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大丈夫。痛いのは、治るよ。
治るから、痛いんだって。
[暗紅色の瞳の獣には、優しくそう返した。
躊躇いには気付かずに――ほんの僅か、疑問符の欠片を浮かべる。]
うん。なんだか、違う。
あっちはもっと、硬かったから。
[青年には頷いてみせる。]
石? 石って、何?
[ユリアンの傍らにただ佇む。これ以上傷を癒す術はもたず、出来る事は共に居る事だけだった。]
ひどいよ…酷い…
ひどいよ………
エウリノは何もしてなかったのに、ロスト様だって…。
たくさんたくさん、我慢してたのに…。
[二人が己の血に抗っていたのは、自分が一番良く知っている。そしてこの事が起こるまで、村人に手を出さなかった事も知った。
だから、村人の仕打ちが許せなかった。
たとえもう、沢山の血をながしてしまったとしても。]
勝手に囲って、追い立てて、追い詰められて牙を剥くのも駄目なの…?
…酷い、よ。
[涙は止まらなかった。]
[それでも、主は敵を打つという。
それは獣の本能が為せる業か。]
…全ては主の御心のままに…。
[泣きながら、僕は静かに傍らに*拝した。*]
プレシャス・オパール、だったかな。
丸石のピアス。
何処かで失くしたらしい、おかげで見えやしない。
[溜息を吐きだした]
『…ありがとう』
[優しい声には困惑を乗せたまま返し。
青年の方に意識がむけば、少しずつ目立たぬように距離を離した]
……ピアス。
見えない? 目が見えてないの?
[ちらちら、と青年の前で手を振ってみて]
……ピアス。
[考え込む。]
そう、あれ貴方のだったの?
思わず拾っちゃったけど。
[エプロンのポケットに手を突っ込み、青石のピアスを取り出す。
その姿は一瞬だけ、生前のユーディットそのままになり。]
はい。大切にしないと、また失くしてもしらないから。
[本当、しょうがないんだから、という表情でピアスをアーベルに渡す。]
[受け取った瞬間、片側の眼に微か、相手が映る。
知っている女性の姿、それから、知らない少女の姿]
――……………、
[無言の侭に、左の耳にピアスを付けた。
夜明けの後の朝焼けのように、
赤から青へと、左の瞳の色が移り変わる。
顔の半分を覆うように手を当て、外す]
馬鹿か。
失くして惜しいものでもないだろうに。
[軽く、頭の上に手を置いた。
恐れられるかとの思考も、掠めたけれど]
[カウンターより離れ、テーブル席の一つまで近づいた。
隣のテーブルにはブリジット。だが語られる言葉は未だに理解をするには足りないものが多すぎた]
『………』
[人の姿に戻りたい、と思うことは思うのだが。
影響をモロに被った身では全身がだるく、そも己の意思そのもので変化をこなしたことがないのでは、どうしようもなかった]
[手が当てられる前に、瞳の色の移り変わる様に気付いて]
わあ。すごい。
[感嘆の声を漏らす。
頭に手を置かれれば、そこに自分の手を重ねた。
先ほど見えた女性よりも、やや幼さの残る微笑みを浮かべる。]
失くしたら、戻ってこないんだもの。
とっても大切なものばっかり。
[鎖が、じゃら、と音を立てる。]
[引く前に、重ねられた手。
別段、跳ね除ける事もせずに、眼を細めた。
視界は戻り切ってはいないものの、闇は幾分、晴れた]
……だから、お前は勘違いさせる事ばかり言う。
大切じゃなくていい。
本当、
[馬鹿な奴、 呟きは、小さく。
動かした手は、紅い首輪へと触れる
勘違いをしてるのは。そっち。
[悪戯っぽく返す。
姿形は少女だったが、その言い様は――]
[首輪に触れられれば、無意識にだろうか。目を閉じた。]
だから。
[どちらなのか。
問うても、仕方無いのだろうと悟りながら]
……お前の想うような人間じゃない。
[眼を伏せて、鍵穴に、爪を立てた。
金属を掻く感触が、何処か痛い]
[離れた場所から影の世界の二人を見て。
ようやく慣れたか、赤の世界から意識を切り離して。
僅か穏やかな表情になると、再び顔を伏せて*目を閉じた*]
じゃあ、私は誰を想えばいいの。
[うっすらと目を開けて、透明な声で問う。]
ねえ。探偵さん。
[大丈夫? と、小さく声をかけて。]
……俺が、其処まで知るか。
自由になってから考えるといい。
[眼差しから逃れるように、動く]
探偵じゃないよ。
単に、己の意志の侭に動いた、
馬鹿な人間――
それ以上でも、以下でもない。
[頸に嵌められた冷たい鉄に、
薄い口唇で軽く触れ、
指先は僅か喉を掠めてから離れた。
*一歩身を引くと共に、姿は揺らいで、失せた*]
そんなの、ずるい。
私、ちゃんと、想いたい人を想ってるのに。
ずっと先の私も、ずっと後の私も。
[言葉を紡いでいるのは、どちらなのか。]
けれど、そうやって、謎を解いていく。
それが本質なら、その人は――
貴方は、私が憧れた、探偵。
[触れられた首輪は、戒めの冷たさの上に温もりを残し。
触れるか触れないかを掠めた指先、手を伸ばそうとすれば――]
……あ。
[消えた青年に、少女は取り残される。
がらんとした闇の中。
ぺたりと座り込んで、*漆黒の中に溶け消えた。*]
─回想
突如目の前で始まったやり取りについていけずオロオロとしていただけの自分。
恐らくはユーディットがイレーネをハメようとしているのは判ったのだが。
その餌に使った存在がユリアン。
頭のどこかで警鐘が鳴る。
ユーディットがイレーネに使ったブラフの前提が。
アーベルが自分を『視て』人と認定した事。
そのブラフを前提に道を辿った結果として現れたのが「ユリアンが人狼」という架空の餌。
だが。
事実として自分は人間なのだ。
そこは動かない。
ならば、そうであるならば。
次の可能性。
イレーネがユーディットの言うとおり、偽であるとして。彼女はティルを視たと言った。ノーラを視たと言った。エーリッヒを視たと言った。
ティルは…あの様子からして恐らく人であろう。喰われたノーラは当然人だ。エーリッヒはどうか?ここはまだ判らない。判らないが。もしエーリッヒが狼ならばここでのユーディットの行動に対して抑止が無いのは何故か。もしエーリッヒが人ならば、彼女は偽でありながら未だ嘘をつかず村に「見分ける者」が二人居たのと全く同じ状態だったのだとしたら。
[僕は主の傍らに、静かに拝して目覚めを待つ。
次に目が覚めたときに、何がどう変わっていくのか。
内に渦巻くものは、大切な主を失ってしまうかもしれない事への恐怖しかない。]
我等は、盾であり、欺き、殺し、生かすもの…。
[ぽつりと口に呟くのは、口伝の一説。
だが盾になりきれなかった。
脈々と受け継がれてきた一族の血は、主を傷つけさせてしまった自分を激しく攻め立てる。]
ユリアンから告げられた事象。
イレーネが襲われかけた。喰われたのは同じ娼館に居た別の娼婦。イレーネと間違われて襲われた…という。それに対してエーリッヒが突きつけた疑問。
まさしくそれが、人狼がイレーネを疑惑から外す為の準備だったとしたら…。
逆の可能性も勿論ある。
ユーディットが人狼の可能性。
ただ、その場合、今の自分の頭の中で鳴っている警鐘は元より的外れなのだから、それについては問題無い。少なくとも、自分の予想している最悪のシナリオとは違う方向なのだから。
─最悪のシナリオ。
─今、ユーディットが押さえつけたのは。
─餌として罠に使っているつもりの其れは。
─ユリアンこそが正しく人狼なのでは無いか。
凄まじい勢いで頭の中を巡った思考が不意に途切れた。目の前で起こった事柄が引き金として。
飛び交う怒声。鈍い光を放って円を描く刃。
その円を縁取る色は。ああ、あれは血の色だ。
横たわり動かなくなったユーディット。
ティルに襲いかかるユリアンだったモノ。
エーリッヒとユリアンの刹那の対峙。
その全てが自分の座っている席からは魚眼レンズで覗いたドアの向こうの景色のように遠のいていて。
─動く事が出来なかった。
─そうだ、これは御伽話の世界なのだから。
─自分は。ただの人である自分は。
─そこでは傍観者にしかなれないのだから。
─母親の顔が浮かんだ。背で泣くティルの温もりを思い出した。何時だったか、もう随分昔の事のように思える、窓から毀れる月明かりに映ったイレーネの透明な笑みを思い出した。小生意気な口ばかり叩くミリィを思い出した。母を何度も往診してくれたオトフリートを思い出した。村の中で、触れてきた人々の顔が、言葉がフラッシュバックのようにグルグルと回る。
ユーディットが言っていた。
─じゃあ、また今度。
─ティルも一緒に、是非来てください。
─……ちゃんと食べないと元気も出ませんよ?
ああ、そういえば。そんな約束もしたっけか。
─そう。だからこれは。
─御伽噺なんかじゃけして無いのだ。
一連の騒ぎが終わった後も。
椅子に座ったまま動けないでいた。
自警団達が慌しく来て、慌しく去って行った後。
彼はエーリッヒ宅の書斎にふらふらとたどり着き。
固くドアを閉じて、人狼に関する書物を山と積み上げて読み漁り始めた。
─この世界で、自分が立つ位置を決める為に。
─そのために必要な、自分に足りないものを補う為に。
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