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うん。
そんなには、かな。
[焦る様子が少し面白かったから、追いうちをかけておいた。
川に、という言葉を聞いて、頷いて車輪を回す。
小石が多い道は、カタカタと良く揺れて、少しだけ危険なのだ]
…オリガが元気そうなのは、良かった、な。
覚えてるか?
[昨日のユーリーとの話し。
自分より二日酔い酷そうな彼女はどうだろうと、
小道進みながら問いを置く]
[ロランが川に行くというのを止めるわけもなく、いってらっしゃい、と笑顔で見送る。
見送った後、ふとキリルを見て]
あの子二日酔いって言ってたけど大丈夫かしら。
[ちょっと心配そうに問いかけた。
まぁ、大丈夫だろうと結論づけるのもすぐあとだったけれど。
マクシームにもひらひらと手を振り(もちろんそこに名残惜しそうな振りなどはなかった)、キリルの言葉を聞く。
家へと向かいながら、そうねぇ、なんて話しつつ]
キリルは可愛いし、まだ若いもの。そんなにたくさん必要はないと思うの。
チークとか、アイシャドウとか、マスカラとか。
大丈夫よ、とても簡単。
[囁く声に返すのは、こちらも小さく落とした声。
それでも少しからかいも混じる]
あとは口紅とか、グロスとか。
キス、しちゃいたくなる感じ?
うぐ。
……うー、何言ったんだあたし……
[追い討ちをかけられてうなる。
思い出そうにもふにゃふにゃとした言葉しか思い出せなかった。
ロランが操る車椅子の隣をゆっくりと歩く]
あー……オリガの話がでてたのは覚えてる。
元気そうだっていうことぐらいまで、だけど。
[小石を車輪がはじく音を聞きながら答える]
都会でがんばってるってすごいよねえ……
[家にたどりついたら、広間にまずはもらった花を飾る。
そこで待っていて、と言って、木箱をもってきて、
まずはいろいろと説明するのだろう。
使ってないのがほとんどの化粧品は、けっこうな量がある。
聞かれたら使用用途を全部答えたり。]
でもほんと、もともと可愛いから、どんな色も似あうわね。
好きな色はある?
あなたのでも良いし、可愛いって言ってほしい人の、でも。
[最終的にそんな風に問いかけるのだった**]
…秘密。
[大した事は言っていないけれど、面白いので。
たてた人差し指を口唇の前に持ってきて見せた。
無表情な中に微かに混じる楽しげは、きっと彼女には判るだろう]
うん、すごい。
…カチューシャには手紙とか、来てる?
[自分には来ていないけれど、女の子の繋がりとは濃いものだろうと思うから、ふと、問い投げつつ。
川が見えれば石が少し大きくなって、車輪回す手に力が入った]
カチューシャは、出たいと思った事、ある?
[ぽつり、落とす]
うぐぐ。
……こんなことで楽しむなんて、ロラン性格わるくなったんじゃない?
[秘密ですなポーズをするロランに、恥ずかしさ半分悔しさ半分でうなる。
楽しそうな様子が見て取れるのはいいが、自分のネタで楽しまれるのは複雑なのだった]
手紙は、たまーに来るよ。
季節に一回、あるかないかってところだけれど、ね。
[川を流れる水の音が大きくなるにつれ、砂利も大きくなり。
車椅子が難儀しそうな石が見えれば、ちょい、と蹴り飛ばしたりする]
んー――
[聞き逃しそうな問いかけに、一つ瞬きをしてロランを見た]
あんまり、ない、かな。
都会にいってみたいとは思うけど、住むならやっぱりここがいいし……
あたし、きっと都会じゃ暮らしていけない気がする。
[しばらく考えたあと、ゆっくりと首を振った]
ん。酷いようなら兄貴に薬をお願いするけど…
[緩く首を傾げて、幼馴染の車椅子を見送った。
よもやその先に、更に酷い二日酔いの主がいるとは思いもよらず]
?チーク?マスカラ……??
[イライダが口にしたのは、早速の謎の単語の数々だ。
説明を受けて、なるほどと思う…が、不安が過ぎった]
ボク、変な風にしちゃうんじゃないかな…。
[睫に色を乗せると言われれば、最早想像の外の話だ]
…俺はもともと性格悪いよ。
[カチューシャの言葉に、また口の端をあげる。
手紙が来る、には そっか、とだけ返して。
ちょっとだけ、また、幼馴染の男女の疎外感を感じたりした。
石を蹴飛ばしてくれるのを見て僅かに表情和らげて。
瞬きの後の視線が絡むのに、首を傾けた]
そう?
料理も出来るのに?
[暮らしていけない気、というのはそちらの心配なのかと
問いを重ねた。
小道を抜け、水音が目の前に広がる。
陽光跳ね返してキラキラ光る澄んだ水は、きっとまだ冷たい]
─ イライダの自宅 ─
[イライダの案内で家にお邪魔して、
ちょっと落ち着かない気分のまま、そわりと辺りを見渡した。
訪ねるのは初めてじゃないけど、でも、こんな用件で来たのは初めてだ]
え…、これ全部化粧品なの!?
すごい。ええと……
[箱から取り出されたカラフルな色の洪水に圧倒される。
目を白黒させたボクが、彼女の手解きの上で手にしたのは、
淡いピンクが春らしい可愛らしい色のリップだった]
似合う、かな。
[恐る恐る唇にリップを引いてみる。
薄化粧の鏡の中の自分は、何だかちょっと別人のよう。
うっかり恋人の顔を思い出したボクは、
何も言われないくせに、鏡の前で真っ赤に*なった*]
開き直られたっ。
く、昔はもうちょっと優しかったのに……
[大袈裟にショックを受けて見せる。
オリガから手紙を貰っていないことを知らないから、疎外感には気づかなくて]
料理が、とかじゃなくてね。
きっと都会に住んでも村が気になって結局すぐ帰ってくる気がする。
あ、あたしの目的はアレ。
ロランはなにを?
[こぼれた本音をごまかすように言葉を重ね。
指し示した目的の香草はちょっとした群生地をつくっていた。
穏やかな水の流れの川べりは涼しいというよりすこし寒い]
[大袈裟なカチューシャの仕草に、思わず頬をあげる。
なんとなく気恥ずかしくて、口元を手で隠した。
都会へと向けた言葉に、ん、と喉を鳴らす。
気になって、というのは、料理を持ったた彼女の母を思い出したりもして]
ん。
…此処は、知ってるひとしかいない、からね。
[ぽつりと落とされた小さな声に、同じように小さく。
水音にかき消されない程度の言葉を重ねた]
[続く言葉に、香草へと視線を向ける。
そか、と頷いて自身は川の縁へと視線でさして]
俺は川底でナイフを研ぎに。
昨日の鹿皮、なめす為。
[香草の方へ向かうなら、気を着けてと声を重ね。
自身は川の端の流れ弱く浅い所へと、車椅子を進める心算**]
[気恥ずかしそうなロランの様子に、やったとでもいうようににやりと笑う。
けれど小さく重なる言葉にちょっと視線を外らし。
知らない人を怖がるなんてまるで子供みたいだとも思う。
死んでしまった旅人にだって、話を聞くようになったのは滞在した最後のほうだったのだから]
――うん。
[それでも、そんな怖さを認めてくれるような気がして小さくうなずきを返した]
そっか。
ロランこそ、気をつけて。
[香草のほうへと足を向け。
車椅子で川に入る幼馴染を案じる言葉を向ける。
川の傍の群生地だから、作業をする幼馴染の姿を視界にいれつつ、香りの良い香草を積み始めた**]
―― 川辺 ――
[何時もの大きな岩へと車椅子を寄せ。
その脇の岩に体を移して、寝そべるようにして川底へ手を伸ばす。
底の石へと手を伸ばし、作業用のナイフを研ぐ。
似た石を持って帰って家でやっても駄目なのだと、
祖父は言っていた。
実感できるほどの腕は無いから、愚直に従うだけ]
…ん、
[川の水は冷たい。
肘までつけて、浅いその底でナイフを研ぐ。
革の入れ物に入れて来た数本を順番に手に取り、
器用にそれらを入れ替えて行く。
視界の向こう
カチューシャが見えれば濡れた手を振ってみせたりした]
― 川辺 ―
[趣味で作るポプリだから、それほど量は必要ない。
乾燥させるとさわやかな良い香りを出す草をひとつひとつ丁寧に摘み取り。
ふと視線を上げれば、手を振るロランが見えて小さく笑む]
あぶないよー。
[川で刃物を研ぐ理由はよくわかっていない。
それでもロランの祖父もやっていたから、なにかあるのだろう程度で深くは気にせず。
足が不自由な幼馴染が一人で川に行くのは心配だったから良くくっついてきてはいた]
だいじょうぶ。
[良く付いてきてくれていたカチューシャには
水音にかき消されるかもしれない声は、口の形だけ。
それでも少し表情和らげて手を水から引きぬいた]
ん、終わり。
[そこそこ長い時間をかけて、全てのナイフを研ぎ終わると
腕の力で半身を起こし、置いてあった車椅子へと移動する。
先にナイフおさめた革袋を椅子へと放り、体を乗せようとした時
つきり 目の奥の頭が痛んで眩暈に耐える。
車椅子の手摺を掴み、体重をかけた]
ガシャアアン!
[高く、大きな音が響く。
車椅子が石の上、ひっくり返った。
支え無くしたロランは、そのまま石の上に尻もちをつき。
ばしゃんと大きな水音がして、動かぬ足が水に落ちた]
[水音にまぎれるような声はかろうじて届く。
和らいだ表情までは見えなかったけれど、にこりと笑みを返して香草摘みに戻った。
小さな籠が三分の一ほど埋まったところで手をとめて立ち上がる。
ロランのほうを見れば彼も終ったところのようで]
大丈夫かなあ……
[車椅子へと戻るときはどうしても心配になる。
そして――]
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