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[身を起こしながら]
小百合!?
[構えがほんの少し緩む。]
アンタ…その姿はどうしたんだ。アンタは…桜の魔物とは違った筈だろう?
榛姉、ごめんね。
[反射的に涼を追いかけて飛び出していたことに対して謝る。
榛名の声が聞こえた辺りに顔を向けて]
探偵さんも?
もしかして探しに出ちゃったとか…?
[ここに居るか居ないのかも確信はなく]
――っ、
はるなちゃん、玲ちゃんを、お願い。
目、見えないって
[返事も聞かないで、玲ちゃんの手を離す。向かう先は、――わからない。
でも、探さないと。]
……後悔とか、しはじめたら、きり、ねーよ。
[ぼそり、呟いて。
目を閉じさせる様子に、緩慢な瞬きを一つ]
……俺、いねー方がいいか?
邪魔なら、隣辺りの空いてるとこにいる……。
[少し、一人で落ち着きたいと。
その意は伝わるか]
[玲がこちらを向いていることから、まだ見えていないことには気付かないだろうか]
ううん…無事、だったから、それで、良いよ。
[落ち着いた様子で小さく笑んだ]
探しに…?
二階に、居たりは、しないの、かな。
外へ、出たか、どうかまで、は、私、には、分からない、や。
涼ちゃん!
一人じゃ…!
[慌てて声を掛ける。だが手を離されてしまえば今は追いかけることもできなくて]
…言いつけ、守らなかったから。
[後悔の念が浮かんできた。唇を噛んだ]
え、え?
[目が見えない。まずそのことに驚き。そして外に向かおうとする涼に瞳を見開く]
外は、危ない、んじゃ…!
[反応は数瞬遅れ。しかしその僅かな時間でも、涼の姿を見失うには十分だったか]
そうですね…
[後悔について、頷くが、自分でもどんな表情をしているかわからないが、申し出には首を落とすようにして頷いて]
そうしてください。私
今は、自分が制御できるか。わかりませんので
[目を閉ざす。どちらも己には縁をもった存在で、今は顔も見れない。ただ手は裕樹の手を捜すように動かして]
[声も掛けずに伸ばした腕は、何時もの通りその核を狙う。
抵抗はあっただろうか。
それとも、気づきすらしなかっただろうか。
何れにせよ結末は同じ。]
[赤い色が流れた。]
あら、これが本当の私よ。さっちゃんは知らなかったっけ?
[勿論知らないことは知っていたわけだが。
驚く様にくすくすと笑いながら。]
人狼の血脈を保ち続けた、朧の一族の生き残り。
おそらく未来永劫、本当の意味で死ぬ事も出来ない大罪人。
[一瞬目を伏せ、大罪人と告げたその口元には、黒狼が浮かべたような暗い笑みを浮かべる。
が、次の瞬間は元に戻し。]
そうそう、桜とは全然関係ないわー。
むしろ桜の気配は気持ち悪かったわ。同属嫌悪ってやつかしら?
ああ、同属って言っても、同じ狼じゃないわけだけど。
[さも何でもないことのようにさらりと告げた。]
[心配する声も聞こえたけど、走る。
向かう先はわからない。もしかしたら、死体を見たのかもしれないと、商店街へ。
走って、見つける体。
琉璃の体。
小百合の体。
立ち止まって、場所を覚える。
此処は、どこだろうって。
でも、また走り出しても、見つからず――]
だから私より年上になったら止めてあげるってば。
[無理です。
言いながら晴美にもにっこりと笑って。]
前者が正解ね。
妖怪なんてやーねー、そんな気味の悪いものじゃないわ。
[傍から見ればどっこいだ。]
結局、今は全員幽霊なんじゃないか、と。
[ぽり、と頬を掻きつつ]
海外の幽霊は実体があるらしいが…、さすがは純国内産。
幽霊同士しか触れられない、とな。
…うん…。
[手を引かれ、椅子の一つに腰掛ける]
気が付いたら見えなくなっていた、の。
涼ちゃんに、言われて。
多分…コエを聞いてしまったから。
聞いてはいけないと、言われてたのに。
揺れてはいけない、と。言われてたのに。
[ゾクリとした。濡れた寒さからか、他の何かからか。
けれど一番怖いのは]
もう、視れない、かもしれない。
まだ、終わっていないのに…!
[赤い色は、水滴に混ざり。
花弁のように、身体から剥がれ落ち。
桜の樹へと還って行く。
――ふつり、ふつり。
花は色づき、また増える。]
ん、わかった。
[蓮実の返事に、ゆっくりと立ち上がる。
桜を刻んだ黒檀の短刀は、今だ右手に。
その時になってようやく、手の強張りに気づいた]
……っと……おかしく捻ったか……?
[ぽつりと呟き、部屋を出る。
蓮実の様子は見なかった。
二人の間に、どんな縁があったか、自分は知らないから。
何も言うべきではない、と思って。
ふらつく足取りで廊下に出て、空いている部屋に転がり込む。
そこでようやく、短刀を離して。刃を拭い、再び内ポケットの鞘へと戻す]
……後悔は、しねぇ……絶対に。
[ベッドの上に座り、壁にもたれるようにしつつ、呟く。
薄暗い室内に、ぼんやりと紫煙が*広がった*]
はい
[足音だけで去っていくのがわかるが]
史人。
私ら昔なじみの中で最年長はあなただ。しっかりしろ
私も少ししたら戻ります
[その声は届いたかどうか。だが別にどちらでも構わないだろう。己のように後悔しないのならば]
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