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― 翌朝 ―
[泣きながら眠ったせいか、酷く頭が重い。
顔を洗いに部屋から出た時には日が昇りはじめたところで。
ふと、夜にはいつも閉めるはずの玄関が開いている気がした]
……もう、誰か、起きた……?
[ふら、とした足取りで向かう。
寝起きながらもいつもと同じようなワンピースを身に付けて、玄関へと向かう廊下を歩く。
食堂をでてすぐのところで、血の匂いを感じて]
――!
[その場に倒れている人に、大きく瞳を見開いた]
ゼル、せんせ……?
[幼いときから医者としてみてもらっていた。
父親が表にはださないものの、どこか旅人と同じ扱いをしていることは知っていたけれど。
物心ついたときからお薬をもらいにいくのはゼルギウスのところで。
昨日だって、ゲルダのことやナターリエの傷の手当てなどを、していたはずで。
それが、どうして]
―あ、あ……きゃあああっ!!
[どろりと流れている赤い色がある。
最初見えた顔だけと、そこから先の違いに認識が追いつかず。
赤黒い色をみせている、それが服の色でもなんでもなく、血の匂いの元であり。
からっぽになった、身体の中だと思考が追いついたとき、悲鳴をあげた。
へたり、とその場に座り込んで動くこともできないまま誰かが来るまで、ただその氏を見つめ続けた**]
……ま、た?
[霞み晴れた視界に色はなく、ただ、白い炎のようなものが揺らめいて。
それは壁をすり抜けるようにして、隣室へと消えた。
行きたくない、という意思と、行かなくては、という意志が鬩ぎあい──また、勝ったのは、後者。
覚束ない足取りで部屋を出て、ゲルダの部屋へと向かう頃には他の皆もそこにいて。
部屋に入るのを止める声があっても、現に焦点合わせぬ瞳はそちらを顧みる事はせず。
室内で唯一色を帯びて視えるものを、動かぬゲルダの亡骸を、みて]
……白い、火。
[その周囲にめぐる色をはきと認識し、口にした所で灰色だった世界に色が戻り、崩れるようにその場に座り込んだ]
……だい、じょう、ぶ。
ぼくより、シスターさんと、ユディ、ちゃん。
[誰かに案ずる声を投げかけられたなら、返すのは途切れがちの言葉。
大丈夫、と言ってはみても、身体の震えは止まらなくて、羽織っていたショールをぎゅ、とかきあわせてそれが鎮まるのをじっと待った]
(……ぼく、は……)
[無自覚の認識が、自覚までの距離を詰める。
それでもこの時にはまだ、二つの間に距離は開いていた。
認識を拒否する気持ちが、自覚を阻んでいて──けれど。
その逃避が赦されることではない、と知るのは、翌日の夜明けの後。*]
─ 2日目/黒珊瑚亭 ─
[タオルとシスターのことは、誰に頼んだのだったか。
ヘルムートの指示>>75に頷いて、
許しがあったなら共に室内に入り、ゲルダの死と創傷を確認した]
二人ともに、揉みあったような痕跡があったね…。
刺創も多い…でも逡巡創というには少し深いか…?
致命創は心臓か…。
……どうして、こんなことに…。
[状況から読み取れることもあるが、専門ではないし、
ナターリエから話を聞くまでは、何が起こったのかの判断は控え。
ヘルムートがゲルダの身体にシーツを掛けるのを見て、
ゲルダの瞳が開いていたなら、そっと瞼を閉じる。
まだ残っていただろうゲルダの温もりが指先を掠めれば。
ふいに視界が海の中のように潤んで揺れ――…歪んだ]
―2日目/黒珊瑚亭―
………。
ごめんね、僕にも…わからない。
シスターに、聞いてみないと…。
[“なんで……”>>80少女の言葉は、単なる問いというより、
もっと様々な感情が混じっているようにも聞こえ。
けれど、そうとしか応えようがなく、数瞬、瞳を伏せる]
[ロミと初対面>>2:170>>2:171の時に、交わした会話が脳裡を過る。
言葉を交し、少しずつ打ち解けてくれた様子なのが嬉しかった。
ユーディットに宿に泊まるかと誘われても、
教会に戻ると答えた様子から、シスターを心配させたくないのだろう、と感じたことを思い出して、唇を噛む]
―回想・1日目/教会―
[ロミに名乗り、12年前まで島に住んでいて…
等と自己紹介をした後、一旦別れたけれど>>2:171。
ユーディットが、教会までの送りのことを気にしてくれて>>2:86
直ぐに後を追いかけ、拒まれなければ教会まで送ったのだったか]
――神父様。お久しぶりです。
[丁度出かけようとしていたらしい教会の神父は、
姉が通っていた12年前>>1:196>>1:197と同一人物で。
ガウナーと家族の名を名乗れば、はっとした表情を浮かべた。
それは……単なる驚きとは少しだけ違うようにも感じられて。
やはり、彼が、12年前に姉が家族の秘密を打ち明けた人>>1:174
なのだろうか、と訝しんだ]
―回想・1日目/教会―
――亡くなった姉、ユーリエのことで、
おうかがいしたいことが、あるのですが。
[姉の名を出せば、神父が少し思案してから頷いて。
これから出かけるし、シスターや子どもたちのいる場所より、
静かに話せるほうがいいだろうから、宿を尋ねると言ってくれ]
――ありがとうございます。
――神父様の、ご都合の良い時にお訪ねください。
[こんな状況だからだろう、神父も忙し気に見えて、
本来なら島民の為にいらっしゃる方、無理を言うのが忍びなく。
都合を聞かれれば、そう答えた。
姉が漏らした家族の秘密>>1:174は、そのせいで、
12年前、夜逃げのように島を後にし、
その後、両親が島民との接触を禁止した>>1:172もので]
―回想・1日目/教会―
[もしも、誰かに、漏れ聞こえたならば。
『誤解』から、
処刑票を投じられても、おかしくないだろう内容だから]
[本当は、二人きりになりたかったけれど、
話をしてもらえるだけでも、ありがたいと思えば、
それ以上は求められずに]
――回想・了――
─ 回想/黒珊瑚亭 ─
[ユリアン達が交わす言葉と視線、それに積極的に加わろうとしないこちらに誰か気づいたか。
話題を軽んじているつもりはなかったけれど、何処か上の空な部分はあって。
だからだろうか、カルメンとユリアンのやり取り>>50>>51もこの場では気付く事は無く。
半ば投槍に吐いた言葉を真に受けたらしいヘルムート>>52の視線に向き合った]
わかってるよ、んなこと。
大体言って馬鹿正直に出てくるなら、そもそもこんな状況作ったりしないだろうし。
[睨まれながら肩を竦め、現状が人狼にとって覚悟の上だろう推測を口にする。
だからこそ、この中の誰かが人狼だという事実を受け入れ難く。
力持つ者が表に出たらという話題にも踏み込めないでいたのだが]
─ 回想/黒珊瑚亭・二階 ─
[またね、というロミ>>72に手を振るだけで応えて二階に上がり。
部屋に戻ると、ズボンのポケットに入れていた羅針盤を取り出した]
…本当、難儀だよなぁ。
[自衛団員が来る前、エーリッヒが零した言葉>>55を思い返し、独りごちる。
確かに、力ある者が名乗り出た方が皆にとっての指針にはなれるだろう。
そうは思っても、今はまだ表に出ることを迷う。
自分が見たのはまだ一人だけで、その正体は人狼ではないのだから]
……今出ても、指針にはなれねーだろ。
[せめてもう一人、人であることを証明したい。
名乗りでた後、自分が見た彼女の身の安全を任せられるように、と。
願いを抱きながら、またあの深い眠りの奥にと落ちていって]
─ 回想/黒珊瑚亭・二階 ─
─────… っ
[目覚めは、やはり酷い倦怠感を伴うもの。
どれ位寝ていたのだろうとか、自衛団はもう来てしまったかとか。
案じるべきことは幾つもあるのに、それに気を払う余裕もなくただ驚愕に目を見開いたまま呆然と天井を見つめていた。
女の嗚咽>>68が聞こえることに気付いても、しばらく身体は起こせぬまま。
ようやく身動きが取れるようになって部屋を出て、鼻を刺すような臭いと落ち着かぬ空気を察し]
…誰が。
[シスターはヘルムートの指示で部屋から出された後>>75。
既にこの場から離されていたかもしれないが、まだ居たのならば彼女が手を下した事は一目で解ったろう。
部屋の中に入ればゲルダの遺体が目に入り、ぐ、と唇を噛む。
シーツに覆われた彼女に手を伸ばし、けれどかける言葉は見当たらなくて]
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