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こっちの『死神』は3回エーリのところに、それとウェンとレナーテが消えるのを感じていた。
[こっちのと、指すのは自分の後ろの方何もない空間、自分にもそこにいるのかは知らないが。
ミハエルを見つめる視線は変わらず、語る口調は常のように、ただ少しためらいのような色はわからないほどに混じり]
さっきは、ゼルが刈られていった。
一緒にいたイレーネが、消えるのも、感じてた。
今は、悲しく寂しくもある、そんなところ、だ。
[言葉とは裏腹にそれは表面にはっきりとでることはなかったが、
もし親友が生きてたのなら、その機微を感じることもあったのかもしれない]
…気がついたら、好きになってたんだよ。
面倒見良いとことか。
ぶっきらぼうで口が悪くて、人一倍優しいとことか。
そんなゼルが、ずっと。
[そう言って、ごめんね、と。
泣きそうな顔で、微笑った]
─道具屋─
っ!?
[エーリッヒの言葉に、目線を外し、ギリッと奥歯を噛み締める。]
……分かってる。分かってはいるんだ。
レーねぇも──ついでにゼルにぃも、もういないって。
……でも、それを認めちゃうと、さ。
……もう、耐えられそうにないんだ。
限界、なんだよ。もう、ココロが今にも折れちゃいそうで。
爺ちゃんも、ゲルダおねえちゃんも、ウェンくんも、レナにぃも居なくなって。さらに、レーねぇもゼルにぃも居なくなるなんて……そん、なの…………
[ぽつぽつと俯きながら呟いていたが、スッと顔を上げると、]
悲しみで押し潰されちゃうよ。
[顔に浮かぶのはぎこちない笑み。]
─ユリアン宅─
……何を考えているかは、さっぱり、か。
話せもしないのかね?
[死神。についての話には、眉を寄せて。情報が不足している。とばかりに不満げに頬杖をついた。]
死神が、花を咲かすためにボクらを狩ると言うなら──
もし。
その花が見られれば、
少しは、理解も及ぶのだろうか。
[考えるように、そう言って、翠の眼を細めて]
ユリアン。
ゲルダが死んだのは、死神のせいで。
ユリアンのせいではないし、
…… ユリアンが殺したことにもならないのだよ。
[ぽつ。と先ほどの言葉の使い方が気になったようにそう言って、]
…… きっと、ゲルダが悪いわけでもないのにな。
[語られるゲルダの話に、褒めてもらった翠の目を伏せた。]
借り賃も出してくれないな。
[何もとの言葉にはそう答え、花の話には、視線は村の出口、閉ざされた戸のある方向]
父さんは、とてもきれいで涙が出たと言ってた。
[ゲルダの話になれば、自分はうまく言葉を継げることができず、視線をコップの中に落とした]
直接は……、そうだな。
ありがとう、ミハエル。
気遣わせて、しまったな。
さっきとは、逆の立場だ。
[その話をしてる間のユーディットの様子がどうだったか、声をかけられたなら、自分はそれにも*答えていただろう*]
─ユリアン宅─
[じっ、と観察するようにも、
翠は語るユリアンを見ていて]
……ユリアンは、難しいのだよ。
わかるゼルギウスは凄い。
[僅かに揺れる機微の全ては読み取れない。だから、そう、素直な感想を零して、座っていれば届く高さの頭に、手を伸ばした。]
ボクは、到底、
…きちんとなど、汲める気がしない。
自分を元に、……想像するくらいしかできないな。
[くしゃ。とバンダナの上から、ユリアンを撫でて]
いちいち謝んなっての。
……嫌いじゃねぇんだからさ。
[もう一度口にしたそれは、好意をそのまま口にすることが殆どない青年にとって、良い方の部類に入るもの。
最上級ではないけれど。
長く過ごした者ならばそれを知るか]
んっとに、変わり者だ。
[吐いた溜息は、先程よりも軽かった]
─ユリアン宅─
… 綺麗。か。
[父から聞いたという花の話しに、自分の目には──刈られた命で咲いた花は、どのように映るのだろう、と、一度手を止めて]
… ちょっとはお返しせねば、立つ瀬がないのだよ。
[逆。といわれて、真顔でそう返してから、笑う。]
責められたいとか。あまり情けない事を言われたら
頭突きでもしてやろうかとも思ったけれどな。
─道具屋─
[ベッティの挙動をじっと見、紡がれる言葉を黙って聞く。『刻』がどんなものなのか、人が消えて行くことに対する覚悟が出来ていた自分は比較的に容易に事実を受け止めて来れたけれど。目の前の少女はそうも行くはずもなく。ぎこちない笑みに悲しげな表情を浮かべた]
うん……そう、だよな。
もう何人も消えてしまった。
でも、さ。
悲しい時は、泣きたい時は、我慢しなくて良いと思うよ。
溜め込んでるものを全部出してしまうと良い。
[以前ベッティが泣いた時にしたように、その頭に手を伸ばし撫でようとする。ベッティ程思い詰めていない自分に彼女の心情を理解し切ることは出来なかったけれど、その負担を少しでも減じたいと、そう願って]
[それから、ユリアンの話を聞いて、
それも、ひと段落した頃か。]
…ユーディ。
[友人の名前を呼んで、手招く。]
……さっき。居合わせた、と、言っただろう?
[やはり主語のないままで。
消えた人の事を、尋ねる。]
──どんなだったか。と、
聞いてもいいかね。
[聞いた処で。どうしようもないことだったかもしれないけれど。それでも、消えた時の事を知りたくて、居合わせていた、というユーディに、こっそりとそんな話を尋ねた。]
…うん、ありがと。
[ゼルの言葉に、少し切なそうな色を浮かべるもすぐに微笑んだ。
続いた言葉には、そんなことないよ、と。]
ゼルは自分を、悪く言い過ぎ。
あたしは、好きになったの、ゼルで良かった。
…そんな風に見えてたんだ。
[とても悲しんでいたというもう一人に、自分が消える直前の事を思い出す。
知らなかった『死神』のことを教えてもらった。
死神が他者を刈る者だというのは、その前に聞いていたけれど。
死神が宿主をも刈るかもしれない、という事は、あの時初めて聞いて。
それでも生きていて欲しいという、切な願いも耳を通り過ぎて。
一人で取り残される可能性が。
怖かった。
怖くて仕方が無かった。
そんな折れかけた心は、死神に耐えられなかった。
だから、悪いのは自分なんだと、そう思っている。今も。]
こちらこそ、……ありがとう。
とでも言うべきところか、ここは。
[言葉に対して素直に礼を述べる時には、どうしても間が空きがちだった。
それから]
……少し、戻ったな。
[外していた視線を、漸くイレーネに向けた]
─道具屋─
[エーリッヒの悲しげな表情に、視線が泳ぎ。]
…………ごめん。変なこと、言い出しちゃって。
[目を伏せ、謝罪の言葉を呟いた。
続く言葉には、暫しちらちらエーリッヒの様子を窺っていたが、]
だったら……ごめん、ちょっと向こう向いてて。
[そう言って、エーリッヒの背後の方を指差す。
それにエーリッヒが従ったとしたら、エーリッヒの背後から手を回し、腰に抱きつく。]
……ごめんね。泣き顔は、もう、見せたくないから、さ。
[そう言って、落ち着くまで、ぽつぽつと思うことや心情を背中越しに呟いていただろう。
結果として、泣き顔を見せたり、泣き喚く様子を聞かせるということはなかった。
落ち着いたあとは、戻るなりどこか行くなり、とりあえずエーリッヒに付き従っていくだろう。]
そんなこと、あたしに聞かないでよ。
[さすがに気恥ずかしくて、少し赤くなりながら苦笑して。
ゼルがこちらに視線を戻して言った言葉には、一瞬息を飲んで。
まだぎこちないものの、いつものように微笑んだ]
…うん。
─道具屋─
[謝罪にはふるりと首を横に振る。心情を理解してやれない申し訳なさもあった]
え、ああ、うん。
[後ろを向けと言われ、言われるままにベッティに背を向ける。腰に抱き付かれると少し驚きを見せるが、振り返ることはせず。ベッティの気が済むまで語られる言葉に耳を傾けた。時折相槌を打ったりもしたことだろう。ベッティが落ち着いたなら]
一旦ユリアンの家に戻ろう。
ユーディットやミハエルも心配してるだろうから。
[ね?と提案して。返答を聞いたなら、ベッティを連れてユリアンの家へ戻ることに*なるか*]
そいつは悪かった。
[あまり謝意の籠っていない謝罪の後で]
ああ、そっちがいい。
[ぎこちない微笑みに、一つ頷いた]
まぁ、あれだな。
しょうがねぇから、完治まで付き合ってやるよ。
治療は薬師の役目だし。
[軽口めいて言う唇には微かな笑みが乗っていた]
[それからふ、と常の表情に戻り]
それはそうと、
会いに行かなくていいのか?
レナーテに。
[今し方ベッティとエーリッヒが出て行った扉に目をやり。
恐らくは同じ存在と化している筈の、彼女の兄の名を*上げた*]
悪いと思ってないでしょ?
って…っ。
[溜め息混じりにそう言ったものの、次の言葉にはきょとんとした後赤くなって。
更に続いて言われたことにはなんと言えば良いのかわからない表情になった。]
そんなこと、言われたら。
…治したく、なくなる。
[普段みることのない笑みも相俟って真っ赤になりながら小さく呟くも、すぐにいつも通りに戻ったゼルから言われた言葉に目を伏せた]
…うん。
もう少し、時間が欲しい。
あたし、すごく泣いちゃったから。
[きっと兄はあの時傍にいてくれただろう。
どれだけ心を痛ませただろう、まだ兄に面と向かって謝る勇気がなかった]
ゼルこそ、良いの?
[そう、彼に向かって首を*傾げた*]
―――――っ。
[声なき声は、会話の合間に落とされて、身が強張る。
見上げるが、決して交わらない視線が、こちらを捉える事はない。
それなのに。
まるで知られているように。
届く言葉は、突き刺さる。]
ど、して…。
[呟きは震えてしまい。
後ずさり、体を掻き抱いた。]
……呼ばないで。
[名前を、想いを。
返せないのに一方的に。]
お願いだから…。
[もう、忘れてと。
目を逸らし、泣きそうな顔で呟いた。
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