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─墓地─
いると思ってなきゃ、驚くっての。
[くく、と笑いながら言って。
場所を譲られたなら、墓の前でしばし、瞑目する。
思うは多々にあれど、それは表には表れず]
ま、こーやって話してて、変わってないのはよーくわかったけどな。
[祈りの後、目を開けて振り返る。
仕種に合わせるよに、耳元で瑠璃のピアスが光を弾いた]
って、お前気軽に言わない。
山道登ってくんの、一苦労なんだから。
今一番暑い時期だし……ゼルでなくても日差しがきついね。
今度は日傘持って―――きゃ!
……ご、ごめんなさい……。
[足を取られて小さな悲鳴をあげては、受け止めてくれる夫を申し訳なさそうに見上げ。
歩いていた時よりはほんの少し時間を縮めて、雑貨屋へとたどり着くとほっと息を付いた。
店の扉を開けたのは夫だったか。]
―雑貨屋―
ゲルダちゃん、こんにちは。
[中に入ると、まずはそう声をかけ。
クロエもいるのに気づけば、にこりと笑みを向けた。]
―墓地―
驚かせて悪かったな。
[悪びれる風でもなくそう紡いで
瞑目するアーベルからつ、と視線を外した。
祈り終えた幼馴染が振り返り声が聞こえれば
彼の方へと向くのだけれど
耳元で瑠璃に弾かれた光に目を眇める]
そう簡単には変わらんさ。
[此処に留まれば良いと喉元まで出掛かるが
グッと飲み込み代わりに小さな吐息を零した]
気軽なものさ。
なんせ苦労するのはお前さんであって私じゃない。
身体が鍛えられると思えばいいだろ?
[クツと咽喉を鳴らし軽口を叩いた]
─村の通り・樹の下─
そうかもしれないけど……
根詰めちゃって、疲れない?
[返る言葉は変わらず堅いもので、唇には苦笑めいたものが浮かぶ]
あら、大丈夫よ。約束しているわけではないの。
お店に置いてもらえるかどうか、ゲルダさんに見てもらおうと思って。
[バスケットの蓋に手を掛ける。
中からは動物を模したパペットや、小さなままごと人形が幾つか覗いた]
─墓地─
[変わらない、という返答に、僅かに目を細める。
多分、自分の方は時を重ねる毎に変わっているから。
もっとも、その『変化』を表に出す事はないけれど]
うっわ、思いっきり他人事で言うしっ。
そりゃー、山道登りは鍛えられるだろーけどさぁ。
そこまでして体力つけても使い道ないですよ?
[言葉に不自然な空白があったのには気づいても、それを指摘する事はせず。
軽口に、やや、大げさな物言いで返して、笑った]
[女の子に重いものは、とゲルダに言われるとん〜…と何とも言えない表情をして。]
ゲルダだって女の子じゃない。
一人でやるより二人でやった方が時間だって早く済むし…
ハンドクリーム?
んー…塗ってもすぐ水で落ちちゃうしなぁ。
あ、洗濯バサミは確かに欲しいかも。
古くなったのってすぐに割れちゃうから。
[ゲルダから売り上げ貢献と言われたからという訳ではなく。
彼女が出すものそれぞれを一つ一つ要るかな?と検討しながら他愛のない話に花を咲かせる。
そこに扉が開く音がして後ろを振り返れば先程追い抜いた夫婦の姿があって、顔をほころばせた。]
ゼル兄、イレ姉。さっきぶりだね。
二人ともゲルダのとこに来るとこだったんだ。
―雑貨屋―
気をつけて入るんだよ?
引っかけて転ばないようにね?
[雑貨屋の扉を開けたのは、もちろんゼルギウスであった。
先程支えた際、見上げて来た青が無事店内へ入るのを、
紅は心配げに扉を支えたまま見詰め続ける。]
あ、ゲルダさん、こんにちは。
クロエさんも……目的の物はあったのかな?
[そして、妻が無事入った後。
店内の2人にやっと気が向いて、
色眼鏡を取りながら挨拶を改めて向けた。]
─村の通り・樹の下─
疲れるなどとも言っていられない。
僕はこの先もっと大きなものを背負うことになる。
それを考えれば、現状なんて楽なものだよ。
[言いながら、ゆる、と首を横に振る。
やらなければならない義務でもあるため、弱音を吐いてなど居られない]
そうか、それなら良いが。
ゲルダとは……確か、雑貨屋の経営者だったか。
[普段、買い物は執事やメイドに任せきりで。
雑貨屋へ行くと言うことは滅多に無く、紡がれた名を聞いて思い出すのにやや時間がかかった]
ふぅむ、カルメンはこのような物も作っているのだな。
[蓋の開けられたバスケットを少し覗き込み、興味深げに呟いた]
― 店内 ―
ン―――…イレーネさんと、ゼルギウスさんだね
今日は何か御用でもあるのかな?
[仕事の話か、買い物に来たかを尋ね、どうするかを待って。
そのまま雑談にとなれば視線はイレーネのもとへ。]
そろそろ安定期に入るのかな
身重になると大変だとは好く聞くけれど
[なんだで気になるのか娘の目線は腹部に向けられた。
新しい命と思うほど興味は尽きぬように。]
…もう少し入口に気を使うべきかな
[少々難儀したらしい様子を見ると娘は考え込み。
ちらりとゼルギウスの色眼鏡にも視線を向けたり。]
―墓地―
[幼馴染の変化に青年は気づかぬ風だった。
関係が変わらぬのであればそれで良いと思っている節がある]
思いっきり他人事でしかないからな。
鍛えられたら病気もし難くなるし良いじゃねぇか。
体力つけてこっちに来ればめいっぱい使わせてもらうよ。
ワインを運び出す人手が欲しかった所だ。
[にんまりと意地の悪そうな笑みを態と浮かべてみせる]
まぁ、アーベルが肉体労働なんて似合わねぇか。
[手先の器用さを知っているからそんな言葉をのせて]
さて、そろそろ戻るとするか。
暫くはこっちに居るんだろ?
うん、これで仕事ができ……あ。
そういえば私仕事途中だった…!
ご、ごめん私帰らなきゃ…!!
[ゼルギウスから目的のものは、と問われると嬉しそうに頷いたがすぐにさーっと青褪めて。
慌てて帰ろうとしたが、すぐにゲルダの方を向き。]
ごめんねゲルダ、今度はゆっくり出来る時に来るからまた色んなもの見せてね!
イレ姉とゼル兄もばたばたしててごめん、二人とも身体に障らないように気をつけてね、それじゃまたねー!
[そう早口に言うと慌てて店を後にした。]
─雑貨屋→村の通り─
─墓地─
そこできぱっと言うし……。
ていうか、ちょっと待て、使うの前提かよっ!
[ワインを運び出す人手、と言われて、やや、焦り気味の声を上げるものの]
……これだ。
わかって言うんだからお前は……。
[続いた、似合わない、という否定に、はーっ、とため息をついてみせた]
ん、ああ。
伯父貴が出かけるって言うから、戻ってくるまではいる事にした。
その先の事は決めてないけど、季節変わる前には、また、降りるよ。
─村の通り・樹の下─
しっかりしてるわねぇ、本当に。
そんな先のことまで考えてるなんて。
[片手を頬に当て、息を洩らした]
そう、雑貨屋の。
よかったらお一ついかが、なんてね。
[冗談めかして言いながら、中の一つ――カエルのパペットを取り出す。
子供用らしく小さめのそれを少し窮屈そうに嵌めて、ぱくぱくと動かした]
―雑貨屋―
大丈夫、気をつけてるから。
[そう言うものの、先ほどの様を思えば口調は少し弱くなる。
思うように動かなくなってゆくこの身を、だがほんの少しでも窮屈と思うのは贅沢だ。
支えてくれた赤に青は嬉しそうに細められ、それからクロエへと向いた。]
ん、細工の納品に。
クロエちゃんは何を買いにき――
[と尋ねようとしたら、通りすがった時と同じような風に店を出て行くのを何度か瞬いて。]
ありがとう、クロエちゃんも転ばないように気をつけて。
[そう先ほどと同じような声をかけ、ささやかに手を振りながら見送った。]
─村の通り・樹の下─
[息を漏らすカルメンを見て、何かおかしいだろうかと言うような雰囲気で軽く首を傾げた]
これはこうして使うものなのか。
[実演する様子に翡翠の瞳はじっとカエルを見詰めて。
動かされるそれに少し顔が綻びかける。
しかし頬が緩みそうなことに気付くと、直ぐに顔を引き締めた]
―墓地―
お前さんの前で取り繕う事もないだろ。
品行方正な修道士らしい喋りが良かったか?
[緩く首を傾げ問うてみるけれど
そうだと言われてもそうする心算は無い]
当然。使うの前提だな。
[しれっと言って。
アーベルが溜め息を吐く頃には愉しげな笑声が漏れていた]
そうか。
アーベルが居るなら伯父さんも安心だろ。
嗚呼、それなら宿にも差し入れ持っていくかな。
――…山を下りる前に挨拶くらいしていけよ。
―宿屋→村の通り―
[頼まれ物と預かり物だけでもまた結構な荷物になった。
ベッティがまだ食堂にいたら行ってきますなんて挨拶をして。
よいせと背負い取引先を順番に回ろうと村の道を歩く]
―雑貨屋―
[今日は納品にと、夫の荷物を見てゲルダに告げて。]
それから、このくらいの大きさの布があれば一枚欲しいな。
[そう手でハンカチの倍はある大きさの四角を作ってみせた。
燭台を包むには、このくらいあればきっと十分。
興味深そうに膨らんだ部分を見つめる彼女に、笑みながら。]
うん、もう安定期に入ってるの。
大変は大変だけど、赤ちゃんの為だもの、もう少し頑張らないとね。
……ゲルダちゃん、触ってみる?
[そう尋ねてみた。]
―回想・宿屋―
[アーベルの様子には、多分またしばらくしたら何も言わずに出て行くのだろうと、なんとなくそんな気がしていて、
奥へと案内する途中に振り返り]
無事を伝える以外にも、いろいろあるだろ。
[自分が寂しかったとか、そういうことは口にすることはなく、
変わりにもう一発お腹の辺りに、今度はゆるく拳を押し付けるように。
すぐにまた向き直り、奥に向かって]
親父っ!アーベルが帰ってきた!
お仕置きは私の方でしといたからっ!
[暗に手荒なことはするなとそう含みながら、そのまま自分は夜に向けて準備に戻った。
その様子は鼻歌交じりに、若干機嫌がよさそうだったとか]
―回想・宿屋―
[そのままアーベルが店の手伝いをするのは当然とか思っていたのと、すぐに手を離せなかったのもあって、
来客の対応はアーベルに任せることにした。
聞きなれた声のそれは、行商人親子の息子の方だなと思いながら]
今日はあっちも一人か、どこも親離れの訓練中か。
誰かさんはちょっと先走ってたけどな。
[誰が聞くわけでもないけど、ついそんなことを口にしてから、
手隙になると笑顔で奥から食堂側のほうへ、アーベルとユリアンの会話は奥にいた自分は聞こえていなかった]
いらっしゃい、ユリアン。
それじゃあ、部屋はこっちだね。ついてきてよ。
―回想・宿屋―
[ユリアンを部屋へと案内しようとして、アーベルにかけられた声には]
夕飯時までには帰ってこいよ。
[そう声を返してから、ユリアンを部屋へと案内した]
まぁ、今年もゆっくりしていってよ。
[最後にそんな言葉を残して、自分はこれからの準備へともどった]
─村の通り─
うー、つい長居しちゃった…!
今日中に終わるかなぁ、アレ…
[ゲルダに用意してもらった紙袋をしっかり抱えながら、来る時よりも更に足を早めて。
途中カルメンとミハエルが木陰で休んでいるのを見れば、珍しい組み合わせだなぁ、と思ったものの声をかけられない限りはそのまま通り過ぎるか。]
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