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[ちょうど良く漂い始めた甘い林檎とバターの匂いにはっと顔を引き締める。
早く行って自分の分を確保せねば。]
じゃ、あたし行ってきます。
お姉ちゃん、アーベルさん、またね!
[勢い良く片手を上げると張り切って駆け出した。]
[暴れて踏み潰される心配がなくなると薄茶猫は大胆にもティルの足元に来て匂いを嗅いでから見上げた。膨れた頬にも無頓着だ]
「ゥ゛ナァーゥ゛(昨夜、ミルクを飲んだのはお前じゃねえな)」
[昨日ティルへと踊りかかった猫は当然、少年が出した尻尾を見ていた訳で、妖精なら姿を変えて飲みに来たのかもと考えたらしい。
それからエーリッヒの方に視線を移し、説明してやら無いとまた抓られるぜと言う風ににやぁりとティルを見た]
ミルクは飲んでないにゃ?
[薄茶猫の声には、律儀に答えるあたり、猫同士の礼儀ということらしい]
だって、説明にゃんてできないし…
ですねぇ、御師匠様がいらっしゃらない状態で、体調を崩す人が増えると、ちょっと大変なのです。
[リディの呟きに、こちらも小さく呟き]
あ、はい、また後で。
[駆け出すその背を見送った]
物々交換でお使いなのですかぁ。
あ、リボンをつけるのは、ボクじゃないのですよ。
[リボンの話題には困ったように。
まさか、箒が動くところを目撃されていたとは思っていないから、どう説明したものかと悩んでみたり]
へえ。なるほど?
崖崩れやら森の違和感とやらとも関係あるのかね。
[隠れられていない少年を見下ろしつつ試すように問いを重ねた]
[誰も届けろなんて頼んでねえとか縄張り巡廻も仕事だとかでエーリッヒを睨んで鳴く間もなく、動き出した二人に尻尾を踏まれそうで棒立ちになる。
後ろに隠れたティルに「ミ゛ゥ(無駄だろ、それ)」と突っ込んだのはややタイミング遅め]
え、違うの?
ミリィちゃん似合うと思うけど。
[素でそんなことを言った。]
じゃあ、ミリィちゃんのお友達とか?
子供はいないだろうし。
―自宅―
ほ、ほゥと、いやァ熱かったねェ。
[慌てて冷たい水を飲んで一息。もう一度慎重に味見をし、にんまりと満足気な笑顔になった]
上出来上出来、これなら坊も文句言うまいさね。
…と、アーベルもちゃんと分けてやるよう多めに渡しとか無いと。
[熱々の内に焼けた分を切り分けて籠に入れ、一度オーブンの火を落とすか悩む]
早く焼いた方が美味いが冷めるしねェ。
それにツィムトがいないと鼠が怖いし、さて困った。
はぁ?
[似合う、という言葉に。素でぽかん、とした]
ええと、うん、お友達と言えばそうですねぇ。
[正確には自分で造った存在なので、ある意味子供と言えるかもしれないのは、ややこしくなるのでさておき]
子供って。
そんな年齢に、見えますかぁ?
[猫に鳴かれたとしたって気にするわけもなく、猫妖精の正体を悟っていたとしてもそれを言うこともなく。ともあれ、その反応に答えは期待出来ないと理解したか、「そ」と短く答えて、距離を置いた]
で、ヨハナ婆ん家行くのか、お前は。
おやま、ちょうどいいところに。
[聞こえてきた元気のいい声に、急ぎ玄関へと出て行く]
あらまァ、おはようさん。朝からお使いなんてえらいねェ。
昨日もちゃんと片付けるしいい嬢ちゃんに育ったもんだ。
[手にした籠から用件を察して褒める。褒め殺しておく]
[隣の青年が手を上げたのを見て、少し首を傾げたが、然程気にはしなかったらしい。
2人の間近まで歩いて行く。
勿論話の内容は分かっていないが]
[褒められると照れくさかったのかえへへと笑った。]
これ、お母さんから。
うちの今朝鶏が生んだ奴です。
昨日、お茶をごちそうになったお礼にって。
[籠を両手で差し出すと、そわそわした様子で家から漂う林檎の匂いに鼻を動かす。]
―森―
[ティルの返事にそうだろうなと薄茶猫は頷き、いつになく好戦的っぽく見える森番の青年に首を傾げた。普段はもう少しやる気なさそうなんだがとか、似たような印象を互いに抱いてるとか知られたらまた首根っこぷらーんされそうである。
「ミ゛ャァゥ(昨夜のずんぐりむっくりは妖精の輪から来たのか?)」
それなら妖精のミルクを飲む権利があるから構わないんだがとティルに鳴いて、距離を置いた二人を見上げた。
ティルが飼い主の所へ行くなら見張りについていくつもりだ。何せ今お菓子を焼いてる真っ最中]
「約束」したから、ね。
[青年が諦めた様子なのは判ったものの、いまいち信用できないという顔で睨みながら頷いた。栗の一杯入った籠はしっかり抱えたままだ]
うん、にあうにあう。
リボンって大事だよ。
[よくわからない]
お友達なのか、そうか。
お友達のリボンなんだね。
うん、子供いるようには見えない。
ええと、おはようございます。
[つられた手をおろして、ユリアンにご挨拶。]
産み立て卵は何を作っても美味しいからねェ、助かるよ。
お母さんにありがとうって言っといとくれ。
[礼ならば遠慮なく受け取って、照れながらそわそわする様子に困った顔を作ってみせる]
あァ、コイツはちょいと頼まれもので焼いてるシュトゥルーデルなんだが…もう行き先は決まっててねェ。
もしも、焼き立てを今、届けてくれるなら、
貰い主がお礼にご馳走でもしてくれる…かもしれないんじゃがなァ。
[近付いたら子供という単語が聞こえたので瞬いた。
次にミリィを見て、首を傾げる。
いるのか?とでも言いたげに。
断片しか聞いていない為、誤解が生じているらしい。
アーベルに改めて挨拶されて、こちらも軽く頭を下げた]
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