にかけようと手を伸ばした]
見せるのは大事な時に限る方が魅力的ですよ。
私の方は大丈夫です。
オトフリート様にはお願いできるならと思いますが。
…その前に何よりも。
何か着てきてください…外からも見えてしまいますから。
[硬直せずに済んだのは、二度目だったからだろうか。
必死に目を逸らしながら、ナターリエに答えた]
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