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[エーファを寝台へと横たわらせると、背後から声が聞こえた]
……誰でしょうか?
[振り向き、扉の影から顔をのぞかせているウェンデルの姿を見つけると、笑みを浮かべて口を開いた]
ああ……ウェンデル坊や。
どうしたのですか?
何かご用事でも?
[ライヒアルトとエーリッヒのギュンター評に大きな溜息が漏れた]
嫌な保証だ。
で、結局俺らは容疑者としてここに拘留される、と。
人狼なんて正気か?
口伝だか何だか知らないが、眉唾物の話だろう。
仮に本当に人狼が居たとして、俺らにどうしろってんだ。
身に覚えのねぇ方にしてみりゃ良い迷惑だぜ。
[どかりとソファーに腰掛けると、そのまま身体を背凭れに預け]
[また大きな溜息を漏らした]
ん、ああ。
さっき少し寝たみたいなんだがまた起き出してな。
何かぼけーっとしてたなぁ。
「始まる」とかなんとか呟いてたみたいだけど、良く分らん。
こっちが騒がしくなったから上は婆ちゃんに任せて来た。
[マテウスの問いにソファーに腰掛けたまま彼を見上げて答えた]
[落ち着いてくる、というアーベルの背に軽く、視線を向け。
吐き捨てる家主の様子に、肩を竦める]
……何処も同じ。
信心と、使命感に囚われたなら、こんなもの。
[淡々と言って、団長を見やる。
こちらの厳しい評価にも、動じた様子などはなく。
また、やれやれ、と息を吐いた]
―厨房―
その方がいいか…って。
この。
エーリッヒとは違うからな。
[微か笑み、ゲルダの額を小突いて。
そんな会話だけでは静けさはまだ埋まらない。
ゲルダの声に耳を傾けた後、暫し沈黙した後。]
御伽噺だと言いたい。
…ただ、気になるのは。
[あまりいい話じゃないがと前置きしてから。
視線は、ゲルダではなく、鍋の方を向く。]
いつもの通りに、死体検分に同伴したんだが。
その時の死体につけられていた傷。
あれは人がつけたものじゃない。獣がつけた傷だった。
だから、人が犯人、とは思ってない。
じゃぁ誰が?…という話に戻るわけだが。
…その辺をうろついている、飢えた獣だといいな、といった所。
[言い終わると、湯からあたたかな湯気が立ち上がっていった。]
正気なんだろ、こうやって、拘束と監視をする、って言うんだから。
[ゼルギウスの言葉に、軽く、肩を竦める]
仮に、いたとして、か。
……見つけ出してどうにかしろ、と。
そんな所だろうな。
[どうにか、の部分が何を示すかは、言わずもがな、という所だろう。
あえてぼかしたのは、脅える少女の姿が見えたから]
[わたしの震えは、少しして止まった]
[回りの男の人たちは、団長さんのやり方に不平をいってる。]
[けど、みんなそこまで深刻そうじゃない。]
何も起こらなければ…いいんですよね。
[わたしは自分にも言い聞かせる。何も起こるわけない、何も起こるわけない。]
ああ、いえ。
何事かあったのかと思いまして。
階下の雰囲気も……
[先程とは違うのはわかったが、何が違うかは明確にはわからず。
己の胸にも、わだかまる違和感]
それより、その子は?
まぁ、元気そうならいいんだが。
[ゼルギウスの説明を聞きながら]
はじまる?
何がはじまるっていうんだ?
[寝言かなにかなのだろうが]
まぁ、倒れてたことと何か関係あるのかね?
[考えてもわかることではないので一人でそういってまとめた]
あーやだやだ。
頭のお固い人って。
[ライヒアルトの言葉に小さく頭を振った]
[そこに当人が居ようが声は潜めない]
見つけ出してどうにかしろ、ねぇ…。
その見つけ出す術とやらがあれば良いけど。
無いんだったら手当たり次第か?
冗談じゃない。
[彼が何を言いたいのかは理解出来た]
[理解出来たからこそ、嫌悪の色を浮かべる]
此方のほうは、この子が熱を出して寝込んでしまったので、私とゼルギウス君とで、一緒に見ていた、ということですね。
ああ。今は落ちついているので大丈夫ですよ。
階下のほうは、さすがに、私には分かりませんねえ。
きっと、今回の状況に対する説明でもなされているのではないでしょうか?
[のんびりとした口調でウェンデルへと語りかける]
他人任せな話だな。
[ライヒアルトのどうにかという言葉に呟き]
容疑者ってだけで子供にも下手すればそんなことさせるつもりなのかと思うとな。
[アーベルが出てゆくのを見送って。
ゼルギウスの声にゆるく首を振る]
大きな街と違って、そういうものが「生きている」場所だからね。
迷惑以外の何物でもないけれど。
…始まる?
[続いた言葉に小首を傾げて。
だがゼルギウス自身も分からないというのに追求はせず。
ヨハナがついているのなら、まあ大丈夫かと判断する]
俺に聞くなよ。
俺だって分かんねぇんだから。
[「始まる」の意味を訊ねて来るマテウスに肩を竦めながら返し]
何かのっぴきならない事情がありそうってのは確かかなぁ。
あの薬拒む様子からも。
見つけ出して、ねえ。
[同居人がぼかした理由は少女だろう。
手当たり次第、というゼルギウスの言葉に眉が寄る。
確かに率先して聞かせたい話ではない]
そう、何も起こらなければいい。
…ベアトリーチェ、そろそろ休むかい?
二階に部屋があって使えるようになっているんだ。
[連れ出そうとするのが半分、療養中だという少女の身体を気にするのが半分]
そうでしたか。
それにしても、……見ない子ですね。
この子も、容疑者、なんでしょうか。
[眉間に皺が刻まれる]
ああ、説明……それならば、聞いて来なければなりませんね。
[胸元に行きかけた手を引き下ろす]
ヨハナさんは、ここに居られますか?
何か必要なものがあれば、持ってきますが。
[交わされる、『始まる』と言う言葉。
それが意味するものは何か。
自身の知る事と合致するならば、それは最悪以外の何者でもないのだけれど]
……術、か。
『伝承』を辿るなら、ないとは言い切れないだろう……な。
[ゼルギウスの言葉に、翠が微かに翳る。
胸元に伸びた手が、何かを掴むような仕種をして、落ちた]
……子供だろうと、関わりない、というのは、ここまでで立証されているだろ。
[マテウスの呟きには、ため息を交えてこう呟く]
「生きてる」か。
俺のところにもそう言うのあったりしたのかなぁ。
[それも全ては白い靄の奥]
[エーリッヒの言葉は理解出来るが、現状ではそれこそ迷惑以外の何物でも無く]
[やはり呆れたように頭を振るだけだった]
っと、ベアタ、体調は大丈夫か?
その様子だと発作とかは起きてないみたいだが。
変な話聞いた後だ、具合悪くなったら直ぐ言えよ。
[エーファのことに安堵の息を漏らすベアトリーチェを見止め]
[病状は精神的な部分からも変化しやすいためにそう声をかける]
[小突かれた額に手を当てる仕種は、歳よりも幼い。
翠玉は笑みの形に似て、少しだけ細まった。
前置きの後に話された内容に、また表情は乏しいものに戻ったが]
獣の傷…。
人狼かもしれないから、だから子供たちやヨハナ様も呼ばれたのね。
[薄い口唇に指先を当て、考え込む]
うん。きっと…、数日したら、獣の仕業だって話しになるわよね。
それまでは、学校の合宿だとでも思って楽しむ?
[お湯をポットとカップに注ぎ、器を温めて。
あらためてポットに茶葉とお湯を]
ナターリエ。お砂糖とミルク運んでもらっていい?
[ベアトリーチェと呼ばれた少女に視線を向けて]
そういえば自己紹介がまだだったな。
俺はマテウス=ボーマン。
こんな出会い方でなんだが、よろしくな。
[笑いかけてからゼルギウスに視線を移し]
いやまぁ、俺もゼルギウスに聞いて答えが出るとは思ってないわけだど、ついな。
[エーフィに関しては同意して頷き]
複雑な事情ってやつか。
たしかにそうだな、ヨハナさんの反応から見るとこの村の子じゃないんだろう?
なのにこんな冬の時期に…。
わけありそうだな。
[はっとわたしは我にかえった。]
[薬師さんと、エーリッヒさんが心配している。]
え?
[胸に異常は感じなかった。けれど、なんだか色々ありすぎて]
あ、なんだか、疲れたかなぁ。
休むことにします。
ありがとう、エーリッヒさん。
[その手を取り、案内してもらう。]
[ウェンデルの言葉には、さすがに少々眉をひそめた]
……此処にいる、ということは集められた人の一人、ということでしょうね。
ああ。
水も毛布ももらいましたし、今のところはだいじょ……?
[言って。
階下に降りようとしたウェンデルの手が、エーファと同様に胸元にいきかけたのが目に留まった]
……胸をどうかなさったのですか?
は、『伝承』を辿れば、ね。
何とも不確かな情報だこと。
[ライヒアルトに向けたのは呆れを含んだ声]
その伝承すら事実か怪しいってのに。
その手のことは全く分からんから、俺には何も出来ることはなさそうだ。
何事もないことを祈っとくよ。
あ、わたし、ベアトリーチェ・エアハルトといいます。
[すこし、マテウスという男の人の顔を見つめてみる。]
えと、よろしく…。
あ。カレー…。
[翠玉の視線は宙を滑って、一点で留まる]
紅茶の香りの邪魔になったら嫌だし。
また後でかな。
[少し後ろ髪を引かれる様子]
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