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―― 屋上 ――
[ヘリは、ばたばたと大きな音を立てて。
崩れ落ちる古城から、ゆっくり舞い上がっていく。
それは、まるで大きな鉄の鳥]
[星の世界を、力強く、飛ぶ。
先にまっているかもしれない、大きな希望に向かって]
[幸か不幸か、その風は今の自分には影響を与えない。
屋上があったところに、立っている]
[背筋をぴんと伸ばして、眼鏡をかけて。
見上げる。そっと、下から手を振った。
―― まるで、遠足の見送りみたいに]
行ってらっしゃい。
[別に、肉体にしばられている訳ではない。
今でも、意識を伸ばせばそっと彼女たちに触れられる。
でも、今だけは]
[自分を構成していた確かな1つがあった場所で。
もう少しだけ、弔っていようと思った**]
[浮上する感覚。
異眸と化した天鵞絨を転じれば、映るのは焔と煙]
……したかったから、ってな。
[返された言葉に呆れつつ。
身を寄せられたなら、護るよに、腕の内へと。
自身の不安もあったが、何より]
……なに?
[ノーラの告げた言葉が。
反射的に、そうさせていた]
[アーベルの言葉に、ノーラがアーベルに向けて言ったのだと知る。
その後に続く、視た結果]
アーベルさんが?
そうなの?
でも。
[大丈夫だといったアーベルの声]
ノーラさん、大丈夫、だよ。
ね。だから、安心して。私、ここにいるから。
[ノーラの背中を緩やかに撫でた]
[ぴしり。と音が近くで聞こえた。
びしびし、と遠くでも音が聞こえてきた。
視すぎた罰か、赤星との反発かは解らない。]
―――、く…
[痛みと同時に右目を手で覆い隠す。]
ッ…――
[足が本当に石のように重い。違う、もう、右足は動かない。
視界に違和感を感じた。ダーヴィッドの時は涙が石に変わっていたけれど、今回は―――瞳そのものが。
痛みからか思わず身を捩る。]
[刹那。]
――ッ は…、… ――!?
[城が崩れる。遠ざかる。
焼けて、 しまう。
左胸に手を当て、身体を折る。
いばらの痛みは、痛み無くした身を
知らず苛む。
――放射状に広がる土気色。
――石化病だけではなく
――歪な共鳴《ガードシーカー》の代償]
───俺が?
[ノーラの言葉]
[こちらが目を丸くする]
[ノーラの腕の中にいた少女の問いかけ]
[こちらを睨んでいたブリジット]
[自分の手をとったままこちらを見ていた]
[ライヒアルト]
[女が出来たら随分腑抜けたツラになったと思う]
[その腕の中の女]
[名前を把握していない気がした]
[ヘルムートはどんな顔をしていたか]
[溜息、一つ]
[眩暈]
───ッ。
[つながったままだったブリジットの手]
[少しだけ、強く握った]
[今になって数値を見る気はない]
心配しなくたって、どうせ───
[右腕もすっかり重い]
もう、動けないよ。
[ブリジットの手を、ゆっくりほどく]
[右の眼も痛い]
[きっとこちらも結晶化が始まっている]
[それぞれの症状が進んでいると、声で気づく。ノーラの右足が硬いと、触れて]
ノーラさん、足が……。
[病気。治るのだろうか。
同じように、動けなくなったアーベルは、回復剤で動けるようになったのだと思いなおす]
早く、着けばいいのに。
ノーラさん、せめて着くまでは、休んでて。ゆっくり眠ってないでしょ?
――みんなも。
たどり着いたら、私が起こしてあげる。
[自分が一番元気だからと]
[飛び立つ翼、崩れてゆく城。
意識が共に崩れる自らの身体の方に引き寄せられたのは、やはり生に未練があったからだろうか。
先ほどの衝撃も冷め切ってはおらず、小さく震えて]
…もう戻ることはない、ね。
[いばらに囚われるかのように。飛び立った翼に意識を向けるのには、今少しの時間が*必要だった*]
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