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[樹にくわれるようにたどり着いたそのうち。
苗床は暗緑の樹の下にあらわれる。
土がもりあがり、体が押し出され、
根が、それを覆う。
茎が手首のあたりからあらわれ、苗床を地へと縫いとめ、
小さな背より生えた太い蔦は、そばの樹へと巻き付いた。
一本の根は苗床の足首より体内に入るだろうか。……否、本来そこで時を待っていたのだ。
小さな白の体は眠りに落ちる前にわずかふるえ、残った掌から種を溢す。
それは蔓となり、最後に蔦に巻き付いた。
花と葉が、緑のかたまりに咲いていた]
[そこから覗くは、白い手首と、
蔦の生えたあたりの背。
森は苗床をかかえこんで
苗床に癒しの力を与える。
誰がはずそうとしても手では無理だろう。
近付けば花と葉がひらり、きっと近付くに*違いない*]
―昨夜・墓場―
[三つ花の蝶はひらりひら。
いつもと変わらず飛び跳ねている]
はな。お前の主人はどこにいる?
……っ!
[そおっと蝶に手を伸ばす。
蝶がひらり彼の手に止まろうとして――突如消えた]
−昨夜/墓場−
[アマンダはしばらくベアトリーチェが消えた空を見上げながら夜風に吹かれていたが、ユリアンの声にゆっくりと振り返る]
…ティルが、いないの…?
[アマンダは辺りを見回して、不安げに眉を寄せる。
ティルは何処へ行ったのか。飲み込まれ消えたのではない…はず。
力の奔流が、オトフリートとナターリエを選び飲み込んだ事はぼんやりとわかっていた。
迷宮の中の人たちは…ベアトリーチェの言葉を信じるなら、きっと無事なのだろう。また逢えるのだろう。けれど鍵の書は――
そこまで考えた所で、そう遠くない大地――森の土が異変を伝える]
っ! なに…? ああ…これは森の樹の――ティル…?
[大地の異変の意を探ろうと、茶色の目を細める]
[――やがて、翠樹が森の中のあの大きな樹…いつか大地の力を引き出した場所の傍で眠りについたらしいことを感じ取り、安堵の息を吐く。
かの地なら、ゆっくりと回復できるだろうと]
…後で、様子だけ見に行くかな…
今は、ゆっくりおやすみ…。
[森の奥へと届かないだろう声を投げ、屈んでスケッチブックを拾い上げる。広がられたそれは、真っ白]
……
[元通り閉じて、小脇に抱えた]
[それから。
ようやくアマンダは眠る火の竜と、傍で見守る氷の精へと振り返り]
…おつかれさま。ダーヴ、ミハエル…
[静かに*声を投げた*]
[「ご苦労様」。
この言葉がこんなに染み入るのって、実は初めてなんじゃなかろうか。
そんな事を考えつつ、適当な場所に腰を下ろす。
立て続けの力の使用でさすがに身体はバテ気味]
『……最悪……非常手段を使ってでも、皆は外に帰さんとな』
[そんな思いがあるからか、今の内は休まなくては、と目を閉じる。
目を覚ましたら、この場所についてちゃんと説明して、対処できない者は大人しくさせておかねば、と決意を固めつつ]
[迷宮の奥底で、薄い影となった魔が、低く嗤う]
誰も彼も、あんなに弱ってしまっては「ナニカ」があった時に、どうするつもりなのだろうねえ。
[しゅるしゅると右腕の蛇が身をくねらせる]
ああ、そうだな…あの娘は取り戻さねば…
[影の色が、僅かに深くなった]
[ふ、と。
目が覚めたのは何かを感じての事か。
ちら、と視線を向ければ、相棒はまだ、抱き枕状態。
他の者も思い思いに休んでいる所らしい]
……エターナル・ロンド。
[小さく呟いて。
黒き光鎖を展開する。
何か事が起きれば、すぐに対処できる構えを]
んー。
[ぼんやりと目を開ける]
ん?
[腕の中が絶妙に温かい]
ん。おはよ。
[眠っても放さずにいた白梟に頬擦り。まだ少し寝ぼけてる]
[目覚めた影輝の少女が相棒に頬擦りする様子に、苦笑する]
やあ、お目覚めですか?
[口調は変わらぬものの、周囲を舞う光鎖はどこか物々しく見えるやも]
おはよう。
[そのままの体勢でにっこりお返事]
……あれ?
[けれどすぐに目を瞬いた。
周囲を光鎖が囲んでいる。しかも警戒態勢で]
何かあったの?
というか、オトフリートさんおかえりなさい?
[頭の中に疑問符が浮かんでいる。
やはり状況が上手く整理できていないらしい。
そもお帰りなさいというのも何か違わないですかと]
[しゅるりと、絡み付いた縄が解け落ちるように、小さな黒い蛇が、魔の右腕から地上へと落ちる]
行っておいで。
[差し伸べられた指先が示す、力有る者達の気配が集まる方向へ、黒蛇は這い出していく]
お帰りなさい……というのは、何か違うような。
……何かあったというか、何が起きても不思議はないので、警戒を。
[何に対する警戒かは、明言せずに。
そも、ここでは何が危険になるかわからない、というのは、彼が一番良く理解しているだろうから]
けいかい?
[そういえばハインリヒが金属片を身に着けまくっていたかと思い出し、改めて危険の可能性を思い出した]
そっか。
モンスターとかもいるんだっけ。
[彼が一番警戒しているものとは違ったかもしれないが。
それもまた間違いではない]
ええと。
私も何とかしないと。
[夢の中何を思い出した?
……他の精霊に力を借りるにはどうすれば良いのだったか]
ええ、ここには書を護る封護の者たちが。
この近辺にいるのは小物が中心ですが。
最深部に近づけば、ガーディアンと名づけられた特に強力な者たちに遭遇しますからね。
[まあ、最深部の祭壇の間には、それよりも面倒なのがいる訳だが]
何か、って……。
余り、無理はせず?
[こう言いつつも、光鎖が何かの接近を感じてゆらり、揺れて。
異眸に険しい光を宿させる]
うん。
無理しない程度にためしてみる。
[宥める以外の行為が上手にいったためしはまだなかったのだけれど、そこは内緒だった]
……なにかきた?
[鎖が揺れたのに、その瞳が変化したのに気が付いて。
彼女もまた周囲の気配を探り始める]
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