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忘れてしまえば悲しまない。
それは…。
[否定をしようとして上手く出来ない]
[もどかしく思いながら口ごもる]
違うと思うのだけれど。
[理由をつけないままそういうのが精一杯だった]
[仕方がないというのには苦笑しながら頷く]
…泣いている?
[ミハエルの名が出るとギクリと身体を強張らせた]
[どこかへと問いかける声を繰り返す]
[ギッと奥歯を噛み締めた]
[薬師の親友の、畑の主に諭されて、口許が笑う>>41。]
うん。
ゼルギウスは、いじわるだが優しい。
でも。
怒るのも厳しいのも、心配しているからだと、
もっと、口と態度に出せばいいのだよ。
[勿体無い。と、とくに皮肉るでもなくそう言って]
……そうだな。…泣く、だけで、すめば──
まだ。こわく、ないのかもしれない。
[ぎゅ、と自分を抑えるように腕を抱いて、震える声を低めて]
─白雪亭─
[ぱたぱたと手を振り、イレーネを見送る。
誰もいない食堂にぽつんと一人座る。]
………………あ、あれ?(ぽたり
[つぅっと頬を一筋の雫が零れ落ちる。一筋が二筋に、そして止め処なくはらはらと零れ落ちる。]
あれ? おかしいな。一人になったら、涙──止まんないや。
はは。緊張の糸、切れちゃったみたい。
[泣き笑いで一人呟いていたが、]
…………やっぱ悲しくて苦しいよ、ウェン……くん。
[締め付けられるような胸の痛みに身体を掻き抱き、一人静かに*泣いていた*。]
[ミハエルの様子に、親友はその頭を撫でていたか、声もかけていたことだろう。
自分は、ミハエルの方を見ながら]
それでミハエルが後悔しないのなら、それもあり。
悲しむことはあっても、後悔はなるべく残さないように。
[できるだけかける声は優しく、気をつけたつもりで、
二の舞を踏むわけにはいかなかったから]
すまない、うまい言葉をかけれず。
…あまり残さなかったから。
私が作ったパンも、すぐに無くなる。
レシピも、ほとんど紙に書いて残してない。
だから、すぐに忘れてもらえると思ってたんだけど。
…きのこの名前だけは予定外。
[そういい、違うと否定するレナーテに、緩く首を振った。]
それでいいから。
[向ける笑みは、儚い。]
[ミハエルの名を聞いて、身体を強張らせるのを瞬いて見ていた。
歯が擦れる音を聞いて、ぽつりと。]
ミハエルが、悲しんでるけど。
何をしてやればいいか、わからない、って。
[誰がそう言った、とは言わずに、そう告げた。]
─道具屋─
……泣かなくて、も、不安。
[心配させないように、という気持ちが裏返しになること。
多分、直接指摘されたのは、初めてで。
一番大切、と繰り返されると、み、と短く声を上げてまた、俯いた]
……ずるいんだ、リィにいは。
そんな風、言われた、ら。
[ぽそぽそと、紡ぐ言葉は辛うじて届く程度のもの]
一番、大事……わかってたのに、わかんないって、言った意味、ないじゃない、かぁ……。
[一番深いところに沈めておいた言葉が浮かび上がってしまったら。
抑えていた色々が、滴と泣き声になって零れるのを、止める術は、見つからなかった**]
レナーテは、
… いのちは、消えることもあるもので、
ボクらが、蜥蜴を口に運ぶように、
刈りとられることで、廻り次に繋がるものであって
悲しみだけを産むわけではないのだと。
狩の、こころを、理解してくれていて
安心だと、言って──くれたのだよ。
[謝るユリアンに、ゆるゆると首を横にふる>>47。]
なのにだ。今のボクときたら、
── どうして、と、聞いてしまいそうなのだ。
[眉を寄せて笑う。ユリアンに向ける翠は、困ったようでも──抑えている様でもあって]
─パン屋─
…独りで、消えちゃったんだね。
さみしくなかった?哀しくは、なかった?
[中は、まだ彼女の痕跡をそのままに残していて。
本当にまだ、ゲルダが居るみたいで。
淡々と語りかけている自分は滑稽だったかも、しれないけど。
じわりと浮かぶ涙は堪えて、小さな声で問いかけた。]
ゲルダにも、あたしみたいなしるしがあったのかな。
[答えが返ってくるわけはなかったけれど。
しばらくその場で、ただ黙って立ち尽くして。]
…ごめんね、邪魔して。
それじゃあたし、帰るよ。…また、ね。
[想いが残るなら、彼女にも届くかもしれないと。
そう思いながら誰もいない店内に手を振って、家路についた。]
[ミハエルを抱きしめようと、伸ばされる手は親友の手か、自分の手だったか]
難しいことはいい。
感情と理屈は違う。
思う気持ちを、レナーテが否定することは、ないはずだ。
[儚い笑みを向け緩く首を振るゲルダに軽く眉を寄せた]
…いのちがひとつ尽きても。
[思い出したのは先日のこと]
[ミハエルの声が蘇る]
言葉は、残る。
そうして、言葉には、心が宿る。
美味しいという言葉にも、心は宿らないだろうか。
[言葉を借りてもやはり上手くは説明出来ず]
[困ったような顔で小さく微笑んだ]
ただ。
そう思うゲルダの心も。
まったく分らないわけではないかもしれない…。
─道具屋─
[繰り返す言葉には、うん、と小さく頷きを返し。短く上げられた声と続く小さく紡がれた言葉をしっかり耳にすると、軽く目を見開いた]
ずるいかな、俺。
俺は想っていることを、伝えたいことをはっきり口にしただけだよ。
この間ユーディットに言ったようにね。
[声には少しからかいが載っていたかも知れない。ようやく泣き出したユーディットに、少し安心したように息を吐いた。少女の背に回していた手で、あやすようにとんとん、と背を叩いてやる。ユーディットが落ち着くまで、その仕草を繰り返すことになるだろう]
[声が震えないようにするのにはかなりの力が要った]
いのちは散るものだ。
だからこれもまた自然の流れの一つだ。
けれど。
悲しませたくはなかった、な…。
[腕が小さく震えるのは止められなかった]
わからない。
わ、か… 、っ
[伸ばされる腕の服を震える手が藁に縋るように掴む。]
訊く、だけ、なら、まだ…いい。
でも、
… でも、今は。
ユリアン。ボクは
[段々と抑えていた感情が溢れるように声が揺れて翠が──涙に滲む。]
責めて──しまいそうだ。
どうして。と、
… 何故、と。
[声に感情が戻る。指先が震えて、どうしようもないように、口許を手で押さえ]
恨み、たくはないし、
…… 憎みたくもない、と思う
それ、は。それは。
…レナーテが、後に、伝え、ようとした、
こころを、捻じ、曲げるんだ。
[悲しみ以外を生むわけではない、と。そう、彼が言った言葉が、恨みや、憎しみを指すわけではきっとないから]
うん…。
レナーテの言ってる事は、わかる、よ。
[眉を寄せこちらを見る人を、困ったように見上げて。]
でも言葉を残して、心に残してしまって。
…自分のせいで、私が死んだと思われたから。
私の事を思い出して、泣くくらいだったら。
いっそ忘れて欲しい。
忘れて、幸せであって欲しい。
[一抹の願いを呟いた。
全く分らないわけでもないと、言われれば少しだけ目を細めた。]
─村の通り→道具屋─
[遠回りをしたので、自宅に戻ったのは結構な時間が経っていて。
レナ心配してるかな、と心なしか早足で帰ってきたが。]
エーリ。
………ユーディ?
二人とも、どうしたの…?
[遠目からは、エーリしか見えず。
近くに寄ると、エーリの腕の中のユーディがないているのに気付き、胸のうちに言い知れぬ不安が沸いて。]
…ミハエルは、ユリアンの家にいるよ。
[影はそこから伸びた。
あまり時間は経っていないから、おそおらくまだそこだろうと思って告げて。]
…行かない、の?
[微かに震える腕を見て。
震えないようにと、声を固くするレナーテに、問いかけた。]
─道具屋─
[ユーディットが泣き止む前か後か。イレーネが戻って来たのを見て、視線だけ向ける。ユーディットは腕の中に抱えたまま]
イレーネ。
……うん、ちょっと。
[歯切れ悪く言い、一度視線が地面へと落ちる。それから一呼吸置いて、イレーネへと視線を戻し]
…イレーネ、心して聞いてくれ。
───レナーテが、消えてしまった。
[一言前置きをしてから、肉親の消失を告げた]
ミハエル、今は泣いていいときだ。
[そっとミハエルの背を撫でる手]
ここであったことは誰にも、言わないでおく。
[親友にもそれで頼むと視線だけで、きっと親友からは了承の意が返るだろう。
ぽつりぽつりと、語られる言葉に]
ここで全部出して、後に残さない。
それもありじゃないか?
心を残してきたことは後悔しない。
残された心が支えになることも知っているから。
[それは死んだ母のことだったかもしれないし]
[気丈に振舞おうとしていた食堂の少女のことだったかもしれない]
けれど泣くくらいならという気持ちは分る。
幸せになってもらいたいというのも分る。
[息を吸って吐く]
ユリアンの所か。
ありがとう……いってみるよ。
[少し強張った微笑でゲルダに頷く]
[ウェンデルもまだ傍にいたなら片手をあげて背を向けた]
[距離も時間も曖昧な感覚に包まれて村の外れの茸畑へと向かう]
─道具屋─
うん?
………え…?
[いつもの飄々とした様子ではなく、言い難そうにしているエーリを怪訝に見て。
続いた言葉が、一瞬理解できなくて。
強張った笑みが浮かんだ。]
やだ、そんな冗だ…
[言いかけて、エーリがこんな冗談を言うわけがないと口をつぐんで。
俯いて、小さな声を絞り出し。]
…エーリとユーディが、側にいてくれたの?
[兄の最期を聞いた。]
─道具屋─
[イレーネの笑みが強張る。それを見て、軽く眉を顰めた]
俺は、直接見たわけじゃないんだ。
ここに来た時にはユーディットしか居なかった。
ユーディットから消えたと、聞いたんだ。
[自分が知り得る限りをイレーネに告げて。最後の言葉と共に視線は腕の中のユーディットへと*向けた*]
そう言えるレナーテが…少し、羨ましい。
[自分が残したものは、嘆くものにしかなっていないような気がして。
誰かの支えになったろうかと、どこか遠く思った。
分る気持ちもあるといわれれば、こくりと頷き。
礼には緩く首を振った。
去り行く背を見送り。
こちらもふらとその場を離れた。
ウェンデルがまだ居たなら、家に言ってみると告げて、一度パン屋の方へと戻った。]
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