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─ゼルの家→村の通り─
うん、それじゃ。
…ゼルもたまには、わがまま言っていいんだよ?
[見送られ、帰ろうとした所で一旦振り返り悪戯っぽく笑って。
お願いついでに、泣いちゃったの内緒にしてね。と小さな声でささやいた。
それで本当に帰ろうとした時、なんだか入りづらそうにしているユーディの姿が見えて。
ギュン爺の家でみた時のぎこちない歩き方を思い出して、苦笑しながら手を振って、言葉はないままに早く手当てしてもらってね、と伝え今度こそ自分の家へと戻っていった]
─ →道具屋─
─道具屋─
[出迎えの言葉にきょと。と翠が瞬いて、]
考えごとかね?
[瞑っていた目が開くに尋ね]
…。ふふ。
うん。ただいまなのだよ。
[冗談めかせた笑みに応えるように、
違う、と言われた挨拶に、応じる言葉を返した。]
─ゼルギウス宅・前─
……ふにっ!?
[物陰から出たり入ったり、傍目見事な挙動不審状態でどうしようかどうしようか、とぐるぐるしていた所に視線を向けられ、ひっくり返った声が上がった]
え、ええと。
や、やほー?
[とりあえずちたちた、手を振った]
―→村の通り―
[お行儀悪くもパンをちまちま齧りつつ。
のんびり歩いてゆくと、見知ったひとたちの話している姿。]
……(食べている)
[声をかけようにもまだ食べ途中。
まあいいやとばかりに気付いたかの確認もしないまま、ひらひらと手を振って、ゲルダのパン屋の方へと向かう。]
でも、何も残さなかったから。
みんな私のこと、すぐに忘れてくれるね。
[嘆くくらいなら、いっそ忘れて欲しいと。
それは一抹の願いで。]
だったら…いいのに。
[儚い笑みを浮かべると、ギュンターの眉根に、更に深い皺が刻まれた。]
ギュン爺、それじゃ…またね。
私、見てないといけないから。
[もう一人の死神憑きをと呟いて、ギュンターが口を開く前に、逃げるようにそこから消えた。
消える前に、長い、微かな溜息が、耳に届く。
自分の言葉に怒っていたのは分ったが。]
…ごめんね、ギュン爺。
でも、やっぱり忘れて欲しいよ。
泣いたりするくらいなら…。
[死んでまで、誰かの心に住み着いて、心を蝕みたくはない。
そう思いながらたどり着けば、ちょうどユリアンとエーリッヒが会話している所だった。]
─道具屋─
…よし。
ただいまー、遅くなってごめん。
レナ、ミハエル、もう準備済んじゃった?
[店の前で立ち止まり、深呼吸してから中に入った。
中に居る二人に、待たせて申し訳なかったという気持ちは本当なのでそう言いながらごめんね、と苦笑して。
話しながら、自分の準備をすすめようと投げ矢の一式を棚から出し、ゼルからもらった薬をそれに塗りつける。
数本あれば充分だろうと、残りは万一誰かが使ったりせぬように厳重な棚にしまいこんだ。]
─道具屋─
[レナーテが入り口に向けて掛ける声に振り返り]
イレーナ。
[道具屋の主人の姿が見えれば、ととっ、と小走りに歩きより手を広げて出迎えた。]
薬はもらえてきたのかね?
[イレーナが作業をすすめる様子も、怒られなければ、大きな猫目でちょこまかと覗き込む。]
うん。ボクの方なら大体は。
何か持って行くものがあれば手伝うのだよ。
[消毒薬と、手ごろなナイフ。ポシェットをぽむと叩いて答える。出発できる。と、レナーテも頷くだろうか。]
─道具屋─
さて、あぁそうだ、これどうしよう…
[未完成のランタンの包みは、邪魔になるほどの大きさではないから持っていこうかどうしようか悩んで。]
ちょっとごめんね、すぐ戻るから。
[自室のキャビネットの中にしまっておくことにした。
胸元に手を当てて、少し目を閉じて祈るような仕草をしてから、またミハエルたちのところへと戻っていった。]
─村の通り─
[目を伏せていると、ぽふりと頭に載せられる手。
一瞬びくりと反応すると目線を上げ、エーリッヒの顔を見やる。
涙はない。ただ…………悲しみと不安の色は如何しても滲み出ていただろう。]
まだ……………まだ、誰かが刈られるんだね。
…………うん。
[「後悔のないように」という言葉には、目線を落とし短く肯定の返事を返した。]
―自宅―
もうそんな年じゃねぇだろうに。
[少し前、イレーネの去り際に言われたことにはそんな風に返したか。
けれど囁きには頷いて、素直に承諾した。珍しく]
―→乾燥小屋―
[キノコの収穫と手入れが終われば、乾燥小屋にそれを種類わけしていった。
ここに分けられているものは、父が几帳面な性格だったのもあり、それぞれの籠に名札がついている。
キノコの元となる胞子の入った袋にもそれは例外なく。
自分がいなくてもどれが何かはわかるだろう。
キノコ栽培の仕方についても、父が残した本がこの小屋の中にある。
キノコの栽培の仕方、キノコの種類ごとの用途や説明等が図入りで行われている。
後半のページは空白、後に書き足せるようにと]
残すことは一つだけか。
[本を手にすると、自宅へと戻った]
―自宅―
やほー、じゃねぇよ。
[そして現在。
手を振る少女に溜息を吐いた]
自首しに来たことは褒めてやる。
から、入れ。
[手招き]
[少し離れた所で、二人の会話を聞いていた。
パンの感想を言えなかったと、呟くエーリッヒに、ごめんねと呟いて目を伏せた。
声無き声が届いたのは、その前か。
その内容にはっとしたように、もう一人の死神憑きを見つめて。]
え…それ、って。
[何度か、瞬いて。]
だめ。だめだよ、それは…。
[そんな名前、“残ってしまう”と。
困ったようにユリアンを見て言うが、声が届くはずもなく。]
─道具屋─
うん、もう昨夜作っててくれたらしくて。
一応できる準備は昨日のうちに済ませたから、あとこれだけ…
[ミハエルから薬のことを聞かれると頷き、麻酔を塗り終えた投げ矢を革のケースにしまい、腰のベルトにくくりつけた。
ミハエルが作業を見る様子には微笑ましげにして。
前日準備した分を再度点検を済ませ、用意はすべて整った。]
はい、おまたせ。
─ゼルギウス宅─
う、だって。
他に、挨拶、でなかったんだも……。
[ため息を吐かれ、ぽそぽそ、と訴える。
手招きされると、うん、と頷いてそれに従った。
応急処置はされていたが、奥まで行った事で最初よりも腫れているのか、先ほどよりも歩きにくいような気がした]
―パン屋―
あれ、誰もいない?
[もぐもぐしつつ。
しかしどこかに行っているのだろうと勝手にあたりをつけて、本を扉のところに置いておく。
中まで入ることはしなかった。
とりあえず手持ちのペンで、メモ用紙に『ゲルダへ』と書いて置いておく。]
[ゼルの家を出る時に自分の言った言葉に対するゼルの返答は予想通りだったから、いつものように笑って。
お願いに対する返答には、…ありがと、と小さく礼を言って微笑んだだろう。]
─村の通り─
[ベッティの頭に載せた手を動かし優しく撫でる。上げられた視線と表情から相手の感情を読み取り、紡がれた言葉に小さく頷いた]
それが、『『死神』の降る刻』だからね。
華が咲くまでは───きっと、続く。
[そう言葉を紡いでベッティの頭に載せていた手を退けた。少し視線を外すと、離れた場所にウェンデルの姿を見つける]
ウェンデル。
[呼びかけた声は相手に届いたか否か]
―自宅―
[自宅に戻ると、さっそくペンを手にして、イレーネからもらった新しい籠に名札をつけた
刻まれる文字は、『美人髪』]
あとはキノコのことだな。
[ヒカリゴケのランプ、その明かりを頼りに本をめくり、後半の空白部分、自分の作ったキノコについて簡単なイラストと説明文を書き込んでいく。
それを残せば、いつ自分がいなくなってももう誰も困る必要はないだろうと]
楽なものだ。
[父親に改めて感謝の念を送っていた]
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