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…お主ならやりそうじゃよなぁ。
[断言するクレメンスの様子に至極納得]
それならば次回も虚竜王様が参加すると言えば可能性はあるじゃろうて。
…可能性は低いじゃろうけどの。
だーれがハンカチ噛むか!
次回も選ばれてみせるわい。
[売り言葉に買い言葉、とまでは行かないだろうが、半ば大見得切る形で言い。それでもその言葉は本気だったりするから見栄でも無いかもしれない]
ああ頭下げなくていいって。俺は大した事しちゃいないんだし。
[大した事、でもないのだが。
あの時―人間界で自分が命竜王にソコへいくようにと命じられたのは、たまたま自分が居た場所が彼女が眠る場所に近かく、尤も早くたどり着ける者だったからだ。余談だがあの時だけは、王も「たまには役にたつものね」と珍しく褒めていたりする。
それた話を元に戻すと。
つまりはクレメンスにとってエルザを助けたことは偶然にすぎず。そも助けた後は面倒を自主的に見る者たちに任せっきりで省みる事も殆ど無かったので。]
それよか面倒見てくれてるギュンターの爺さんと、ダーヴィットと…あとは、天竜王に感謝しとくといいよ。
王が随分心配していたからな。
[そう過去を懐かしむように口にすれば、あのときの卵の感覚を思い出したのか、またエルザの頭を少し撫でた。今度はすぐに離したが。]
うはは。今度は戻るは戻るにせよ生命の海まで戻んねぇからな。そっち泊めて。
[さり気無く宿を確保しつつ。]
…って、その可能性は考えてなかった…けど。
無いだろう…流石に。
っくくくく。おーけーおーけー。大いに期待してるぜぇ。
[次の会議前には大地の領域に居た方が面白いものが見れるんじゃないだろうか。
本気でそんな事を考えながら、暫くの間談笑は*続いた。*]
なぬっ。
まぁたまには良いか、仕方の無い奴め。
[断ったってどうせ押しかけてくるだろうと、承諾の意を返し]
まぁ、無いと断言は出来ぬが可能性は低いじゃろうな。
多分じゃが。
[こればかりは虚竜王の心一つなため、どっちとも言えない。
期待するとの言葉には、せんで良い!などと言い返したり。暫く談笑が続き、しばし後に会議が始まるとギュンターが告げに来る]
おお、久しいのぅギュンター。
壮健じゃったか?
[現れたギュンターと二言三言会話を交わしてから、会議の邪魔にならぬようにと、皆を促し共に西殿からは離れて*行った*]
向こう…か。
[エルザの視線に、なにかを思い出しながら。]
人の世界は、せわしなく騒がしいが、飽きないもんさね。
彼らはたったの100年で、俺たちの一万年分は生きる。
短命だからこそ、限られた中で何かを残そうとするんだろうね。
危険も多いから無理には勧めないけど…いつかはみせてやりたいな。
あの景色をさ。
[老竜に促されて移動しつつ、そんなことを呟く。]
お!エリィ!
[兄弟共々中の良い、機竜家の末弟を目敏く見つけて。]
また何かやらかしたのか?おまぃはー!
[ガシッとわしゃわしゃ。
年の割には…というより、バージョンがあがるにつれ段々兄達より大人びていくのは機鋼属の特徴なのかもしれず。
気心の知れた若手の竜たちとじゃれあったりしながら時は過ぎたり…*]
[ 影は影。唯、其処に佇むのみ。
故に、例え周囲で何が起ころうとも口を開く事もなく、時の移ろいに従い影が動くように視線を緩やかに漂わせて、黒曜石を模した漆黒の瞳に全てを映していた。瞬きすらしていたかは怪しい程に。
それに変化が起こったのは、翠樹の幼児がノーラの背後に隠れた時だ。
僅かばかり左側に首が傾ぐも、咎める事はない。助け舟を出す事もなかったが。
しがみついて来る幼児に、肩に羽織った黒布の下から伸ばした手が柔らかな金糸へと伸び、指先に絡められた。厭うか否か、反応を見てから撫ぜようというのだ。親が我が子に為すように。]
[ やがて諸王は西殿へと赴くも、会議の場に立ち入ることは許されぬ。
待つ間には自由が与えられるも、それには竜都の内のみという条件が付け加えられた。当然のことではあろうが。
父親と離れ心細いのであろうか、離れぬ翠樹の仔竜は連れて歩くこととなる。硬い床には影の足音はなく、子の足音は小さきものだ。尤も、他の者も居たのだから、例え音がしたとて掻き消されてしまったろうが。
特別行く宛てもなかったが、影は広間に辿り着いた。ソファの傍まで導き、幼児を其処に座らせると、隣に腰を下ろす。
ノーラの手はベアトリーチェの近くへと伸び、仔が求めるならば触れられる距離へと置かれた。仔が他に興味を移すまで――或いは眠りにつくまで、そうしていた。]
[ そして現在、仔竜の姿は傍にはなく。
ノーラは随行者名簿と記された紙束を繰っていた。指が滑りぱらりと音が鳴る。一頁を読み終える度に、黒の瞳は目蓋の内を隠し、再び現した。きっかり十六回、それを繰り返して名簿は閉じられた。同様に眼も閉じ、一時の闇に浸った後、ゆっくりと開いた。常と変わらず、伏しがちに。
宛てはなかれど、緩やかに回廊へと歩みだした。]
[黄蛇の名を問い答えが帰るまでの間、視界の端に黄蛇の舌が閃いた。レンズ越しの紺碧はそれを確かめる為に動く事なくくねる胴体を見つめる]
ナギ殿、此方こそよろしく願います。
[ベアトリーチェの衣服の影へと消える黄のうねりを会釈しながら見送る。
そうして西殿へ王を送る者達と別れ入り口へと足を向け、また新たな一団へと短く自己紹介を交わしたのだった]
―竜都の端―
[青年が向かったのは機鋼のグライダーの無残な姿が晒された地。無闇に触れるものが居ないよう紐の張られた内側に視線を向け、垣間見える機鋼の技術力の一端を刻み込んでいく。
墜落した以上、製作者は機鋼の王達ではないだろうと思考しながら若焔の言葉を思い起こす]
機鋼エーリッヒ殿の作なのかな。
[問題はグライダーではなく操縦の腕前の方かもしれないが心無い残骸からは読み取る事は出来ない。ただ機鋼の随行者の力の一部である可能性を記憶して踵を返した]
― 竜皇殿・テラス ―
[ 竜の長たる者の居城。
この場所からは、竜都がよく見渡せる。賑わいは遠かれど、平和な情景は目に浮かぶようだ。
幼児は此処より飛び立ちもするのではあるまいか。
ノーラの手が手刷りに伸び、滑らかな表面を撫ぜた。]
[まっすぐ目指した行きと異なり、帰りは現在の竜都の状況を確かめつつ歩く。青年の口元に常に浮かぶ笑みは、商売上手な店主達と客との遣り取りにも修理中の酒場の扉にも変わる事がない。
笑みが表情として張り付いているのではなく、喜怒哀楽その他全ての感情が引き起こす心の動きを穏やかに受け取っているだけなのだが、より多く感情の過ぎる眼差しを合わせる事はないから掴み難いだろう]
……賑やかは嫌いではないけれど、少し疲れるな。
[静謐な【心の間】から久方ぶりに出た見に雑多な感情の坩堝である竜都は少々刺激が強く、見事な枝振りの木の幹にもたれ目を閉じる。そこが影輝と疾風の出会いの場であった事は勿論知る事なく]
[ 風に靡くのは淡い闇を薄めた茶の髪ばかりだ。
黒も紫紺も揺らぎはせぬ。
樹上から降り立ったのと同様に、ノーラはテラスより飛び立つ。その背に、薄い靄が一対の翼が如く掠めたのを見たものは居るまい。]
[ 都の喧騒を通り過ぎ、辿り着くのは賑わいから離れ、緑のさやめきが耳に届く場所。光を浴びる木の葉のつくる陰から生まれるように、ノーラは其処に――樹上に現れた。
よもや眼下に先客が居るとは思わなかったが。
存在の有り様の変化に、木々が葉擦れの音を奏でた。]
影輝殿。
[白い素足と紫紺の布を視界に収め、それ以上視線を上げる事なく声をかける。気配雑多な竜都にあっても、影竜王の影の持つ気配は一種独特に捉えていた。その心の動きが掴み難いという点において。
降ってきたエレオノーレの声は微かながらも青年の耳に確かに届く]
はい。
エレオノーレ殿。
[ 二度の異なる呼びかけに、首は傾げられはせず、頷きが返った。微風に揺れる葉と間違う程、微かに。
疾風の随行者に出会った時と同じく、影は地に降りる。纏う布は先の首肯よりも僅かな動きしか見せぬ。]
散策でもなされていましたか。
[ 黒の瞳がレンズ越しの紺碧を映す。ノーラの視界に入る石と鎖は、木陰と木漏れ日の間で色を移ろわせて見えた。]
[布地から覗く素足のみの理由ではないが視線を上げない青年は、それでも頷きを感じ取った様子で口元の笑みを深めた。
地に降りる影に木に背を預けた持たれた姿は失礼と背筋を伸ばし、レンズ越しの視線を顎の辺りにとどめ相対する]
はい、そのようなものです。
エレオノーラ殿もご休憩でしょうか。
場を邪魔したのであれば申し訳ありません。
[広口の紺に近い黒の袖を持ち上げ、指先だけ覗く手を幹に触れる。こちらに黒の瞳が向けられている事は感じていたが目を合わせぬようその色を確かめる事はなかった]
いえ。
私は影を求め渡っていたのみですから。
先にいらしたのは、貴方の方でしょう。
此方こそ、一時を破ってしまったのではないかと。
[ ノーラは瞳に似た色のショールの下から覗く手を口元に当て、顔を斜めに傾けた。此方に向かぬ眼差し。その紺碧に映る色を、掬うように。]
数多の存在の在る地は、
精神の属にとっては毒とも薬ともなりましょう。
[ 調子は真似るようであり、科白は老獪さを潜ませ、仕草は幼児にも通ず部分があった。]
影を。
[その言葉だけで急に現れた気配の理由が肯定され青年は頷いた。
此処が影輝竜の気に入りの場であれば申し訳なく思いながらも、一時との声を否定し緩く首を振った。斜めに傾けられた手の影の顎の線と掬うような視線の気配から逃れ、しゃらり瀟洒な音が鳴る]
いえ、白昼夢など目を閉じればいつなりと。
それに場を均すあなたの気は毒も薬も和らげましょう。
[顎の線を隠した仕草と裏腹な老獪な台詞に興味を引かれ、逸らした視線を結われた髪の付け根に移す]
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