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[遠くない位置、感じる気配。
右の瞳がきょと、と動く]
……クリーチャー、か。
は……実験体のテストエリアも兼ねてます、ってとこか?
…………趣味悪ぃ…………。
[吐き捨てられる短い言葉。そこにこもるのは、明らかな嫌悪]
……まあ。
慣らしにゃちょうどいいか。
[一転、のんびりとした口調で呟きつつ、すい、と右手を翳す。
どこから取り出したのか、指の間には漆黒の針が数本。
それを、ごく無造作な動きで、こちらを伺う気配へ向けて投げつけた]
[投げつけられたそれは空を切り、気配の主──二つ首の巨大な黒犬の額に一本ずつ突き刺さる。
響く、絶叫。
鴉の口元に、浮かぶのは笑み]
……首の数が、だいぶ、半端だねぇ……。
最初っから、このデザインで考えられたのか、それとも……。
[続いた言葉は風に溶けて、消え。
『鴉』は、双頭の黒犬へ向けて、駆ける]
……いよっ、と!
[ある程度距離を詰めた所で地を蹴り、上へ。
赤く輝く四つの目がその動きを追った。
その四つの内の二つ、その間を狙うよに、上空から蹴りを繰り出す。
がつり、という鈍い音が響いた]
お、かったい……。
[伝わる感触に、零れるのはいささか呑気な呟き]
[とはいえ、呑気に構えている余裕はなく。
蹴りが決まった直後に、もう一方の首が牙を繰り出してくる。
態勢を整えつつ下がろうとするもやや及ばず、右の足を僅かに牙が掠めた]
……っつ!
反応速いねぇっ!
[それでも、口調はどこか愉しげなまま。
黒の片翼を開き、近くの木の枝へと飛び移った]
さて……。
どうやって、止めますかね、と。
[呟く右手には、再び漆黒の針。
標的を捉え損ねた双頭の黒犬は、唸り声と共に鴉のいる木へと突っ込んでくる。
激突の衝撃に、足元が危うくなった]
って、のんびり構えちゃいられんかっ!
[ある意味当たり前の事を言いながら、わざと大きな羽ばたきの音を立てて枝から離れる。
双頭の黒犬は木のへの体当たりを止め、首の一方が鴉の動きを追った。
こちらを追う真紅の両目、それに向けて右手が無造作に振られる。
ひゅ、と甲高い音を立てて飛んだ針は、避ける間を与えることなく真紅を貫いた]
……一方、もらい、と。
[淡々とした呟きは、光を失った首の咆哮にかき消される。
地に降り立った鴉は再びその手に漆黒を握りつつ、こちらに向き直った双頭の黒犬に対峙した]
っても、長期戦は不利かね。
……一気に決めるか……。
[小さく呟き、距離を測る。
常磐緑の瞳、特に縦瞳孔の右目が鋭さを帯びた]
[す、と伸ばす右手。幾度目か、握られる漆黒の針。
双頭の黒犬は、その一撃を警戒しているのか、それともダメージの回復を待っているのか、唸るだけで仕掛けてはこない。
その様子に、ふ、と笑みを浮かべつつ。
駆け出した鴉は、スライディングの姿勢で黒犬との距離を一気に詰める。
迎え撃つように振るわれる前脚の爪。
しかし、それは唐突に掻き消えた鴉を捕らえる事はなく。
直後、黒犬の身体が硬直した]
……はい、お疲れさん、と。
[呑気な声が響くのは、黒犬の身体の下から。
短距離のテレポートで黒犬の身体の下に潜り込んだ鴉は、双頭の首、その喉元に当たる部分に漆黒の針を一本ずつ突き立てていた。
ぐらり、と黒犬の巨躯が傾ぐ。
それが地に伏す直前、鴉は再び空間をすり抜け、押し潰されるのを避けた]
……あー。
やっぱりこの手、相性わりぃ……。
[地響きを立てて伏した黒犬を眺めつつ、口をついたのは、こんな呟き]
……ま、いいか。
別に、こいつらと遊びに来たわけじゃないんだし。
[グチめいた言葉を一つふたつ吐き出した後、こんな言葉で結論をつける。
伏した黒犬の事は、既に意識の外。
常磐緑は、微かに紅を滲ませる右の足へと向いていた]
……ほっときゃ治りそうだが……一応、ちゃんと治すか。
確か、医療設備は整ってるはずだし。
本命に引きずったら、笑い話にもならん。
[傷の具合を確かめるとこんな呟きを漏らし。
中央のビルへと向けて、のんびりと歩き出す]
─ →中央エリア─
─中央ビル四階・ラウンジ─
[クリームリキュール・ココナッツリキュール・カシスリキュール。シェイカーにそれらとミルクを入れると、部屋にシャカシャカと控えめな音が響いた]
[ビルの四階にある部屋の一つ、酒場のような場所にオクタヴィアは居た。バーカウンターの奥ではシェイカーの音を止め、グラスへと注いでいる影が一つ。ここに集まった者ではない、見知らぬ顔]
それの他に、ベルパピヨンもお願いね。
[カラースプレーチョコレートをカクテルの上に浮かべた人物は、声を出さずに頷いた。オクタヴィアはカクテルの出来上がりをカウンターのスツールに座って待つ]
野槌の娘と、万華鏡と。
青の死神と、黒耀鴉と。
………紅雨?
裏ではあまり聞かない名前、かしら。
[仕事柄、常より様々な情報を手に入れているが、聞き慣れぬものもあって。膨大な情報量であるが故の忘却の可能性も否めないが]
ともあれ、ここに来ると言うことは、それなりの力は持ち合わせて居るのでしょうね。
[チリリ、と傾げた首に合わせ、イヤリングが鳴る。端末を見る間に作られたカクテルがオクタヴィアの目の前に置かれた。美しく鮮やかな青と白と赤のコントラスト。それを見詰め、オクタヴィアは鶸色を細めた。バーカウンターに居た人物はいつの間にか姿を消している]
―中央ビル玄関(中)―
ありがとう、またね。
[案内をしてきた男にフワリと微笑みかける。
まるで旧知の間柄であるかのように手を振って分かれた]
…Schwarzes・Meteorの組織員でも、末端はこの程度なのねぇ。
何だか拍子抜け。
[独り言というのには少々大きすぎるだろう声。
誰かが聞いているのを前提とした、それこそ「お遊び」だった]
─中央都市部・大通り─
[北側の林から、のんびりと歩いて都市部へと。
都市に入ると、それまで感じていたもの──クリーチャーの気配はぱたり、と途絶えてしまう]
……ここもここで、ついこないだまで人がいたような雰囲気だし。
会場にするためだけに、都市一つ立ち退きかけたんかね。
……だとしたら、どれだけヒマなんだか。
[どことなく呆れたように呟きながら。
目指すのは、先に後にしてきた中央のビル]
[歩きながら、ちら、と右足に視線を向ける。
先に双頭の黒犬の牙を受けた箇所は、半分は塞がっていた]
……毒の類は、持ってなかったようだけど。
一応は、かね。
[そんな呟きを漏らしつつ、中央ビルまで戻ったところで]
……ん?
[目に入ったのは、何処かへ去ってゆく黒服。
『漆黒』のスタッフか、などと思いつつ、一見するとのんびりとしたまま、ビルの内部に足を踏み入れた]
─ →中央ビル・一階─
―中央ビル入口(中)―
参加者にはこうはいかないでしょう。
そもそも仲良しお友達だけでいられそうもないし。
[在るかも定かでない監視装置へのお遊びにも飽きてきた所で、隠さない気配を感じて振り返る。
入ってきた青年から届く匂いに軽く右眉が動いた]
いらっしゃ…じゃなかったわ。
ごきげんよう、黒耀鴉さん。
[裏ならば有名な人物に、店用の笑みを浮かべたまま挨拶を]
早々に誰かと遣り合ったりしてきたのかしら?
─中央ビル一階・入り口─
……と。
[入った先に立つ姿。
向けられた挨拶に、見た目場違いに良く会うな、などと思いながら、軽く肩を竦める]
……そちらの店、いつからこんな所にまで営業拡大してきたワケ?
[返すのは、軽い言葉。問いにはああ、と言いつつ視線を傷に落として]
躾のよろしくないわんこが一匹いて、ね。
客への態度の何たるかを教えてやって来た。
8人目、Lilith カルメン がやってきました。
[濃密な香の満ちる部屋。
今そこでは若い男女が身体を重ねていた。
欲望のままに女性の肢体を貪る男。
それを妖絶な笑みで受け止める女。
男の眼は血走り、正気を失いつつあるのは傍目に明らか。
それをちらり盗み見ると、女は口元を笑みに歪める。
部屋に満ちた香の中に、精神を昂らせる成分がふんだんに─それこそ過剰なまでに─使われていることを知るのは、女のみ。]
「〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪」
……んぅ?
[枕元で鳴る携帯電話に、シーツのみを纏い気怠げに身を起こす。
液晶に表示された名前に一瞬嫌そうな顔をするが、すぐに通話ボタンを押す。]
はぁい、こんばんわ『社長』。ご機嫌いかが?
「ふん、心にもない事を言うな。
……それで要件だが、お前も『遊戯』の存在は知っているな。」
……はぁ、まぁ。
「うちに招待状が来た。面倒だからお前が出ろ。」
えー!? そんなの『怨めし屋』の方に頼んでくださいよぅ。
「生憎とあいつは別件で使用中だ。」
『業突張り』……
「この時期にウチの会計の長が首を縦に振ると思うか?」
『自称自宅警備員』……
「お前があれを動かせるなら一向に構わんが?」
ぐっ…………じゃあ『妹さm
「ふむ。キミは癇癪を起こしたあいつが総統にいらぬ喧嘩を売るのが想像できないというのか。」
……やだなぁ、冗談ですよぉ。
だからそんな冷たい声で突き放さないで下さいよぅ。
[タラリと頬を伝った冷や汗をぺろりと舐め取ると]
……感じちゃうじゃないですかぁ。
[くねくねと身悶えた。]
[だが、電話の相手はその反応にも慣れているのか、ただひとつ深く息を吐くと、]
「それで……引き受けるということでいいな。」
[その反応が面白くなかったのか、しばし口を尖らせてぶーぶー言っていたが、それでも打って響かないのを確認すると、先ほどまでのおちゃらけたものではない真面目な口調になる。]
ええ……それに、どうせ何だかんだとそれっぽい理由を言われましたが、
…………『あの人』絡みの用件があるから、でしょ?
「……まあ、な。」
……はぁ。
あの人もまあどうしてここまで怨まれるような真似をしたのやら。
「さあな。それで場所と日時だが……」
─中央ビル一階・入り口─
楽じゃない世の中だもの。
必要とあればどこまでも出張するわ?
マスターは店があるから、私で我慢してネェ。
[何を、何処へ届けるのか。裏の意味も篭めて笑う。
笑顔の種類が少しだけ変化した。瞳もチラと紅く光るが]
あらあら、ご苦労様でした。
治療するなら手伝いましょうか?
[そう青年へと返した時には悪戯っぽい黒瞳に戻っていた]
[そうして、ビジネスライクな会話をしばし交わした後、彼女は身支度を整えると、部屋の隅に立てかけてあった自分の身の丈もあるほどの巨大な十字架を背負う。]
さて。じゃあ行きますか……と。
[ドアに手を掛けたところで部屋の中へと振り返ると、]
じゃあね。名も知らないお兄さん♪
その絞り滓の魂が神の御許にたどり着くことをお祈りしておりますわぁ。
……では、さよならごちそうさま♪
[にこやかな笑顔でそれだけ言うとバタンと扉を閉めて出て行く。]
[だがその言葉に返される答えはなく。
部屋に残されたのは、ミイラのように干からびた、かつては「人であったであろう」モノひとつのみ。]
[彼女が『遊戯』の場へ着く頃、端末には以下のデータが参照されていた。]
■名前:カルメン=ダエーワ(Carmen=Daeva)
■年齢:年齢不詳(外見20代後半)
■通り名:Lilith(リリス)
■武装:身の丈サイズの十字架のようなもの
■スタイル:遠距離から近距離までそつなく
■特殊能力:生命力吸収
■その他情報
『コキュートスグループ』という複合企業の専属の仕事人。
形式上は社長秘書という肩書きもあるのだが、滅多に本社へは寄りついていない。
『コキュートスグループ』は、いわゆる「ゆりかごから墓場まで」を標榜するような巨大企業グループである。
しかしその背後には黒い噂も絶えず、「墓場までの案内」までが仕事の内という話も聞かれる。
彼女はまさにその黒い噂の実行犯である。
また、彼女の背負っている身の丈ほどの十字架はそれ自体が様々な武器に変じるという。
だが、その全容は未だ以て暗として知れない。
妖艶な雰囲気を纏い、時として男をかどわす彼女はまさに「夜の魔女(リリス)」であると言えよう。
ちなみに彼女自身はバイセクシャルであると常日頃から公言している。
─中央ビル一階・入り口─
……ま、真理だな。
[裏の意味、そこまで読んだ上で返すのは、同意の頷き]
何をどう我慢すればいいのか、って突っ込みはさておき。
治療に関しては俺、企業秘密が絡むんで、お気遣いなくー?
[手伝いの申し出には、さらり、こう返した]
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