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-6-
[ブリジットに睨まれたところで]
[痛くもかゆくも]
[怖くもない]
[ハインリヒが出ていった]
[ブリジットがそれを追いかけていった]
[あの緑の子もいない]
───リーチェ?
[何処かへ向かっていく足音]
[ひきとめはしなかったけれど]
[嘆息]
[部屋には独りきり]
[壁によりかかった]
―階段―
[階段に向かうとノーラが眠っているベアトリーチェを抱き締めていた。]
(どうして)
[その問いに答えは送らない。
いや、答えなんて、ない。]
糸が…見えるって、きいたよ。
君と……その子から………
…そう。
[答えのない返事、続く問いに返す言葉は曖昧にして
唇を一度引いて、そして震える身体を堪えながら]
――…何を、していたの?
ベアトリーチェは、いい子だね……。
[そう微笑んでから……
ポケットにあるカードキーをノーラに見せる。]
ヘリのドアは、これで開くみたいだね。
─ 二階廊下 ─
[一階の水汲み場でハインリヒと出会う事はなく、二階6の部屋に入る以前。廊下にまだブリジッドが居たならば、ハインリヒの所在を尋ねた。それから──、]
オトフリートがどう言った経緯で死んだか
教えてくれないか。
三階で会ったゲルダには聞けなかった。
死者の声が届く彼女を辛くさせそうで。
[尋ねながら6の部屋へ]
─ 二階・6の部屋 ─
[二階の6の部屋に入るとライヒアルトがたち上がった所だった>>121。
ナターリエを起こさないよう、扉の近く呼び寄せ、]
実験室に来てくれるのか。
助かる。
と、私も部屋は見て来た。
実験室の建設当時、こちらに利用出来る予算は豊潤にあったらしい。
国から相応の予算がおりているプロジェクトだ。
当然と言えば、当然なのだが。
継続して相応の予算を確保出来る環境であったようにも見えるな。
[それは予算をおろす側、様々な施設に視察や講演会で訪問する立場だったヘルムートがライヒアルトに言った感想。続く言葉は、]
此処も奥は茨と蛇に浸蝕されている。
時間も専門知識も無いゆえ。
大した事が出来ないが、ひとつだけ──どうしても調べたい。
[目を閉じる]
[生き返ったのは右の腕]
[それから右の低下しかけていた視力]
[そういえば自分のカメラ]
[思い出して傍らにあることに気付いた]
[運ばれている時もきっと持ったままだったのだろう]
[苦笑]
[手繰り寄せて]
[電源を入れ]
[ファインダーを覗く]
[右腿で支えながら調整して]
[もう一度覗く]
[完全にカメラのレンズだけが今の視界]
[彼の笑みがどこか「怖い」と感じて
そう感じてしまった自分が――嫌だった。]
…
[繰り返される言葉、その意味は、…。]
この子に…何かしたら
―― 許さないわ。
[き、と少し鋭い視線を向けて彼を見上げれば、その手には]
…っ、…
[ひとつ息を呑む。あのカードがなければおそらく――]
―― 私に、どうしろと…言いたいの?
[ライヒアルトと金の髪の女が来たことには気づかないまま]
[じっとファインダーの中だけを覗く]
[流石に右手だけでは重く感じられて]
[ゆっくり左膝を折り曲げて]
[その上に左の肘をついて]
[カメラに添える]
[これはこれで丁度いい]
[硬化した左半身]
[三脚がわりになると思った]
[レンズを覗いてどれぐらい経ったか]
[かしゃり]
[シャッターを下ろす]
[切り取られる世界]
[自分を抱くように、緩く腕を組み
やはり少し俯きがちに。]
…― …
[ヘルムートが6の部屋へ向かうなら
後を追いながら話すだろう。]
――…ミスター・フェヒナーは
石化の進んだ場所の、関係か
…言動が、意味不明に、なっていて
まるで、こどものように、暴れていたの。
情緒不安定で、…あの、クスリの副作用のようにも見えましたわ。
[もう1人――既に1人は?どうしてその事が解るのだろう。
少女を襲わないと言う。信じていいか彼を視るのが怖かった。
繋がれた糸。それを知っているのなら、彼は自分も襲わないと言ってくれているのだろうか。ふとそんな疑問も過って、じっとダーヴィッドに見られれば、新緑は視線を返す。]
―― っ…
[自分で考えればいい。
けれど彼は言っていた。『時間が欲しい』。
現れた蛇を退治しようと、ユリアンの蘇生をしようと、蛇を怖がる私を抱き上げてくれた彼の姿が――脳裏を過る。]
[答えが―――闇夜の奥に沈んで 視えない。]
─ 二階6の部屋 ─
箱と一緒に溶解してしまった資料には、
『 結晶多形を解析すると
不完全でいびつではあるが、
ある星座の形が見える 』
──と書かれていたんだ。
結晶多形がどのような形で見えるのか、
専門家ではない私には資料から読みとれずだったのだが。
端的に確信には触れられないと言った書き方だった。
それが私には密告が真実に感じられたのだ、当時。
私達は、ピューリトゥーイ[のところで声を低くして]だけじゃなく。最終的にゼルギウスに対抗する──必要があるんじゃないか。
そんな風に考えているよ、ライヒアルト。
[そこまで言い終えてから、起きて周囲に居る者達の反応を伺った。出来れば、ハインリヒの意見も聞きたかったのだが、彼はそこにはいない。
オトフリートの石像に視線が流れた時、シャッターの音が聞こえた。]
―3階 下り階段前―
[こつ、と足に見覚えのある小さめの箱が当たった。救急箱。
その横に数人のカルテ――エーリッヒのものだろう。
それを丁寧に拾い上げて彼の書いた文字を視線で追う。
カルテはハインリヒに届けるべきだろうと考えた。いいでしょう?と石になった彼に一度目配せ。
ゼルギウスに繋がる紙の事も皆に伝えなければと思う。
けれど杖のないベアトリーチェをこのままにする事は出来ない。]
…誰が、何であっても
ここから生きて出たい
その思いは――等しいわ。
[彼の腰に巻かれたレイピアを「借りるわ」と言って取り上げて、眠る少女が目覚めるまで暫くその場にいただろう。**]
[ファインダーに収める]
[白い石]
[壊れた眼鏡]
[人でなくなったもの]
[撮ってみようという、興味]
───。
[もう一つ、シャッターを押した]
[誰かが入ってきたとしても左目は]
[だから音がなければ気付けない]
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