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[その言葉に主を真っ直ぐに見。
ゆっくりと、一度、左右に首を振る]
俺の存在が邪魔だというのならば、今すぐに失せましょう。
だが、俺から貴方を離す事など、出来ようはずもない。
貴方を捨て置いて、忘れたとして。
俺に一体、何が残りましょうか。
何も残りはしない。
何も有りはしなかったのだから。
父も母も兄弟も亡くして、縋るものも失くして。
死ぬはずだった俺を救ったのは貴方だ。
命も、生きる意味も。貴方が与えたものだ。
[淡々と並べられる、感情の無い言葉。
しかしその瞳だけは、酷く揺らぎを持って]
[手は無意識に]
[自身の前髪に触れる]
[其の奥の]
[視力を失った左目が]
邪魔である筈が無い。
だが……
[私の傍は危険すぎる]
[もう二度と]
[そんな目には遭わせたくない]
[だから]
[今の内に離れて]
[そんなことを]
[口には出せない]
……何時か。
私以外の存在理由を見付けられるよう……
……願っている……
[告げる声は]
[何故か]
[震えを伴っていたけれど]
[思考の間に俯いていた顔を上げられず]
[踵を返して]
[*部屋の中に滑り込んだ*]
[主の様相を真っ直ぐ見詰め、微動だにせず。
前髪に触れる仕草には緩やかに瞬いたろうか。
普段と異なる声にも気付きはしたが口は開かず――開けず]
……
[踵を返す主に、無言の儘、深く頭を下げる。
扉の閉まる音に漸く顔を上げ、腕から手を離す]
それでも、俺は、
[何時の間にか乾き始めた髪。
肩のタオルを手に取り、顔に当てる]
[キッチンで材料を見回し、手にしたは一匹の兎。]
[血抜きのしてあるそれは誰がやったのか、それの腹に肉のペーストを詰める]
[玉葱、シャンピニオン、トマトなどの野菜、香辛料。]
[用意して一緒に鍋に入れる。]
[同時に取り掛かるのはパン。]
[なぜ今日自分が作っているのかは謎だと思いながらも。]
[しっかり生地を作りオーブンに]
[大きな白い、縁に濃紺で模様の描かれた皿を出して、煮えた兎肉を取り出す。]
[飴色の兎肉が湯気を上げる。]
[とろけそうなトマトもよく煮えた色。]
[飾るように盛り付ければ、香辛料と…兎の血の匂いも少し混じっているかもしれない、そんな良い匂いは既に部屋の中にまで届き。]
[他にも片手間に作った鍋]
[そこにはもやしとベーコンがあるだろうか]
[軽く塩コショウで味付けされた、コンソメのスープ]
[やがて料理を完成させれば、久しぶりに腕を奮って疲れた顔で、部屋の中でクローディアやネロと一緒に、食事にありつくだろう。]
[犬にはとりあえず兎肉の足の部分だけ最初に*あげているかもしれないが*]
うわあ、良い匂いしますねえ。
今日のご飯は何ですかー?
[へらりと笑いつつ、現れる。]
[何も言われないうちから食べる気満々のようである。]
[フォークとナイフで取り分けている時に降りてきた男]
今晩和。
兎の肉だが。
[さらり、告げて。皿とフォーク、ナイフを差し出し。]
それならどうぞ。
一匹は矢張り多いから。
[そして綺麗に肉を切り、取りやすいようにして]
スープも、此方に、そのまま持ってきておくか…
[呟いて、キッチンへとってかえしスープの鍋を運んでおく。]
[切り分けて貰った肉を皿に取り、がつがつと]
はっはりふはいですほこれ。
[頬張りながら声を掛ける。]
[何を言っているのだか良く分からない。]
食べるか話すかのどちらかにしろ
[あきれたような声音で言う]
ほら、スープも
[横に取っ手のついたスープの皿にうつして]
[スプーンと共に差し出した]
[もぎゅもぎゅごくん]
[口の中のものを飲み込んだ後、差し出されたスープとスプーンを受け取り]
・・・あ、ありがとうございます。
それくらい美味しいってことですよー。
[にっこりと笑いかける。]
[スープを一啜り]
うわあ、これも美味いや。
料理上手ですねえ。これ、貴方が作ったんですかー?
いやいや、ホント料理人で食ってけますよー。
[旺盛な食欲]
[ニコニコしながら料理を口に入れていく。]
料理は金稼ぎの一貫だ
旅をするのに知っていて損はない。
道中でもまともなものを食べさせてやれる。
[クローディアを見て]
料理人で食べていくことはないが
[料理を食べている姿に苦笑]
そんなにがっつかなくてもなくならない
[誰かがきたらその真偽は定かでないのだが]
[自分は少し食べて、デザート……と、チョコを口に]
っとに……力いっぱい、足元見やがって……。
[ため息と共に、零れ落ちるのは、愚痴。
どうやら、雑貨屋で一悶着あったらしい]
ま、仕方ねーか。
これがないといられないっつーのは、事実だし。
[嘆息。そこにあるのは、妙な達観というか、諦観というか]
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