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[死した世界は、どこか懐かしい感覚を覚えた。
暗闇、夢現に横たわっていた、幼い日の感覚に似ている。
ただあの時と違うのは、見ることが出来るのは確かな現実だということ。
紅の眸は、自らの抜け殻と、その周囲で起こること
―――……主に妻のことを静かに映す。]
ん……―――
[暫くして、少し困った顔をして、声ともつかぬ声を漏らした。
聴こえるコエに返す手段がないのは、幼い日、妻に会う前に似て。
そして]
あっ……―――
[傾ぐ妻の身体に手が届かないことが、死ということを識る。
幼い日、生きていたからこそ光の中に行けたけれど
もう、それは叶わない。]
[きゅっと――最期の時、妻の腹部に触れ、
そこに息づく生の感触が未だ残る手を握り締めた。
自分の代わりにライヒアルトが妻を支えるを安堵して見、
何故か聴こえるままの紅い2つのコエ、その内容にしゅんと項垂れた。]
ごめんね。でも……―――
[言い訳はやはり2人には届かなくて、莫迦と単語が聴こえれば、
膝を抱えて座り込み、指先でのの字を何度か書き連ねた。
けれど、妻が部屋へと移動するならば、
ふわふわと生前と同じくその傍をつけて、
触れること叶わぬを知っていながら、
寝台に投げ出された手に手を重ねる仕草を。]
ううん。違うんだよ。
君が光ある世界に連れていってくれなかったら
私はもう、とっくの昔に死んでいたと思うんだ。
――……私は幸せだったんだよ。
[聴こえるコエに、届かないと判っていながら紡ぐ言葉。
まるでそれが届いたかのように、代弁してくれるは妻と子を託した人。]
もし、後悔するとしたら、今、妻を泣かしてしまったことかな。
私が傍にいなければ……って、
謂ったら怒られるの判ってるから謂わないけど。
[明らかに言葉にしながらも、やはりそれは届かない。
交わされる会話に、唇が微か動く。
それは暗闇の世界でも音にならない問いかけ。]
[その問いかけの返しのような妻のコエに、ふっと無邪気に微笑んだ。
その後、話題はアーベルのことに移り変わって。
2人よりは彼との繋がり薄いゼルギウスは、
しかし2人に近かったからこそ、2人の想いは識れた。]
ん。流石に結婚前くらいには気がついてたんだけどね。
2人から華うばっちゃったんだなぁって。
[その中混じる、妻の幼馴染からのあてつけのような言葉に
とてもとても複雑そうな貌を浮かべた。
判っていたからこそ、妻と子を託した。
子に関するあれこれに是と示したのも、その辺り色々想うこともあるからで。]
…、……―――
[複雑な心境は沈黙に沈め、ふわふわと生前と変わらず白銀の姿は妻の傍らに。
死した世界の者が、イレーネの在る傍にくることあらば、用意に見つけることができるだろう*]
―宿屋・自室→食堂―
[朝、いつの間にか寝てしまっていたのかと、飛び起きるように、
その日は珍しく、起きる時間が遅かっただろうか、食堂につくとすでに皆がいて]
遅くなってすまん、おはよ。
[クロエの死を聞かされるのはそこでか]
クロっちも……か……
ゲルダが悪いわけじゃ、ないからよ。
[ショックな様子のゲルダに、そう言葉をかけて、拒まれないならそっとその頭を撫でるだろうか。
それからミハエルに飲み物を頼まれて]
あ、ああ、そうだな、気が利かなくて、すまない。
[立ち上がり、用意したミルクティーはゲルダとミハエルの前に、
他に望むものがいるならばそちらにも差し出した]
―宿屋・食堂―
[それから程なくして、ゲルダから聖痕のことを明かされて]
ギュンターと同じやつ……?
そっか、ゲルルンは人間でいいんだな?
[周りのみんなの反応や言葉からもそれでいいのだろうと知ることができるか、
謝る様子には自分は首を横に振り]
これで、幼馴染全員、人狼じゃなかったって、知ることはできたしな。
[けどそれはゲルダも同じように、他の幼馴染と同じように死ぬかもしれないということで]
二人とも、人間なんだって、自衛団員のやつもわかってても…なのか……。
[クロエの死体の一件を思い出しながら、そう呟いた。
死体をそのままにできないというのはわからなくもなかったが、納得はできなかった]
―宿屋・食堂―
[アーベルはライヒアルトを呼びに、ミハエルは自室へと向かおうとするゲルダを追って、
イレーネの姿はどこにあっただろうか。
行きたい、どうにかしたいと願いながら、自分は結局どっちについていくこともできなかった。
ゲルダについていくことができなかったのはあることが思い浮かんでしまったため]
自覚がない…自分がってことも……あるかも…しんねぇのかな……
[無意識に呟いた言葉、誰かに聞かれたかもしれない。
ここにあるのは自分の知らないこと、わからないこと、ただそればかりで、
自分が何か置き去りになっているような、そんな感覚から生まれただけの妄想だったのかもしれない。
でも、そのことに疑問をもつ要素も、今の状況ではなかった。
一人食堂に残る結果になったかもしれない**]
[ミハエルに気遣われると、娘は有難うと感謝しきりで。身の上を心配して呉れる様には曖昧な返事を返す。>>88]
あ、ミハエル君御免ね、ちょっと独りで考えたい事があって
―――…纏まったら直ぐ戻るのだよ
[やんわりと断りを入れて独りで階上へ向かう。別れ際に少年の肩をぽふと叩いて、大丈夫だからと付け加えた。]
― →自室 ―
…ゼルギウスさんが亡くなってしまったから、
もう確かめることは、出来ないかな…
[彼の真偽を問う事はもう出来ず。そも、彼が此処に来るずっと前から妻の正体を知っていた可能性も否定できないのだが>>2:126>>57]
アーベル君に聞いても…はぐらかされちゃう気がするな
……昨日、一体二人で何話してたのだろう
…ライヒ君なら教えて呉れるかな
[ゼルギウスが彼を白だと云うのをミハエルから聞いた事を思い出し、思い立つとベットから降りて階下へと先ずはライヒアルトを探しに行こうと。]
― →宿/食堂 ―
[階下へ向かうべく娘は階段を降りようとして。
下に居るものはその足取りが危ない物に見えただろうか。
――日々重ねられた心労が祟ってか、脚を下ろそうとした途端。]
……え、っ、あ、
―――きゃあああああああっ!?
[娘は派手な音を立てて階下まで転げ落ちて。腰や脚を強く打ったのか痛みに耐えきれず、苦痛を貌に強く滲ませて。如何することも出来ずに蹲り、もし音に駆けつけて呉れた人の中にライヒアルトの姿が有るならば、申し訳なさそうな表情を向けていた*]
―朝―
[目が覚めたのは常よりほんの少しだけ遅い時間。
自分とアーベル、そしてイレーネとゼルギウス。
アーベルが村を出る前の、ある日の夢を見た。
懐かしくて、そしてピースが欠けたその喪失感に
朝が来るのだと知りつつも中々目を起きられなかった。
両親の居ない寂しさを埋めて呉れた彼らとの時間。
――当人がそれを自覚しているかはさておき、
ライヒアルトにとって其れはかけがえのないものだった]
――…ン、ぁ。
[夢が終わる。
深緑が天井を仰ぎぼんやりとした声を漏らした]
―朝―
[聞こえた同胞の聲>>91に柳眉を寄せる。
懐かしくも優しい夢の名残は一気に消え失せた。
一人きりの個室で深く息を吐く]
――…グラォシルヴ
[光の名を持つ漆黒の獣の化身は同胞の名を呼ぶ。
彼の伴侶が呼んでいた愛称で呼ばぬのは
彼と自分の立場を明確にわける為でもあったが――]
お前さんもあの気配、感じたか。
あいつ、誘いの手を拒絶しやがったが……
簡単には諦めねぇよ。
別の手を使うまでだ。
[内容を告げぬまま紡ぐ聲は何時もどおりにも聞こえよう。
けれど、誰にも見えぬリヒトの貌には苦いものが浮かんでいた]
―朝―
[部屋を出るとクロエの死を知り嘆くゲルダの声が聞こえた。
仮令疑われていようとも――
アーベルがその事実を告げているかも知れぬとも
自分には偽り続ける道しか残っていない。
昨夜逝った仲間の代わりに、守らなくてはいけない者がいた。
クロエの部屋の入り口で立ち止まる。
誰も見ていなくとも、青年の表情は驚愕の態]
――…っ、今度は、クロエかよ。
[小さく紡ぎ瞑目する。
銀色に輝く十字架を握り締め青年はクロエに向けて聖句を綴る。
やがて自衛団が彼女を連れていった。
嘆き取り縋るゲルダを連れ出すミハエルに
気付かれずとも小さく頭を下げる]
―宿屋・食堂―
[ミハエルに顔を覗き込まれれば、それまでそばにいたことすら気づかなかったのか、
それだけぼーっと、まとまらない考え事をしていたらしく]
おわっ、なんだミハエルか…。
[一度驚いてから]
乙女の悩みってやつだよ。
[心配かけないようにと、笑いかけてみせるだろうか、その話題もゲルダの悲鳴ですぐにうやむやになるだろうか]
ゲルダっ!
[ミハエルよりやや遅れたのは椅子に座っていたからで、途方にくれるミハエルの背を一度ぽんと軽くたたいた後、ライヒアルトがその場にいなかったなら、ミハエルに呼んでくるように頼むだろうか]
ゲルダ?どっか痛めてないか?立てるか?私の声は聞こえるか?
[自分はゲルダの様子を確認するように、そう心配する声を*かけた*]
[それはゲルダの宣言がある前の話。
アーベルの存在に気付いた深緑が一度瞬かれる。
やはり彼だけは殺したくないと思ってしまう。
その、思いに気付けば微かに柳眉を寄せた]
――…話があるのはこっちも同じだ。
[短く声を返して蒼鷹を連れる幼馴染を見送る。
人目を避けるなら、共に行くのは拙いだろう。
昨日の一件で青年はそれを学んでいた。
タイミングをはかり、人の目を誤魔化して
青年は幼馴染の居る厩舎へと向かう。
――人ならざる獣に彼の匂いを辿るのは簡単な事だった]
―厩舎―
[厩舎に行けばアーベルに歩み寄る。殺気などありはしない。
幼馴染を殺す心算など今は無いのだから。
人の気配が他にないことを確認してから口を開いた。
潜められた声は微かに低くある]
話、だったな。こっちからさせてもらうぜ。
お前は全て知ったんだよな。
[同胞に聞かされて知った事があるからそう切り出し]
――…裏切りたくない、ってお前さんは言ったな。
なら、裏切りたくない奴が殺されても良いのか?
俺ともう一人を同時には殺せまい。
靡かねぇなら、お前さんの裏切りたくない奴、殺すぜ。
アーベル、お前は喰らわれず、残るだろうよ。
[身重の彼女が狩れる相手は限られていよう。
それに漆黒にもまた幼馴染を狩る気などもうないのだから**]
―厩舎―
アーベル。
――…誰か一人、お前の手で人間を殺せ。
[誰が人狼で誰が人間か。
理解できているだろう幼馴染にそう囁く。
ライヒアルトの眸には真剣な色が滲んでいる。
勝負事になど関心の無かった男が一世一代の勝負を仕掛けた**]
―宿屋 個室―
なにを……
[するの?と。
その鬣の如く灰銀の名を持つ女狼が問いかけるが、同胞は明確に答えを返さなかっただろう。
名を略されずに呼ばれる事は慣れていたが、彼にどんな意図があったにせよ、それが無意識に同胞との間に一定の距離を作っていた事に、自身は気付いていない。
変わらないコエに、ただ一言「気をつけて」と囁いて。]
―宿屋 廊下―
[目の腫れが少し引いた頃。廊下にでて、人のいる方へと向かえば、そこは一番血の匂いの濃い場所でもあり。]
……クロエちゃん。
[奥に眠る彼女を見れば、言葉が零れた。
憔悴した表情は、夫を失ったばかりな為に偽りのないものだった。
夫よりは嘘をつくに長けて、だが同胞のように演じるには少し足りない自分は、殆んどを誤魔化したりまぎらわしたりでやり過ごした。
そしてそれはこれからもきっと変わらない。
亡骸にすがるゲルダと、手を差しのべるミハエルを見てそっと目は伏せられ。
幼馴染みらが言葉を交わすのは聞いていたが、どちらにも視線は向けられなかった。
自身はゲルダらに付き添い、一度食堂へと。
そこで彼女の告白を聞けば、表情には驚きが浮かぶ。
それは傍目には彼女が刺青を持っていたことに対してにみえるだろうが、実際は合点がいったとうものだった。]
―宿屋 食堂―
(………ああ、だからミハエル君は、ゲルダちゃんを一番に信じてゼルのことを話したのね)
[声には出さずに思う。ずっと引っ掛かっていた事柄に、ようやく答えが得られた。
飛び出した彼を追いかけて行き彼にたどり着いたのはゲルダ、ベッティ、クロエの3人…と、同胞から聞いていた。自分があの中で信を置くとしたら、唯一能力者として名乗りをあげたクロエだと思っていた。それをあえて彼女にした理由に、引っ掛かりを覚えていたのだった。]
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