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―東殿・回廊―
[丁度、戻れば爺さまが自分の名前を呼んでいて。
ひょっこり顔をだせばぎょっとされた。
ブリジットまで倒れているのには微かに表情が翳ったが。
傷、ではなかったので、とりあえず先に懸念していたエーリッヒの傷口に手を当てた。
有機と無機が混ざり合い、無機が腐った故に影響を受けた有機。
無機に自分の力が通用しない事は実戦済みで。
思うように回復は進まない。有機は回復しても、いくらか後には再び無機の腐食の手が伸びてくる。
あるいは、本性を解放すれば何とかなったかもしれないが、それはもう使えない。]
む、拙いな。
腐食部分周辺まるごと切り落としてから、癒せばいいんだが。
[それはどんな影響出るか分からないので却下されました。]
[机に突っ伏すティルに心配そうに、声を掛ける。]
ティルティル。どうしたでございますですか。
つらいなら、休息が取られることを望みます。
[そして、エルザからの食事の必要の有無についての問いには]
無問題でありました。わっちは食事を必要としないモノじゃけん。
[そう答えて、エルザの動くの見たり手伝ったり*していた*。]
―東殿・回廊―
[微かな命の侵食に気づいたのは、命竜故か、あるいは有機部分にある琥珀の光故だろうか。]
…あとは周辺凍らせてれば何とかなるかも、なんだが。
[ちらと氷竜を見るも、目覚める気配はない。
目覚めた所ですぐ力を使えるかどうかは怪しく、また通用するかもわからなかったが。
傷つける以外の方法で現状、腐食を止める手が見つからない。
はーーと盛大に溜息をついてから。]
…わーった。エーリッヒが目ぇ覚ましてから自力で何とかするまで俺がついてるわ。
[それは定期的に侵食近い部分に回復を入れるという事で。]
―東殿・回廊―
[ナターリエは気まぐれにどちらかの手伝いを進み出たようだった。
氷竜はザムエルに任せ、自身と、ナターリエがいるなら水と共に、エーリッヒと落ちた左腕、壊れた機械竜をつれ部屋まで運んで、ベットに降ろす。機械竜と腕はテーブルに置いた。
その後ナターリエがどうしたかは不明瞭だったが。
とりあえず自分はエーリッヒが目を覚ますまで、定期的に傷口に手を当て、有機部分の傷を癒し続けるだろう。]
―東殿・氷竜の部屋―
[ナターリエが居るならば、少しの間水に任せ。
居ないのであればこっそりと一人、一度部屋を抜け出し向かうのは氷竜の部屋。
案の定というか何というか。爺さんは床にぶっ倒れていたので、やーいやーいとかこっそり指は差しておいた。
差しながらも、さてどうしようかと思案する。
正直、爺さまを別の部屋に運ぶのはしんどい。
仕方なく、開いた部屋から余った毛布を引きずりだし、氷竜の部屋に持ち込み爺さまの下に引いてベッドの代わりにする。
ザムエルを運ぶ途中で、黒い腕輪に触れた。
いつかと同じように腕輪の反応は無く。
それは己が受けた揺らすものの影響が薄いからだろうか。]
[或いは、内にある迷いに近い感情を読み取ったのか。
それとも戦うという意志がそもそも命竜に無いからか。
あるいは、反応するだけ無駄だと思われているのか。
真実の程は不明。]
―東殿・氷竜の部屋―
[だがその事を心話では黙して語らぬまま。
腕輪からはそっと、手を放した。
爺さまに毛布をかけた後、ベットの上の氷竜に一度近づき、髪を梳く。
さてところで氷竜殿に真実は知られたんだかどうか。
知られたらどんだけ恐ろしい事がおきるかは、もう未知の世界で予測つきませんが。]
…悪かったな、氷竜殿。
[かけていた毛布を整え、ぽんぽんとその上から肩を叩いて、部屋を後にした。]
―東殿・機竜の部屋―
[そして機竜の子が起きるまで、椅子に腰掛け定期的に傷を癒すように努めた。
明方付近になれば、瞼は重くなり、大きく舟をこぎ始めるかもしれないのだが。**]
―― 私室 ――
[ぱちりと目を開ける。首を巡らせると、舟をこいでいる髭面が見えた]
…ありがとうございます。クレメンスさん。
[彼が癒しを注ぎ続けてくれていたことは感じていて、起こさぬようにと小さな声で礼を言う。それから、もぞもぞと起き上がり、そっとベッドから降りた。僅かに足がふらつくのは、未だ止まらぬ浸食のせいだろう]
[動かぬ機械竜と落ちたメタルの左腕が置かれたテーブルに歩み寄り、そっと機械竜を撫でる]
ごめんよ、ユル。
[囁いてから、腐食した左腕に触れた。青い光が溢れ、接続部が新たに構成される]
……っ!
[枯渇した力では、そこまでが精一杯で、全体を再生させることは出来ない。諦めてそのまま肩へと腕を繋いだ]
………。
[内側で進む浸食が止まらぬ事に、溜め息をつく。未だ剣の怒りが収まらぬということなのだろうか?オトフリートが結界内に取り込まれたなら、中にいる皇竜の側近や、天聖の竜、何より焔竜が剣を取り戻さずには置かないだろうと思ったのだが]
……バランスを崩したものは……竜王方でなければ鎮められない、とかかなあ?
[だとすれば、結界が開くまでこの浸食が止むことはないかもしれない。恐らくは今、あの結界を維持しているのは、精神の竜…その「願い」だろうか?]
どんな願いなのかな?こうまでしないと叶えられない願いって。
[機械竜をまた撫でる。答えるような明滅は、もう返らない]
―東殿・機竜の部屋―
アーベルは『自由』になりたいんだとさ。
[エーリッヒに告げた。椅子に腰掛け、目は閉じたままだったが。]
何から自由になりたいかは知らないけどな。
[予想はしている。が、口にするほど確信はない。]
……!
[ふいに返った「答え」に振り返る]
自由……クレメンスさんは、知っていたんですね?
[驚きは一瞬。先まで思いつかなかった「三人共」という選択肢は、気付いてみればさほど不自然ではなかった]
―東殿・機竜の部屋―
まぁ、な。
[名を呼ばれれば目を開けた。]
悪ぃな。おいさんお前さんは完治出来んっぽいわ。
向こうに帰れば治りそうか?
[向こう、とはエーリッヒの故郷、機鋼の砦の事。]
自由か…でもこんな風にして得た自由は、とても辛そうですね。
[自分より遥かに長く生きてきた精神竜の重荷や心を正確に理解することは出来ないけれど]
[クレメンスの問いには、淡く笑んで首を振る]
これは「力ある剣」のせいですから、多分剣が鎮まるまでは無理だと思います。
オトフリートさんがまだ剣を持ってるなら、気をつけないと…この先もっと酷い影響が出るかもしれない。
剣の持ち主だけじゃなくて、それに触れた者まで、巻き込むような力を…多分アレは持っています。
[この腕が証拠だというように、軽く目の前に持ち上げて]
―東殿・機竜の部屋―
さてねぇ。二人して、願いを手に入れたときの先までは考えてないっぽいしなぁ。
辛くても、欲しいものはあるさね。
生まれたときから檻に入れられて足を鎖で繋がれて。檻の外から自由に動き回る自分と同い年くらいの竜をずっと見続けていたら、自分もそうありたいと、願わずにはいられないようにな。
[アーベルの願い。具体的には知らないが、例えるならそんな所ではないかとの予想があった。]
―東殿・機竜の部屋―
剣の…って。
[微かに顔色が変わる。]
本当か、それ。
[嘘は言ってないだろう、とは思うが。
エーリッヒの腕を見、軽く眉を潜めながら思うのは、現在の一振りの持ち主。
未だノーラの手に渡った事は知らないが。]
先の事は考えていない…最初から、命懸けということなのかな…
[呟く言葉は静かに事象を分析するようで、けれどその響きは哀し気に沈む]
クレメンスさんは、二人の願いを叶えてあげようと思ったんですか?
それがあなた自身の願い?
[顔色の変わったクレメンスに、オトフリートの事を案じているのだろうと思い、頷く]
剣の力がダーヴに届くのを阻もうと触れただけでこうなりましたから、本体を持っていて、それを無理に使おうとしたりすればどんなことになるか判りません。
ほんとに、揺らすものより、ずっと危険物ですね。
[最後が軽い言い方なのは、クレメンスの心配を慮ってか。単に性格の問題かも]
―東殿・機竜の部屋―
命どころか自分所の竜王懸けてるくらいだしなぁ。
[へらり。まぁどっちも命までどうのこうのするつもりはないんだろうが。]
んー?いやいや。俺の願いは別に。
あるにはあるが…まぁ、別に二の次以下でいっかなーとも思ってるしな。
[それが心の底から欲しかった時から、ずいぶん永い時が経ってしまっていて。あの頃の情熱のようなものはもう失せている。
揺らされ鮮やかに思い出したのは、夢を見た後だけ。暫くすれば、再びくすんだ琥珀の世界に変わってしまう。
欲しくないとは思わなかったが。
全てをかけてまで欲しいと思うには、遅すぎた。]
二人に協力してんのは…なんつーか。
切欠にはおいさんも何だかんだで加担しちまってるし。
今更一人知りませんとはいえないし。
何よりまぁ…分からなくないからな。
[長く渇望して、どう足掻いても叶わなかった苦い記憶。
二人を手伝うのはそれがあるからだろうと、自分なりに思っていた。]
―東殿・機竜の部屋―
あー、そっか。
[使う、に関しては若干ほっとしたような。
ベアトリーチェがあれを使う事は多分、ないだろうと…。
それでも結界にポイとかしないだろうかと、一抹の不安はあるが。]
竜王勢もロクなもん預けねぇよなぁ。
[へらり。軽い物言いには反射的に軽く返した。]
―東殿・機竜の部屋―
…さって。目が覚めたならおいさんはちと用事があるんで行くわ。
また暫くすれば戻ってくるが…無理はするなよ。
[機械の腐蝕に関しては手が出ないが。立ち上がり近づいて、手で左腕の根元に触れて、もう一度癒しを注ぎ込む。暫くの間の気休めにはなるだろうと。
そしてベアトリーチェを探しに部屋を出、辺りを探し回ることになる**]
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