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―屋敷二階・個室―
[ユリアンが様子を見に来た。
廊下から光が射し込み、すぐに室内はまた暗くなった。
足音が遠ざかる]
……。
[暫し待機]
…………。
[むくりと起き上がった]
そんなのお見通しよっ
[見張りに立っているものが居るようだった。静まった屋敷の中でも、活動しているものの気配が幾つかある。
外には出られない、だが
暗闇の中、静かに宣言*した*]
[パイプラインの隙間を抜けて、その未完の竜へと歩み寄る。
律を知らぬ仔の、純粋な渇望。
外の世界への憧れは、かつて自分が殻の中で描いたもの。]
…わかるよ。
わかるけど、なぁ…。
[静かに、その機体に触れ、宥めるように囁く。
竜の律、竜の意味。
大きな力を持つが故に。
仔のあげる、鉄の軋むような声。
不満、反発、それはただの我が儘で。]
…なっ…!?
[幼いとはいえ、未だ枷をはめられる前の力。
律により封じられた自分では太刀打ちできず。
視界は歪み、全身が軋む感覚。
灰のように、霧のように、ほどけて…]
[再構築は、集積室の中空。
飛べなくなって久しいその身では、反応しきれず、なすすべもなく。
ほおり出されるまま、スクラップの山へと墜落。]
…っそ……。
[小さく悪態ついて身を起こし…
あちこちに明滅する赤い光の瞳。]
…洒落んなってねぇぇぇ!!!
[追いすがるドロイド達から、必死で逃走。]
―屋敷外/昨夜―
[壁を殴り付けた姿勢で立ち尽くしていたのは、どれだけの時間だったのか。
決して、長い時間ではないだろうけれど]
……とにかく。
防衛手段は、確保しねぇと。
……エターナル・ロンド!
[呼び出したそれを確りと握り、天へとかざす。
ゆうらり、揺らめく、煌めく、黒]
護りの力……欠片となりて……天と、地へ。
エターナル・ロンド……護法天陣!
[声に応じて天へ向け、光鎖が翔ける。
黒が天蓋に描く六芒星を、不寝番に立った者は目にしたか。
そして、それが煌めきとなって崩れ、舞い散る様を。
天と地に、散りばめられしは、護りの欠片]
……とりあえず。
これで、物理的な……ドロイドの攻撃なんかは止められるが。
[二人の同族を消した力。
それに対しては、無力であるのもわかっていた]
っとに……恨むぜ、機竜卿。こんなに事態をややこしくしてくれて。
……心なき力は、暴走する。
『魂』無き、『器』も然り。
例え……それがどんなに重荷だとしても……。
[続いた言葉は、ため息に飲まれて]
……ま。
どうせ俺が言っても、説得力ない、って言うんだろうけどな!
[っとにもう、と。
疲れたように言いつつ、頭を掻いて。
も一度夜空を見上げたなら、広間に戻り。
預けた従魔を引き取って、*自室へと*]
< ソファの上におろされて、猫はおねんね。ぽかぽか、ふわふわ。
気持ちよさそうになでられて、 >
―朝:広間―
< 朝はやく、目をさました猫は、左の前あしに布がまいてあるのに気がつきました。
あらあら、おどろいちゃう。にゃあ と ひとなきしてしまいました。
寄りそうような黒猫に、すりっ、身をよせて、猫はソファから床にとびおりました。
しゅたん。うん、だいぶ、楽になったみたい。でも、人の姿になろうかなって思うとむりでした。こまったなぁ。
猫はそれから、てとてと、とてとて、あるいてゆきました。お水のそばに、いきたかったのですけれど――ねえ、おそわれたの、おぼえてないのかしら。昨夜のうちに、時空の竜が、どうもとめておいてくれたみたいですけれど。 >
< 屋敷のあたりのお空に、結界(っていうのかしら?)があることも、猫は知りません。
てこてこ とことこ、いちばん近い川辺にたどりつきました。朝だから、ドロイドたちも眠っているのかもしれませんね。
猫は川に顔を近づけると、水を飲みました。つめたくて気持ち良いです。でも水中に魚がいません、どこかへいってしまったのかしら。 >
―昨夜:広間―
[繰り返されし歌が止んだのは、時の竜が戻りし頃であろうか。
戻ってきた彼の竜の言葉にひとつ瞬いて、なれど何も問う事なく彼の仔を返す]
…おやすみなさりませ。
[二階へと上がる二人を見送って、私は氷の窓越しに天を見る。
天蓋には既に何もなけれど、広間で彼の竜が告げし通りに対ならぬ対たる時空の力が屋敷を包むを仄かに感じ取った]
……
[感じたのは安堵か疲れか。
気配の多さと料理の匂いに柳眉を寄せ、密やかに吐息を零して。
私は広間に残る者へと小さく頭を下げ、重い脚を緩慢に動かし、部屋へと戻ってゆく]
[部屋に入り目にしたは、美しき青の布。
私は彼の猫が大切にしているそれを手に取り、緩やかに…なれど叶う限り急ぎて広間へ戻る。
寄り添う黒と白、そして銀茶の髪の少女を起こさぬよう、静かに彼の猫の左前足を取り、青の文様の上へと優しく布を巻きつける。
全てに干渉しつつ、何物にも干渉を受けぬ天聖が属は、その行為を無事に成し遂げたろうか]
[重い脚を半ば引き摺るようにして部屋に戻り、私は褥へと潜り込む。安堵か疲れか、眠りは速やかに深く訪れて。
目を覚ましたは、朝の光が窓から差し込む頃――]
―現在:二階個室―
[痛みは薄く――なれど鈍く続く脚へと触れれば、そは熱を孕んでいて。少々無理をしすぎたかと、柳眉を下げる。
私は気付かれぬ内に足を冷やそうと、負担かけぬよう緩慢と屋敷を出て川へと向かう。
既に先客がいるとは*思いもせずに*]
< 左の前あしの青い布は、濡れてしまうまえに、においをかいでありました。
ナターリエが、つけてくれたのかなって、猫は思いました。だって、とてもやさしくて。
それにいくら疲れているからといっても、あんまり知らない人なら、目をさましたでしょうし。あと、青い布をなくしてしまったのは、温泉でしたし。 >
…水のほうが、やっぱり、いい。
< 猫は真剣に、つぶやきました。にゃあ。 >
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