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─道具屋─
……そう。
ありがとう、ユーディ。
…レナの傍に居てくれて。
[エーリの言葉を黙って聞いた後、ユーディの頭を緩やかに撫でて。
ユーディに向けた微笑みをそのままエーリに向けた。]
…ごめん、エーリ。
ユーディ、送っていってあげてくれる?
[どのような返答が返ってきただろうか、それに対してはユーディのこと頼むね、とだけ返して。
二人が見えなくなるまで見送ると、店内に入って兄が作業していたらしい跡を見て、子供の頃母の狩りについていく兄が羨ましくて駄々をこねた時を何故か思い出した。]
…また、置いてかれちゃった。
─ユリアンの家─
ユリアン。
でも、
[でも。と、重ねかけて、黙り、]
─── ボクは、嫌な…子、だ、な。
[レナーテにも、エーリ兄にも。嫌われてしまう。と、自嘲のような泣き笑いを浮かべた。]
レナーテでなければ、
イレーネだったかもしれない。
…ユーディだったかもしれないんだ。
レナーテは。
覚悟を、していたはずなのに、
なのに。
…… 違っていたら、いいと、思ってしまったのだよ。
[ふる。と首を横にふる。]
…なでてもらえないのも、ふれてもらえないのも、
あの紅い目を、もう、みつけられないのも
いやで、いやで、さみしくて、
かなしくて、ひどく──くるしいが、でも
…っ、
[声が詰まり]
どう──して、レナーテだったんだ?
[声が尋ねて、ぱた。と、翠から滴が溢れて頬を伝う。]
どうして。
[答えの返らない問いを重ねて]
─道具屋 店内─
[思わず零れた呟きは、誰も居ない店内に思いのほか響いて。
堪えていた涙が、耐え切れずに流れ落ちた。]
兄さ…にい、さん…っ…
……おにい、ちゃ…んっ…!!
[名を呼んで、子供のように泣きじゃくって。
その場にしゃがみこんで、*泣き続けた。*]
どう、して、ボクは。
こんなに、未熟、なの…、だろう。
ボクだけが、悲しいわけじゃ、ないのだよ。
こんな、……
ボクの元には、確かに、
遺して──もらった、大事なものが、あるのに。
[ぎゅう、と服を掴む指が震える。]
どう、して、こんなに、
胸に…、穴が、あいたような、
気持ちが。するの、だか───…っ
[泣くを恥じるように顔を隠す様に、腕に顔を押し付けて]
う、ぁ、
[──その。]
ふ…、ぁっ、ぅ、ぁあ、…っ
[押し殺したような泣き声が続くのは、感情に振り回されることに疲れて、そのまま。──子どもの様に、糸が切れたように*眠りについてしまうまでの、間の事*]
[ユリアンの家にいたのは感情の波に耐えるミハエルだった]
[口にされる言葉一つ一つに抱く感情の重さが窺える]
[そうしてしまったのが自分かと思うと胸が酷く痛かった]
すまない…すまない。
苦しませるようなことにしてしまって。
何もしてあげられなくて…。
[ゲルダの気持ちが特によくわかる気がした]
[それでもと思う自分はなんて我侭なのだろうか]
[ユリアンに縋り泣く姿を見つめながら身体を震わせた]
ミハエルは何も悪いことをしていない。
嫌な子だとは思わない。
他の皆も同じはずだ。
[選び、かける言葉は、正しいものか、間違っているのか。
それでも気遣う心は、伝わってくれるだろうかと。
慣れない行動をする自分に、ずいぶんと変わったものだと思いながら、
ただ今目の前の少女は、あの時のことを思い起こさせて放っておくことはできなかった。
そのまま落ち着くまでの間は、ミハエルを撫で、その感情を受け止めるように。
やがて、抑えるように上がる泣き声も聞こえなくなり、眠りについたミハエルはベッドに寝かせた]
慣れないことは、難しい。
[椅子に座り、親友と顔を見合わせて、向こうの表情はどうだったか]
ゼルは、大丈夫か?
後悔の無い様に動かなくて。
[そう聞き、親友の答えを待ち、ゲルダがくれた最後のパンを*べていた*]
…独りだったけど。
[声だけは繋がっていた。]
あの時は寂しくは、なかったよ。
ただ、死ぬ事より、怖い事に気を取られていたから。
あの時は悲しくもなかったよ。
ただ、嫌だって怯えて、我侭言ってただけ…。
[そうやって残した言葉は傷を作ったんだと思っている。
罪悪感に捕らわれている、もう一人の死神憑きを想い目を伏せて。]
…しるし?
[刈られる花達の事は知らない。だからそう告げられても、首を傾げるばかりだった。
立ち去る背を見送って。]
[再び声が聞こえたのは、丁度外に出た頃か。]
………後でレナーテに聞いておくよ。
[そうぽつりと呟いて届かない声に応え。]
………。
[続いた言葉には、暫く黙った。
再び口を開くまでには、少し間が空いた。]
…私は。
差し伸べてもらった手を、上手く掴めなかっただけだから。
[自分の死神に刈り取られたのは、自分のせいだと呟いて。]
……ごめん、ね
上手く握り返せなくて。
怖いって怯えて。
弱くて――――。
[イレーネの呼びかけが届けば意識は少しそれた]
[離れていても届くのは兄妹の絆がなしたものだっただろうか]
[緩く首を振って自宅のある方向を見た]
ごめん…。
[胸元で手を強く握り合わせる]
[寝台に移され泣きつかれて眠るミハエルの髪に手を伸ばした]
[触れることのできない頭をそっと撫でるようにして戻す]
…それでもどうか…少しでも幸せに…。
[紅瞳は瞼の下に隠されている]
[唇から祈るような声が細く*搾り出された*]
………。
[これでよかったのかと、また自分に問うような声が聞こえた。
無言のままでいれば、今度は違う言葉が届く。]
………………。
[家の壁に背をつけて、目を伏せた。]
怒ったりしない。でも。
忘れて……。
[伏せた目を、ぎゅ、と*閉じた。*]
―道具屋―
[抑えていた分の反動は大きくて、気持ちは中々静まらなかった。
けれど、支えてくれる手があたたかくて、それが安心できたから。
自分を呼ぶ、別の声が聞こえた頃には、大分落ち着いていた]
……レェ、ねえ。
……うん。少し、話し、してた、だけ、だけど。
[側に、と言う言葉に、小さく返して頷く。
イレーネに頭を撫でられると、にぃ、と目を細めて、その微笑みを見上げた。
笑っている様子が、逆に寂しそうで。
先に言われた事の意味が、改めてわかった気がした、けれど]
……レェねえ。
お代、明日、持ってくる、から。
[何をどう言えばいいのかわからなくて、結局、言えたのはこんな言葉]
あ……そうだ。
みんなに、報せないと、だね。
[事態を知らぬ者の方が少ない事は知らない。
だから、ごく自然にこう言って]
……大丈夫、ちゃんと、立って、歩けるから。
行こ、リィにい。
[歩けるかと問われたなら、笑ってこう返す。
翳りはまだ、あるけれど。
浮かべた笑みは、自然なもの**]
─道具屋─
[イレーネがユーディットを撫でる様子を眺め。送ってあげてと言う言葉には]
それは構わないけど…。
───分かった。
[大丈夫かと言いかけて、向けられた笑みと続けられた返答に言葉を飲み込んだ。今は一人にした方が良いか、と言う判断。腕の中に居る少女の方が比重が大きかったのも少なからずあるが]
ユーディット立てるかい?
無理そうなら、運んであげるけど。
[言うが早いかユーディットを横抱きに抱え上げて運ぼうとするが、歩けると言われて少し残念そうにしながらそれは断念し。向けられた自然な笑みに安堵を覚えつつ笑み返し了承の意を示して、ユーディットに寄り添う形を取る。一度、案ずるようにイレーネに視線を向けてから、ユーディットと共に道具屋を後にした]
報せるのもそうだけど、ユーディット、休まなくても大丈夫かい?
[提案を受けて気遣う言葉をかける。それにも大丈夫と返されたなら、他の者が居る場所の当たりをつけて、報せに向かうことになる*だろう*]
[『もう一人』の様子が気になって、自分もユリアンの家へ行こうとしたら、泣き声が聞こえたのでそちらに意識が飛ぶ。
たどり着いたのは、白雪亭だった。
一人泣くベッティの様子を少し見ていた。
ウェンデルはそれを見ていたかどうか。
誰も居ないようなら、そっと近づいて頭を撫でるように動かした。]
辛い想いは、時や、周りの人に少しずつ取り払ってもらうしかない…。
[もう一つ、解決する方法はあるが。
それは一時の痛みでは選んでほしくない道だった。]
[暫くベッティの様子を見た後、再びユリアンの家へと戻ろうと外へ出。
途中でウェンデルに会うようなら『ベッティが泣いていた』と伝えた。
それからユリアンの家へたどり、中を覗いた。
ユリアンとミハエルのほかに、ゼルギウスが居た事に少し安堵を覚え、何か話している二人を見ていたが。
ミハエルが眠る寝台の横で固く目を閉じ、泣いているようにも見えたレナーテの頭を、手を伸ばしいたわるようにそっと*撫でた。*]
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