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…………とにかく、ここでジッとしていても仕方ねぇ。
行くとしたら……兄ちゃんのところか。ミリィ先生のところか。
あるいは、ミハエルの……。
[そう呟くと、のそりと起き上がり、自分の部屋をあとにした。]
―診療所―
[ひょこり、
人々がざわざわする合間を縫って外へと出た。
暫く歩いていると少し大きな道の向こう、
図書館へ行ったのか図書館から出てきたのか、
オトフリートが歩いているのが見えた。
何故か、少しばかり人が回りに遠巻きに見たり、近寄ろうとしたりしてざわついている。
どうしたのかしら、と、近寄ろうとして]
……ぁ…っ
[上着の端から覗いたキャンパスを見て、
吃驚して目を見開き足を止めた。]
─診察所前─
[何処へ向かおうとしていたかは実の所彼も分からないまま飛び出したわけで。そうして、道を歩いていたわけだが、]
? 何の人だかり……って!?
[遠巻きに見ていた奴の呟いた言葉に目を瞠る。
そいつは今『絵師様』って……]
っつ。おい、オトフリート!! その絵……くっ。
[問い詰めんと駆け寄ろうとするも、彼は図書館の中に。
追いかけて中へ入ろうとするも、そこに知った顔を見つける。]
……エルザ?
[アトリエに漂っていたのは、しばしの間。
弟が外に出て行くのを見て取ると、自分もその場を離れる。
……正直、動かない自分と延々対面しているというのは、いい気がしなかった。
外に出よう、と念じたなら、その身は容易くアトリエの外へ]
確かめたところで、意味があるかどうかはわからんが……。
[一つだけ、気になっている事があるのも事実で]
……師父。
方々も、ここに……同じ場所におられる、のか?
[ユリアンに声をかけられ
少し呆っとしていた少女は、体ごと振り返った。]
びっくり、した。
えと、ごきげんよぅ。
[驚いた顔は笑顔に変わり、
ユリアンへと向けられる。
ふわり、無邪気に綻ぶ顔は何時ものまま。]
ききゅう、飛べたかしら?
[自分に何が起きたかは、感覚的に理解していた。
絵筆を求めた者により、封じられ、精神の世界を漂っている。
そして、今いるのが、亡き先代の言っていた、『心の場所』──死者の心の眠る場所なのか、それとは違うのか。
それは、それだけは、確かめておきたかったのだが]
……さすがに。
違う、か。
ならば、ここは擬似的な空間。
あちら側と、こちら側の狭間……とでも言うべきなのかね……。
[もふっ。]
[そんな擬音を発しそうな、不定形の物体。
黒い煤の塊ようなモノが、広場をうろうろしていた。
しかし子供より大きな背丈のそれに、誰も気付く様子はない]
ああ、ごきげんよう。
[こちらも笑顔を返す。
……心の葛藤は奥の方に押し隠して。]
あー、今はちょっと……それどころじゃねーし、な。
……でも、この騒動が終わったら。
ぜってぇ。ぜってぇ、気球を完成させて。
……そん時は、一緒に外の世界に行こうぜ。
[そう言って、はにかんだ笑みを浮かべる。]
[持ち込んだキャンバスを書庫の中ではなく、読書室の一角に立てかける。既に内にも外にも噂は届いて、人々のざわめきが辺りを取り巻いていた。ドアに近い窓からそっと覗くと、図書館に入る直前に声の聞こえたユリアンがエルザに近づくのが見える]
・・・・・・・
[さすがに外の声までは聞こえなかったが、特に不穏な様子も見えなかったので、少しの間思案して、結局そのまま二人の様子を見守った]
ま。
ここが過去の集う場所だとしたらそれはそれで。
……師父筆頭に、歴代たちにどんだけ怒られるんだかわからんし。
……遠くなく絞られるの目に見えてんだし、今は勘弁してもらいてぇよな……。
[どことなく遠い目をしつつ、こんな呟きをもらす。
今現在のこの空間に、自分に対して小言を言う者がいるであろう可能性は、見事に失念していた。
ともあれ、ふらり、ゆらりと都市を巡り]
……なんだ?
[広場まで来て目に入ったのは、黒い塊]
[ユリアンの言葉に、
両手を合わせて口の前に立て小さく飛び上がる。]
行くわ、行くわ?
空や、空から見える、うみ。
ききゅうが完成するのと、満月夜に綿毛草で行くのと。
どっちが、先なのかしら。
満月夜って、何時なのか、知ってるかしら?
[嬉しそうに、首を傾けて笑う。
セルシアンブルーの髪が肩から零れ
笑んだコバルトグリーンの目の色が
細められる。]
[も゛も゛も゛も゛も゛も゛。
人ごみの間を危うげにすり抜けてゆくも、踏み潰されることもない。
それどころか、塊のほうからちょっかいをしかけても、
触れられた相手は何事もなかったかのように通り過ぎていく。
つんつん。
しーん。
すたすた。
……ちょっとさみしそうだ。
ベンチの傍で黄昏モード。]
…………。
[しばらく観察していたが、行き過ぎるものたちはそれに気づく様子はない。
つまり、自分と同じ状態なのはすぐわかる。
わかるのだが。
わかるが故に、わからないというべきか]
……何……というか。
誰……?
[黄昏モードに入ったそれにちょっと近づいて、そーっと声をかけてみた]
……そっか、よかった。
[エルザの反応に、ほっと胸を撫で下ろした様子。
だが、続く言葉に僅かに表情を硬くする。]
……それは。
[しかしそれも一瞬。すぐに苦笑いを浮かべると、]
んにゃ。わかんねぇ。
でも、綿毛草に負けるつもりはないぜ。
それは、絵師さまへの挑戦ね?
[ユリアンの言葉にくすくすと笑いを零す。
それからふいと図書館へと目を移して細めた。]
さっき、キャンパス、持ってるようにみえたの…。
絵、なのかしら…?
[口調は少し、固い。]
[黒いソレはくるりと振り返った。
らしい。
目がないから、どちらが正面かわからないが。
もぞもぞ身動きして、エーリッヒの周りを回る]
だな。兄ちゃんは好きだけど、そこは譲れないね。
[もちろんエーリッヒが封じられたということは把握している。
これは、かならずこの事件を解決してエーリッヒを元に戻すという決意の表れでもあったわけで。
そして、エルザの目線を追って、視線を図書館へ。]
……ああ。チラッとしか見えんかったけど……あれはキャンパスだよな。
周りが言うとおりなら、アレに描かれてるのは……。
[あえて、それ以上は口にせず。]
[あ、こっち見た、と思った直後に塊はこちらの周囲を回り]
…………。
[どうしたものか、と本気で悩む傍ら、ここに他者がいる意味をつらつらと考えて]
俺の他に、誰か、封じを受けた……のか?
少なくとも、ミハエルはまだ、絵筆は使っていないはずだし……。
正規の用い方を知らんヤツが、短時間に連続して使える……ってのは。
ないとは言えんけど、あんまり考えたくない可能性だし……。
[ぶつぶつと、声に出して思考分析。
自分の予測が正しければ、絵筆の力に依る以外にこの空間に他者が現れるとは思い難いわけで。
うーん、と言いつつ首を傾げていたりする]
―自宅―
[昨日は診療所で手伝いをして、一段落ついたところで家に帰って寝ていて起きたのは先ほど。
まだ妙に気だるいのは診療所でなれない手伝いをしたからだろうか。緊張したりした分余計疲れてる感じがあるがそうもいってられない。
エーリッヒが封じられたこと。その代わりなのかなんなのか。ミハエルが絵師になっているらしいことで]
俺、しばらくあんま手伝えねえかもしれない。あいつは友人だし、ミハエルの兄さんに頼まれたし、のんびりしてられない。
[とはいえ何ができるのかわからないが、そんな気分で海に入れるほど甘くはなく。迷惑をかけることとなったが許してもらえ]
親父、母さん。ごめんよ。じゃあまたいってくる…大丈夫だって、危険なことはしないから
「むしろあなたが迷惑かけないか心配です]
あぐ…
[そんなこんなで家を出て、人がいるほうへいるほうへと道を歩く]
[二人の視線が図書館へと注がれたのを見ると、す、と窓際から身を引くと書庫へと一度引っ込む]
[読書室には上着のかけられたままのキャンバスと、興味津々に覗き込む客達が取り残された]
[言葉を発する事は無く、視線をユリアンへと戻し
そのまま暫く、じいっと見た。
そうしてからにこり、笑ってくるりと後ろを向いて歩き、
図書館の入り口付近にぺたりと座り込んだ。]
見たいから、待ってる。
[ひとこと言う。
しゃがんだ膝に両手を乗せて、
あなたは?とばかりに首を傾けてユリアンを見上げてる様は、
何かの動物のようだった**]
[物言いたげに、黒いソレはもごもご蠢く。
にょ。
と、一部分がほんの僅か、突き出た。
どうやら、手に当たる部分らしい。
短いそれを、エーリッヒの方へと伸ばしている]
[アトリエを出、向かう先は図書館。
道の人は己の姿を見れば話を止め、こちらを伺うような視線を向ける。
極力気にしない振りをしていれば、表情は自然と硬くなった]
……お?
[思考分析していたら、なにやら伸びてきた。
しばし考えた後、そーっとそれに触ってみた]
お。
触れた。
[触れた事自体はちょっと驚いたが、同じような状態同士だからだろう、と一応自己完結]
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