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…さて、どこまでいってみるかね…。
[ブーツが礫を踏む。
じゃり、と音がした。
そのまま時折難しい顔をしながら青少年は歩いていく。
旧華街を次第に離れていく足は、自分が隣人のほうへと向かっていることを知らない]
…?
[僅かに足が止まる。
聞き覚えのある声]
……んん?
[ぴたり、と足が止まる]
モノじゃないんだから黙って立ってるわけないでしょお?
[クス、と笑みを漏らす。
下からの一撃を防がれると小さく舌打ち]
誰だって良いじゃない?
ここに居る、今アナタと戦っているという事実さえあれば。
ここはそのための場所だもの。
[問われた答えと共に真っ赤な唇の両端を吊り上げる。
問いと同時に繰り出されてくる柄には出現させたままの刃を身体の左側へと滑り込ませ、打ち合わせる。
良く撓る柄から追撃を考慮し刃をその場に留まらせ、自身はユーディットの横を背後へすり抜けるように一足飛び。
その間も置き去りにされた刃を繰り、ユーディットへ突き刺そうとその刃を伸ばす]
[本来ならあちらこちらを中継するはずのモニターは
何かを探すように、早いテンポで切り替わる。
……映るはすべて外部。]
…………。
[てぃるの声に振り返れない程集中。
モニターを覗くため背伸びした足。
膝丈の検査着の裾からは時折ドロワーズが覗くが ]
[屋上から去ろうとしていると、対面からいきなりアーベルが上がってくる。
一瞬ビクッと反応するが、一度スッと目を閉じると元の微笑を浮かべ]
ああ、いきなりなのでびっくりしました。
こんばんわ、アーベルさん。
[糸は右の手にふわりと絡め。
翼とは異なる、銀の煌めき。
ゆらりとゆらめく糸の合間からは、鮮やかな朱の花が覗き]
……っと……おんや?
[見回した先。
そこに捉えた人影は、やや、意外と言えば意外な姿で]
よ、こんばんは。
……こんな所で、お散歩かい?
[投げられる挨拶に返すのは、ごくごく軽いもの]
[パチリと端末を開く。
相変わらず、外部と連絡は取れそうにない。]
ん――
誰か、いるかな。
[エーリッヒから視線を逸らして、呟いた。]
[動き始めた画面と少女を等分に見ていた。
が、ふと目に入った物に思わず一瞬意識が奪われて]
……いや。
[一筋の焦りと一抹の安堵が混じった声が漏れ。
軽く首を振ると意識の殆どを画面の方へと移した]
それにしても、凄いな。
[続いた呟きも半ば無意識か。
自身も機械操作に携わればこそ感嘆は大きい]
[柄が刃を打ち相手に達さなかったのを見てとると、すぐに鎌を手元に引き寄せて自分の前で一度横に振る。
伸びてきた刃は軌道を変えるように横からその鎌で叩くと、刃の生む風が頬を撫でた。]
やだなぁ、ボクの一張羅…どうしてくれるのさぁ。
[ふわりと膨らんだ袖の肩の部分が、裂けた。
が、上げた顔は相手を睨む事はせず笑い、また一歩下がって間合いを一度取り]
あはははははは!
その為の場所なら、キミが血ィ、見せてよ…っ!
[低い姿勢から左手で取っ手右手で柄の端を持ち、左に大きく体を傾げながら自分の奥へと鎌を一度引く。
次の瞬間力いっぱい踏み込みながら鎌を振るうと、フォンと音を立てて相手の顔手前10センチくらいで左下から右上へと振り切る。
障害物に当たらなかった鎌は振り切ったトコロで柄の部分がしならせ、深く刃を内側へと曲げてぐぐぐ、と沿った。
そしてそのまま、ぱちんとまるで鞭かゴムのように勢い良く戻り、同時に足をもう一歩踏み込んで相手を鎌の射程県内に捕らえる。
勢い良く戻ってきた鎌の刃の後ろ、柄の部分がルージュの頭上から襲う。]
[軽い返答に私はクスリと微笑む。]
ええ、昨日し損なった下調べも兼ねまして。
ここまで、上がってくるのもひと苦労でしたわ。
それで、アーベルさんは?
ユリアンさん。
……こんばんは? お散歩ですか。
[ゆるりと首を傾げる。
浮かべた笑みは、薄く、薄く。
何処かつくりものめいていた。
広がる夜闇に紛れて、遠目には解り辛いけれど。]
―回想・アーベルの部屋(個室F)―
[彼の好物について、記憶が正しかった事に一喜。
自分は一緒に持ってきた青林檎を添えて、お茶を楽しむ。
温かいお茶が眠気を誘ったのか、やがて舟を漕ぎ始める姿に
アーベルはどんな反応を返しただろうか。
それはさておき、一夜が明けて。
調理なんて知らない彼女は放っておけば果物しか食べず。
声をかけられ、嬉々として用意されたご飯を頂戴した]
美味し――。
[この世の幸せが此処にあるわけでもなかろうに。
けれど、彼女は心底幸せそうな顔をして]
――あ、お出かけ?
私も、行く――っ。
[アーベルが外へ向かう素振りを見せれば、
小鴨のようにその後に従った]
なるほどね。
[下調べ、という言葉に肩をすくめ]
俺は……考え事しながらふらついてただけ。
そしたら、どっかで始めた連中がいたようなんで、どこでやってんのかな、と思って。
[様子見に来た、と。さらり、返す]
[は、と。短い息を零した。
少女に向ける視線に滲むのは、苛立ちと、嫌悪。
と、知人の名を呼ぶ声が届いて、僅かに眼を見開いた。
暫しの沈黙の後、一つ、深呼吸。ゆっくりと翠を伏せる。
少女へと注がれていた負の感情はその裏へと隠して――
強く握っていた掌を、ゆる、と緩める。]
――…、
[再び視線を上げた先に、青年の姿を捉えて。]
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