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………。
[窓越しに、目を細めてよく凝らすと]
何か…庭でも人が倒れてるような…。
風邪、流行ってんのかね?
[眉を寄せた顔を、イレーネやクレメンス達に向ける]
シスターは、どこに運びますか?…おっと。
[既にイレーネは階段を降り始め、クレメンスはナターリエの部屋に歩き出していた]
わかりました。
…俺が作るとますます病状悪化させそうだから、材料くらいは出しておきます。
頼めそうな人がいたら、その人にも声をかけてみるし…
[さっきのイレーネに聞こえてくれてたら、器用そうだから美味いものができあがりそうだったなと心中で呟きながらも、運ぶクレメンスのためにせめてナターリエの部屋への扉を開けてそう答える。
入っていくのを確認すれば、ユリアンも階下へと降りるだろう]
[こぼれた花をかき集め、]
おにわにたくさんあったよ。
おはなは、すき。
きれいでいいにおい。
[一輪を口元へ寄せて香りを楽しみ、それをアーベルへ差し出す。
真っ赤な真っ赤な、首だけの花。]
[うまく身体が動かない]
[ふと気づけば、自分は裸足で、全身すっかり冷たくなっている]
姉さん。…姉さん…ねえさん…。
[もがく。立ち上がれずに、ずるずるとくずおれて]
[近づいてくる足音に気が付く]
[顔を向ければそこにはオトフリートの姿]
あっ、オトフリート殿!
は、はい。分かりました!
[慌てて肯くと、オトフリートにエルザを託した]
[館の方へと走り出しながら、一度だけエルザの方を振り返る]
ごめんなさい!
[何故謝るのかは自分でもまだ分からないままに小さく]
[台所に駆け込めば飲み物を手に広間へと*戻るだろう*]
庭に……か。
[ああ、そういやそうだったな、と思い返しつつ。
差し出された花、その色彩と形にわずか、瞳の奥に険しさが宿るか。
それでも、それは刹那の事]
そう、か……。
好きなものがあるのは、いい事だな。
[微かに笑みつつ、真紅のそれを受け取る。
浮かぶ笑みは青年としてのものか、それとも幻魔としての艶然たるそれか。
淡い月光の下では、それは定かではなく]
[崩れ落ちたエルザには外套を脱ぎ、掛けようと。
うわ言を呟くエルザには眉を顰め]
落ち着きなさい、エルザ。
…失礼しますよ!
[と言うと抱き抱える。ミハエルの向かった広間へ]
[クレメンスに料理を頼まれ]
・・・うん。
[キッチンで料理を作る。頼まれることは、嫌いでなかった。
テーブルについているハンスとギュンターに挨拶をして。ギュンターに事情を聞いてみるが、昨日みんなに聞いたような内容。しかし]
・・・殺される前に殺せ?武器・・・を、取って・・・。
[先ほどのナタが、頭をよぎる。
ギュンターが、暑そうにしているのは気になった。
そこへミハエルが駆け込んできて、水を汲んですぐに出て行く。
料理を作ったまま口もつけずに、自分も外へと出た。胸騒ぎ。なんて、落ち着かないんだろう]
[ややひんやりした、柔らかく細い指がアーベルの頬に触れる。]
うん、すきなのいろいろたくさん。
あべくんはなにがすき?
[屈託の無い笑顔だけは歳相応で。]
[長い療養生活を送ってきた身体は、ひどく軽いだろう]
[抱き上げられれば、温もりに安心したのか、無意識にぎゅっとしがみつく]
[その手が冷たい]
姉さん…。
──2F・Room A──
[クレメンスは、扉を閉めると、ナターリエを背負ってベッドらしき場所の端まで来て、腰を降ろした。
天使の羽で作られたのかと思える程柔らかく弾力の効いたベッドに、少しずつナターリエを横たえてゆき、寝かしつける。
少し汗ばんだナターリエの髪を、もう一度顔から除ける。溜息を一つ。洗面台から、容器に冷たい水を汲み、タオルをかたく絞ったものを持ってきた。]
こんなところは、何時まで経っても子供だね…。
[少し騒がしい気配をしているのは感じたが、ナターリエを放ってはおけなかった。ナターリエの顔の汗をふき取ってやりながら、顔色を覗き込む。]
あべくん……って、俺の事か。
[妙に納得しつつ。
触れる感触に、やや、蒼の瞳は細められ]
俺は……夜の闇。
それから月……かな。
[しばしの思案の後、こう返す。
幻魔として潜む闇、その舞を照らす月、どちらも好ましいのは確かだから]
[部屋に入ってきたイレーネに挨拶をしていると、血相を変えたミハエルが飛び込んできた。
続いて、オトフリートとエルザが。]
これは…?
[ギュンターから聞いた話と、何か関係があるのかと見比べるも、すぐに切り替えて長いすにクッションを用意する]
オトフリートさん、
ここに寝かせてあげてください。
えーと…
オニオンコンソメスープに薄いパンケーキを浮かべたやつだから…
[何が必要だ?と指折り考えながら、とんとん階段を下りて行った。
そして台所へ。飲み物を求め台所に入ったミハエルを、呆気にとられながら見送る。
食事、料理と言えばいつも、ロゲンブロートにヴルストの二、三本もあれば御の字といった所。
不慣れなユリアンは、ハンスにも負けないほど台所をがたつかせながらそれでも、どうにか材料を探す事くらいは手伝えただろう。
イレーネが手際よくスープを作るのに感心しながら、ほっとする。
作った本人も手をつけずに外に出るのを見て、確かに先ほどから騒がしい外が気になって*台所を出た*]
[その身の軽さとしがみ付く強さのアンバランスにやや驚きつつ。
なるべく揺らさないように、そして早く。それだけを考えて。
夜風のような冷たさの彼女の手を、服を通して感じながら。
広間に入り、イレーネに声を掛けられると漸く状況判断の範囲が広まる]
エルザは庭で…お疲れだったようです。
も、という事は他に誰か倒れたのですね。
うん、おつきさまは、わたしもすき。
きれいだから、すき。
[アーベルの頬へ触れた手は、彼の頭へと移動して。
さらり、その髪をなでる。]
…でも、おつきさまはちょっとさみしそう。
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