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[扉の開く音。それに反応するように紅紫の瞳をそちらへと向ける。見知った二人と、その後についてくる三名の女性]
ナサニエルなら来てないわ。
まだ城の中をうろついてるんじゃない?
[ハーヴェイの呟きにそう返し、視線は後ろの女性達へと向けられる]
まだ私達と同じ境遇の人が居たのかしら?
[少年の許可に、女はくれないを震わせた]
…はい。
[碧眼だけでなく、再度指先を向け]
[あかの一筋に絡める]
今は、これだけで。
その御心に、感謝いたします。
[うろついてる、というシャーロットの言葉に、そうか、と気のない声を上げ]
ああ、どうやらそういう事らしい。
これで終わりか、はたまたまだ来るか。
……全く、読めんね。
私も必要だと思うから、ついでよ。
独り占めしたって何もならないでしょ?
[優しいと言われてもつんとした様相で言葉を紡ぎ。顔かたちを覚えていないと聞くと、紅紫の瞳を瞬かせて]
顔を、覚えていない?
何だか不思議な話ね…。
[言いながら小首を傾げた]
[誰よりも緩やかな足取り]
[人の背中越しに見えた幾人かの人影]
[けれど、燭台に照らされてなお暗いあかに、女の視線は一度留まった]
ああ…こちらにも。
[ひっそりとした声は、少女の声に掻き消される程]
[紅紫の眼差しに、緋のドレスを摘み、一礼を]
あらあら。これまた、素敵そうな殿方ですね。
[メモを開き、その青年のことを記そうと構える。]
気にしないでください。メモはどうやら癖のよう。
覚えるが苦手なんです。外部にあった方が有用で。
私はイザベラ。
……考えても無駄じゃない?
ここに来たのは、私達の意志ではないようだし。
望んで来た人も居るかも知れない。
けれど、それは誰も覚えていない。
考えるだけ、無駄。
[読めないと言うハーヴェイの言葉にそう切り返す。それから金の女性と緑の女性、そして自分とよく似た青の髪を持つ女性に軽く会釈を向けた]
[唐突にメモを開く女の姿にやや面食らうものの。
気にするな、といわれ、更に理由を説明されれば、そんなものか、と納得して]
……俺は、ハーヴェイ。
[幾度目かの名乗りを口にする]
考えるだけ無駄……か。
は、確かに。それが、真理かも知れんな。
[シャーロットの切り返しに、皮肉めいた笑みを口元に掠めさせた]
今の不安といえば、それくらいなんです。
名前で辛うじて認識しているけど、意味内容を
思い出せないのは、自分が自分でないような。
[シャーロットと金色の髪の女性を虚ろな右眼が。]
貴女たちのような顔を期待してはいないんです。
私が私を肯定できれば、私はそれで良いのです。
[今度は右眼とは非対称な左眼が鋭く。]
金髪の貴女。華やかね。本当に華やかですね。
私はイザベラですよ。
[周りの動きに従い、着いて行った先には、また新たな色が二つ三つ。
交わされる知らない名前の主は、今この場にはいないようです。]
皆さん、お客様なのですか。
随分と、多い…
[呟きながら、交わされる声が、どのひとから発されているのかを懸命に追いました。
誰と眼が合うことも、恐らくなかったでしょうが。]
はじめまして。
[先に進んだ者達の後ろから広間へと入り。
そこに居た男女に向けて深く頭を下げた]
どうぞ、ネリーとお呼びください。
[華やか、その評価を否定も肯定もせず]
[緋色を纏う女は、僅かに首を傾げた]
私も名を告げた方がよろしいのでしょうか。
――キャロル、と。
[自然な動きで歩を進め、一つの椅子を引き、座る]
[チリン]
ネリー。貴女も、御座りなさいな。
[淡々とした声が、告げる]
ハーヴェイさんね。ああ、手帳は見ないでください。
覚えやすいように、印象を書き込んであるんです。
見たら、気を悪くされるかもしれないから。
[そう言いながら、ペンを走らせる。]
まだ不完全だけど、私が書いた見取り図なら
見たければ見ますか?興味がないならいいです。
[どこか支離滅裂。]
無駄なことに労力を使うのも馬鹿らしいでしょ?
ああ、紅茶必要な人は言ってね。
また持ってくるわ。
クッキーも好きに食べて頂戴。
[ハーヴェイに言葉を返しながら、他の者達にも紅茶とクッキーを勧め。イザベラ告げる言葉には少し考え込む]
自分が自分では無いよう…か。
それは確かに不安かもね。
[その言葉を肯定するように頷く。向けられる非対称の視線には慣れることが無く、少し引き気味になってしまうのであるが。それから思い出したように初見の者達へと視線を向けて]
申し遅れたわね。
私はシャーロットよ、長ければ好きに呼んで頂戴。
しっかし夢にしても趣味悪いな、オイ。
どうせなら浴びるほど飲ませろってんだ。
[緋の原に出来た小道を無視して頑丈なブーツで踏み拉く。ぱきん、ぐしゃりと靴底で生まれる感触は夢より現実的。透明な泉を尻目に蔦の這う小さな古城へ進む]
…はい。
[立ったままの人々もいるのに逡巡を示しつつも。
掛けられた声に従って近くの椅子に席を求めた]
イザベラ様に、シャーロット様。
シャーロット様も他の皆様も。
何故此処に居るのかは、ご存じなく?
[問いかけて初めて違和感を覚えた。
此の館に居るのが自然だと、そう思っていたことに気付く]
客、ね。
客なら、迎える主がいると思うんだがな。
[ニーナの言葉に小さく呟いて。
ともあれ、空いていた椅子を寄せて、座っとけ、と呼びかける]
別に、それはかまやしないが。
人の見方なんざ、それぞれなものだし。
[ペンを走らせるイザベラに、最初は気のない声で返すものの。
続けられた言葉に、蒼氷はす、と細められ]
見取り図……?
見せてもらえるならば。
[男は壁に縋り――ずるずると座り込んだ。
記憶の扉が開いたのは僅かな間。
けれど、そこからもたらされた重みに、自らの身体を支えることすら難しかった。]
俺は――此処は――……
[目眩。]
[緑髪の女性──ネリーに様付けで呼ばれ、紅紫の瞳が瞬いた]
……なんだか懐かしいわね、その呼ばれ方。
[小さな呟きは果たして周囲にも届いただろうか。続く問いかけには頷きを返して]
全く分からないわ。
気付いたら森の中に居たの。
そこから獣道を通って来たら……この城に着いたわ。
紅茶。お願いいたします。
[シャーロットと名乗った少女に、そう声をかける]
[手伝うそぶりは見られない]
縮めて呼ぶ必要が有る時はロッテと。
ニーナ、です。
[周りの名を告げる声に合わせて、わたしもまた名乗りました。
何処を向いていいか分からなかったので、目線は中途半端な位置を彷徨っていました。]
えェ。興味がおありなら。どうぞどうぞ。
[ハーヴェイに、見取り図のページを開き渡す。]
くれぐれも、他のページは見ないでください。
至極至極、困りますから。とても。困るんです。
[右眼はハーヴェイを。左眼は検討違いの方向を
ぐるりぐるりと見て回っている。]
困るんです。本当に。ええ、本当にですとも。
[言葉遣いが妙。]
客じゃなかったら、なんだろうね。
でも、何かに呼ばれているみたいな感じはするよ。
みんながみんな、同じような状態で同じ場所に来るなんて。
そうじゃなかったら、夢でも見ているのかな?
[窓辺の椅子に器用に膝を立てて座り、
スケッチブックを乗せる。
紙は捲られ、真白の上に引かれる黒。
連ねられる線は形を作り眼に映る景色を写せど、
其処に人は居らず、*色は無い*]
[何故此処に居るのか。
ネリーの投げた問いに、ほんの一瞬、窓の向こうを見やり]
……気がついたら、花の中にいた。
そこから、この城が見えたんで、誰かいるかと思ってここまで来た。
どうやって来たのかは、さっぱりわからんね。
主?
あら、先程の方は…『番人』でしたね。
[ハーヴェイ、と名乗っていた声を聞いて初めて気付いたのですが、よく考えればおかしなことです。
宿泊の許可を出すのが、番人だなんて。
主がそう言付けていたのなら別ですけれど。]
あっ、済みません。
[椅子の引かれる音に、慌てて頭を下げて。
手で触り、座る位置を確かめてから、ゆっくりと腰を降ろしました。]
[キャロルに頷いて一度茶葉を取り換える。お湯を少量注ぎ蒸らしてから、更に注いで抽出。その間にカップを温め、頃合いになった紅茶を注いでキャロルへと差し出した]
どうぞ。
…ロッテ?
何だかラッセルの呼び方と似てるわね。
[変わった呼び方をする少年を思い出し、小さく笑いが漏れた]
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