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[そは最早、習い性の如く。側に在るを望む者達を]
……セレ…ス…
[彼の仔の名を呼びながら、もう一つの影を探すなれど、在らず。
代わりに上から降る、聞き覚えの在るコエに良く似た青年の声]
ユリア…ン…殿……?
[花は声とその手の動きに、ひらり。
楽しそうに揺れて、指先に留まる。
三つの花びらは、微かな音を立てていた。
わたしは元気よ、精霊さん。
あなたは、大変そう。
そう言うように――といっても、それは陽光の属が強い彼女にはっきりとつたわったかはわからないのだが。]
ナタ・リェ。
大丈夫?
[名を呼ぶ声に、心配そうにそちらに向き直る。
とっさにきゅ、としがみついたのは、モニタから問題発言?が聞こえたからかも知れない]
[瞳を閉じていてもいつもの鼾は聞こえない。眠っているのか、それともただ目を閉じているだけなのか。聞こえるのは小さな呼吸音のみ]
…………。
[その間ぴくりとも動かず、ヘルガが外へ出たのに気付きもしなかった辺り、意識が落ちていたと言えるだろうか。しばらくの後、ゆるりとその瞳が開けられた]
……閉じ篭りすぎたな。
少し外の空気に当たってくるかねぇ。
[上手く行けば風も得られるかもしれない。ささやかな期待を胸に、広間の扉を潜った]
[セレスが誰かの名前を呼んだので、扉の方を振り返り]
あ、誰か来た?どうぞー、鍵は掛かってないよ。
[そして再びセレスの方に向き直り、真顔で解説]
そうともいうな。そのライデンさんも正しい。
オトフリートさんは、セレスくんにとっては「おとーさん」で
ナタ・リェさんにとっては「旦那さん」だ。
同じように、ナタ・リェさんは、セレスくんにとって
「おかーさん」で、オトフリートさんにとっては「奥さん」
あ、ナタ・リェさん。おこしちゃった?
おはよう。よく寝れた?
[名を声が聞こえ、セレスがしがみつくのを見ながら挨拶した]
[身を起こしながら瞳が探すのは、もう一人の竜の姿。
そはモニターの中にあり、剣呑な笑顔をぼぅと見つめる]
[強制的に近い眠りゆえか、寝惚けた頭の覚醒は鈍い]
[だんなさん、おくさん]
[おとーさん、おかーさん]
[耳に入る言葉の数々に、獣耳は千切れそうに揺れているのに]
[許可を得る前か得た後か、]
[乱雑に扉を開いて中へ入る]
[……飛び交う単語に眉が寄った]
何の話をしている、何の。
そうなんだぁ。
[真顔の解説に、素で返する。
機鋼竜のデータベースに、知識が一つ追加されました]
……ナタ・リェ?
大丈夫?
[ぼう、とした様子と獣耳の状態に、ちょっと心配そうに呼びかけてみたり]
[きゅ、としがみつく小さな体を、反射的に両の腕で抱きしめて。
それから、温もりに反応したかのよに幾度か瞬いて、腕の中を見る]
嗚呼、セレス……、
[心配そうな気配の仔を、優しく抱きしめる。
その間にも、獣耳は問題発言の数々をきちんと丁寧に拾っていて
―――時間差で内容が届いたのか、細い眉が寄せられた]
[花はひらひら、微かな音を立てるのを止めない。
小動物が襲い掛かったら逃げられるように、とは思っているようだけれど。
大変そう。
でも、好きなようにしたら、良いんじゃないかしら。]
[その宿主は、ゆるりと立ち上がり、そうと息を吸い込んだ。
身体は動く。だから、先ほどの、力が増した場所へと足を向けた。花もそちらにいるようだ。]
[疼き、]
[其れは未だ残存する分け与えられた力の故か]
[其れとも胸に残された蔓を描いた痣の所為か]
随分と、便利な物が在るのだね。
[眼差しを映像を映す壁へと転ずる]
[アーベルが入ってきた瞬間、ユリアンは思った。
あ、さっきあのクレメンスさんとキスしてた人だ。
変わった趣味の人もいるもんだ、と脳内で無理やり自己解決した]
こんにちは。今は「おとーさんとおかーさん」や
「旦那さんと奥さん」についての話をしてたよ。
[ナタ・リェが身を起こしたので、よっこいしょと立ちあがり、
全然説明になってない説明をアーベルに返した]
ええと、知らない言葉、教わってたの。
[何の話、という言葉にはこう返し。
それから、碧の瞳でじぃ、と同属の魔を見つめる]
身体、平気?
[廊下を歩き、玄関へと向かう。歩きながら欠伸をし、瞳を閉じかけた時だった]
………?
[さぁっと吹き抜ける感覚。それは小さく囁いた。ただ一言、『そこ』と]
…何があるってんだ?
[示された扉。囁かれた声は聞き慣れた風の声で。何故か一言しか聞こえなかったが、何かがあることは確かだろう。静かに、その扉へと近付く]
[アーベルがモニターに興味を示したの見て]
あ、それ?なんか時空王が設置していったよ。
向こうの様子が丸見えで便利なんだ。
でも、向こうからこっちが視えないのが不便だね。
あ、クレメンスさん、また何かやらかしたのかな?
[画面の向こうの不穏な雰囲気に、思わず視線がそちらにいく]
――違いまするっ!
[ぎゅぅと抱きしめる腕にやや力を入れすぎつつ、頬染めて叫ぶ]
えぇえと、あの、その、
オト殿とわたくしは、セレスを育てる為のパートナーで…!
そもそも私は麒麟ですから! 竜を産めはしませぬ!!!
[夫婦も人生のパートナーだとかには気付いてませぬ]
……?好きなように?
[きょとんとして首をかしげる。
足元では蔓草はさわさわと揺れ、獣は特に花弁を襲う気配もないらしい。
こちらに翠樹の子が近づいていることを、陽精は気づかぬまま]
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