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集会場は不信と不安がない交ぜになった奇妙な空気に満たされていた。
人狼なんて本当にいるのだろうか。
もしいるとすれば、あの旅のよそ者か。まさか、以前からの住人であるあいつが……
どうやらこの中には、村人が1人、占い師が1人、霊能者が1人、守護者が1人、妖魔が1人、囁き狂人が1人、共鳴者が2人、呪狼が1人、智狼が1人含まれているようだ。
あー、諸君、聞いてくれ。もう噂になっているようだが、まずいことになった。
この間の旅人が殺された件、やはり人狼の仕業のようだ。
当日、現場に出入り出来たのは今ここにいる者で全部だ。
とにかく十分に注意してくれ。
[ごとごとと重い車の音をさせながら引かれていくライオンの檻の屋根の上で、猛獣使いが、派手な音と共に鞭を揮う。ライオンは眠っているのか、鞭に怯えもせず暗がりにうずくまったままだ。]
[軽やかに跳ね回りながら、軽業師達が、見物人に招待券や風船、綺麗な紙に包まれたキャンディを配って歩く。招待券と共に、手を引かれて列に引き込まれることもあったが、嫌がる者は稀だった。]
[旋律が風に乗って、静寂を覆い隠してく。
楽しげに、楽しげに。
遠く遠く、
見つめる紅の睛は、
緩く緩く、
瞬きして色を映す。
軽やかに、軽やかに。
取り取りの色が舞って、町中に広がってく。]
[やがて華やかなパレードの最後尾に、ふいにそれまでとは違った色が現れる。それは四頭の黒い馬に引かれた漆黒の馬車。御者は奇妙な怪物の仮面を被った小さな男で、馬車の窓は黒い天鵞絨のカーテンに塞がれている。]
[馬車がメインストリートにさしかかると、ふいに、竜巻のような一陣の風が天鵞絨のカーテンを巻き上げ、ぼふん、という音と共に、窓から吹き出た白い煙が辺りを包んだ。]
[そして、煙が流れ去り、再び視界を取り戻した人々が目にしたのは、四頭の白馬と、それを操る、すらりとした長身の仮面の男。そして真白に塗りたてられた荷馬車の上を埋め尽くす白い花の山だった。]
[馬車は白い花を撒きながら、しずしずと進んでいく]
[花を手にした者があったなら、それがとても精密に創られた、紙の造花であることが判るだろう]
……アリス?
[ぽつり、傍らのテディベアへと
鈴を転がすような声が投げられて。
けれど、作り物の熊は何も答えず、
少女は首を傾げて巻き髪を揺らす。]
開演、今日だったんですね。楽しそうだ。
ええ、アーヴァインさんは例によって――渋い顔をされてましたが。
今日も見張るとかで。
あ、これ貰っても良いですか?
…あ。
[洗剤と、食料。あとは生活備品諸々の入った紙袋を抱えて、
今日こそは持ち出したメモと、内容を照らし合わせる。
──大丈夫、買い足りないものは無さそうだ。
ほっと息を零して、横道を抜けた先。
大通りを練り歩く鮮やかなパレードが目に入った。
あぁ、先ほどから鳴り響いていた賑やかな音は、これだったのかと
ぼんやり納得しながら、パレードに巻き込まれないように
そぅと道の端に避ける。]
……今日から、だったんだ。
さあ、どうぞ、キャンディはどうですか?招待券もまだまだありますよ。
[いつの間に紛れていたのか、パレードの道すがら町の人々にキャンディや招待券を配って歩いている]
[聞こえてきた、賑やかな音。
本の整理を一段落させ、雇い主である店主の方を振り返る]
……臨時休業にでも、しますか?
これじゃ客、来そうにないでしょ。
[冗談めかした問いに、店主は仕方ないな、と頷くが。
本心では、賑やかさに心惹かれているのは一目瞭然。
……結局、書店は早々に店じまいを済ませ、彼は、猫と共に、通りへ出る]
さて……行ってみるのも、わるかない、かな?
――え?
いや、如何したんですか。変な顔して。
そんな、酷いなぁ。
僕だって本しか楽しみがないわけじゃないんですから。
良いじゃないですか、サーカス見に行ったって。
兎も角、貰いますね。
ご飯御馳走様でした。
[茶色の熊を抱き寄せて毛並みを撫ぜる。
黒いタキシードの汚れはすっかり払われて、
まるで彼女をエスコートする紳士のよう。]
なんだろうね。
[赤の眼差しはまた外へと向けられる。]
[ポケットから取り出すのは、二枚の招待状。
祖父に行くかと聞いてみたが、誰か誘って行け、と切り替えされたので、そのまま持っていたのだが]
……誘うようなアテもないんだがね、俺。
[苦笑めいた面持ちで言いつつ、賑やかさの方へと進む。
足元には、尻尾を揺らす、黒猫一匹]
[──昔は、あの頃は。この鮮やかな色たちも、心躍る音楽も
すべてが魅力的に見えていたのに。
小さく、吐息を零す。…ああ、苦手だ。
紙袋を抱えたまま、通りの端の壁に軽く凭れて──]
……ッ、え。
えと、私ですか?
[近付いてきた人物に声を掛けられ、思わず小さく肩を揺らす。
心の中を見透かされたのかと思った、と、少しドキドキしながら、
差し出されたキャンディにありがとうございます、と、
紙袋を持った手とは、逆の手で受け取った。]
あ、だけど、私、…招待券は。
[もご、と口篭る。
苦手だなんて、正面切っていえないし、
だからといってうまく断る理由も思い浮かばない]
どうぞ、ご遠慮なく。魔術の実演には私も出演するんですよ。
ぜひ、観に来てください。
[ニーナの内心など知らぬ様子で、笑みを浮かべる]
行ってみよう、か。
[扉から出て行けば
祖母に知られてしまうから、
こっそりと窓から。
そんなことをするのは初めてで、
越えようと身を起こして窓の下を覗くと、
近いはずの地面はとても遠くも見えて、
頭がくらくらとして心臓が高鳴った。]
え。出演するって──
凄い、ですね。
[向けられる笑みに、つられる様に小さく笑みを浮かべて。
ちらりと、相手の顔を気付かれない程度に伺う。
見覚えのある人じゃ、ない。……大丈夫。
小さく深呼吸した。
やっぱり行く気がしないのならば、誰かにあげればいいのだし。]
えっと、じゃあ。ありがたく…頂きます。
実演、頑張って下さい。
[先ほどキャンディを受け取った手で、
再び、今度は招待券を受け取って]
はい、コーネリアス=ブランといいます。魔術師見習いなんですよ。
ありがとうございます。お嬢さんのような可愛い方に来て頂くと、興行の甲斐があるというものです。
お名前を伺ってもよろしいですか?
いえ、こちらこそありがとうございます。
[深々とお辞儀をして、受け取ったキャンディと招待券を
失くさないように紙袋の中へ、しまいこむ。]
見習いでも、凄いと思います。
時間が、あったら。 見にいきますね。
[時間があったら。まるで自分に言い聞かせてるみたいだなと
頭の端で考えながら、笑みを返して。
投げられる問いには、少し首を傾げながらも]
ニーナ。ニーナ=ベルティ、って言います。
町の診療所で、お手伝いをたまに、してるんですけど。
…怪我や病気でも、なされたら。どうぞ?
[ちょっとだけ不謹慎ですけど、とくすくすと笑みを零して]
[何処かで見たような少女の姿。]
あれ、君は――
いや。大丈夫?
[一度首を振る。何かを堪えるようにクマを抱く少女に、一歩近付こうか。]
ニーナさん。ですね。良い名前です。
あなたに、とても似合っている。
優しい方ですね。
ええ、魔術は時に危険を伴いますから、もし怪我をしたらよろしくお願いします。
え、と。……ありがとうございます。
[名を褒められるとは思わなかったから、
少しだけ驚いたように青を見開いて、小さく頭を下げる。
続く言葉は、小さく笑みを向けて]
ブランさんも、優しい方だと、思いますよ。
でも一番いいのは、やっぱり無事に演目をこなす事だと思いますから
気をつけて、頑張ってください。
[蹲ったままの少女を見るや、暫し躊躇うように視線を巡らせた後、更に数歩近付く。それからその顔を覗き込もうとするかのように屈み込む。]
えっと・・・立てる?
[花を左手に持ち替え、右手は少女の目前に。]
あら?
[メインストリートに面した窓。
小鳥に手を伸ばそうとした手におちた花びらがある]
これは、紙ふぶきかしら…?
シャロ、みてごらんなさいな、シャロ…。
[何枚も何枚も振ってくるそれを手でうけとめると、
部屋の奥に居る、’娘’を呼んで。]
はい。気をつけてください。
[おどけるような口調に、
やはり、くすくすと笑いを零して]
…そういえば、どんな魔術をなされるんですか?
見習いとはいっても、実演するぐらいですから
[きっと、随分凄いものなんでしょうね。
緩く首を傾げる。青の髪がさらりと揺れた。]
きゃあ…!
[娘へと差し出したその手が、軽く叩かれたように動き。
部屋の中を紙ふぶきが舞う]
こら、シャロ、はしゃぎすぎですよ。
[軽く娘をたしなめると、また帽子の用意をして]
わかっているわよ。もう。
出て行きたくって仕方ないって顔だわ。
[楽しそうに空を撫でると、娘を伴って、メインストリートへ]
[差し出された手と、
目の前の青年とを見比べて、
小さくもう一度頷くと、
手は借りずに立ち上がって。]
立て、た。
[眉を寄せながらも答え、
涙を払うように首を振る。]
それにしても、賑やかなもんだなぁ。
[次々とやってきて、パレードに加わる人々の様子に、こんな事を呟く。
それに同意するように鳴いた黒猫が、子供に尾を踏まれそうになって避ける様子に苦笑しつつ]
ほら、こっち来てろ。
[手を差し伸べ、黒い身体を肩へと乗せ、また歩き出す]
ん。良かった。
怪我とか、してない?
[体勢はそのままに立ち上がった少女を見上げ、差し出したまま行き場の無くなった手は元の位置へと戻る。]
[メインストリートを、娘をともなって歩く。
けれども人の波にまぎれているはずなのに、
女のとなりには、なぜだかいつも、
人ひとり分の空間が空いていた]
メインストリートにこんなに人があつまるのは、
お正月くらいかしらね。
クリスマスは、みんな家でお祝いをするし…。
[にこやかに、娘と語らい、歩いていく]
そう、なかなかに大掛かりな魔術ですよ。
でも、内容は秘密です。
[笑いながら、人差し指を立てて、自分の唇に当てる]
私自身はカードマジックが得意なんですけどね。
それと占いも少々。
[馬車の後方から降る白い花の吹雪に、レンズの下で目を細め]
――これは美しい。
けれど…もっと色とりどりの方が美しいでしょうに。
[言ってから肩を竦め]
まあ、さすがの魔術師殿もそこまでは難しいでしょうかね。
[予算や手間が、と小さく呟いて。
パレードが進むメインストリートの人込みを避けて、裏通りへ]
そうですよね、秘密にしておかないと。
楽しみが、へっちゃいますもんね。
[同じように、人差し指を立てて、口許に当てる。
くすくすと笑いを零して。
ふと、続く言葉に、興味を惹かれたのか僅かに姿勢を正す]
カードマジック、ですか。
占いが出来るって、凄いですね。
[それは、やらないんですか?
緩く首を傾げ、小さく問い]
ええ、そう、占いの方は、ね。
大切な時にしか、出来ないんです。
でもカードマジックはお見せ出来ますよ。
ほら!
[パチン、と指を弾くと、一枚のカードが指の間に挟まれている]
なら、良かった。
通りは人も多いし、気をつけるんだよ?
これ?
うん、さっき落ちて来たんだ。
――嗚呼、そうだ。
[白い花を見つめる少女の頭、結わえられたリボンの辺りに手を伸ばし――]
それは、──残念だな。
でも、大切な時にしか出来ないなら、しかたないですよね。
[今は見る事が叶わないと告げられて。
ほ、と零した溜息は、言葉とは裏腹に何処か安堵にも似て。
と、突然現れたカードに、わ。と驚いたように目を見開いた。
瞬きする間に、増えていくカード。]
…わ、え。
すごい。どこからでてきたんですかっ?
[わぁ、と楽しげに、小さく歓声を上げて。
指に挟まれた数枚のカードを、マジマジと見つめる]
[鮮やかな赤の中に、
飾られる白の花。]
?
[きょと、
きょとり。
初めは何があったかわからずに、
遅れて、
少女の小さな手が、
青年の大きな手と入れ違い、髪に触れる。]
[道一本だけメインストリートから離れた裏通りを急ぐことなく歩いていく。ひとつ辻を通り過ぎる度に、パレードに賑わいが届く]
なかなか盛況のようですね。――おおっと?
こんな所に骨董店とは珍しい。
[店の中を二つのガラス越しに興味深げに覗きこむ]
[不意に、黒猫が声を上げる。
どうした、と振り返った先には]
……おやおや。
御揃いで、お出かけですか?
[親子連れと、少年の姿をみとめて、軽い口調で声をかけ]
あぁ、残念。
[知りたかったのに、と冗談交じりにくすくすと笑って。
ふと、掻き消えたカードに、再び見開いた。
小さなマジックショーに、小さくぱちぱちと拍手を送る。]
うん、すごいです!全然判らなかった。
見せてくれて、ありがとうございます!
[よかったら今度は、もっと見せてくださいね。
ふわと、笑みを零して]
[店の奥、静かな笑みを浮かべた店主に笑みを向ける。
しかし店には入らずに、ゆっくりと立ち去った]
パレードは今日だけですし…ね。
[言い訳のように呟けば、また歓声が届く。
聞き覚えのある声に、男はそちらへと足を向けた]
ええ。この子がもう、おちつかなくてね。
リック君も、サーカスを見に?
[エレノアはくすりと笑い、"Miss"のほうは手を振って
視線をすこしずらせば、先日会話を交わした青年の姿が見えるだろうが、まだ気づけずに]
ん?
あ、骨董屋の。
骨董品から足が出ちゃったりしてないようでよかった。
別に揃って、ってわけじゃないけど。
ただ、パレードを追ってみてるだけ。
……、
[花から手を離して緩く首を傾け、
テディベアを抱えて口許を隠す。]
ありが、とう。
[返した声は、
いつもより更に、
小さくて。]
あら、先日の…。
[こちらにもほほ笑んで会釈をし、
娘のほうもぺこりとお辞儀をして、笑いかける。
以前は彼も、たしか自分が見えたはず、と。]
賑やかだからね。
Missもたのしいんだろ?
サーカス、チケットを母さんが行けってくれたからね。
パレードだけでもしっかり見ていかないと怒られる
ええ、また是非に。
[ニーナの拍手に、一礼して]
さて、そろそろ仕事に戻らないとまた失業してしまいます。
ニーナさん、サーカスでまたお会いしましょうね。
[微笑んで、軽く手を上げる]
――おや、マジックはもうお終いでしたか。
惜しいことをしました。
[二人に声を掛けて笑みを見せ]
こんにちは、ニーナ。コーネリアス。
ニーナはお買い物ですか。よろしければお手伝いしますよ。
……それは、どういう意味ですかと。
[リックの言葉に、にこりと笑いつつ。
避けられないなら、頭の上に手をぽふり、と置いて]
追うだけ、じゃ面白くないでしょうに。
……そう、思いませんか?
[どこか楽しげに言いつつ、エレノアとその娘の方を振り返る]
や、こんにちは。
今日は、いつになくご機嫌なようで。
[ぺこり、とお辞儀をする娘には、ごく軽い口調で声をかける。
その様子は、そこに当たり前に人がいるようにも見えるだろうか]
こんにちは、ヴィンセントさん。
ああ、丁度良かった、ニーナさんを送ってあげてください。
私は仕事に戻らなければいけないものですから。
ふふ、そうね。
お母様もこられればよかったのにね。
ああ、これは、お母様へのお土産かしら?
[そういってリックに紙の花を差し出して。
一方、娘はハーヴェイの猫に興味深深、といった模様]
はい。お仕事、頑張ってください。
[軽く上げられた手に、空いた片手で小さく振り返す。
と、近付いてきた人影に、視線を其方へと向けて。]
あ、ウィスラー先生。こんにちは。
[数日前に診療所で見かけた医師だと気付いて、ぺこ、と軽く頭を下げる]
はい、でも今日の買い物は診療所ではなくて、
個人のものですし、量も少ないですから。
[大丈夫です!と、紙袋を片手で抱え上げて見せて、
ふと、紙袋の中身を思い出した]
あ、先生も、キャンディ食べますか?
先ほど、幾つか頂いたんですけれど。
[細い眉の端が下がる。]
ん、と。
えっと。
[暫く言葉に迷って、]
行くところ、あるから。
またね?
[熊の手を振って挨拶して、]
ありがとう。
[もう一度お礼を言って、
ぺこりとお辞儀をして歩み出すけれど、
ゆっくりとした足取りは、
追いつこうと思えば簡単に出来るくらい。]
さ、そのままの意味じゃないかな。
……あー。でも悔しい。
手、どかせよ。
いつか逆にやってやる。
……追うだけでもおれは十分楽しいな?
[コーネリアスに頷いて]
そうですね、お仕事頑張って下さい。
ニーナには診療所でお世話になってますし、責任持って送って差し上げますよ。
おや、ご自宅でしたか。
ですが、診療所へ行く途中ではありませんからかまいませんよ。
飴はもちろんいただきます。お駄賃にね。
[甘党は診療所でも変わらない様子]
ほら、遠慮せずに。
急がないとサーカスの開始に間に合いませんよ?
[にこやかに笑って、ニーナの抱える荷物へと手を伸ばす]
[黒猫は、肩の上でゆる、と首を傾げて尻尾を揺らした後、挨拶するようになぁう、と鳴いて]
……ああ、ちゃんと紹介してなかったかな?
こいつは、俺の相棒のウィッシュ。どうぞ、お見知りおきを。
[親子に向けて、黒猫を紹介して。
リックの言葉には、くつり、と楽しげに笑って見せる]
大体、そりゃ俺じゃなくてじいちゃんに言ってやってくれ。
その内、骨董品と一体化するんじゃないかと、心配すらしてんだから。
[言いつつ、ぽふぽふ、と頭を撫で]
いつか逆に、ねえ……やれるもんなら?
まあ、追うだけでも楽しいと言えば楽しいが。
せっかくなら、楽しんでかないと損だと思うぜ、俺は。
ん、そっか。
またね。
[微笑み、小さく手を振り返す。ゆっくりとした足取りをやや心配そうに見送りはすれど、追いかけようとはしない。目の前で転ぶようならば、即座に手を差し延べに行くだろうが。]
[ご機嫌なようで、とハーヴェイに声をかけられれば、
娘はこくこくと何度もうなづいて。
空に上る風船や、ちらばる紙ふぶきをひとつひとつ、
指差して見せた。エレノアのほうはリックに花を渡すと]
おみやげならば、尚のこと、気をつけないとね。
きれいなお花、きっとよろこぶでしょう。
[黒猫の名前を聞くと、娘の口が、その通りに動いて。
音は発されなかったけれど。
嬉しそうに、猫をなでようと、おずおず手を伸ばした]
飴は、お駄賃じゃなくても差し上げますよ。
[ヴィンセントの言葉に、くすくすと笑みを零して。
しかし、続く言葉に慌てたように、ふるふると小さく頭をふる。]
え、でも、そこまでして頂く訳には。
家も、あまり遠くないですし。
…それに、サーカスには、間に合わなくても。
[ごにょ、と口の中で呟かれた言葉はあまりにも小さくて、
賑やかな音楽の中では、聞えなかったかもしれない。
荷物へと伸ばされた手に、慌てふためくものの
取り上げようと思えば、簡単に叶うだろう]
[指差されるものに、視線を向けて。
ああ、なるほど、と納得する]
中々、見れるもんじゃないしね、こんな賑やかなのは。
[空に舞う風船の色彩鮮やかさに、ふと目を細めつつこう言って]
ま、頑張ってくれ。
[リックに向き直り、返す言葉はやや、意地悪い響きを帯びるか]
まあ、そうとも言うが。
そう言いきるのも、素っ気なかろうに。
[黒猫に向けて伸ばされる手。
それに気づけば、リックの頭に乗せた方とは反対の手に、黒猫を移らせる。
彼の肩にいたままでは、届かないだろうか、と思ったから。
黒猫は娘を見つつ、ゆらりと尾を振って]
では、ヴィンセントさん、お願いします。
ニーナさん。お待ちしていますから。
[期待を込めた視線をニーナに向けてから、パレードの後を*追って行った*
[身長に対する論には、にやり、と笑うだけに止め]
少なくとも、遊ぶための場所もあるようだし。
って、見慣れない子?
[こちらを見ずに紡がれた言葉に。
その視線を辿るように、振り返って見る]
[無理に持つのも、自宅へ帰る女性には失礼かなと悩みつつ]
働かざる者、食うべからずですよ。
それに動かずに食べるだけでは健康によろしくありませんからね。
[医者の不養生になってしまいます、と笑みを見せる。
しかし、続く言葉には困ったように浮いた手を見みやり]
ええっと…しかしコーネリアスさんに送ると言い切っていますし。
何より女性に荷物を持たせて手ぶらで着いていくのはなんとも…。
…お嫌でしたら無理にとは申しませんが。
[荷物持ちとサーカスと。
どちらも含んだ言葉をかけてニーナを優しく見つめた]
[娘のほうは、黒猫の尻尾をふるのに、目をきらきらさせて。
おずおずと延ばした手は、猫に触れることはなかったけれど。
やがて、二人の視線が他に動けば、彼女も視線を動かして。
わからないとばかりに、首をかしげた]
[追った視線の先、目に入ったのは、赤]
ああ、なるほど。
や、ヘンリエッタ嬢。君も、サーカスに?
[にこり、と笑いつつ、声をかける。
黒猫は自身に触れぬ手に、擦り寄るような素振りを見せた後、なぁう、と一声鳴いた]
[向けられた視線に、
そうっと歩みを進めて。]
こんにち、は。
[少女には三人と一匹に見える集団に、
ぺこり、小さくお辞儀を。]
サーカス、……うん。
あ、えっと。
はい。……お会い出来たら、また。
[パレードの後を追っていくコーネリアスに、
苦笑交じりに、曖昧に返事を返して。
ふと、ヴィンセントの浮いたままの手に気付いて、青を瞬いた]
…あ、あの、困らせてしまいました、か?
えと、だったら、えっと。…お願いしても、いいでしょうか。
[そんなつもりじゃ、なかったんですけど。と言い繕いながら
優しい視線に、思わず見透かされている気がして、狼狽える。
ごめんなさい、と何に対しての謝罪なのか小さく頭を下げて。]
こんにちは?
今日も一緒なのね、アリス、ヘンリエッタ。
[母のほうはにっこりと笑って、エッタに手を振り――]
シャーロット?
[娘に固い声で話しかける。
娘は、どうしてだろう、動かない]
[最初はゆっくりと、だんだんと大きく、首を横に振って、
エレノアの娘は、ぎゅう、と自分の体を抱きしめた。
彼女が見えるものたちにも、それは見えるだろうか]
シャーロット…?
どうしたの?
[少女の短い返事に、そうか、と返して]
……それなら、一緒に行こうか?
迷子になったりすると、ちょっと大変だしね。
[ごく軽く言って、リックの問いには]
まあ、知ってるけど。
それが、どうかした?
ん……?
どうか、したの?
[娘の異変は、彼の目にもはっきりと見えるだろうか。
唐突な変化に、黒猫共々、不思議そうに首を傾げて]
[熊の手を振り返そうとしたけれど、
少女の目には、
女性が突然混乱し始めたようにしか見えず、
紡がれる誰かの名前にも首を傾げて。]
[ニーナへのコーネリアスの熱視線に、おやと内心思いつつ。
お願いしますとの声に安堵の笑みを向けた]
ええ、ご遠慮なさらずに。元々、私から言い出したのですから。
[荷物を受け取れば片手に抱いて、もう片方の手で下げられた頭をぽんと撫でる]
そんな他人行儀にしなくても。
お世話になっているのはこちらですのに。
…では、行きましょうか。
[ニーナを促し、彼女の歩調に合わせてゆっくりと*歩き出した*]
……だから、骨董品に埋もれているのはじいちゃんだと。
[リックの言葉に、思わず深くため息をつきつつ、こう言って。
彼自身も、古い物に心惹かれる質ではあるのだが。
……例の短剣も未だ、鞄に入れたままにしているのも、その表れと言えるかも知れない]
[皆の視線があつまれば、あわてて顔をとりつくろって。
なんでもない、というように、娘は首を振って見せた。]
大丈夫なの…?
無理をしてはだめよ?
[女が何もいないその空間を「気遣う」様は、滑稽か。
娘はリックの言葉にうなづくと、連れ立つようにして、
歩き始めて。ちらり、ちらりと猫に視線を送るのは、
猫が気になるだけでは、ないようだ――]
ああ、アリス、ヘンリエッタ。
大丈夫よ。
[ふと視線を降ろせば、ぽかん、と自分を見つめる、
赤の眼。女はほっそりとした手で、ヘンリエッタを撫でようとして]
……どうしたのやら。
[歩き出す様子に、ぽつり、呟く。
事情を知らぬ者から見れば、それはエレノアの様子に向けられているようにも見えるだろうか。
猫がどこか心配そうに、なぁう、と鳴きつつ、肩の上へと戻っていく]
[頭上に翳される手に、
きゅうと一度目を瞑って。
けれど、撫ぜられる感覚に、
きょとり一度目を瞬かせて。]
……わ、
[まだ不思議そうな睛はしていたけれど。]
……大丈夫、…………そう?
ん、上から見たらなんだか子供が騒いでたから、みにでてみたの。
パレード、やってるのかしら?
サーカス行き…なのかしら?
[首をかしげながら矢継ぎ早に質問する。
肩で、さらりと金髪が流れた。]
…えと、ありがとう、ございます。
いえ、お世話になってるのは、こちらの方です!
少し知り合っただけの私に、ここまでしてもらって!
[荷物が手から離れる。空いた両手を前で重ねて
撫でられて更に申し訳なくなったのか、再び小さく頭を下げる。
促されれば、案内するように数歩先を進みながら*自宅へと向って*]
ええ、大丈夫……よ。
[安心させるようにヘンリエッタにほほ笑んで。
先を行く娘に視線を動かせる。
その様は、まるでぼうっとしたふうに見えるかもしれない]
さあ、いきましょう。
人ごみに流されて、リック君も見失ってしまうわ?
[そう言って、二人と一匹を促して]
・・・みたい、ですね。
ついさっき、目の前を通って行きました。
[手の中の花を示そうとしたが、既に其処には何もない。代わりにか、ポケットの中の招待券を引っ張り出す。]
これ、レストランで貰いました。
――あちこちで配られてるようですね。
[はしゃぐ子供たちの中にも、同じものを持つ手を見て眼を細めた。]
サーカスの広場には、様々な遊具や露天が立ち並び、賑やかに客寄せの口上を述べるのも聞こえるだろう。
その中でも、目立つのは中央の大きな天幕と、広場の端に立つミラーパレスと名付けられた鏡の迷路、そして中央の回転木馬、人力で動く小さな観覧車も子供達には人気だった。
……ええ、そうですね。
[エレノアの言葉に頷いて、歩き出す。
黒猫は、向けられる視線に困ったように首を傾げるだろうか]
人が多いから、気をつけて?
[同じく歩き出したヘンリエッタに声をかけつつ。
少女がはぐれぬように、気をつけながら*歩いていく*]
ええ。
初日無料の招待券だなんて、随分気前の良いサーカス団です。
アーヴァインさんはあまり良い顔してませんでしたけど。
[小さく苦笑いを浮かべる。]
あ。
御一緒しましょうか?
[ラッセルの言葉に眉間に皺を寄せた自警団長の顔がすぐに思い浮かべ]
そうね、きっとここにくーって皺寄せて、「厄介ごとはゆるしわせん!」なんて…ぷっ、くすくすくす…っふふふ…!
[おなかを抑えて笑い始めた]
あ、ふふっ…そうね、ぜひ一緒…ふふ…してもらえるかしら?
ひとりで行くのも味気ないものね…ぷふふ…っ。
そう、丁度そんな感じで。
・・・相変わらずですね、笑い上戸。
[辺りを見渡し、本人が居ないのを確認してから、つられるようにくすくすと笑う。]
良かった。
僕も、一人では寂しいと思ってたところで。
[パレードから離れ、ニーナを自宅へと送っていく。
家の扉の前で飴と交換に荷物を渡せば、三度頭を下げられて。
律儀な少女に、男は少々悪戯っぽい笑みを向けた]
いえいえ、お駄賃もいただきましたし、どうぞお気になさらずに。
――と言ってもニーナさんは気になさるようですから、一つお願いを聞いてはいただけませんか。
なに、たいしたことはありません。
その…よろしければ一緒にサーカスに行っていただけませんか?
[照れくさそうに髪を掻きつつ、"お願い"する]
その、いい年をした男が独りでサーカスに行くのは悪目立ちしそうでして。町に着たばかりで一緒に行ってくれるような連れもいませんし…駄目でしょうか。
――ああ、ありがとうございます!
[荷物持ちの時と同じく、根負けしたのは少女の方だった。
小躍りしそうな男に、荷物を置いてくると告げて姿が消える]
ああ…よかった。
コーネリアスさんも楽しみに待ってらっしゃると言ってましたしね、うんうん。
[少々、仲人めいた台詞を呟きつつ待つことしばし。
やがて用意を終えた少女を伴い、いざ*サーカスへ*]
[笑い終わったと思ったらまたくだらない駄洒落を思いついてクスクス笑いながら、碧い眼の学生に遅れないよう歩き出そうと足を踏み出したところで、不意に隣から軽業師が何かを差し出したので足を止めた]
あら…ありがとう。
[にこりと軽業師に微笑んでお礼をいいつつ差し出されたものを見ると、綺麗な包み紙に包まれたキャンディと招待券だった]
あ、ラッセル君!
レストランに行かなくてもいいわ、なんだかもらえたわ。
[ふい、と振り向く学生にヒラヒラと招待券を振ってみせる]
[貰ったキャンディをひとつラッセルの手にポンと渡そうとし、自分もひとつ口に入れながらパレードと共に歩く]
それにしても、こんなに招待券配ってて利益になるのかしらねぇ?
明日からはお金払ってきてもらえる、と面白さに自信があるのかしら?
あぁ、売店の儲けで利益になるとか…?
[商売人の血が口を動かす。]
あれだけ大きいと、移動も大変でしょうし…あら?何かしら、綺麗ね。
[後ろから、ドンっとお尻に子供がぶつかり、謝りながらも足は止まらず前へと走りさる。
その手にはいっぱいの白い花。
走る端から、ぽろぽろと両手からこぼれ落ちる。]
子供達も、花をこぼしたり鼻垂らしたり大変ね…ぷっ、くすくすくす…。
[相変わらず、楽しげにくすくす笑う。
走り回る子供達を見てなのか、自らの言葉になのかは分からないが、楽しそうにくすくす笑う。]
本当、愛おしい子たち。
[最後の呟きは、雑踏にまぎれて誰にも届かなかっただろう。]
[ニーナの歩調に合わせて、道を逆に辿ってゆく。
メインストリートに出ると、白の花々が絨毯のように道に残されていた]
おや、サーカスまでの道標のようですね。
辿っていけば入り口までご案内、でしょうか。
[気を引き立てようと口にした言葉は、少女へと届いただろうか。
賑やかに走り回る子供たちを楽しげに見ながら、男はぽつぽつと独り言のように言葉を零してゆく]
サーカスに行きたがるなんて子供っぽいでしょう?
…昔から私は美しいものが好きでしてね。
キャンデーもゼリービーンズも、その色とりどりの美しい粒を口にするのが嬉しくて。気がつけば自他共に認める甘党になっていました。
サーカスはね、風船やピエロ達の装い、パレードに火の花…私の好きなものがたくさん詰まっているんです。おもちゃ箱のように。
[隣を歩く少女の切りそろえられた髪が、しなやかに揺れる。
それを茶色のレンズ越しに目を細めて見やり、そっと顔を近づけ]
――満足するまで堪能しても、御菓子と違って中年太りにならないなんて最高でしょう?
[茶目っ気たっぷりに囁いて、にこやかな笑みを見せた]
[談笑しながら歩いて行くと、その横顔の向こうに良く見知った少女の顔を見つけた。
思わず顔をほころばせて手をあげ、声をかける。]
あ、ニーナじゃない?
ニーナ…に、あら、ヴィンセントさん?
[見知った顔の更に向こうに、太陽の光を反射させる眼鏡が見えた]
変わった組み合わせね、お知り合いだったのかしら?
[ニーナの反応にも、穏やかな笑みを浮かべていたが。
耳に届いた声に、おやといった表情に変わる]
これはこれはレベッカさん。
それと…初めまして、お連れの方。私はヴィンセント=ウィスラーと申します。
ニーナさんには診療所でお世話になっているのですよ。
[巡廻医師でして、とにこやかに説明し]
薬の補充に立ち寄ったのですが、せっかくですしサーカスを楽しんでから次の町へ行こうと思いまして。
…はしゃいで熱を出す患者が増えるかもしれませんしね。
[嬉しそうに話すも、最後は少しだけ言い訳めいていただろうか]
[ヴィンセントの声にあぁ、とニーナを見て]
そっか、診療所か。お薬って言ってましたものね。
その荷物はニーナのね?ニーナったら、旅のお医者様を使うなんて。
[少女が慌てて紡ぐ言葉に、声を立てて笑った]
[デートかな、との呟きに思わず笑み]
そんな、年齢倍ほどの私じゃラッセル君が可哀相だわ?
イライラッセルってするかも?
んー、いまいちね。
[腕を組んで眉間に皺を寄せてみた]
[いつも持っている革の鞄を差され、慌てるニーナを援護するように口を開き]
いえいえ、これは私の仕事道具ですよ。持っていないと落ち着かなくてね。
荷物持ちはもう終了です。ほら、お駄賃もちゃんといただきましたし、お願いも聞いてもらいました。だからニーナさんは全然悪くないんですよ。
[荷物持ち自体は肯定にしたことに*気付いているのかいないのか*]
あら、本当だわ、ニーナの鞄じゃなかったわ。
ごめんなさい、私ったら何を見間違えたのかしら。
私も、はしゃいで熱を出しちゃいそうなひとりね。
[小さく舌を出してコツンと自分の頭にゲンコツを当ててみせた]
でもお駄賃ってやっぱりニーナったら使ったのね?ふふふ。
デートではありませんでしたか、それは失礼を。
とても仲が良さそうに見えたものですから、つい。
[ゲンコツを当てる仕草には、くくっと喉で笑い]
…ええ、熱を出さないよう気をつけて下さいね。
メインイベントを見逃したら大変ですから。
[有料の分きっと楽しませてくれるはず、と笑みを向けた]
あら、メインイベントは今日は無いのね。
あ、本当だわ、招待券に書いてあったわ。残念。
[そこまで話すと、はた、と動きをとめてポンと左手の平を握った右手で打った]
ああ、なるほど、そこで利益が出るのね!
分かったわ、なんだかスッキリしたわ。
[嬉しそうにコロコロと笑った。]
正確には、運んだからのお駄賃じゃなくて、お駄賃が欲しくて運ばせていただいたんですけどね。半ば無理を言って。
だから、ニーナさんは何も悪くありませんよ。
[少女が気に病まないようにと、柔らかく笑みを向ける。
それから招待券を覗き込むレベッカに]
おそらく氷柱に閉じ込められた美女…といった感じなのですが。
どういった魔術かはわかりませんが、ポスターにするぐらいですから何か意味があるのではないかと思いますよ。
…これで関係なかったら誇大広告ですね。
[利益の話には、驚いたように目を丸くして]
……はあ。
よくわかりませんが、お役に立てたなら何よりです。
[意味の判っているらしい連れの青年と見比べて、曖昧に頷いた]
[向けられた笑みに、それでも若干気が引けた。
何だか、さっきから庇ってもらってばかりで
申し訳なくなってきた事もあるけれど、思わず苦笑を返す。
ふと、魔術の話に気付いて耳を傾ける。
そういえば、ブランさんはお楽しみだと教えてくれなかったし
ポスターはちらりとしか見ていなかったから良く判らないが
──氷柱に閉じ込められた、美女。]
[知らず、小さく溜息を零す。
純粋に、サーカスへ期待を寄せることが出来るなら
とても面白げな演目だと、きっと楽しめるだけれど。
3人の歩調に遅れないように歩みを進めながら、
ぼんやりと、そんな事を*考えて*]
氷柱に閉じ込められた美女?
それは、楽しみね。
出てくるのかしら?
それとも氷の中で動いて見せるのかしら?
[子供に負けずにキラキラと目を輝かせ、嬉しそうにパレードの先に目線をやる。]
──わっ!?
…と、レベッカさん。
[ぼんやりと歩みを進めている途中、突然視界に入った顔に
思わずハッと声を上げた。
話に耳は傾けていたけれど、突然覗き込まれるとは思わなかった]
え、と。うん。
……楽しみ、ですね。
[驚いた所為で、未だドキドキ言っている胸を押さえつつ、
へら、と薄く笑みを浮かべる。
誤魔化せているだろうか、と頭の端で考えながら
楽しげな表情の彼女へと、言葉を返して]
そうね、楽しみね。
うふふ、年甲斐もなく、って笑わないで頂戴ね?
[いつもならその彼女の笑みが不自然である事に気がついたかもしれないが、少々テンションの上がっている状態ではその笑みの奥の陰りに気がつくことはできず。
そのまま姿勢を戻してゆったりと歩を進める。]
ううん、まさか。笑いません。
幾つになっても、楽しいものは楽しいですから。
[本当に楽しげな様子に、つられるようにくすくすと笑みを向けて。
どうやら、気付かれずに済んだみたいだった。
そのまま、姿勢を戻した彼女に、ほ。と安堵の息を零す。
親しい付き合いをしている彼女なら、気付いても
可笑しくなかったのだろうが──気分が高揚している為だろうか。
少しばかり、サーカスに感謝した。
…尤も、自分が気落ちしている理由も、サーカスなのだけれど。]
えと。レベッカさん、サーカスとか見たこと無いんですか?
すっごく、嬉しそう。
んっとね、小さいとき…5つか6つの時くらいかな?
一回行ったっきりなのよね。
家族で旅行に行った村に来てて、いけたの。
楽しい思い出しかないのよね。ふふふ。
[少し茶色がかった金髪がふわりと揺れて、目の淵のほくろを隠した。
子供のように、笑む。]
すると、随分前になるんですね。
[彼女の言葉に、少しだけ驚いたように青を瞬いた。
あぁ、とても、楽しそう。]
それが楽しい思い出だったら。
期待しちゃいますよね。
[今回も、楽しいといいですね。と。つられて、小さく笑う。
私も、楽しい思い出が残っていればよかった。
今回は、残るだろうか。楽しい思い出が。
ちらりとそんな事を考えて、ふと、前に華やかなゲート]
あ。広場。
[見えましたね、と、目を細めて眺める。
賑やかな音楽と、色鮮やかな世界が視線の先に見えて]
[賑やかな広場へと揃って近付いていくと
手を振る姿に、青を僅かに目を見開く。
しかし、それがつい先程の人物だと気付けば、
小さく笑みを浮かべてながら、軽く手を振り返した]
ブランさん。お仕事お疲れ様です。
[招待券もありがとうございました、とぺこり頭を下げて]
やあ、いらっしゃい。ニーナさん。
それにヴィンセントさんも。
招待券は、サーカスのサービスですからね。来ていただけて私こそ助かります。
[ニーナに微笑みかけてから、レベッカにも笑みを向ける]
おや、雑貨屋さんが御一緒なんですね。今日はお店はお休みですか?ようこそおいでくださいました。
楽しんでいってください。
[女性二人に風船を差し出した]
[パレードと共に歩いていけば、やがて、一際賑やかな空間が目に入るだろうか]
ん……だいぶ、力はいってるなあ……。
[乱舞して見える色彩と、響く音楽に、思わずこんな事を呟く。
肩の黒猫も、同意するようになぁ、と鳴いた]
でも、頂かなかったら、……多分、来てませんし。
あ、ありがとう。…ございます。
[多分どころか、間違いなく来ていないだろうな。とか
そんな事を思いながら、差し出された風船の紐を、受け取って。
再度小さく頭を下げる。空色がふわりと揺れた。
ふと、広場前の通りの向こうからやって来る、
見覚えのある姿に気付いて、其方へと視線を向ける。
風船とともに、切り揃えた青がさらりと傾いで]
[ニーナに手をふるコーネリアスを見て、会釈をした]
あら…こんにちは、ニーナのお知り合いかしら?
えぇ、お店は今日はやってないの。
レベッカよ、よろしくね。
[お礼を言いながら風船を受け取って微笑んだ]
[広場の入り口には、知り合いの姿があり。
皆、考える事は同じなのか、とのんびり考える]
や、こちらもこちらで、御揃いで。
[場にいる面々にひらりと手を振り、挨拶を。
黒猫も挨拶するようにゆらりと尾を振り、なぁう、と鳴いた]
診療所のお手伝いはそんなに忙しいですか?
少しお疲れのようにみえますね。
でも、そんな時こそ息抜きはしなければ。
[ねえ、と、励ますように、ニーナに微笑みかける]
レベッカさんですね。昨日お店の前を通りかかったんですよ。
子供さんに大人気でしたねえ。
ああ、申し遅れました、私はコーネリアス=ブラン。
魔術師の見習いです。
[レベッカに向かって自己紹介の後、ハーヴェイの声に頷いて]
沢山いらしてもらえて、助かりますよ。それに美しい方ばかりで、嬉しい限りです。
ま、これだけ派手に盛り上がれば、自ずと集まるんじゃないかな?
[コーネリアスの言葉に相槌を打ち。
言葉の後半部分には、くつり、と低い笑みをもらしたか。
黒猫は周囲で揺れる風船に、興味を惹かれたような素振りを見せて]
え? いえ、私はお手伝いなだけですし。
診療所の皆さんに比べたら、全然。疲れてませんよ!
[大丈夫です、とコーネリアスの言葉に、つられるように笑みを向ける。
疲れていないのは、本当。──大丈夫かは、自信ないけれど。]
そちらも、大勢で来られたんですね。
…えっと、皆さんも、招待券を貰ったんですか?
[やはり黒猫に少し視線を奪われながら、ぺこりと頭を下げて。
ふと、昨日見かけた少女の姿も含まれていることに
小さく首を傾げながらも、笑みながら問う。
黒猫が、風船へと興味を示す様子に気付けば、
おずおずと、自らの風船を目の前に差し出してみたり]
あら。
ハーヴェイ君にウィッシュちゃんこんにちは。
あなた方も来たのね、ふふ。
[見知った顔をみつけ、手をひらひらと振りながら笑顔を見せた。
そして再びコーネリアスに向かい]
コーネリアスさんね。
魔術師なんて、素敵ね!
[目がキラキラ輝いている。]
ええ、すごいでしょう?
実は、魔術で人を呼び集めてるんですよ。
……て、言ったら信じます?
[ハーヴェイに真顔で応じる、と見せて、キラキラと目を輝かせるレベッカの方に悪戯めいた視線を向ける]
俺は最初は一人だったんだけど、成り行きでね。
[ニーナの大勢、という言葉に軽く、肩をすくめて見せる]
ああ、俺はそちらの魔術師殿からいただいて。
せっかくだから、見ておこうかと。
[黒猫は差し出される風船にきょとり、とするも。
風にゆらゆらとするその動きに、視線をじぃ、と向けつつ、尻尾を揺らす]
や、どーも。レベッカさんも来てましたか。
まあ、招待券ももらったし、来ない手はないかな、ってね。
[笑顔を向けるレベッカには、軽い口調でこう返す]
[コーネリアスの言葉に一瞬きょとり、とするものの。
目を輝かせるレベッカへと向けられた視線に、すぐに戸惑いは打ち消し、くく、と笑って]
魔術……と言われても、疑えない、かな?
パレードっていうのは、ある種の魔法をかけてるようなものだしね。
[冗談めかした口調でこう返す]
こんにちは、可愛らしいお嬢さんにくまさん。
風船をどうぞ。
[ヘンリエッタに気付くと、屈み込んで、赤い風船をくまのぬいぐるみの腕に結ぼうとする]
[周りにばかり目を奪われていたけれど、
皆が会話を交えているのに気づいて
とてとてとそちらへと向かうと、
“招待券”という単語が聞こえて。]
……あ。
[持っているはずもなくて、
眉を寄せて困りがお。]
[コーネリアスの言葉に、さらに目をキラキラさせて両手を顔の前で組んでまるでお祈りをするかのようなポーズで風船の紐を握りしめ、詰め寄った]
魔術で?!
本当!?すごいわ!
[と、脇にいる赤いひらひらした服をきた女の子をみつけ、あら、と動きをとめた]
あら?この子は昨日の…
こんにちは?
[ヘンリエッタの前にしゃがみこんで目線をあわせ、にこりと笑った]
ん?
どうかしましたか?
[やって来て、困りがおを覗かせるヘンリエッタの様子に、不思議そうに瞬いて問う。
招待券を持っていないとは、さすがに思いも寄らないようで]
そうだったんですか。でも折角なんですし、
一人で来るより、大勢なのも楽しくて、良いと思いますよ。
[肩を竦める相手に、くすくすと小さく笑みを零して。
空色を瞳に映す黒猫の鼻先に、つん、と風船を軽く触れさせる。
ごそ、とスカートのポケットから招待券を取り出して──
…ふと、少女が困った様子なのに気付いて、緩く瞬いた。]
あ。
えと。
こんにち、は。
[一歩下がりながら口許を隠して、
女性へと挨拶を返すのはやはり熊。
……周りは皆、
券を持っている様子に、
益々きゅっと眉が寄る。]
[本気で詰め寄るレベッカに、目を瞬かせてくすくすと笑う]
あなたも、魔術師に弟子入りされてはいかがですか?レイディ。
[そして、リックに気付くと、また風船を差し出す]
いらっしゃいませ。ようこそ夢の国へ。
ま、確かにね。こういうのは、みんなで騒ぎながら楽しむ方が面白いもんだから。
[笑うニーナに、こちらも笑みで返す。
風船に触れられた黒猫は大きく目を見開き、ほんの一瞬、身体を後ろへそらすだろうか。
それでも視線はまたすぐに、風船の空色へ。
そんな愛猫の様子にまた笑いつつ、引っ張り出すのは二枚の招待券]
ふふ、こんにちは。
[ヘンリエッタの様子ににこりと笑って首を傾けた。
眉が寄る理由がわからなかったから、刺激しないようにとそっとそっと。]
[顔の殆どはテディベアに隠されて、
紅い睛だけがおずおずと辺り見て。
揺れる紙が目に入って、
よくよく見なければわからないほどに、
小さく小さく頷いた。]
[リックがひらりと招待券を振ったのをちらりと見て、ハーヴェイに向かって笑みを向ける]
ハーヴェイさんがデートに誘ったのは、このお嬢さんですか?
やっぱりペアでお渡しして正解でしたねえ。
……あ、もしかして。
[熊に隠れるようにするヘンリエッタの様子に、ふとある事に思い至る。
招待券の話が出てから様子が変化した事から、考えられるのは一つ。
折りよく、コーネリアスから笑みを向けられ、そちらに向けて、手にした二枚を振ってみせる]
まあ、そんなとこ、かな?
[返す言葉は、冗談めかした響きを帯びて]
[黒猫の反応に、くすくすと笑みを零す。
ふと、少女の様子が気になりながらも、
ハーヴェイの取り出した二枚の招待券に、再び緩く瞬いた。
と、リックの問いと少女の反応に、漸く事を悟ったらしい。
コーネリアスの言葉に、再び、青年へと視線を向けて]
あれ、ハーヴェイさん、2枚持ってたんですか。
[何だかマジックみたいですね。
くすくすと、小さく笑みを零しながら、少女へ視線を向けて。]
可愛らしいガールフレンドですね。
羨ましいですよ、ハーヴェイさん。
[言いながら、ヘンリエッタ(の、くま)に渡そうとしていた赤い風船をハーヴェイに差し出した]
ああ。そちらの魔術師殿から直接いただいたから、分身したらしい。
……最初は珍しくじいちゃん孝行でもしてやろうか、と思ったんだが、嫌がられちまってさ。
[ニーナの言葉に、やれやれ、と大げさなため息をついて]
……振られる以前の問題だが、何か問題あるかなー?
[リックの言葉に、ほんの一瞬声音の温度が下がったのは、気にしない]
それはどうも、と。
[コーネリアスから差し出された風船を受け取り、赤いそれを同じ色彩の少女へと]
……ルイスさんには、色々とお世話になってるし、ね。
[だから、気にしない、と。
少女にだけ聞こえるようにこう言って笑って見せ]
[ヘンリエッタが頷くのを見ると、片腕を大きく開いて、広場の中へと人々を誘う]
さあ、どうぞ!夢の世界をお楽しみください!
[差し出された赤の風船へと視線が移り、
その持ち主を紅い睛が見上げて。]
うん。
ありがとう、
……ヘンリエッタもそう言ってる。
[答えたのは熊だったけれど、
彼に隠れた少女は喜色を滲ませて、
風船を受け取ろうと手を伸ばす。
今度は逃さぬように、しっかりと。]
流石、魔術師さんから頂いたチケットは凄いですね。
折角なんだから、おじいさまも…いらっしゃれば良かったのに。
[嫌がられたのなら仕方ないですよね、と僅かに眉を下げる。
理由は自分とは異なるのだろうけれど、
あぁ、自分も断れば良かっただろうかと、頭の隅で考えながら]
お兄さんが、もう一枚招待券もってたから。
サーカス、入れるよ。
[小さく頷く様子に、ふわりと青を揺らしながら
よかったね、と少女へ笑みを向けて]
[ラッセルの冗談めいた言葉には、どうもね、と軽く返しておいて]
どういたしまして?
[熊から返る言葉に笑いつつ、少女の手にしっかりと赤い風船を握らせる]
……俺じゃなくて、姉貴の子供……ひ孫が誘ったら、絶対飛びついたと思うんだがね。
[誘いを断った時の祖父の様子を思い返しつつ、ニーナにはこう言って]
さて、それじゃ、行くとしますか。
[子どもたちに渡される風船。
娘は、その風船をじいっと見ながめて。
女はそんな娘を見ると、くすりと笑って男に話しかける]
ブラン...さん?
わたくしにもひとつ、いただけないかしら。
そう、何色がいいかしら...ええ、わかったわ。
黄色いのが、ほしいわ。
[エレノアに声をかけられると、傍らの少女を見て微笑む]
はい、レイディ、黄色の風船ですね。お嬢さんに良くお似合いの色だ。
[黄色い風船を差し出して]
サーカスは初めてですか?よろしければご案内しましょうか?
あれ。ひ孫さんが相手だと、お爺さまも楽しめるのでしょうか。
…でもそれだと、サーカスを楽しむと言うよりは
ひ孫さんを見て楽しむ風ですね。
[ハーヴェイの言葉に、一度緩く瞬いて。
ひ孫と戯れる、老人の様子が用意に思い浮かんだのか
続く言葉にくすくすと声を漏らす。
少女が頷いたのを見て取れば、軽く手を差し出して]
じゃあ、せっかく来れたんだし、
目一杯楽しんじゃおう?
どうもありがとう、ブランさん。
元気の出る黄色だわね?
[声をかけられれば、少女は嬉しそうに会釈して。
母の受け取った風船をつつくような仕草を見せる。
続けられた言葉には、こくこくと何度もうなづいた]
よかったわね。シャーロット。
[それを聞けば、にっこりと娘に笑いかけて。
ブラン氏は、営業の人のようであるから、
わざわざ名乗りはしない]
こんにちは、コーネリアスさん。
本当に見事ですね。
[広場の様子に目を細めて挨拶を返し、風船を渡されるニーナとレベッカをにこにこと見守る。
掛けられて声に振り向けば、初めて見る茶色の髪の青年が手を、肩の黒猫がしっぽを揺らしていた。
その後ろの見覚えのある人達に、おやといった表情を浮かべ]
どうも、初めまして。私は診療所でお世話になっている巡廻医師のヴィンセント=ウィスラーと申します
リックくん、エレノアさん、シャーロットさんもこんにちは。
それと…くまさんと優しいお嬢さんも。
[一緒に来たらしいリックとエレノア、ヘンリエッタにも挨拶し、皆の話に耳を傾ける。
会話に出てくる茶の青年と赤の少女の名を、そっと頭に入れながら]
[赤の風船をしっかり手にすると、
黄の風船を求める婦人の声。
ちらりと一瞬走らせた視線は、
差し出される手に、すぐに戻されて。]
……うん、
[けれど手は塞がっているものだから、
繋げはしなくて、
それからなんとなく後ろを気にして。]
[ヴィンセント、レベッカに声をかけられれば、
母子ともに会釈をして。娘のほうのそれは、
レベッカには見えなかったようだけれども]
こんにちは、先生に、レベッカさん。
レベッカさん、このあいだ取り寄せていただいた、
薔薇の形の小物入れ、娘がとっても気に入っているわ。
どうもありがとう。またよろしくお願いしますね。
[母のほうはそうつなげて。娘のほうは、彼女が「見えない」とわかっていても、ぺこりとお辞儀をしたようだった]
じいちゃん曰く、俺は撫でるにはでかすぎるんだそうな。
……結局は、ひ孫と遊びたいんだろうが、姉貴は姉貴で、親父の面倒見で手一杯だからね。
[だから、俺がこっちに来てるんだけど、と、軽い口調で言いつつ。
リックの言葉には、にっこり、と笑って見せる]
だから、それは俺じゃなくてじいちゃんだと。
というか、骨董品に足、ってどういう発想してますか、君は。
[にこにこと笑いつつ、手が届いたなら、それは少年の頭の上に置かれるだろうか]
[皆の話に頷いていたが、コーネリアスの誘いに門の内側へと足を踏み出す。その表情は少々子供めいた期待に満ちていただろうか]
夢の世界…それは楽しみですね。
さて、何から見に行きましょうか?
[空色や赤、黄色などの風船を手にした皆を、にこやかに眺めつつ歩を進める]
あら、本当ですか?
それは良かった、私も嬉しいわ。
[エレノアの方を向き、本当に嬉しそうに笑いかけた。
見えないし聞こえない、それでも彼女には見えている事はある程度理解していたから---]
[小さな応えは返ってくるものの、きょとん、と瞬いて。
しかし、両手が埋まっていることに気付けば、
あぁ、と小さく笑んで手を引っ込めた。
その代わり、ぽふりと小さくその頭をなでようと]
みんなで、行こっか?
[後ろを気にする様子に、緩く問うて]
[頷く少女の姿は、本当に見えたのだろうか?エレノアの礼の言葉に、いいえ、と軽く頭を下げる]
では、皆様、ご案内致しましょう。
まずは、美しい回転木馬。
実を申しますと、当サーカスの馬達は、暴れ馬ですので、逃げ出さないように、しっかりとポールを握って御乗り下さい。
[淀み無い口調で、サーカスの施設を案内し始める]
夢の世界……か。
しかし、楽しそうですね……。
[ヴィンセント、と名乗った医師の様子に、思わずこんな呟きをもらし。
それから、改めて自分の名を告げて。
もし、医師が骨董品店のドアにかけられたプレートを見ていたなら、そこに刻まれた姓と同じであることに気づいたかも知れない]
別に、自慢なんぞしてませんが?
[むっとするリックには、あくまでにこやかに笑いつつ、ぽむぽむ、と頭を撫でるように叩いて]
[賑やかに話す少年らを見ていたけれど、
前からの声に再びそちらを向く、
と同時に頭を撫でられて、
紅い睛を一度瞑ってから、
柔らかく細めた。]
うん。みんなで、行こう。
ぼくもヘンリエッタも、みんな、いっしょに。
[前を行く男性の案内に、
きょとりと瞬いて。]
暴れ、馬……
[聞こえた単語を繰り返す。]
ハーヴェイさんは、私よりも年上でいらっしゃいますから。
お爺さまが撫でるには、流石に少々大きいでしょうか。
ひ孫さんも、ご一緒に来る事が出来ればよかったのでしょうが。
[お忙しいなら難しいでしょうね。
軽い口調で返される言葉に、くすくすと声を漏らして。
コーネリアスの説明を耳にすれば、そちらへと視線を向ける。
遠い記憶と混じって、少しだけ眉を寄せて]
[レベッカと会話をしていれば、銀色の髪の声が聞こえ。
指し示された回転木馬に、娘のほうは目をきらきらさせた]
暴れ馬…?
それは大変ね。
[くすくすと、木製の暴れ馬を眺めて、楽しそうに案内を受ける]
次は、観覧車。仕掛けを回すのは、我がサーカス団一の怪力の巨人です。
あの巨人は実は、さる国の王子が魔法をかけられた姿だとか。
お嬢さんのキスで元の王子に戻るかもしれませんよ?
[少女の言葉に、再び、小さく笑みを向ける。
リックの促しに、うん、と小さく頷いて、
一歩、その広場へと足を踏み入れた。
僅かに、音楽が大きくなった気がした。]
[エレノアとシャーロットの会釈に柔らかな笑みを返し、リックとハーヴェイの小気味良い会話にくくっと喉の奥で笑いを噛み殺す]
ああ、やはりあの子は賢いのですね。
リックくんの言葉が鋭いのは、年上の人とたくさん会話をしているからなのかな。
[ラッセルの感想に同意しつつ、リックの言い直された呼び方に笑みを深める]
おやおや、せっかくここにも仕事道具を持ってきましたのに。
…嘘です、ちゃんと呼んで下って嬉しいですよ。
それと男性の成長期はもう少し先ですから、焦らなくても大丈夫。
[鞄を軽く叩くも、またすぐに元に戻して。
背を気にする少年に、そんな言葉をかけた]
[逃げるリックの様子にくく、と低く笑って、特に追う様子も見せず]
もやしを馬鹿にすると、成長できんよ?
[代わりに、冗談めかした口調でこんな言葉を投げかける]
まあ、この年齢になってまで、撫でられるのはちょっと、というのもあるしね。
……親父も義兄さんも手がかかるから、中々そうも行かないって訳。
[だからさっさと身を固めろと言われているのは、いつもさらりと流しているのだが。
流されている方は、どこかでそれを愚痴として零しているかも知れない]
[笑いながら足を踏み入れた広場。
……入った瞬間、黒猫がふるりと身を震わせたのは、何か理由があったのか。
コーネリアスの説明に回転木馬を見やれば、それに手を伸ばす娘の姿が目に入るだろうか]
[??!!
少女はびくりとして母を振り返る。
これは、回転木馬とは、木製の馬のそれではなかったろうか]
どうしたの?シャーロット?
[母のほうはおっとりと娘を見るばかりで]
[皆が回転木馬の方を向くのには気がつかず、夢中でいろんなところに忙しく視線を送っている。
駄洒落を考える暇もないように。]
ハーヴェイさんですね、どうぞよろしく。
[ハーヴェイの自己紹介には、おやと眉を上げただろうか。
この町に多い姓かもしれないと、あえて問いはしなかったが]
ほう、暴れ馬ね…それは気をつけないといけません。
今日の私は客ですからね。
[急患は出来るだけおやめ下さい、と笑んで馬に乗る人達を見守る。さすがに男が乗るには抵抗がある――もしくは眺める方が好きなのか]
おれはもやしっ子にはならないっての。
もっと健康に育ちますよーだ
……って、そういう冗談はいらないから、ヴィンセントさん。
ま、お医者のあなたがいうんだから、ハーヴェイさんを抜いてみせるよ。
…………って、ミス? 何やって
[広場へと入ると、、
朗らかな旋律が増したように思えて。
幻想的にも映る周りの光景に
紅の睛を煌やかせながらも、
ぎゅうとテディベアを抱き締め、
*しっかり風船の紐を握った。*]
[娘は、大慌てで戻ってきて、母の背中にかくれてしまった。
まわりの者に何事か伝えようとするが、
身振り手振りで伝えられるような内容ではなく]
……今、何か……?
[振り返った娘の様子に、小さく呟く。
黒猫が肩から飛び降りてその側に近寄り、案ずるように声を上げた。
傍目には、猫が好奇心で飛び出したようにしか見えぬだろうけれど]
奥に見えるのが、ミラーパレス。鏡の宮殿です。
永遠へと続く回廊が、あの城のどこかに隠れているとか。
遠い未来を覗き見ることもできるかもしれませんよ。
[何も気付かない様子で、案内を続けている]
こちらこそ、よろしく。
[微かに眉を上げるヴィンセントの様子に、やや、首を傾げる。
家の前を通りがかられた事などは当然知る由もなく、理由には思い至らずに]
……健康的に成長するなら、栄養価の高いもやしを侮るな、という事ですが?
[それから、リックにはこんな言葉を投げて]
けど、いくつになっても、撫でられるのは良いと思いますよ?
[青年の言葉に、僅かに冗談めいた口調で言葉を返す。
続く言葉に、きょとん、と柔く首を傾げるも、自ら問う事はせず。
流石に、家庭の詳細を尋ねるのは憚られたらしい。
くすくすと、笑いを零すだけに留めて]
[コーネリアスの説明に促されるように、
回転木馬や観覧車を見つめながら、少しだけ、立ち止まった。
少しだけ、動悸が激しい。でもきっと、興奮の所為ではなくて。
華やかに沸く集団の最後尾で、小さく、疲労の混じった吐息を*零した*]
どうですか、レベッカさん、鏡の宮殿の女王を目指してみる気はありませんか?
[ついてくるレベッカに、にこりと笑いかける]
[リックの言葉に笑って]
くく…リックくんの栄養は身体でなく頭に行っているのかも知れませんね。
ええ、頑張って抜かしてあげて下さい。目標は高い方がいいですし。いっそあの巨人さんを目指すくらいの勢いで。
[観覧車を回す巨人を見やり、にこやかに笑みを見せ――リックの視線の先に目を丸くする]
シャーロットさん…!
[しかし彼女に馬が触れることはなく、静かに息を吐いた]
[心配そうに近寄ってきた黒猫に、娘はすこしほっとしたように近づいて。ふれることの出来ない手は、すこし震えていただろうか。
何かを伝えようと、彼女の指が動く。
小さな三角形を指で作り、自分の目を指差してから、
その指を左右に振る。そのあとそれを、ぐぅるりと回して。
ブランの続ける鏡の宮殿の話など、
すでにどうでもいいように、一生懸命に]
そういうもの、かねぇ……。
[笑うニーナの言葉に、ひょい、と肩を竦めてため息をつき。
疲れたようにも見えるその様子に、僅か、眉を寄せ]
ここまでで、歩き疲れた?
[無理しないでね、と声をかけておいて。
ため息をつくリックの様子に微か、笑って、避けられなければまた、頭をぽむ、と撫でるだろうか]
ま、頑張って追い抜いてくれたまえ。
[手が届いても届かなくても、投げる言葉は、どこか楽しげな響きを帯びて]
[シャーロットの身振り手振りでは、何が起こったのかは判らず。
落ち着くように、宥めるように声を掛ける]
ええ、ええ、もう大丈夫。落ち着いてください。
暴れ馬に蹴られたら大変ですから、余り近づかないようにした方がいいかもしれませんね。
他にも楽しそうなものがありますし…鏡の宮殿などいかがですか。
[まさか目が動いたなどとは思わず、他の施設を差してみる]
[ふと、黒猫とその行く先を見る。その眼に懸命な様子の娘は映るか。]
如何か、したんですか?
[少し離れた場所の女性と黒猫を交互に見比べる。]
[黒猫は尻尾をゆらゆらとさせつつ、心配げに娘を見つめ。
黒猫の主もまた、その様子に眉を寄せるか]
……なんだ……目?
[小さな呟きは、娘に届くだろうか]
はい、はい、と。
[成長期が来たら、というリックの言葉には、やはり余裕を込めて頷いた。
黒猫はラッセルの視線に気づいてか、そちらを見て、なぁう、と心配そうに一声鳴いて、また、娘へとその目をむける]
[遠すぎて、ハーヴェイの言葉はとどかなかったのだろうか。
娘はリックに向かって、何度も何度もうなづいて。
やがて、ぐるり、指をもう一度回す]
[娘の様子と、リックの言葉と。
先ほどからの様子と、それぞれを組み合わせつつ、回転木馬を見やり]
……ん……?
[微か、違和感を感じたのは、気のせいか、それとも]
[女のほうは、心配そうに娘を見やって。
近くにいた医師の男に話しかけるだろうか]
こんなふうに、人と話せることに、
興奮しているんだと思うのですけれども…。
ああ、ほら、シャーロット、
鏡の宮殿があるそうですよ……?
おや、ニーナさん? 大丈夫ですか。
[ハーヴェイやリックに一生懸命何かを訴えるシャーロットから静かに離れ、疲労の混じった吐息を零すニーナに心配そうに近づく。
もしも辛いようなら、連れて来た責任を取って送って行こうと*考えながら*]
[リックの問いには、さあ、と肩をすくめて]
時々、回転木馬を怖がるお嬢さんはいますけどね。
さっきまで楽しそうにしていたのに、どうしたんでしょうね?
どうしたの、ハーヴェイさん?
……って、怖がる客がいるんだ。
なんだか尋常ならざる様子、だけど。
魔術師さん、何もしてないよね?
……不思議だなぁ。
ええ、少々興奮気味のようですね。
彼等に訴えたいことが伝われば落ち着くでしょうし、少し様子を見ましょう。
[鏡の迷宮なら楽しめるかもしれませんしね、と*優しく笑んで*]
[ぶんぶんと、エレノアの言葉になんども首を振って。
少女は困ったように立ち尽くす。
なにかを伝えたいようで、
それは馬の目のこと、ただ*それだけなのだろうか?*]
馬の目?
[鳴く黒猫と、零れる言葉に木馬のほうを見る。]
・・・・
何か、変わったことでも?
[特に感じるところはなかったのか、疑問の声を零す青年に視線を向ける。]
あら…?
[コーネリアスの「お嬢さん」という言葉や皆の様子を見て、エレノアの隣の空間を振り返って目をやった。
やはり、どう目をこらしても自分には見えないが。
皆の話題がそちらに向いている事を薄々感じ、ちょっぴり寂しくなった。]
まあ、怖がらせてどうするのって話だよね。
……んー、まあ仕方ない。
そういうことはハーヴェイさんに任せよう。
おれより色々なこと、知ってるんだろうし
ん……ちょっと、ね。
[感じた違和感に上手く説明がつけられない事もあって、リックやラッセルの疑問には短くこう答える。
ただ、そこからこの木馬に何事かあって、シャーロットの様子が変化したのでは、という推論は成り立って]
……これに、何かあった?
[心配げな黒猫に近づき、宥めながら抱き上げるようにしつつ。
木馬の方へ視線を投げて、短く問いかける。
言葉が返らないのは知っているため、頷きの肯定だけでも得られれば、と*思いつつ*]
ともかく、しばらく休まれてはいかがでしょう?
皆さんで取り囲んでいては、却って落ち着かないでしょうし。
鏡の宮殿ツアーにご参加の方はいらっしゃいませんか?
[おどけた調子で言って、レベッカに視線を戻した]
[コーネリアスの声が聞こえ、ぱっと表情を明るく戻して]
あ、行きたい!行きたいわ、私!
[思わず子供が授業中にそうするように、片手を上げた。]
[はしゃいだ様子のレベッカに目を細める]
では、入り口までご案内しましょう、姫君。
ああ、どなたか姫をエスコートする騎士に立候補される方はいませんか?
[後ろの男性達に声をかける]
そうですか。
・・・まあ、これだけ大掛かりなサーカスですから。
所々に仕掛けとかあるのかも知れませんね。
[何が起こったのか詳しくは分からないものの、そう軽く笑う。]
これはこれは、勇気のある姫君ですね。
では、不祥、この魔術師見習いが御見送りいたしますよ。
[レベッカを伴って、迷路の入り口へと向かう]
ん。
[ひと笑いしてから、人差し指を口に当ててコーネリアスにウィンクをひとつ。]
あぁ、別にいやだって言う意味じゃないのよ?
[入り口の鏡の扉を開くと、レベッカの傍に顔を寄せて囁いた]
この迷宮には、自分の望みを見る事ができる道もあるのですよ。
どうぞ、良い夢をご覧になってください。
あら素敵ね、ありがとう。嬉しいわ。
[さらに目をほそめてコロコロと笑いながらコーネリアスに入り口まで案内された後、迷宮の入り口で、ラッセルを振り返った]
じゃあ、ここからはラッセル君にお願いしようかしら?
[婦人の娘が視えない少女には
騒ぎは何の事だかよくわからなくて、
へんに不安を煽られるばかりで、
きゅっと眉を顰めて遠巻きに眺め、
ようやく落ち着いたかと思えば、
今度は鏡の迷宮へ向かうという。
熊と風船とをしっかり抱いたまま、
紅い睛は瞬きもせず、
扉の向こうへ行く姫と騎士を見送って。]
さて。
頼もしい姫君ですから、僕のほうが守られてしまうかも知れませんね。
[冗談めかして言いながら、コーネリアスに小さく礼をして扉の前へ。]
では、参りましょうか。
大丈夫、何かあったら私が守ってあげるわ。
…って言ったらかっこいいかしら、私?
[くすくす笑いながら、ラッセルの半歩後ろについて鏡の宮殿へと入ろうと*足を踏み出した*]
嗚呼。
姫君直々に守ると言われては、早くも騎士は廃業のようです。
[苦笑を零しながら、見送る少女に気付けば小さく手を振る。
拒否されなければ、その手はそのまま半歩後ろの姫君の手をとろうか。
それから、扉の中へと足を踏み入れ――]
[やがて午前零時を過ぎると、サーカスはその門を閉ざし、人々は家路につく……その中で何を見たとしても……今はまだ、ただの夢と、笑えるだろう。再びその閉ざされた門が開くまでは……]
-深夜3時-
ふぅ。
[ひとつ肩をこぶしで叩いて、インクをつけた羽根ペンをペン置きへと置いた。
小さな燈台の灯りの元、長い文章を書き終えて息をつく。
勿論内容は、サーカスの事。
沢山の風船や良くできた花。
ラッセルに手を預けて進んだ鏡の間では、10年前の自分のように見えた鏡があっただとか、骨董屋の青年とリック君のやりとりや「変わった貴婦人」エレノアさんと話した事。
魔術師さんと話した事に、あぁ、旅のお医者様が来ていたこと。そして赤い可愛らしい女の子はヘンリエッタちゃんだと教えてもらったこと、そして…ニーナが少し元気なかったかな?疲れてたのかしら。
そんな一日の出来事を思い出せる限り書き連ねると分厚い日記帳を閉じた。]
寝ようかしら…ふあぁあ。
[大きな口をあけてあくびをすると、電気を消してベッドに入る。
カーテンを閉めようと外を見て…ふと、丘の上に少し光が漏れているのが見えた]
…明日の練習かしらね?大変ね。もう、3時なのに。
じゃ、おやすみなさい。
[独り言を呟いて布団を被った]
んー。
眠れないわ…。
子供みたい…。
[いつも布団に入るなり眠ってしまうのに、目が冴えてしまった。
少しぶらりと散歩に出ることにしようと、カーディガンを羽織って表へ出てみた。
誰もが寝静まる深夜。
いつもはしんとしたこの町に、今は風にのって丘の上から音楽が聞こえる。]
[男が起きて来たのは昼過ぎだった。
しかし、それは男だけに限らなかったようで、レストランのマスターは笑いながら眠気覚ましの濃いコーヒーをカウンターに置く]
いい香りですね、ありがとうございます。
…ん、この苦味も美味しいんですが、なにか甘いものがあればまた一段と美味しいでしょうね。
[そんな呟きを零し熱い黒の液体をゆっくりと味わう。
マスターは忙しかったのか単に無視したのか、次に目の前に置かれたのはモーニングセット。
少々気落ちしながら食べ終えれば、診療所へと出かけていく]
-雑貨屋:昼前-
[パタパタと急いで階段を下りると、店はきっちり掃除をされて開いており-ゴミ箱に割られた瓶がチラリと見えたが気のせいだと思い込むことにした-、ほーっと大きく息をついた]
ごめんなさい、本当に、助かったわありがとう!
え?うぅん、大丈夫。昨日はしゃぎすぎちゃったみたいで、眠れなくて朝方までお散歩とかしちゃったの。
そしたらこんな寝坊をね。
[笑うソフィに舌を出して見せた]
[昨日、気乗りしないニーナを無理につき合わせてしまったお詫び(ついでに自分用)に、甘いものを求めて通りを順に覗いていく。
金の髪を緩くくくった女性がいる店を覗いた時、その後に見覚えのある姿を見つけて]
やあ、こんにちはレベッカさん。
貴女のお店はここだったんですね。
[嬉々として茶色のレンズの下の目が見つめているのは、ゼリービーンズのたっぷりつまった瓶。
買いに行きますと言っておきながら、店を把握してなかった様子]
あら、ヴィンセントさん!
こんにちは、本当にゼリービーンズがお好きでしたのね。
[くすくす笑う]
甘党の男の人って初めて見たかもしれないわ。
うちのゼリービーンズは魔法の味、一度食べたらもう他のお店では食べられなくなりますよ?
[にっこり微笑んで瓶を順番に指差す。]
こっちのピンクがストロベリー味、こっちの白いのはヨーグルト味。
これが今オススメのブルーベリー味、緑色はマスカット。
お得なのはこっちのミックスね。
あ、そしてそっちにおられるのが、リック君のお母様ですわ。
[目が釘付けになっていたのを笑われて、照れくさそうに髪を掻きながらレジカウンターへと歩み寄り]
ええ、本当ですとも。
…冗談で言うには、少々恥ずかしいとは思いませんか?
[くすくす笑いに笑みを返し、説明を熱心に聞く]
ほお、これは…貴女の言う通り魔法のように美味しそうです。
そんな説明を聞かされたら、全て味わってみない時がすまないじゃありませんか。さすがは商売上手ですね。
[先ほどから何か脳裏に引っかかる女性の正体に、ああと納得。
レベッカのさり気ない紹介に、笑みを見せて挨拶した]
こんにちは。
やはり、リックくんのお母さんでしたか。
彼はとても頭のいい子ですね。
[少女にしてははしゃいだのが堪えたのか、
ようやく目が覚めたときには、
とうに太陽高くに昇っていて、
眠そうな様子を祖母に尋ねられる前に、
慌しく家から抜け出して来てしまった。
もっとも部屋に残された白い花と赤い風船を見れば
理由を悟られないはずもないのだけれど、
もしも祖母がそれを見ても溜息を零すだけだったろう。
それは、少女の預かり知らぬこと。]
[嬉しそうに、ゼリービーンズを丁寧に一袋ずつ詰めながらヴィンセントに笑いかける]
ふふ、ありがとうございます。
あら、全然恥ずかしい事じゃないと思うわ?
甘いものは幸せの味よ。
でも魔法の味、ってのはサーカスのチラシのウケウリなの。
言ってみたかったのよ。
[ゼリービーンズの袋を紙袋に纏めると、カウンターの上のビスケットの袋をひとつ取って振って見せた]
ビスケットもお好きかしら?
[微かな音を立てて扉が開くと、
室内に一筋の光が差し込んで、
中から女性の声がかけられた。
見覚えのある顔と、
聞覚えのある声に。
少女は紅い睛を瞬かせて、
熊を抱きしめてお辞儀ひとつ。]
[色とりどりの粒が手際よく詰められていく間、なにか差し入れるのにいい品がないかな、と店内を見回す]
そうですよね、幸せの味がします。
しかしなかなか理解を得られませんでしてね。
早く大きくなりたいというリックくんとは逆に、子供だったらいいなと思う時もありますよ。
なるほど。
実は魔女なのかと少し期待したりのですが…それは残念。
[もうすぐ万聖節ですし、と笑む。
やっぱり一番魅力的に見えるのはゼリービーンズで、ミックスをもう一袋と言いかけたところで、ビスケットを振られて反射的に頷いた]
[ビスケットの袋をぽいぽい、と3つ4つ紙袋にいれて]
このビスケットはまだ試作品なの、良かったら後で感想を聞かせてもらえると嬉しいわ。
うふふ、うちは雑貨屋だからあんまりお菓子を増やしても、とは思いつつも子供達が嬉しそうな顔をするものだからつい。
[イタズラっぽく笑いながら、紙袋をわたしつつレジがチンとはじき出した値段を告げる]
えと…ヘンリエッタちゃん。
そう、ヘンリエッタちゃんは、何を見にきてくれたのかしら?
[レジカウンターからニコニコしながらきちんとお辞儀するクマと少女を見る。]
[店内には、さまざまの品物。
文房具が多かったけれど、
違うものも置かれていて。
それらを眺めるように
眼差しは動いていたけれど、
蜂蜜色の髪の女性に
中へどうぞと促されて、
きょとりと彼女を仰ぎ見る。]
[店内には子供が学校で使う文房具が主に真ん中の低めの机に広げてあり、手前の方には男の子が喜びそうなパチンコや空気鉄砲、奥の方には女の子がすきそうな花の香りのするキャンドル、壁際の棚には地球儀やマグカップ等ひとしきり子供から中高生くらいの年齢までなら魅力を感じそうなものがところせましと並べてある。
入り口の傘立てには「ご自由にどうぞ」と傘が何本かささっていたり、ドア近くには小さなスツール、そこには冷たい水の入った水さしとグラスが並べられており、本当に「雑貨」屋といった風だ。]
えっと、……うんと、
[とてとてと、
皆の近くまでは来たけれど、
眉を寄せて口ごもり。]
……、
[きょろきょろ、視線がさ迷って、
袋詰めのゼリービーンズで止まる。]
[可愛らしい二人連れに気を取られている間に、ぽぽいと紙袋に放り込まれ。遠慮する間もなく渡される]
え、あ。…ありがとうございます。
子供達は幸せですね、素敵な雑貨屋さんで。
[こんもりした紙袋を大切そうに抱えて、言われた値段を一旦払いながら店の前の小学校を見やる。
賑やかな声が遠く聞こえ、ふと学校に行っていない少女のことが気にかかった]
ヘンリエッタちゃんは、今日は学校はお休みなのかな?
[特に健康に難があるようにも見えなくて、つい問いかけていた]
……、学校、は、
[茶のレンズの奥の眼差しを避けるように、
抱いていたテディベアを少し持ち上げて、]
ヘンリエッタはこの町の子じゃないから、
この町の学校には通わなくていいんだよ。
[瞬きの必要がない円らな眼が男を見つめて言う。]
[ヘンリエッタの視線がゼリービーンズに向いて居た事に気がつき、]
ヘンリエッタちゃんもゼリービーンズ?それともアリスちゃんかしら?
どの味がお好み?
[カウンターから身を乗り出して笑顔で話しかけ、ビンを指差して順番に差していく]
このピンクがストロベリー味、この白いのはヨーグルト味。
となりのブルーがブルーベリー味、そのお隣の緑色はマスカットよ。
こっちの色々なのは、混ぜて全部が入っているわ。
[さきほどと同じ説明をゆっくりする。]
[男の質問に答えたのは、茶色のクマだった]
この町の…?
ああ、何か用があって滞在中でしたか。それは失礼しました。
[申し訳ないと頭を下げようとして、不安定になっていた紙袋からゼリービーンズの袋が一つ転がり落ちた。
ピンク色のそれは落ちたショックで口が緩み、甘い苺の香りがする]
[店主の丁寧な説明に意識は逸らされて、
視線は一度取り取りの色に注がれたけれど、
落ちる音にびくりとして忙しく動き、
しゃがみ込んで拾おうと手を伸ばす。]
……、
[甘い香りに、ぱちぱちと、瞬いて。]
ストロベリーが、気に入ったかしら?
[レジカウンターに頬杖をついてヘンリエッタを見る。
赤いひらひらとリボンに巻髪の彼女に、ピンク色のゼリービーンズはとてもよく似合っているように見えた。]
[男がしゃがむよりも、背の低い少女の方が床に近かった。
赤の裾がふわりと花開き、小さな白い手がピンク色に伸びる。
それは男が手にするよりも、遥かにしっくりとする光景で]
………ええと、味見してみます?
[じっと見つめる視線に、口が勝手にそう言っていた]
[頷く少女に、紙袋をレジカウンターに置く。
小さな手からピンクの袋を受け取って、少女の前で口を開けた。
甘い香りが強く広がり、茶色のレンズの下で目を細める]
はい、どうぞ。
[袋の口を向けて、にこやかに笑む]
[男性にそう勧められて、
おずおずと手を持ち上げて。
細い指先が一粒摘んで、
ピンク色が赤い唇に運ばれて。
鼻腔をくすぐる、あまいにおい。
じんわり広がる、あまいあじ。]
おいしい。
[小さな声で呟いて、
しあわせいろに、ほころんだ。]
はい、どうぞ!
[ヘンリエッタには可愛くリボンをかけた袋を紙袋に入れ、ビスケットも入れてそっと渡す]
ありがとう、サービスいっばいしたからね?
[少女の声に男はにっこりを笑みを浮かべ、自分も一粒口に運ぶ]
…うん、美味しい。
本当に魔法のような味ですね。
[ヘンリエッタとレベッカへ交互に視線を向け、嬉しそうに笑う]
それでは、失礼したお詫びにその代金はこちらに。
それからもう一袋、プレゼントに包んで下さい。
[代金が自分が持ちますと、クマに向かって*ウインクしてみせた*]
あ、ソフィダメよ、そっちの花瓶はーーー
[ガシャ!という音に目をきゅっと瞑って肩をすくめる]
…足が欠けてて不安定なの、といおうとしたのよ…?
[日常茶飯事に、苦笑しながら謝るソフィに首を横に振った。
と、ヴィンセントの言葉に振り向いて]
あら、ヴィンセントさんありがとう。
すぐに用意するわね。
[ヴィンセントからお金を受け取り、プレゼント用にひとつミックスを綺麗に包みあげる。
それをまた可愛らしい紙袋に入れて手渡そうと*差し出した*]
[少女の小さな手に袋は収められて、
嬉しさに仄かに頬が色づいて、
けれどウインクを受けて少し慌てた様子。]
……気持ちは嬉しいけれど、
ヘンリエッタは皆にお礼がしたいんだってサ。
だから、自分で買わなくちゃ意味がないんだよ。
[それでも、ありがとうと熊が答えて。]
[謝罪のことばが聞こえて、
ふるふると首を振って、
気を取り直す。
代金はきちんと自分で払うと、
買ったばかりの袋を開けて、
一粒、
目の前の男へと差し出して、]
お返し。
[真面目なかおで言って、受け取らせる。]
……うん。
[横に視線を移すと、
片付けをしていた女性が少年の姿を認めて
嬉しそうに微笑んでいる。
僅かに首を傾げ、考え込む仕種。]
そっか。
それ、美味しいよね。
レベッカさんは良い仕事するよ、本当に。
ヴィンセントさんも思うでしょ?
……で、母さんはほんとに迷惑しかかけない
[最初のことばには頷いたけれど、
最後のことばには頷けなくて、
テディベアを抱いたまま、
きゅうと眉を寄せる。
暫し交わされる会話を聞いていたけれど、
店主に促されて帰り支度へと向かう女性を見送り、
少女も帰ろうかと扉のほうへと向かって、
……また後ろから物音が響いて来たのは、
きっと、気のせいだと、思いたい。]
[そんな様子は気になりはしたけれど、
大人たちがそちらを見ているうちに、
少年のそばに寄って挨拶をすると、
ふわりとスカートを揺らして、
*雑貨屋を後にして。*]
―サーカス広場・閉園後―
[最後の招待客(今日の入場者は招待客ばかりだった)を見送って、閉ざされた門の前から踵を返す]
みなさん、楽しんでくださったようですね。
[ゆったりとした歩みに合わせるように、開園時よりもテンポを落とした蒸気オルガンの音色が流れる。]
[回転木馬の前にさしかかると、一等の木馬の額を軽く撫でる]
あのお嬢さんは、また来てくれるかな?
[エレノア夫人と帰っていくまで、怯えた様子のままだった少女の事を思い出して目を細める]
─自宅・昨夜─
[何やら違和感めいたものを感じつつ、家に帰れば楽しげに品物を磨く祖父の姿]
……何、浮かれてんの?
[思わず問えば、昼間、店内を興味深そうに覗いていた者がいた、という話を聞かされる。
どうやら新たな客……というか、茶飲み相手ができる事に期待をしているらしい]
ったく……。
[呆れたように呟けば、サーカスの話を聞かれ]
ああ、中々賑やかだったよ。
あの様子だと、ずっと盛況じゃないかな?
いや、なにがあった、って言われてもなあ……。
[そんな感じで、しばらく話し込んでから、二階の自室へ上がる]
[部屋に入り、窓を開けて広場の方を見やる。
風に乗り、微かに聴こえる音楽に、その表情は何故か険しさを帯びて]
……気のせい……か。
あれが来てから……妙に、視え易くなっている気がする。
シャーロットが、あんなにはっきり視えたのなんて、子供の時以来だぜ……?
[ぽつり、独り言めいた言葉に、黒猫が不安げに小さく鳴いた。
その頭を、宥めるように撫でて]
ま、何事もなきゃいいんだが……っと。
[呟きながら窓を閉め、テーブルの上の鞄を振り返る]
……やば、あれの事忘れてた。
ま……今の内は、無理か。
[サーカスの興行中は、馴染み美術商も忙しいかも知れないし、と呟いて]
[明けて、翌日。
いつものように起きだし、祖父と軽口を叩きあいながら食事を済ませ、出勤する。
書店の仕事は、今日は定時まで。
基本的にそんなに客の多い店ではないが、やって来る客の話題はサーカス一色だった。
そんなこんなで、勤めは終わり。
夕刻、まだどこかに熱を残したようなメインストリートへと出て、家路を辿る]
……あー、一応料理は終わったけど。
買ってくるから。
いいって、母さんは動かないで。頼むから。これ以上もの割らないで。
んじゃ、いってきます。
―診療所―
はぁい、お大事にー!
[相手の姿が見えなくなってから、ぱたん、と扉を閉める。
勢いで取り付けられた小さなドアベルがチリリと鳴った。]
[最後の患者を見送って、今日の営業はこれでおしまい。
今日もお手伝いありがとう、と笑みを浮かべて告げる看護婦に
こちらこそありがとうございました、とぺこり頭を下げて
手伝いついでに、いそいそと帰宅の準備を始める。これもいつもの事]
「そういえばニーナちゃん、昨日サーカス見にいったんでしょう?」
[いいわね、行きたかったわ。楽しかった?と、
笑顔で次から次へ問いかける言葉に
一度きょとりと瞬いた後、…へらりと曖昧に笑みを返した。
……まさか、羨ましがっている人の前で、
苦手なので楽しめませんでした、なんて言える筈がない。
これ以上の言及から逃れるように、急いで帰宅準備を終えると
お疲れ様でした!と挨拶と共に診療所を飛び出した。
少し慌しすぎて、あからさまだったかな…?
チラリと頭の端でそんな事を考えて、──やめた。
明日までの備品の買出しも頼まれたし、きっと言い訳も出来る。
…多分。]
……忘れる所だった。
[家に帰る前に、買い足さなければならないものがあったのだ、と。それを思い出して]
本気でこれ、元が取れんとやってられんな……。
[言いつつ、視線を向けるのは肩から提げた鞄。正確には、その奥底の天鵞絨の包み。
とはいえ、現状はどうしようもなく。
一つ、ため息をつくと、裏通りに踏み込みかけた所からくるり、踵を返して道を戻っていく]
よし、決めた。
その林檎で。
えーと。ひのふの……五つくらい?
うん、ジャムにしようかと思って。
あとは、まあパイとか?
……主婦とか言わないで、頼むから。
だって、あの母親だよ。
料理させたら血まみれだよ
言い過ぎじゃないんだ、悲しい事に。
砂糖と塩を間違えるとか。
醤油とソースを間違えるとか。
あ、はい、お金。
え? 栗?
嫌いじゃないですよ……って
メモ、メモ。…と。あった。
んー、と。
[ごそ、と鞄の奥底からメモ用紙を引っ張り出す。
診療所で使う消耗品の買出しに、と渡されたもの。
ひの、ふの。指折り数えて、一つ頷く。あの場所なら幾つか揃えられそうだ。
ちらりと、腕に嵌められた時計を見やる。
…夕刻も近いが、まだ空いているだろうか。
駆け足混じりで、目的の店へと向かって。]
― …→雑貨屋 ―
それにしても、切り詰めてくれ、って言ってるのに、ちゃんと聞きやしねぇんだから……。
[ぶつぶつと文句を言いつつ、道を歩いて果物屋へ。
なぁう、と鳴く黒猫の声に視線を上げれば、見慣れた姿が目に入るだろうか]
……や、買い物かい?
[そちらへ歩み寄りつつ、金髪の少年に声をかけ]
いえ、特には。
ただ、少し変なモノを見た人も居たみたいですけど。
でもほら、サーカスですし。色んな仕掛けがあっても別に可笑しくな、
嗚呼。
―メインストリート―
さあ、今夜は華麗な軽業のショーが開演ですよ!
美少女のブランコ乗りが命がけの演技をお見せします。
どうぞ皆様お越しください!
[宣伝文句も高らかに、道行く人や店先にビラを配って歩いている]
そりゃ、買い物もしないのに店に寄るって、よほどの事でしょうな。
[リックの問いにくつり、と笑って。
声をかけてくる店主に挨拶をして、林檎と、他に数種の果物を選んで包んでもらう]
―雑貨屋―
もしもーし、レベッカさーん。
…まだ、あいてますかー?
[扉を少しだけ開けて、少しだけ薄暗い雑貨屋を覗き込む。
きょろ、と店内を見回して]
そそ。
あいにく、おれはそんなに暇じゃないからさ。
招待券をもらってくれる人もいないハーヴェイさんは、暇なのかもしれないけどね。
[ふいに路地から出て来た男に、ぶつかりそうになる]
おっと、失礼……
……はい?ええ、確かにサーカス団の者ですが。
[じろりと睨むアーヴァインに、困ったような笑みを向ける]
はあ、往来の迷惑、ですか。
それは申し訳ありません。はい、気をつけますので……
え?興行の時間ですか?
遅過ぎると言われましても…それは団長の決めることですし。
暇じゃないのは、いい事だねぇ。
[にこにこと笑いつつ、例によって届くようならぽふり、と。
高さ的にちょうどいいのかも知れない]
ま、確かにいないが、それはそれ。
いなくても、全く暇じゃありませんの事よ、俺は?
[にこにこと笑いつつ。
きょときょととする黒猫の様子に気づけば、やや、怪訝そうに首を傾げるだろうか]
……だから手。
はァ。なんど言ってもわかんないなぁ。耳まで遠くなった?
ま、悲しい一人身の強がり、か。
かわいそうなハーヴェイさん。
いやあ、高さ的に丁度よくてね。
ま、今の内だけだよ、頭撫でてもらえるのは。
[今の内に撫でられときなさい、と、と笑って言って。
後の言葉は聞き流しつつ、足元の黒猫を見やる]
どうした、ウィッシュ?
[問うた所で、猫からの返事は鳴き声のみなのだが]
[じいっと紙を見つめていたけれど、
厳めしい貌で道を歩んでいく男を、
きょとりして見上げる。
どうやらサーカスの方へ行くようなのに、
陽気な音楽にはちっとも似合わない。
相手のほうは少女を気にした風はなくて、
のしのしと歩いていくのを見送った。
ちょうどいいからって、置いてるようにしかみえませんけどー?
……はァ。もういいよ。ったく。
そんなに撫でられたいならしゃがめば撫でてあげるけど。
それは気のせい。
撫でられたくないから、そう思ってるんだよ、きっと。
[にこにこと笑いつつ、ぽふぽふ、と頭を撫でる。
その様子は、少年とのやり取りを楽しんでいる、と一見してわかるだろうか。
足元の黒猫は主と少年のやり取りをしばし見た後。
なぁ、と鳴いて、ととと、と歩き出す]
嗚呼、今日和。
昨日は有難うございました。
ええと、僕のことは「ラッセル」で良いですよ。・・・と、そういえば名乗ってませんでしたね。
[苦笑を浮かべる。]
そういえば、先程アーヴァインさんと話されてたみたいですけど。
何かありました?
あ、レベッカさん、
…おはようございます。痕、ついてますよ。
[寝不足ですか、とくすくすと小さく笑みを零して。
ひらりとメモを照らし合わせながら、
慣れた様子で、文房具の収まった机から鉛筆と消しゴムを、1ダースずつ。
ホチキスの芯も3ケースほど、レジカウンタへ置いて。]
最近冷え込んできてますから、風邪引いちゃいますよ?
あと、このお店に石鹸ってありますか?
[細いプリーツのロングスカート。
その裾をしゃらしゃらと揺らし、メインストリートを歩く女の姿。
となりの「空間」も相変わらずのようだが、いつもよりも、少しばかり女から離れて見えた]
シャーロット?
はぐれてしまいますよ?
[実態を持たない娘は、はぐれることなどないのだけれど]
ああ、ほら、レベッカさんの姿。
お隣の子は、どなただったかしら…。
[行く道にレベッカとニーナの姿を見つけて、
ほっそりとした手で指し示し――]
こんにちは、サーカスへお出かけ?
ラッセルさん、ですね。どうぞよろしく。
ええ、先程の方…アーヴァインさんとおっしゃるのですか?
自警団の方だそうですね。
ビラ配りが往来の邪魔だと、叱られてしまいました。
[笑って小さく肩をすくめる]
[流石に気づかれないはずもなくて、
広場の入り口傍まで来たところで、
急に振り返られてびっくりして、
隠れようとしたものだから、
ますます怪しまれてしまって。]
……、えっと。
[テディベアに隠れながらこまりがお。
子供相手に怒るような真似はしなかったけれど、
サーカスへ行きたいのかと聞かれて思わず頷くと、
(少女に券はもうないから無理だったのだけれど)
彼処へはひとりで行っては駄目だと注意を受けて、
ついつい、こくんと、頷いた。]
−雑貨屋・昼−
[生真面目な顔で差し出された甘い香りのゼリービーンズに、茶色のグラスの下で目を丸くする。
「おかえし」
その言葉が意味するところに気付き、男は柔らかな笑みを見せた]
ありがとうございます。では遠慮なく。
[小さな少女が自分のお小遣いからちゃんとお金を払って買った貴重な一粒を、大切に押し頂いて口に放り込む。
甘さと共に、マスカットの爽やかな香りが口内に広がった]
ちょっと昨日はあんまり眠れなかったのよねぇ。
[なれた手つきで袋に品物をつめつつ]
あ、あるわ、薬屋さんよりちょっぴり高いけれどね?
[棚の上の、良い香りのする石鹸を指差した]
ん……ウィッシュー?
[声をかければ、黒猫は立ち止まって振り返り、一声鳴いて。
それからまた、ととと、と歩き出す]
……どうも、落ち着かないな、あいつも。
[小さな呟きは、少年にまで届いただろうか。
ともあれ、手を離し、代金を払った買い物の袋を持ち直し。
尻尾を揺らして進む黒猫を追う。
黒猫の歩みは、広場の方へと向いているらしい]
[からり、扉を開けて、レベッカの店に入り]
こんにちは、レベッカさん。
一つ、扇子をいただけないかしら。
忘れてきてしまったの。
ええ、そんなところです。
はい、凄く綺麗でした。
つい見とれてしまって、レベッカさんに置いて行かれるところでしたよ。
[やはり騎士は失格ですねと笑い、その後の言葉には困ったような顔になる。]
嗚呼、そうですか。
済みませんね、悪い人じゃ無いんですけど。
如何にもその、・・・・町の人以外をあまり良く思ってないみたいで。
興奮しすぎですか?レベッカさん、スッゴク楽しそうだったから。
あ、じゃあ…その石鹸も下さい。4つほど。
[まとめて買っちゃいます。小さく笑みを零しつつ
棚の上を指差す。領収書もお願いできますか、とお願いして、
ふと、店の扉から覗いた姿に青を瞬いた。]
──あ、ガーシュインさん。こんにち、は。
[…はたと、相手が自分の事を知らないことに思い当たる。
自分は診療所で手伝いをしているから、一方的に判るけれど。
店へと入ってきた女性にぺこりと頭を下げて]
えと、ニーナ=ベルティ、って言います。
ここには、お手伝いしている診療所の、お買出しに。
お怪我はありませんか?
ああ、そうですか…お気をつけて。
[割れた破片とソフィーを見比べて問うも、どうやら日常茶飯事らしく大丈夫との答えが返る。
片付けの邪魔にならないよう扉へと移動し、リックと挨拶を交わす]
はい、こんにちは。
確かに美味しいですね、いい仕事をされてます。
[うんうんと何度も頷けば、最後の質問まで頷いた形になってしまっただろうか。
背後からレベッカの援護の声が聞こえたが、リックの言葉には達観めいた響きがあって。口を出さずに見守るにとどめた]
それでは、私もこれで失礼します。ではまた。
[ヘンリエッタとリック親子が去るのと同じく雑貨屋を後にし、急ぎ足で診療所へと向かった]
[ニーナの法に向けている顔を、からりと音をたてた扉に向けていらっしゃい、とつむごうとし]
あら、エレノアの奥様こんにちは。
扇子、ちょうど昨日いくつか入荷しましたわ。
[にこりと笑って別の棚を指差した]
[暫く入り口から中の様子を眺めて、
それからくるりと踵を返す。
賑やかな音楽は相変わらず止まらずに、
誰も彼もを誘ってしまいそうに思えて。
……そう言えば、
それほど大きいわけでもないのに、
何処ででも聞こえているような気がして、
気のせいかもしれないのだけれど、
不思議な感じを覚える。]
楽しんで頂けたようで何よりですよ。
騎士の名誉は、またショーにでもお誘いすれば回復出来るのではないですか?
レベッカさんは、随分とサーカスがお気に入りのようですから。
[ラッセルの言葉に、笑いながら頷いて]
ああいった方はどの町にもおいでですよ。
それに、それだけ町を大切に思っていらっしゃると言う事ですからね。気になさらないでください。
[少年が追いかけて、立ち止まった事に気づいているのかどうかはさておき。
リズミカルに人ごみを避ける黒猫を追ってゆく。
途中、ビラ配りに押し付けられた紙を見るのもそこそこに。
進むに連れて人が増えるような気がするのは、多分、気のせいではないだろう。
広場の近くまでやって来ると、黒猫は足を止めて。
なぁう、と鳴きつつ、尻尾をゆらり]
……なんで、わざわざこっちに来るかな、お前。
[遅いよ、とでも言いたげな猫の様子に、口をつくのはこんな一言]
……なるほど、今日からが本番……か。
[賑やかな様子と、途中で押し付けられたビラからそれを察して小さく呟く]
にしてもお前、まさか見たい訳じゃあるまい?
[尻尾を揺らす黒猫に問いかけつつ、荷物を持ち直す。
黒猫はなぁう、と鳴いて、また、尻尾を揺らした]
[カウンターの前で、荷物が出来上がるのを待つ少女に名乗られて、こちらもほほ笑むと]
こんにちは、ニーナさん。
成程、診療所のお嬢さんだったのね?
[見たことがあると思ったのよ?とおっとりと言葉を続ければ、後ろの娘もぺこりとお辞儀をして。
――彼女にそれは、見えないのかもしれないけれど]
サーカスが来ても、診療所や雑貨屋さんを、
おやすみするわけにはいかないものねえ。
皆は助かるけれど、
働いているお年頃の女の子には、物足りないわよね?
―サーカス広場―
[丁度天幕から、ふらふらとした足取りで出て来るアーヴァインの姿が、ハーヴェイとヘンリエッタには見えたかもしれない。]
[自身に気づいた少女に気づいたのか、黒猫はそちらを見やって声を上げる。
動いた視線の先を追えば、目に入るのは鮮やかな赤]
と……やあ。
君も来てたんですか。
[にこり、と笑って。軽い口調で声をかけ]
そうなのよね、うん、年甲斐も無くね。
[ニーナの興奮していた、の声には深く頷く]
ニーナはなんだか元気ないみたいだけど、大丈夫?
疲れてない?
ありがとう、レベッカさん。
白い、レースのがいいのだけれど……。
[言いながら、棚に近づいて]
いつも同じようなのを選んでって、怒られちゃうのだけれど。
こればっかりは譲れないわね。
喪服の黒を選べだなんて。
だって、誰も――。
[言いかけたところで、一つの扇子が目について]
あ、これ、すてきね。
そうですね・・・機会があれば。
と言っても、誘わなくてもまた行きそうですけど。
[楽しそうな様子を思い出したか小さく笑う。]
嗚呼、そうなんですね。
・・・にしても、折角の機会なんですし、少しは楽しんでみれば良いのに。
そういえば、今日は何があるんですか?
――あ、
えと、
…………うん、
[声をかけられたのに驚いたのか、
何故だか急に慌てた様子になって、]
そう、
こんにち、は。
[顔を隠すように深く深くお辞儀。]
[手にとってもいいかしら?と、レベッカに確認して広げた扇子は、白檀の地に、白の繊細なレースを張ったもの。薄金色の刺繍が美しく]
あなた、どう思う?
[そう尋ねた言葉は、娘へのものだろうか、それとも店の二人に対するものだろうか]
[鞄に道具を片付けようとして、自分用の紙袋とは別に入れていたプレゼントの包みに気付く]
あ…すっかり忘れていました。いけませんね。
[とっくに帰ったらしいニーナに、しまったなとぼやきつつ診療所を後にする。
メインストリートに出れば新しいビラが手渡されて、興味深げに見ながら歩いていく]
はい、こんにちは。
[深いお辞儀に、穏やかな挨拶でこたえて]
……もしかして、脅かしちまったかな?
[だったらごめんね、と笑いつつ。
ふと、視界の隅を掠めた影に、一つ、瞬き]
今の……。
[アーヴァインさんだったような、と。口の中で小さく、呟く]
そうですねえ。一度楽しんで頂ければ、サーカスの効用も判って頂けると思うのですが。
そうそう、今日は軽業と空中ブランコのショーがあるんですよ。
魔術の実演は明日からの予定です。
一番の売り物なので、週末にお披露目するってわけです。
はい、こんにちは。──、
[ふと、女性の後ろに薄ら影が見えた気がして、緩く瞬いた。
慌てて、再び──今度は女性の後ろへ向けて、軽く頭を下げる。
確かに、見える人には女性の周囲に「居る」とは耳にしていた。
それでもどれだけ目を凝らしたって、今までは見えていなかったのに。
近しい存在、だった事があるからだろうか。
それにしたって、もしサーカスが来た影響なのならば、
──考えて、少しだけ眉を寄せた。]
いえ、昨日、少し行っただけでも十分満足です。
私は、診療所のお手伝いは楽しいですし。
サーカスは、小さい頃に言った事がありますから。
[行かなくても、結構平気です。
女性の続く言葉に、へらりと笑みを浮かべながら答える。
…小さい頃に行ったのは、本当。
問題はそれからだけれども、それまで告げる必要もないだろうし。]
[顔を上げて、ふるふると首を振る。
小さな呟きは聞こえなかったけれど、
どうかしたのかと思ってそちらを見て、]
……?
[少女の視線の高さでは、
影は見つからなかったらしい。
代わりに、足下で鳴く猫へと視線が落ちた。]
[エレノアの選んだ扇子を見て、さすがにいいモノを選びますわね、とつぶやきながら丁寧に包装し、ニーナとエレノアの会話に笑みを浮かべる。]
久しぶりだったんだから、楽しんじゃえばいいと思いますよ。
まるで、遠足の前日みたいにわくわくしても仕方ないです。
[レベッカの頷きに、くすくすと笑みを零して。
続く問いに、少しだけ慌てたようにふるふると首を横に振った]
──え、…え?大丈夫、ですよ?元気です。
疲れてません。本当。誰も疲れてません。
[無駄に繰り返すのが微妙に怪しい。
が、確かに元気だし、疲れてはいない。…多分。]
[確かめる間もなく、人影は見えなくなった。
正確には、人だかりに紛れてしまった、と言うべきかもしれないが]
あの人が遊びに来るとは思えんし……見回り、かな?
[ご苦労なことで、と呟く。
一方、少女に視線を向けられた黒猫は挨拶するように尾を揺らしつつ。
じい、と少女と熊とを見つめて]
あ。
そうだ。
[暫く黒猫とにらめっこしていたけれど、
ようやっと思い出して、顔を上げ。]
えと、……お礼、昨日の。
[そう言って、
小さな掌に取り取りのビーンズを乗せて、
好きなのをどうぞと言わんばかりに差し出す。]
[ニーナに挨拶をされると、婦人のほうは嬉しそうに笑う。
少女はそれを見て取るとニーナの近くへ歩み寄り、
彼女の眉間をつん、とつついてほほ笑みかけた。]
こら、シャーロット、いたずらはだめよ。
――そう、子どものころに……。
サーカスがこの町に来たことって、あったかしら…?
[彼女の言葉に小さく首をひねり]
お仕事が大切な看護婦さん。とてもすてきね。
包まなくていいわ、すぐに使うの。
[気に入ったらしい扇子をレベッカに渡し、
さらさらと勘定書きにサインをしていれば、娘が彼女を呼んで]
なあに?
[白い扇子の隣にあった、黒い扇子。
紫檀に黒のレース。縁取りは紫紺。]
黒のものは、嫌い。
それは欲しくないわ、シャロ。
一度行ってみれば、案外――
いや、如何かな。
[何時ものしかめっ面しか思い浮かばなかったのか、小さく首を傾げる。]
空中ブランコ、ってあの高い・・・
サーカスの人達って凄いですよね。怖くないんでしょうか。
成程、週末なら人も集まりやすいかも知れませんね。
コーネリアスさんは、何かされるんですか?
あら、そうですか?
なら。
[いってはさみで丁寧に値札を切って手渡す。
娘とのやりとりには、わからないままにも笑みを崩さずに様子を見守った。]
え……お礼って……。
[言われた言葉に、ほんの一瞬、きょとり、とするものの、すぐに昨日の事に思い至り]
……ありがとう、じゃあ、一ついただくよ。
[言いつつ、色彩の中から青を選び取って、にこり、と笑う]
そういや昨日、大丈夫だったかな。
帰り遅くなって、心配されてなかった?
[それから、ふと気になった事を問いかけて]
[距離が近付いても、元々見える力は持たない所為か、
彼女の姿は薄らとしか見えないけれど。
…何となく影が笑みを向けたような気がして。
思わず、つられるようにふわりと笑う。]
えと、シャーロットさんって、言うんですか?
[初めまして、とペコリ頭を下げる。
続く女性の言葉に、あぁ、と慌てたように手を振って。]
私、5歳の頃にここに越して来たんです。
ここに来る、直前に。──サーカスに。
[会った事があって、と続く語尾は、少しだけ澱んだ。
小さな溜息と共に、しかし褒められれば少しだけ嬉しそうに
ありがとうございます、と礼を告げて]
[きちんと受け取った様子に、満足そうなかお。]
……猫には、駄目?
[そんなふたりを見つめる眼差しに気づいて、
そう尋ねはしたけれど、
ちょうど重なるように相手からも問いを受け、
瞬きしてから熊を持ち上げ、]
ヘンリエッタには、
ぼくがついているから大丈夫。
心配ないサ。
[……誤魔化し。]
私はまだ見習いですからねえ、せいぜい助手や舞台のセッティングといったところですよ。
そのうち前座でカードマジックくらいなら披露できるかと期待しているんですけどね。
[手にしたビラの内容に魅入っていた為か、足取りは自然とサーカスの方へと。
途中、どんっとぶつかった感触に慌てて顔を上げる]
! すみませ…ん、あの、大丈…
[謝罪の言葉も耳に入ったか怪しい様子で、その男は去ってゆく]
今の…自警団長さん、ですよね。
心ここにあらずといった感じでしたが…はて。
[町に来て最初に顔をあわせた瞬間、鼻を鳴らして不愉快そうに見られた表情を思い出す。
あまりの違いに目を丸くするも、わざわざ不愉快な顔を見せて欲しいというわけなどなく。首を傾げるだけで黙って見送った]
[しばらく眉根を寄せていたが、やがてレベッカに無言で黒の扇を差し出して、勘定書きにサインをする]
それは包んで頂戴…。
まったく。わがままで、困っちゃうわね?
[無理に笑うようにしながら、小さくため息をついて]
大丈夫、何も割っていないって。
猫に甘いものは良くないからね。
君の気持ちだけで、十分。
[な? と言いつつ視線を向ければ、黒猫は肯定するように一鳴き。
問いに対する答えには、くすり、と笑って]
なるほど、頼もしい騎士殿がついておられましたか。
[冗談めかした口調で言う。
それでも]
……ま、骨董品屋の孫に誘われて、って言えば、何とかなるかも知れない……ね。
[誤魔化しなのは、何となく感じていたか、何でもないようにこんな言葉を付け加え]
はい、わかりましたわ。
[にこりと笑って黒い扇子を包む頬がまったく引きつったりしていないのは、流石というべきだろうか。
そして、青い短い髪の少女が紡ぐ言葉に、振り返った]
あら、ニーナサーカスに行った事があったの?
小さい頃?私と一緒ね。
――あ、嗚呼。いえ。
何か、呼ばれたような気がして。・・・・多分気の所為です。
[小さく首を傾げ――コーネリアスの視線に気付き、首を横に振る。]
そうですか。出番、貰えると良いですね。
出られる時にはおっしゃって下さい。見に行きますから。
[先のことばに青年と黒猫を見て頷きはして、
後のことばにも内心ほっと一息ついて。
けれど付け加えられた一言に、
見透かされたような気がして、]
!
[瞬き。]
……ありがとう、御配慮痛み入るよ。
[熊を抱きしめながら大人ぶった礼を言う。
そうこうしているうちに、
雑貨屋で会ったばかりの少年が近くまで来て、
青年を見て微妙なかおをしたように見えたのは、
気のせいだろうか。]
ええ、シャーロット。
今年で17歳になるの…。
仲良くしてあげてもらえると、うれしいわ。
[ニーナの言葉には、愛想よくそう返して]
サーカスに子どもの頃に?
今回のサーカスと同じだったのかしら、ね?
[きっとそんな小さなころのこと、わからないわよね?
と、続けると、ころころと笑った。
娘がなにかニーナに悪戯をしかけているようだが…?]
あ、えっと…はい。一緒ですね。
でも、その時は──両親には、内緒で。こっそりと。
[行ったんですけれど。
レベッカの言葉に、苦笑とも取れない表情で言葉を付け足して。
もう一つ付け足すならば、彼女とは違って──
楽しい思い出なんて、何一つ残らなかった事だけれども
それはきっと、告げる必要が無いだろうから。]
そうですか?
[ラッセルの言葉にはそれ以上頓着せず、にこりと笑う]
ええ、ぜひ観に来て下さい。お待ちしていますよ。
さて、そろそろ仕事に戻らないと。アーヴァインさんが戻って来られる前にビラを配ってしまいたいですしね。
[悪戯めいた口調で言って、では、失礼、と会釈した]
いえいえ、どういたしまして。
[大人ぶった礼に、またくすりと笑って、黒猫を肩へと導く]
と、おや。
[それから、やって来たリックに気づいて、いつもと変わらぬ笑みを向けつつ、今日は良く会うねぇ、と声をかけて。
……返ってくる言葉は、不機嫌かも知れないが]
──17歳。私と、一緒ですね。
[わ、と小さく声を上げて、嬉しそうに目の前の影へと視線を向ける。
同じぐらいの身長だろうか、相手を見比べて。
続く言葉に、少しだけ青を見開いて、少しだけ口篭る。]
あの時の事は、記憶が少しおぼろげで。
今回のサーカスと──、同じじゃなければ、良いんですけど。
[小さかったからでしょうかね、と誤魔化すように、笑みを浮かべながら
目の前の少女の影が、何をしているのか判らずに、きょとんと瞬いて。]
はい。・・・確かに、そのほうが良いでしょうね。
[悪戯めいた言葉にはくすくすと笑う。先程のことはとうに忘れてしまったかのようで。]
長く引き止めてしまって申し訳無い。
御仕事、頑張って下さい。
[広場へと足を踏み入れたあたりで、見覚えのある少年の姿と少女と青年と黒猫]
やあ、リックくん。お母さんとは一緒じゃないのかい?
ヘンリエッタちゃんとハーヴェイさんも、どうも。
[挨拶して近づけば問いかけの返事の代わりにうさりんごと栗が差し出される。
手は自然と色鮮やかな赤を選び、それからはたと気付いて苦笑する]
しまった、つい可愛らしい方を取ってしまいました。
お嬢さん達の分がなくならなければいいのですが。
[いただきますね、と笑みを見せて。しゃくりとうさぎに歯を立てる。
甘酸っぱい果汁に目を細め、食べ切って指をぺろりと舐めた]
ごちそうさまでした。
いえいえ、もう十分ですよ。私にはこれがありますし。
ああ、よければおかえしに――
[ゼリービーンズを勧めかけて、クマと視線が合った、気がした。
お礼に皆に配るとか、そんなことを言ってたような気がする]
――ええっと、すみません。お返しはまた今度に。はい。
空中ブランコに遅刻するかもしれませんので。
[少々ぎこちなく誤魔化して、*サーカスを見に天幕へと*]
ありがとうございます。
では、また。
[ラッセルに別れを告げ、ビラ配りに戻る。全てを配り終えたなら、サーカスの広場へと*戻って行くだろう。*]
よく会う、の?
……やっぱり、仲、いい?
[何故だかじいっと見つめていたけれど、
青年から視線を逸らした少年から
兎型に切られた林檎と、栗とを受け取り、
ありがとう、と小さな声でお礼を述べる。
後からやってきた男にもそれは渡されて、
口の中へと兎は収められていく。]
と、やあ、どうも。
[やって来たヴィンセントにひらり、手を振る。
黒猫も、挨拶するように一声上げて、ゆらりと尾を振った。
それから、空中ブランコに、という言葉に苦笑して]
……ほんとに、好きなんだなあ……。
[天幕へと向かう背に、小さく呟いて]
……仲がいい、って言うのかなあ?
まあ、俺は別に嫌っていないけど、こちらは思う所もあるようで。
[ヘンリエッタの言葉にくすくすと笑いながら言って、それから、天幕の方を見やる]
さて、どうしますか。ここまで来て、帰るのもなんだし……ね。
[誰に言うともなしに呟けば、黒猫がどうしよう、といわんばかりに*一声鳴いた*]
あら、同い年なのね?
[嬉しそうに笑う女。単純な喜びか。憧憬か。
それとも隠しこまれた嫉妬だろうか]
――そうね。
おんなじサーカスだったら、つまらないものねえ。
[少女の考えていることなどわかるはずもなくて。
きっと同じでは退屈なのであろうと考えそう返す。
そうしているうちに、娘は店のカウンターに乗りあがり…]
(ふわり、ころころ)
[ニーナの頭の上に、どこから現れたか白いハンカチと、
飴玉が二つぶ、振ってきて]
[青年の回答に、
わかったような、
わからないような、
そんな様子で首を傾げ。
男の去って行った方向へと視線が移る。]
[女性の言葉に、笑みだけを浮かべて曖昧に返す。
少しだけ嘘を吐いている気がして、胸が痛んだ。
同い年だ、と笑う彼女の心中は判らずに、ふわと笑って]
そうですね。ただ、私は人より──…
…──わ。
[何かを言いかけて、ふと、振ってきたハンカチと飴玉に、
驚きにきょとんと瞬いて、上を見上げる。
白で覆われた視界を少しだけずらせば、
上から覗き込む少女の影が、見えて]
…すごい。マジックみたい!
[飴玉を握り締めて、くすくすと笑う。]
――と、
あれ、アーヴァインさ――?
[声を掛けようとするが、自警団長はそれにすら気付かぬ様子でふらふらと去って行く。まるで何かに憑かれたかのよう。]
・・・如何したんだろう。
[くすくすと笑うニーナの笑顔に、娘もふわりと笑って。
彼女の口が、動いたけれど、うっすらとした影にしか見えないニーナには、見えなかったのだろう。その口は、こんなふうに動いていた]
*(よろしくね、ニーナ)*
ありがと。えと、…シャロちゃん。
[ふわりと雰囲気を纏う相手にお礼を述べた後、
少しだけ言い澱んで──少しだけ考えて、そう呼んだ。
さん付けでは、あまりにも余所余所しい気がするし
…折角同い年ならば、その方が、自分も嬉しい。]
よろしくね?
[少女の告げる言葉が、見えるはずも聞えるはずも無かったけれど、
知ってか知らずか、紡ぐ言葉は少女へと*向けて*]
[その夜のショーは、熱気と共に開演し、熱狂と共に幕を閉じた。幾人かの住人は、常に無い様子で町を歩くアーヴァインの姿を訝しく思ったかもしれないが、サーカスから流れる音楽に紛れて、全ては忘れ去られた……]
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
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