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あ。
[ころりと転げた小鳥に、子どもはびっくりしたような声を上げました。]
……どうして、知ってるの?
[それから、名前を呼ばれてきょとん、とします。
螢火はまた、頷くみたいにきらきらきら。]
[小鳥は地面で羽づくろいをした後、今度は旅人の肩に止まりました。]
覚えていないのか。
[旅人は屈み込んで、子どもとおなじ目線になります。]
生きてる時に、教えてもらったんだ。
[小鳥が旅人の肩に止まる様子に、子どもはほっとしました。
けれど、忘れた事、それそのものを忘れている子どもは、旅人の言葉に不思議そうに瞬きます。]
いきてる時?
いまは、いきていないの?
おばあさまとおんなじなの?
そう。
おんなじだ。
[旅人はひとつうなずきます。
黒い目で、子どもの顔を見つめています。]
多分、ドロテア殿も。
[それから続いたのは、さっきよりもいくらか小さい声でした。]
おんなじ。
じゃあ、どうして……。
[どうして、お話しできるの、と。
問いかけようとした言葉は、途切れました。]
……わたし、も?
[ちいさな声で言われた言葉。
おおきな瞳がきょとり、と瞬きます。
ふるふる。
それから、子どもは首を左右に振りました。
痛いことなんてないはずなのに、頭が痛くなったみたいでした。
螢火はふわふわ、ふわふわ。
心配そうに飛び回ります。]
[ふんわりふわふわ、羊雲。羊飼いは空の上。いろんなことをふわふわと漂いながら見ていました]
ああ、たいへんだ。ベリエスさんも人狼だ!
[ごっくんとドロテアが飲み込まれた時には、それも思い出したのですが、やはり誰にも聞こえぬ声は、なんだかうつろに響きました]
そうだ。
アルベリヒ殿も。
[旅人はひとつうなずいて、羊雲のような羊飼いが浮かぶのを見上げました。]
それからきっと、牧師殿もな。
[今は辺りを見回しても、メルセデスの姿は見つけられませんでしたけれど。]
[旅人につられるように、子どもは上を見ます。]
あるべりひ。
[ふわふわ浮かぶ羊飼い。その名前はよく知っている気がしました。]
……ぼくし……さま?
[ちいさく呟いたら、急にどこかがずきり、としました。
きゅ、ときつく眉が寄ります。]
[村の様子は、ほんの4日前とはまったく違うものでした。
誰も彼もが、相手を人狼ではないかと疑っているのです。
その中でただ一匹本物の狼は、満足そうに頷きます]
そうじゃ、そうじゃ。誰も信用してはならぬのじゃ。
人を喰うやつ、人を裁くやつ。
果たしてどちらの罪が重い?
[狼を退治したら、物語はめでたしめでたしなのでしょうか?
そうでない事を、おじいさんのふりをした狼は知っています]
狼は本当にいなくなったのか?
狼はもう二度と来ないのか?
[ひひひ、ひひひ。狼はひっそりと笑います。それはそれは楽しそうに]
ベリエス殿が、人狼だって。
[見上げた時にアルベリヒの声が聞こえて、旅人は小さくつぶやきました。
首を振って、もう一度子どもを見ます。]
そうだ。
アナ殿が、牧師殿を。
[子どもが表情を変えるのをじっと見つめながら、旅人は途中でことばを止めます。]
[途中で止まった言葉は、どれだけ聞こえていたのでしょうか。
なんだか物凄くいたくて、子どもはふるふる、ふるふると首を振ります。
螢火は心配そうに周りをくるくる、くるくる。]
……くろいの、きらい。
だから、からす、きらい。
[やがて、こぼれたのはちいさな声。]
黒いお花は……かなしいから。
だから、きらい……なの、に。
なのに、さかせた、の。
みたく、なかったのに。
−−宿−−
[弔いを済ませたゼルマはベリエスがまだ居るのではないかと用心深く裏口からそっと宿屋に入ります。
宿にベリエスが居ないことを確かめると窓を閉め、扉に閂をおろします。]
昨夜はあの人と一緒だったのに、よく食われなかったものだわ。
[くるくる回る蛍とおなじように、小鳥もぱたぱた、子どもの肩に止まって、心配そうにちぃと鳴くのでした。]
かなしい。
どうして、かなしいんだ。
[子どものことばを繰り返して、旅人はたずねます。
真っ黒になった花のことは、小鳥だった時に見ています。]
――宿の外――
[おじいさんは、おばあさんの顔を見にいく事に決めました。
扉に閂が掛かっているのに気付くと、どんどんと扉を叩きます]
おうい、ゼルマや。開けておくれ。
またお前さんの飯を食べに来たんじゃあ。
[ご飯なんて、本当はいらないのですけれど]
[子どもは肩にとまった小鳥を見ます。
それから、螢火を見ます。
最後に、旅人を見ました。]
黒いお花が咲くと、いのちが消えるの。
消えてしまうの、消してしまうの。
だから、かなしいの……。
[でも、と。
子どもは一度、言葉をきりました。]
……それでも、探さないといけないのが、哀しくて。
……見つけた時に、苦しかった……の。
[声の調子が少しずつ、変わってきているようでした。
子どもの声から、大人のそれへと。]
[小鳥はぴぃと鳴きました。
旅人はなんにもいわずに、こくり、こくりとうなずきます。
子供の声が変わっていくようなのに気付くと、ゆっくりと立ち上がりました。]
それは、そのひとが狼だからか。
[ことばが途切れたころに、旅人は口を開きます。]
[扉を叩く音にゼルマは我に返りました。
ベリエスの声がしています。
まだ日が暮れるには少し時間があります。
心を決めてゼルマは扉を開けることにしました。]
はいはい、ベリエス。何かと物騒だから、鍵を掛けたのよ。ちょっと待ってて、今開けるから。
[何食わぬ顔で扉を開けて中に老人を請じ入れるのでした。]
――宿――
おお、ありがたいのう。
[おじいさんはゼルマの考えなど知らないで、宿の中へと入ります]
ばあさんでも、やっぱり人狼は怖いんじゃなぁ。
[鍵の掛かっていた扉を振りかえって、おじいさんは言いました]
ああごめんなさい、こんな時だから、食事の支度は始めたばかりなの。少し待っててくれない?
[ゼルマはベリエスに上等のワインとグラスを出し、食事が出来るまで待ってくれるよう頼みました。]
[その頃、木こりは小屋の寝台で大いびき。
どんどん扉を叩く音に邪魔されます。]
……おう、どうした。
ドロテアさんが?
わかった。
[鳴らなかった朝の鐘に、村人が見つけたのでしょう。
黒い森で鳴く鴉を睨み、木こりは棺を運びます。
棺にちょっぴりのドロテアを収め、弔いの鐘が響くのです。]
[立ち上がる旅人を、子どもはじっと見つめます。]
……そうですね。
そうかも、知れません。
[次に、声が上がった時には、そこには子どもの姿はなくて。]
……信じたかったから、余計に、どうしていいか、わかりませんでした。
[『神の贈り物』の名を持つ娘が、困ったように笑っていました。]
おお、わかったわい。
[おじいさんは高級そうなワインが出て来たことに上機嫌です]
気が利くのう。
[そして、ワインをグラスに注ぎ飲み始めます]
[ベリエスに待っていてくれるよう頼むと、ゼルマは裏口からそうっと抜け出して教会に急ぎました。
もしベリエスが狼なら、一対一では絶対に勝てません。
とりあえず離れたかったのです。]
どうしよう。でも、多分次はあたしだ。
[ゼルマは精一杯足を速めました。]
〔牧場に戻って、寝て起きて。
変わらず月は落ちて日は昇り、またそれの繰り返し。
人狼がひとりいなくなっても、羊たちはなんだか落ち着きない。〕
アリーにベリー、シリーにデリー、イリー、それからフリー。
……やっぱり、面倒を見るのはとってもたいへん。
〔見よう見まねでは上手くいくはずもなくて、アナは困り顔。〕
いなくなった人の代わりは、そう簡単には出来ないね。
ううん。
誰も、まったく同じ代わりにはなれないんだわ。
〔独り言みたいに、誰かに話しかけるみたいに言って、アナは丘の上で、鐘の音を聞く。どうにか羊たちを小屋へ戻して、普段通りの服を着たアナは、灯りの消えたランタンを手にして、村へと向かっていった。〕
[おじいさんは、ゼルマに言われた通りに宿で待っているようです。
ゼルマがそこを抜け出したことには気付いていません。
ワインをがぶがぶ飲んで、良い気持ちになっています]
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