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─回想/村の通り─
[一緒に行くというのを受け入れられ、共に歩き出そうとしたところに、ユーディットが現れる。
僅かに震える声と一瞬覗いた泣きそうな顔に胸が締め付けられる。
だが、泣くことなく、無理に作った笑顔で駆けて行くユーディットに]
……ユーディットは、強いな。
[ぽつり、呟きが漏れる。]
―自宅―
ああ、ウェンもなのか?
[目を覚まして、夢のことを思い出しながらつぶやく。
どれくらいの時間が経ったか、それほど経ってなかったかもしれない]
[その後は、ゼルギウスの家に二人で赴き、2人の消失を伝える。
ウェンが目の前で消えたことを告げる際には。自然視線は下に落ちていただろう。
そうして、ミハエル達にもこのことを伝えると、ユリアンに伝えてくる、とミハエルは走り去ってしまう。
それらの間、エーリッヒの少し後ろで僅かに視線を落とした状態で付き従っていたわけだが、レナーテから声を掛けられると、僅かにぎこちなさの残る笑みを浮かべると、]
……ううん、大丈夫。まあ、確かにショック……ではあったけど。
何時までも凹んでたら……ウェンくんも浮かばれないし、ね。
[気丈にそう答えた。]
―村の通り―
[持ち物はいつもの応急処置用の薬だけだった為、自宅を出るまでにはそう掛からなかった。
決して軽くはない足取りは、パン屋の近くまで来て一度止まる。
前方、道の中央をじっと見つめて。
首を動かして、パン屋の方にも目を向ける。
それから暫し瞑目をし]
行くか。
[目を開いて、再び親友の家へ向けて歩き出した]
[それを聞いて安堵した様子のレナーテを見送ると、イレーネが木苺を勧めてくる。]
あ…………うん。ありがとレーねぇ。
[ああ、気遣ってくれているのだな、と思いつつ、ありがたく頂戴する。
口に広がる甘みが、陰鬱な気持ちを少し和らげてくれた気がした。]
[そうしていると、エーリッヒがやらなきゃいけないことがあると言い出す。
エーリッヒの確認の目線には、ふるふると首を横に振り、]
……うん、いってらっしゃい。それと……ありがとうね。
[そう言って、立ち去るエーリッヒを笑顔で見送った。]
― →ユリアン宅―
[ユリアンの家の前で一度、扉を見上げる。
息を吐いてから、2回ノックをして]
居るか?
[中に向けて声を投げた]
―自宅―
[お茶の用意をして、ゲルダからもらった包みを手にした]
最後にもらったのがまだ、まともなパンなのが救いか。
[親友がきたのは丁度その頃だっただろうか]
─自室─
ん、こんな感じ、かな?
[呟いて、土台を横に置く。
左上は濃く深い蒼、右下は柔らかな緑の、布で作られた円。
それを一度横に置いて、ここまでで作った細工を確かめ、新しい糸に手を伸ばす]
……あー、お代。
レェねえたち、もう、戻ってるかな。
[ビーズの内訳を書いたメモに、小さく呟いて]
にぃ……また、歩き回ったら、怒られる、かなぁ……。
─自宅─
[いつものように革を剥ぐ]
[肉は薄く割いて網に並べ裏へ干した]
本当は、恐くもあるのだろうな。
[気丈な少女達の声を思い出しながら壁を見つめる]
[睨むように注いでいた視線をふっと和らげた]
[ピシャリと自分の頬を叩き家の中に戻る]
─自室─
にー……。
[悩みながらも手は動かす。
蒼と碧が継ぎ合わされて花として開いてゆく]
お代はちゃんとしたい、けど。
……にぃ。
[別れ際に一瞬だけ見えた、心配げなエーリッヒの表情。
いつも通りにしていたつもり、だけれど。
抑えているものがあるのに、気づかれたかもしれない、と。
……そう思うと、外に出るのもいささか気が重かった]
―自宅―
ゲルダの残したパン、食べてく?
[お茶をゼルギウスの前に出しながら、見せた包みに入っているのは甘いパンが四個]
新作じゃないまともなやつ。
[薦めながら自分は、一つ手にして食べ始めた。
親友と接する態度は普段と、ほとんど、変わらない風に]
─自宅─
[しばらくの間は絵に必要な残りの染色液の調整をして。一区切りついたところでふと、視線をキッチンへと向けた]
……うん、そうだった。
[キッチンに置きっぱなしだったゲルダがくれたパン。そのうちの一つである蜥蜴型のパンを取り出し口にした]
…ん、辛みが利いてて美味しい。
俺の好みで赤い粉って言ったけど、これなら黒い粉を混ぜてもまた違った味になって良いかも。
見た目のインパクトもあるし、商品として出しても十分通用するね。
[いつも試食した時と同じように感想を口にする。次いで緑キノコ──「美人髪」を使用したパンを口にして]
……お、キノコの歯応えが新鮮。
付け合わせ程度で載せるなら、このくらいで丁度良いかも。
でもキノコで味が薄まるから、肉の味をもう少し濃くしても良かったかな。
[先と同じように感想を口にして。どちらも食べかけの状態のまま、キッチンのテーブルへと置いた。軽く眉根を寄せた後、右の掌で顔全体を覆うように当てる]
……感想遅くなってごめん、ゲルダ───。
[まだ聞いているかも知れない、ユリアンが言ったその言葉を信じ口にした感想。それが届いたかどうかを知る術は無かった]
……に。
悩んでても仕方ない、し。
心配事があると、気持ちも散るし。
やっぱり、先にお代、きちんとしとくのだよ。
[幾つ目か、花を咲かせたところで、結論はそこに落ち着いた]
……そしたら、後は、大人しくしてればよいのだし。
[最後が微妙に後ろ向きなのは、ともかく。
作りかけの細工は丁寧に、最終的な配置の形に並べ。
母に、道具屋に行く、と声をかけるととてとて、外へと歩き出した]
―ユリアン宅―
[いつもの部屋に通されて。
お茶の次に見せられたパンと親友の言葉に、一瞬黙った]
ああ。
[頷いて、手を伸ばす。
パンを食べ始めるユリアンは、いつもと同じに見えた、けれど]
……ゲルダは、
[1つを手に取って]
お前と、同じだったんだろ?
[その顔を見ながら、静かに問うた]
─自宅─
[机に乗っていたパンを一口分だけ千切った]
[木苺の味が広がるこれは狩りにもよく持って行った]
[何度も何度も噛み締めて味わいながら食べた]
他にやっておきたいこと。
そうだな…。
[片腕で抱える大きさの壷を道具屋の方へ運んだ]
[一度品台の上に置き「薬師宛」とメモを書くと蓋に挟む]
[同じと、パンを手にした親友の問い]
死神に憑かれてた。
[頷いて答えた後に]
どこでわかった?
[問い返しながら]
ああ、無理には答えなくてもいい。
─村の通り─
[通りのあちこちで、ひそひそと村人が囁きを交わす中、ヒカリゴケや茸照らす硬い土を掘った道を勢いをつけて走り抜ける。できるだけ──呼吸が止まりそうなぐらいの。走ることしか考えられない速度で]
……
[ユリアンの畑と家が見えた距離で、
は。と、詰めていた息を吐いた。
息が熱くて、呼吸が困難で、肩が上下する。]
最後にゲルダ、すごい悲しんでた。
寂しがってた。
結局、力になってやれないままだった。
[ぽつりぽつりと語り、パンを一口]
むしろ、悲しませた、のかもしれない。
そのまま、憑かれた死神に刈られていった。
殺したような、もんだな。
─村の通り─
[二人が木苺を手に取るのを見ると、少しほっとして。
自分も一つ二つ口にしていると、エーリが戻ると言ったので、ベッティの顔を見、それからエーリの方を見て頷いた。]
うん、まかせて。
…エーリも、無理はしないで。
[そう、離れる背に向けて。
顔はエーリの背を見送ったまま、ベッティに声をかけた。]
…いつまでもここじゃなんだし。
送ってくよ。
─ユリアンの家─
[前に駆けつけたときと同じか、それより荒い呼吸のまま、
こんこん、とノックを二つ]
ユリアン?
[呼吸が整わない間に、声を掛けた。
耳元を血流がすぎる、ごう、という音が煩くて
中で交わされる会話はほとんど聞こえない。]
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