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噂…ですか…。
いえ、私は初耳ですね…。
[ 決まった人からしか話を聞いてないことを思い出した。]
―――――…。
私たちを見つけられる者ですか…?
そんな方がいらっしゃるのなら、早急に消えて頂かねば。
[ その言葉と共に羽根から黒いものが蠢きだす。
足元にぼとりと落ちた黒は居場所を求めるかのよう昇る。]
さて、いったい誰で、どんな力なのやら
[うごめく黒に触発されたか、狐の額のやみがうずく。
たかぶる感覚は歓喜か狂気か。
しかしそれを持つ男は、それすら愉しみ、わらう。]
どちらを……ねらう?
弱りましたね。
長老殿にまた脅しをかけておいたほうがいいでしょうか。
そんなものに惑わされるな、と。
[ くすくすと嘲笑う。]
何処を狙いましょうか。
今日はエリカ殿をもう一度、とは。
まぁ…失敗すれば彼のようになりますから。
どうしようかとは考えていましたが。
[ 左目に闇が差し始める。
それを隠すかのよう手を翳した。]
長老殿ね
[くつり、わらって]
扱いやすい、長老殿――
エリカ嬢は、うまく運べば、味方をしてくれるかもしれないな
ロザリンドまで封じられては詰まらないから、
そうはならないことを俺は願おうか
[隠す彼女を見透かすような、黄金の狐のひとみ]
味方…ですか?
[ 驚いてばかりいるか、今日は。]
なら、エリカ殿は残しておきましょうか。
詰まらない…ですか。
…私も封じられるつもりは全くありません。
全てをハカイし尽さなければなりませんから。
[ 狐の面をじっと見据える。]
[夜空を飛び戻るも、そこにオーフェンとアヤメの姿はなく。
天将の血脈に対するささやきに、事の原因を察した。]
『……なるほどな。
長老の問いとは言え、余計な事を口にしてしまった。』
[オーフェンの術を行使する前、ラスが暴れないかとの長老の問いにアヤメの力の縄があるからと答えた事に臍を噛む。
青年を戒める力が紫星であり己が術を使えぬと長老が知る以上、偽りを口には出来なかったのでは在るが。]
………皆早く帰れ。
堕天尸はまだいる可能性が高い。
[睥睨し集まる人々を散らせ、重い溜息を吐く。
足元に寄って来た疾風が小さく鳴いて角の根元を摺り寄せた。]
うまくすれば
或いは、な。
すべての破壊、ね。
そうなったその先が愉しみだ
[狐がわらう]
ではアヤメ嬢の気をそらしに向かおうか――……
………疾風、帰るぞ。
行かねばならない所も…あるのでな。
[慰めたいのか寂しいのか。
足元に纏わりついて離れない小さな体を抱き上げる。
円らな瞳が主の消えた場所を見つめ哀しげに鳴く。
その背を黙って撫で、聖殿を後にした。]
[目覚めたラスに声はかけなかった。ただリディアやネロとの会話を横に聞きながら、まだ気を失っているカレンを抱き上げ、寝床代わりの草の上に寝かせる]
[ネロが戯れに編んだ三つ編みの一房は、そのままにしておいた]
[夜空を飛び、ラスの家へ。
不安に暮れる家の者に、淡々と事実のみを連ねていく。]
……ラスは今、結界樹の中で巫女の側近く眠っている。
目覚めた時には元に戻っているだろう。
………しばらく風当たりが強いだろうがあまり気に病むな。
性質の悪い…流行り病にかかったようなものだ。
誰にでもなる可能性があり、命取りにもなりかねん病にな。
[慣れぬ言葉を紡ぎ、その心の負担が減るように願う。
最後に疾風の頭に手をやり、褒めてからその場を辞した。
向かったのは―――施療院。]
[そうして、やはり黙ったまま、リディアが横に置いていったリンゴを齧り、水鏡の光景を見つめる。アヤメやエリカの姿は案ずるように、結界樹の傍にやってきたスティーヴの言葉には、僅かに頷いたのが見えただろうか]
困りましたね。
どうしましょうか、今日は。
様子を見るのも一興かもしれませんね。
[ 海を眺めながら嗤う。]
嗚呼、ケイジ様。
お気をつけくださいね。
虚は、―――――大好物ですので。
[ 狐の面を指差す。
憎しみを嘲笑うかのように。]
[深く、考えに沈みながら、虚に囚われた娘と狐の面のやりとりを聞く]
全てが壊れるなら自分も消える、愉しみもなにもないだろうに。
[ぼそりと漏らした狐に対するツッコミは、しかし本気の声とは異なっていた。或いはそれこそが彼の真の望みなのかとも思えたので]
─森の奥・両親の墓─
[森の懐の奥深く。
知る者の限られた、白の花咲く木の根元。
そこは、異邦人たる両親が眠りの場所として選んだ場所]
……っ……。
[そこまでたどり着くのが限界だった。
身体的も、精神的にも。
未だ花の開かぬ木の下に崩れるように座り込み、はあ、と一つ、息を漏らして]
……くっ……まだっ……まだ、崩れるわけにはっ……。
[ 羽根を羽ばたかせるケイジをいつものよう見送る。]
……ご無理はなさらぬよう。
[ どうだっていいけれど。]
ケイジ様にご満足頂けるよう頑張りますわ。
[ いつものように綺麗に笑うよう心がける。
羽根は黒から淡い金へと*姿を変えていた。*]
[まだ、終わってはいない。それは感じているから。
だから、崩れられない。
そんな風に自分に言い聞かせる]
……ホント……バカだ、アタシは……。
[掠れた呟き。真白がくるる、と案ずるように鳴いて、見上げるのをそぅ、と撫で]
……平気だよ、ラウル……大丈夫。
アタシは、まだ、崩れない。
……崩れちゃ、いけないんだ。
[声に出し、繰り返して。ふわふわとした真白の身体を、両腕で抱え込んだ]
……いなくて、よかった。
こんなザマ見られたら……もう、どうしようもなくなりそうだし、ね。
[呟いてから、小さく、息を吐いて]
でも……ちぃと、寂しい、かな……?
[零れた言葉に。ラウルはまた、くるる、と鳴いて。
案ずるよな響きに、抑えが効かなくなり]
……っ……。
[開いたままの四翼、それで自分自身を包み込んだ。
泣くのを是としない娘の、ささやかな虚勢。
やがて諸々の疲れは、眠りの淵へと*その身を誘い*]
−施療院−
[未だ帰らぬ孫を待っていた老婆に目を伏せ、首を横に振る。
それだけで医の賢者は察した様だった。
急に小さく見えた姿に、低く声を掛ける。]
………すまん。
近くにいながら、虚に襲われるのを助ける事が出来なかった。
[感じる視線に顔を上げる。
こちらを見る目は、感情に揺れながらも理性が光っていた。]
……ああ、おそらく。
他の者と同じく結界樹にいると思うのだが…な。
………確かめに、行ってくる。
[エリカと、そして消えたオーフェンとアヤメも探しに飛び立とうとする背を止められる。
胆力を高める薬湯だと言われ、断れなかったのは負い目から。
部屋を出て数歩も行かぬ内に膝が崩れる。ラスを探し飛び回った疲れもあり、舌打ちする間もなく意識は泥沼に*引きずり込まれた*。]
[ふと、我に返ったように顔を上げた。
ジョエルが、カレンを運んでいるのが見えた。
…なんとなく怖くて、じ、と見ながら眉を下げた。]
[黙ったのを見るのに飽きて。
散らばった羽根を何枚か拾って水鏡の元へいって]
拾ったよ〜。拾ったよ〜。あはは
[既に清められつつあるが、まだ黒を残す羽根を見せるように水鏡のほうへ]
[目線をゆると動かし。
楽しそうなネロを見た。]
………。
[言葉は発さず、自身の羽根を、首を巡らせて見る。
それは薄金と黒の斑で、それでも薄金が大分広がってきていて。
ふる、と一度身を震わせる。]
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