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きみは自らの正体を知った。さあ、村人なら敵である人狼を退治しよう。人狼なら……狡猾に振る舞って人間たちを確実に仕留めていくのだ。
どうやらこの中には、村人が1名、人狼が2名、狩人が1名、共有者が1名、妖狐が1名、聖痕者が2名、狂信者が1名、共鳴者が2名いるようだ。
おお、どうやら全員、揃ったようじゃな。 皆に大事な話がある。
先日から噂になっておるので、皆も聞いておるやも知れんが……この地に『人狼』と呼ばれる脅威が潜んでいるらしい。
噂の真偽の程は定かではない。 何事もないとは思うが、皆、念のため気をつけてな。
ようこそ、我らが『遊戯場』へ。
私は、今回の『遊戯』の進行を任されし者。
仮に、ギュンター、と名乗っておこう。
さて、君たちをここへ『招待』した理由だが……既に、察している者もいるかと思うが。
君たちは今回の『遊戯』に参加する『権利』を得た。
己が力、存在、それを存分に発揮し、示す絶好の『機会』をな。
『Schwarzes・Meteor』が君たちに望むのは、その力の全てを『魅せる』事。
……全て出し切り、最後まで立ち続けた者には、それに見合った栄誉を約束しよう。
勿論、それ以外には……。
[楽しげな口調で、声は話を進める。
要約したなら、それは、互いに戦い合え、と。
端的な内容。
ここから出るには、勝ち残る以外に術はなく。
敗者に未来はない、と。
それを一方的に告げると、声は消えた]
[そして、声が消えるのと前後するように、広間の端末には新たな項目が付け加えられた。
『遊戯規定』と記されたそれには、先の男の話の要約に加え。
敗者が地下の空間に一時隔離される事──つまり、すぐには殺されない、という事と、地下の見取り図が記載されていた]
地下1F
┏━━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━━━━━┓
┃a ┃ ┃c┃d┃e┃f┃g┃ ┃
┣━━┛ ┗━┻━┻━┻━┻━┛ ┃
┃ m ┃
┃ ┏━┳━┳━┳━┳━┓ ┃
┃ b ┃h┃i┃j┃k┃l┃ ┃
┗━━━━┻━┻━┻━┻━┻━┻━━━━━┛
a:−
b:簡易メディカルシステム
c〜l:隔離室
m:モニタールーム
[すやすや。]
…………Zzz
[二階:個室M]
[昨晩ぶりじっとに案内してもらったお部屋。
立ち去るぶりじっとには、おともだちの手をばいばいと振って。]
[その後は案内されたお部屋を探検。
……お部屋の惨状は、言うまでもない。
今、その惨状にも朝日がさして。
……聞こえてくるのは、ぎゅんたーと名乗る声。]
[ぱちくり。]
…………?
[『遊戯』『参加者』聞き慣れない言葉にきょとんと けれども、いくつかのフレーズはキーワードになり。]
…………。
[新し記憶。白衣の人。顔写真。言葉。名前。
あぁ……そうだ……思い出せた。
……硝子玉のように虚ろだった翠は意志を帯び。]
[少女は昨晩着たままシャワーでも浴びたのか?
まだ、軽く湿って張り付く、白い検査着姿を起こす。]
[同じく湿っている、おともだちを抱き上げて、
少女はある人物を探し出すため、部屋を後にする。
……ある人物……それは少女の大切な人に定められた人。
少女はその大切な人の側にいなければいけない。]
―中央部・廃墟群―
[一体、いつからそこにいたのか。少なくとも、夜明けよりは前なのだろうが。
両足を剥き出しの鉄骨に引っ掛け、両腕は支えるように頭の後ろで組んだ姿勢で、逆さまにぶら下がりつつ。
朝陽と共にもたらされた話を、聞いていた]
はっ……『予測』通り、って訳か……上等。
[吐き捨てるように呟かれる言葉。
込められるのは、微かな憤りと――どこか、楽しげな響き]
ま、ヤツら前々から、俺の力は欲しがってたらしいからな……これ幸いと、モルモット化……ってか?
……冗談じゃねぇ。
[ゆっくりと、目を開ける。
蒼が映すのは、逆さまの世界。
閉ざされた『遊戯場』]
誰が、思惑通りに踊ってやるかってんだ……!
『遊戯』だかなんだか知らねぇが……俺は、絶対、帰らなきゃならねぇんだからな。
[低い呟きと共に身体を軽く揺らし、反動を利用して鉄筋の上に起き上がる。
反転する、世界]
それが、約束……だしな。チビどもとの。
……約束は、破らない。
それが俺たちの、『誓いの印』。
[確かめるように呟きつつ、右手の糸をそ、と撫でる]
……果たせなかった、兄貴の分も。
俺が、必ず。
[零れ落ちるのは、静かな、静かな*決意の言葉*]
[ばちっ!
そんな音が聞こえると錯覚する程突然に、目が見開かれた。
聞こえてくる、ギュンターと名乗る男の声。
布団の中で丸くなったまま、その声が終わるまでじっと聞く。]
[程なくして声が終わると、ばさりと布団の中から起き上がる。]
あーぁ、ボク、痛いのイヤなんですよぉ?
ご主人様?
[声のトーンは明るい。
くすくす笑いながら、バスルームへと向かった。]
[熱いシャワーが骨ばった体を滑り落ちる。
もうもうと湯気が立つ中、白磁のような肌が薄く桃色に染まる――ただ一箇所を除いて。
左の肩の付け根、背中寄り。
そこに存在するのは――焼鏝の痕のような、青い模様。
その形は、何度も上から削り取ろうと苦労した結果もはやただの痣のように汚く、爛れた火傷のように痛々しく。]
ふぅ。
[きゅ、とコックを捻り、シャワーを止めると大きなタオルを被って部屋へと出た。
そのまま冷蔵庫を開けて、食材をキッチンへと出していく。]
[霜降りの、分厚い肉に荒挽いた胡椒を振りかけて焼いていく。
表面が少し焦げる程度焼けただけで皿に載せ、机へと運んで食べ始めた。]
ねぇご主人様、「栄誉」だってぇ。
ボク、そんなの要らないなぁ。
ご主人様は要るぅ?
[虚空を見ながら、言葉を紡ぐ。]
あははは。
でも、ここにずーっといるのは、詰まらない、ですよねぇ。
[くすくす楽しそうに笑いながら、食事を終えるとお皿を洗う。
ドロワーズとベビードールの上から洗って干した黒いワンピースを身につけ、いつものようにエプロンに腕を通して黒銃を背中にさす。]
さてっと、体は毎日動かさないとねぇ。
[窓をばたりと開け、昨日と同じように窓の淵を蹴って外へと*飛び出した。*]
[目覚めは普段より早く、陽の昇りと共に。
ベッドの端に腰掛け、鉄色の眸は虚空を見つめる。
響き渡る声は、聞いているのか、いないのか。
途絶えると同時に、立ち上がった。]
[寝巻き代わりにしていた和装は、幾らか乱れていた。
緩んだ襟元からは、髪が要り込んでいる。
両の手を首の後ろに持って行き、ゆっくりと左右に広げるように動かした。持ち上げられた髪がばらりと広がり、薄花桜色の上に収まる。その間に、目を伏せて、ゆるゆると首を振った。
帯を解き、合わせの部分を軽く動かすだけで、布はするりと肌を滑り落ちる。
露になる、
胸から腹にかけて、斜めに走る傷跡。
薄くなっているとは言え、目立たないはずはなく。
それは、到底、ブリジット=エメスには、似つかわしくない。]
[見慣れたそれに、感慨などなく。
下着を身につけ、タイツを履いて、ブラウスを羽織り、制服に袖を通す。
スカートのホックを止め、後はセーターを着てリボンを結ぶだけというところで、漸く、何処を見ているか曖昧だった視線を動かした。
卓上に置かれた、小刀へと。
手に取り、鞘に包まれた刀身を口許に。
何事かを囁くように、朱唇が、微か、動いた。
下緒が揺れる。]
[上着やスカートを直してから、
腰にベルトを、ベルトに小刀を。
ゆったりとセーターに隠して、赤いリボンを手馴れた様子で、結ぶ。]
……さて。
腹が減っては戦は出来ぬ、かな。
[諧謔の如き物言いは、今となっては言葉通り。
髪を編むのは後回しにして、*キッチンへと向かった。*]
―昨夜―
[先日名乗り損ねた少女と、新たに現れた女性にこれまでと同じように自己紹介。
少女の方は気もそぞろで返答を貰えたか定かではないが。
女性の方の名を聞くと、ほんの少しだけ目を細める。
以前、調査依頼を受けた時に挙がった名前がこの名ではなかったか。
尤も、その時は大した成果も得られず、深追いも危険と言うことで打ち切りになったのであるが]
…追加調査が出来そう、かな?
[それは極小さな呟き。
余程耳が良い者ならば、聞き取れたかもしれないが]
[Iの部屋に居ると言ったティルには、「おや、お隣ですね」なんて笑いながら簡単に会話して。
先日と同じように皆が個室に戻るのを確認してから自分も個室へと戻った]
―朝―
[やはり起きるのは早いことは早い。
いつもの目覚まし――ベッドからの落下も相変わらずで。
身支度を整えた後に、響く声を聞いた]
『遊戯』――。
[聞こえた言葉を反芻するように呟く。
しかし顔に浮かんでいたのは、驚愕の表情ではなく、楽しげな笑み]
――ようやく、始まる。
[ここに集められた理由を知っていたかのような口振り。
誰かが聞いていたら、確実に不信がられるであろう言葉。
しかしここは個室。
それを聞く者は誰も居ない]
[顔を覗かせ始めた太陽の光が窓から差し込んだ。
その光は逆光となり、オトフリートに影を落とす。
影の中で、真っ赤に彩られた唇の両端が楽しそうに*吊り上げられた*]
[ふい、と周りを見渡して、北へと歩いて行った。
進む先はいつだって気まぐれ。
暫くゆっくり歩いていたがそれは小走りになり、岩場が増えてくると岩から岩へとの跳躍へと変わった。
少し広い岩場を見つけるとそこに立ち、息を整えて鎌を振るう。
暫くの間、そうして体を動かすことに専念する。]
[何刻か経ち心地よい疲労が全身の筋肉に広がった頃、岩場にペタリと座り込んだ。
黒い鎌の刃を抱くように持ち、エプロンのポケットから布を出すと、きゅきゅ、と拭きだした。]
あ、そうだ。
ギュンターって人は何処に居るのかなぁ。
ボク聞きたい事、有るんだよねぇ。
[ぽつりと呟きながら、刃を磨いてはじっと見て、を繰り返す。]
[気に入るまで刃を磨くと、日に透かすように持ち上げて満足げに笑み。
目を細めると、鎌を銃へと代えて腰後ろへとさしなおす。
再び跳躍を重ねて、中央部の方へと*戻って行った。*]
―朝・個室I―
[目を醒ましたのは鈍い振動を感じた時。
即座に寝台から滑り降りたが、後は特に何も無く]
隣、オトフリートさんだったよな。
[何が起きているのか気にならなくも無かったが。
暫くして聞こえてきた声に、それは隅へと追いやられた]
…来た。
『遊戯』に参加する『権利』ね。
[窓の外に視線を投げながら皮肉気に哂う]
今更そんなもの貰えても嬉しくないのだけれど。
あの頃ならともかく。
だけど「ありがとう」
機会をくれて。
後は…
[ポケットから携帯端末を取り出して確認する。
やはりそこに求めるものは無く]
対象も内容も分からないまま。
どうしたものかな。
[呟きながら他のボタンを*押していった*]
─自室─
[アーベルとティル、ブリジットから名前を聞き、自室へ
わたしはベッドに横たわり、考えを巡らす。
先ほど聞いた名前。ブリジット・エメスには聞き覚えはなかったが、ティル・エルフテンス、アーベル・シュトゥルムヴィントには心当たりがあった。
黒妖犬と銀翼の孤狼。裏の世界では少しは知られた名前だ。
力ある者を集め、戦わせる遊戯という名の趣味の悪いゲーム。
なるほど、実に……]
─中央部・廃墟群─
さあってぇ……と。
どうしたもんか。
[座っていた鉄骨の上にひょい、と立ち上がり、周囲を見回す。
広がる廃墟は、見知った風景に良く似て、違う]
取りあえず、確かめてぇ事があるんだが……ギュンターつったか、さっきの。
どこに行きゃ、出くわすかねぇ。
─昼・個室G─
[あの後適当に腹ごしらえをして──色々酷い音がしていたのは言うまでも無い。
どうにか後片付けした後に2つの資料を取り出す]
目を通すのすっかり忘れてた。
面倒だけど、仕事だしね。
[椅子に座り、背凭れに寄りかかった。
手にした資料を一枚ずつ捲り、内容を確認していく。
一通り読み終えると、口元に薄く笑みが浮かんだ]
なるほど、ね。
”あの二人”が”そう”なのか。
向こうは私のことを知らないだろうからな…。
少し考える必要があるか。
[考えながら何とはなしに周囲に目をやり。
何かに目を留めるとメモ紙をペンを取り出し、何かを書き綴った]
……ま。
適当に歩いてりゃ、見つかるか。
[行き着いた結論は、大雑把だった。
ここのどこかにはいるのだから、と強引に結論をつけ。
改めて、右の手首を見る。
糸の束、それをほんの少しずらすと、現れるのは鮮やかな朱色の花の紋様。
リーダーとしての勤めを引き継いだ時に刻み込んだ、『誓いの印』。
それをしばし見つめてから、また、糸の下へと隠して。
ビルの上から下へ、一気に飛び下りる]
[そうしていると聞こえてきたのはギュンターと名乗る男の声。
彼が語るのはこのゲームの概要。
生き残りたければ戦え。戦って全力を示せ。さもなくば未来はない。
それだけを告げて、通信を切ったギュンターの言葉を目を閉じて反芻していたが]
…………
あっ。
[先を見ると、屋敷より少しばかり北の方に、人影を見つけた。
更に目を細めて見ると、どうも見たことのない人物に見える。]
ねぇねぇ!
[たた、と走りながら手を振った。
朝の通信の声の元は、気がつくだろうか?]
[小走りに駆け寄る。
ヒゲの彼は、何か挨拶でもしただろうか?]
ねぇ、聞きたい事があるんだぁ。
あのねあのね…。
[す、と一瞬目が細まり]
武器の都合上、「遊戯」って言われてもボク、相手を殺しちゃうかもしれないんだけど…問題、無いかなぁ?
[嬉しそうに、いつもの笑顔で問う。]
[彼の答えがYESでもNOでも。
彼女は満足げな顔をして、その場を立ち去る。
軽い足取りでぴょいっと跳躍して、屋敷の方へと。]
あはははははは!
[大声で笑いながら、スカートを揺らした。]
[目を開く。どうやら少し眠ってしまっていたようだ。
軽く頭を振ると、私は緩慢に体を起こす。
部屋に備え付けられていたキッチンで簡単な食事を作る。
それを手早く摂ると、流しに食器を放り込んで部屋を出て行く。
取り敢えずは、モニタールームへ。]
(……あれ? 私って料理なんか作れたっけ?)
[表層意識に僅かに浮かんだ疑問。しかし、それは泡沫のようにすぐに消える。]
[廃墟群をしばし、歩く。
ここにはクリーチャーは離されていないのか、周囲に動くものの気配はほとんどない。
それだけに、人の気配があれば感じ取りやすく。
昨日までに接していない気配となれば、自ずと相手は限られるだろう。
取りあえず、そちらへ、と思った所に感じた、別の気配]
……ん。
ちょい、待つか。
[呟いて、進行役と名乗った男への先客の気配が離れるのを、しばし、待つ]
[そのまま西の方へとひょい、ひょい、と軽い足取りで走る。
黒い銃を鎌へと変えて地面に刺し、端に足をかけるとそれはゴムのようにしなり、体が前に弾かれ高く飛ぶ。
飛ぶ直前にしっかり鎌は手に戻しつつ、宙を楽しげに舞う。]
あはははははは。
―朝・個室(J)―
[突如響く放送。
刃の手入れの為に落としていた視線を上げて意識を向ける。
告げられる内容に、空を見つめたままの翠をゆるりと瞬いた。]
…嗚呼、そういう事だったんですか。
[漸く納得がいったかの様な響きを含んで、ぽつりと言葉が零れた。
横に転がる携帯端末のストラップに、指を引っ掛けて拾い上げると
薄らと笑みを浮かべながら、仄かに光る液晶へ視線を向ける。]
外に連絡も取れないから、どうしようかと思いましたけど――いらぬ心配だったみたいですね?
[誰に問うているのか――
何処か楽しげにくつりと喉を鳴らし、微かに首を傾ぐ。
頬へ微かに掛かる金が、薄く陰を落として、揺れた。]
[時間としては、さして長くもなかったろうが。
気配が離れたのを確かめてから、改めてそちらへ向かう]
あんたが、管理人、か?
[そこにいた男に、短く問う。
鷹揚な肯定──どこか疲れていたように見えたのは気のせいか否か、そんな事はどうでもいいのだが]
……一つ、確かめときたい。
『銀糸の魔狼』ヴォルフ=シュトゥルムヴィントが『参加』した『遊戯』を仕切ってたのも、あんたか?
[投げかけた問いは、やや、唐突と言えるもの。
男はやや、怪訝そうな表情を垣間見せるものの、否定はせず。
答えは、それで十分]
……わかった。
それだけ聞けば、十分だ。
[何かを書き終わるとそれを懐へと仕舞い。
部屋を出て階下に向かう。
一階に降り、何とはなしに視線を巡らす。
ふと目に入るのはメディカルスペースの扉。
先日ここで治療された右手は既に包帯が無くなっていた]
[メディカルスペースを一瞥すると、足を向けたのは広間。
中へ入ると真っ先に端末へと向かう。
普段の姿から考えれば端末を操作するのも躓きそうであるが、特に問題なく操作していく]
…負ければ私達も例外なく、なのかな。
御免蒙りたいところではあるけど。
[提示された概要に目を通し、小さく息を吐く。
尤も、そうならないためには勝ち残れば良いだけなのであるが]
まぁ、その時はその時、か。
[浮かんだ疑問はすぐにどこかへと消えた]
…貴方の、望む侭に。
[口許に弧を描いて。何処か誓いにも似た言葉を紡ぐ。
――誰の耳に届かずに消えた其れは、何処までも*柔らかに*]
─モニタール−ム─
[カチャカチャとキーボードを叩き、流れていく文字に目を通す。
その顔は無表情。ただその蒼眼にモニターの明かりが映りこむのみ。
そうして、十数分ほど黙々と作業をこなした後、スッと席を立つ。]
…………。
[そうして、部屋を出て行く……前にちらりと部屋の片隅、一見何もないように見える壁面を見やると、今度こそ部屋を後にする。]
─現在・広間─
[端末を見終わるとやることもなく。
誰も居ないのを良いことにだらしなくソファーに寝転がってたりする]
…うーんうーん……ひっ、す、す、す、すみませ……!
[寝転がると言うよりは、しっかり寝ていて悪夢に魘されている]
─広間─
[広間へ入ってきてみると、何やらソファーに寝転がり何か情けない声を上げている人物が。
しばし、その醜態を見ていたが]
……もしもし。大丈夫ですか。
[そう言って、がっくんがっくんとオトフリートの肩を揺すってみる。]
そーですよぉ、久しぶりにねっ。
あははは。
[宙でくるりと回ると、軽く着地する。
ふわり、後からスカート、その後にエプロンがついてくる。]
[一方的に話を切り上げ、その場を離れる姿を、男が何を思って見送ったかは、他者には知る由もなく。
当事者にとっては、どうでもいいレベルの話]
さて……ここまで状況が揃うと、下手は打てねーな。
っても、どう動いたもんか……。
[他者に囚われぬ、単独であるが故の強みと弱み。
勝ち残るには、単純に敵を減らせばいいだけ……では、あるが]
……あー……ややっこし。
[思わず、ため息混じりに呟いたとき、ふと、視界を掠めたもの]
……何やってんだ、あいつ。
[飛びあがるユーディットの様子を視界の隅に止め。
ふと、興味を興味を引かれたように、そちらへと]
[悪夢にうんうん唸っていたが、何やら物凄いふり幅で肩を揺すられると]
ごごごごめんなさいっ!!
[何か謝りながら目を覚ました]
……ぁれ?
[目を覚ますと恐怖の対象はそこには居らず。
一人の女性が居るのみ]
……はっ。
すすすすみませんっ、お見苦しいところを!
[しばらくきょとんとしていたが、ぱっとソファーから立ち上がり、深く頭を下げて謝罪した]
[ふわり、くるり。
上機嫌に笑いながら、くるくると回る姿は踊るよう。
が、ふと人の気配?それとも物音?を感じたような気がして、ぴたりと止まった。]
…きのせい?
[首を傾けつつ、再びくるりと回る。]
[謝りながら目を覚ましたオトフリートにこちらもきょとんとしていたが、何やらぱっと立ち上がり頭下げて謝られると]
……え、ええと。別にそんな謝られなくても。
その、困るというかなんというか。
[そう言って、私ちょっと狼狽。]
[飛んだ姿が下りた、と思われた場所まで行くと、ちょうどくるり、くるりと白と黒が舞う所で。
一度、ぴたり、と止まって首を傾げる様子に、気づいたか、と呟く]
よ。何か、ご機嫌だな。
[隠れていても意味はない、と。
ひら、と手を振りつつ、いつもと変わらぬ口調で声をかける]
やぁ!えーっと…「銀翼の孤狼」?
うん、ボク機嫌いいんだ、とっても楽しい事が起きそうな予感がするからねぇ。
ボクを殺しに、来たのー?
でも、キミとはあんまりやりたくないらしいよ。
[ひら、と手を振られてこちらも振り返す。
満面の笑み。]
す、すみません…。
このようなところで寝てしまった挙句悪夢に魘されている姿をお見せしてしまいましたもので…。
私としたことが執事にあるまじき行為を…。
[普段からだろう、と突っ込める人物はここには居なかった]
ええと、ナターリエ様、でしたよね。
驚かせてしまい申し訳ありませんでした。
[自嘲を含んだ苦笑を浮かべる]
[呼びかけに、ふと浮かべる笑みは、それに合わせたもの。
即ち、孤狼のそれ]
楽しい事って……奴らの『遊戯』の事か?
……まあ、楽しんじまうのも、一つの手かもしれねぇけど。
[くく、と笑って。
殺しに、という問いにひらひら、と手を振る]
まーさか。
本気で殺る気なら、回ってるとこに仕掛けてるってーの。
[さらり、物騒な物言いで返しつつ。問いに続いた、どこか、人事めいた物言いに蒼をきょとり、とさせる]
『らしい』って、なんだそれ?
―中央部・廃墟―
藪を突付いて蛇が出ても困る。
だからといって動かずに居ても問題があるし。
[建物が見える位置。逆に言えば探せばすぐに見つかるだろう廃墟の一角で思案に暮れていた]
銀翼やエン…ユーディットにはどうせ手の内バレてる。
そうじゃなくても知ってる奴らもいるだろう。
[軽く左手を振れば甲から伸びる銀光。
ツッと右手でその上をなぞり再び腕を振る。
指無手袋の模様に隠れるようにそれは消えた]
本当にどうしたものかな。
敵の敵は味方…にはこの場合ならないだろうし。
[瓦礫の向こうに見える建物を伺いながら薄く笑う]
[ひょこり、と顔を覗かせて、きょろり。]
……人、少ないですねえ。
[ゆったりとした足取りで、中に入る。
謝っている姿はちらりと見えたけれど、またか、くらいにしか思っていない。]
[謝られて、困ったなぁという顔をしながら]
ああ、気にしないでください。
[そう言って、手で制する。そして、ふと浮かんだ疑問。]
……ええと、私名乗りましたっけ?
[アーベルの笑いには、こちらもにっこりと笑い。
殺す気が無いと知り、片手に無造作にぷらりと下げていた鎌を、ふらりと揺らして黒銃に戻し、背中にさしつつ、問いには首を傾けて]
えー?
ボクの行動は、ぜぇんぶご主人様の為だからぁ。
ご主人様がねぇ、キミとはやりあいたくないなぁって。
[あは、と笑いながら答える。]
こんばんは、ブリジット様。
皆様どこかへお出掛けのようですね。
まだお休みになっている方もいらっしゃるかもしれませんが。
[開いた扉に視線を移すと、制服姿の少女。
いつも通りの笑みを浮かべて言葉を紡ぐ]
尤も、あの放送を聞いてしまうと顔を会わせ辛いところがあるかもしれませんけれど。
[その言葉すらも笑みを浮かべたまま]
[ブリジットについていく李雪を見送れば、青少年は毛布を元の大きさに戻し、新たな人物がいればそれなりの挨拶をするまで。
そして、青少年はいろいろな片づけをして部屋へと戻り、そして就寝し]
−朝に至る:L−
[先日は例外として、基本青少年の朝は早い。
日が昇る昇らないほどの時刻を境に起床し身支度を整える。
それこそ、冬であれば太陽の目覚めよりも早く活動をしている。
朝起きてしていることは日によって様々であったけれど、今日の場合はなんとなく朝食の鶏ささみ粥が炊き上がった、そんなくらいで件の放送が流れたものだから機嫌が悪いったらありゃしない。
誰かが朝食を求めてくれば用意はしてやっただろうけれど]
広間にじっとしているだけ、っていうのも、飽きますもんね。
[はあ、と溜息。
続いた言葉には、椅子に腰を下ろそうとした動きを止めた。]
放送?
[ぱちくり。瞬き。]
[制されるとそれ以上謝ることはなく。
続く言葉には苦笑を浮かべて]
昨日、貴女がいらっしゃった時に私もここに居たのですが…。
隅に居たので印象が薄かったかもしれませんね。
これだから皆にもシャッテン(影)と呼ばれてしまうのでしょうか…。
[ぽり、と苦笑を浮かべたまま頬を掻いて]
私はオトフリート=ゲルルと申します。
以後お見知りおきを。
…それにしても籠の鳥と聞いていた先読みの神子様がこのような場所へいらっしゃるとは。
少々意外でした。
[自己紹介の後に続けた言葉は、何かを探るような雰囲気を纏わせている]
[聞こえてきた声に振り向くと、昨日広間で会った少女がいた。
名前は確か……ブリジット。]
こんばんわ。
そうですね。私も先ほどここへ来たんですが、その時もこの方しか居ませんでしたので。
[しまわれる鎌には、一瞬だけ視線を向けるも、それきりで。
返された説明に右手でがじ、と頭を掻いた]
なんっか、良くわからんが……。
ようするに、俺とやり合う事にはあんまり意味がないっつー事ね。
[ご主人様、が何なのか、何故自分とやり合いたくないと思うのか。
それが気にならない、とは言わないが。
そこを問うても、返るのは笑みだけのように思えたので、そこは追求せず]
……ま、それならそれで。
警戒する相手が減るってのは、わるかないしな。
[気疲れしなくてすむし、と。
冗談めかして言いつつ、肩を竦め]
何もすることがありませんからね。
[ブリジットの言葉に一つ頷いて。
目を瞬かせる様子には「おや」と呟く]
今朝の放送はお聞きになりませんでしたか?
──ここに集められた者達は『遊戯』に参加する『権利』を得た──と言う事を。
[流された放送の一部を繰り返し口にし、広間にある端末へと歩み寄る。
手早く操作し、今朝追加されたらしい『遊戯規定』の項目を立ち上げ、ブリジットへと示した]
−かくして現在:L−
[今もなお、青少年は寝床の上で不機嫌であった。
理由はもちろん放送の声のせい]
…人をおもちゃ扱いしやがって、くそ。
[しかめた眉、不機嫌そうな瞳が天を見上げる。
ころり。ゆるり転がって。片口で猫がにゃあとなく]
…絶対潰してやる。こんな組織。
[ぐっと握ったこぶし、天井へと突き上げて、それから力を失ったそれは敷布の上にぱたって落ちた]
えっ、そうでしたっけ。それは、えっと。すみません。
[そう言ってぺこり。]
オトフリートさんですか。よろしくお願いします。
[だが、続いて出てきた先読みの神子という言葉にぴくりと反応すると]
それは……ええと。ちょっとした事情がありまして。
……。
思いっ切り、寝ていました。
[視線を逸らして、少し、気まずげに言う。]
ゆう、ぎ?
[拾った単語を繰り返すも、いまいち、ピンと来ない様子。
しかし、示される内容に、眉間に深い皺が刻まれた。]
……なに、それ。
戦え、とか、未来はない、とか。
――どういう。
[理解しているのに、したくない。
そういうように、オトフリートを見上げた。]
[肩を竦める姿に笑顔を返しつつ、目の前の蒼を覗き込みきながら]
でも、今朝の声聞く限りじゃ、順番に潰すしかないんだよねぇ?
ひとりも残しちゃいけないのなら、最後って事、なのかなぁ?
いやだなぁ。
[小さく呟いた。]
だって、そんなの――
……これ、って。
そういう集まりだったの?
[困惑のいろ。]
オトフリートさんも、
ナターリエさんも?
そういうこと、するの……?
[覗き込む瞳を見返しつつ、呟きにむぅ、と言いつつ腕を組んで]
……別に、律儀に奴らのいう事聞かなくてもいいと思うがね。
向こうの勝手にきっちり付き合う必要なんざ、ねぇんだし。
ま、どうにもやりあわにゃならんようなら、そんときゃそん時ってー事で。
今から考えてても、キリねぇしな。
[思考はどこまでも大雑把]
後はこれくらいか。
[言って右手首に複雑に編まれた紐を結んだ。
一見はただのアクセサリーのように見える]
通じるといいんだけれど。
あとは虎穴に入らずんば、だろうなっ。
[そこそこの高さから飛び降りる。膝を軽く曲げて衝撃を殺し、軽い足取りで建物に向かい走った]
いえ、良くある事なので。
[ナターリエに謝られると、「気にしないで下さい」と首を横に振り。
己の言葉に反応する様子を漏らすことなく見つめて]
事情、ですか。
あの堅固な籠から出ていらっしゃることは無いと思っておりましたが。
この『遊戯』の主催者により無理矢理連れて来られたか、籠の組織から送り込まれたか、それとも他の何かが関与しているのか。
まぁ、過程はどうあれ貴女はここへと姿を現した。
貴女も『遊戯』に参加する『権利』を手にしていると言うこと。
いずれ貴女の力をこの目で見ることが出来るかもしれませんね。
[それ以上追求するつもりは無いようだが、その瞳は観察するそれになっていて。
普段のオトフリートを知る者には僅かに違和感を覚えることだろうか]
[ブリジットの困惑の声に、私は僅かに目を伏せる。]
私は……死にたくはない。
殺したくはありませんが、私に危害が及ぶなら……
[言葉尻は非常に弱くなって聞き取れない程度。]
―個室H―
[昨夜食べた林檎の夢を見ながら、少女の夢は安らかだった。
しかし――]
――ゆう、ぎ?
[眠りを妨げたのはギュンターによって流された放送。
その内容をどれほど理解できていたのだろうか、
しきりに首を傾げながら浴衣から乾いた服に着替え、
誰かを探そうと階下へと向かった]
―→広間―
[困惑するようなブリジットに見上げられ、そちらに視線を向ける]
…ここにはそう言うことが出来る人間しか集められていないのですよ。
特異な能力を持ち、組織に目を付けられた者は例外なく──ここへ集められる。
[最後に問いかけられた言葉には肯定も否定もせず。
何かを知っているかのような言葉をブリジットに向ける]
[オトフリートの探る言葉にスッと目を細め]
事情はお話できません。するつもりもありませんが。
しかし、やけにお詳しいようですね。
私の組織のことにも。Schwarzes・Meteorにも。
[アーベルの言葉に、目をくるりと回して口に片手を当て、驚きの表情を作る。]
あ、そっか。
別に言われたとーりにする必要もないんだ。
やりたいよーに、やりたいことをすればいいんだ!
賢いねぇ。
[びし!と口に当てた手を前に突き出し、アーベルの鼻を指差して]
でも、ボクはキミを斬らないよっ。
今は、ね?
[首を傾けて一度あはは、と笑い、ふと天を仰いで呟く]
でもきっと何かしないとここから出られないんだよねぇ。
ここから出られないと、ずーっとここにいるのは、きっとつまらないよねぇ。
まぁ、そうでしょうね。
[ナターリエからの回答はあまり期待していなかったようで。
すんなりと諦める]
情報収集も私の仕事のうちなもので。
ある程度の知識は持ち合わせているつもりですよ。
[ふ、と薄く笑う。
その表情に先程までの情けなさは*感じられない*]
…だめだ。気が滅入る。
[は。と小さく息が零れたかと思えばバネの反動をそのままに飛び起きる。
その振動のせいか、ベッドの上で猫がちょっとだけ飛び上がった、文字通り]
…前向き、前向き。
よっし、頑張れ俺!!
[両の頬を両の手でパン、と叩くとようやく戻ってきたバンダナをきゅっと締めて、駆け寄ってきた猫を肩に乗せて廊下に出る]
−→廊下−
……それは。
わたしだって、消えたくはない、けれど。
[ナターリエの返答を聞いても、躊躇いは消えない。
彷徨った視線は、地面に落ちる。]
そういうことが出来る人間、って。
でも、わたしは、……………。
[口を噤んだ。
向けられた言葉を、最後まで否定はせずに。]
[広間にいた人々は、何だか難しい顔をしていただろうか?
放送の意味をよく理解していない彼女は]
――どうしたの?
[そもそも、放送とは自分宛のものではないと思っている節もある。
研究所という場所において、彼女はアナウンスで動く
立場ではなかったものだから]
―個室J―
…よ、っと。
[最後の白銀の一本をレザーケースに収める。
定位置である服の内袖へと仕舞うと、小さく溜息を零した。
…いつもなら面倒臭がってそれなりに済ましてしまうのだが、
今となっては、そういう訳にも行かないのだし。
寝台に転がった携帯端末を、軽い動作で拾い上げてポケットへとねじ込む。
外部からの連絡は無いのだろうけれど――
色々、必要なものも入ってるから、手放すわけにも行かない。
呆れにも似た笑みを小さく零して、
一つ伸びをすると、部屋を後にする。]
[――「彼女」の事は、裏社会においては殆ど知られていない。
「彼」に渡されたデータに記されていたのも、以下の程度のものだった。]
いや、賢いとかって問題違うから。
[驚いたような表情に、突っ込み一つ入れて]
……そもそも、俺は何かに従うつもりはねぇからな。
最初から、好きにやるつもりでいたぜ?
[さらり、と言って。
指差しながらの言葉に、にや、と笑って]
んじゃ、俺もそうさせてもらうわ。
今の内は、お前相手には、糸も孤狼もおこさねぇ。
[宣言の後。
呟かれた言葉に、軽く首を傾げる]
……こんだけ大規模な設備だからな。
恐らく、どっかに、制御するとこがあんだろ。
そこを抑えれば、出られるんじゃねーの?
■登録名:ブリギッテ=エメト(Brigitte=Emeth)
■年齢:不詳
■通り名:鎮魂(たましずめ)
■武装:刀
■スタイル:近接戦闘を主とする
■特殊能力:言霊
■その他情報:
本名不明。
任務毎のコードネームや、「隠れ蓑」の名前で呼ばれる。
現在の登録名も、単に表向きに使用している名を、『Schwarzes・Meteor』内で呼びやすい音に置き換えたに過ぎない。
なお、通り名とて、彼女自身を指すものではないという。
[玄関の扉を開き、建物の中へ。
確実に人が居るのはやはり広間だろうか]
ん?
[向かう途中、足音が聞こえた気がして意識をそちらに向けた]
あはははは。
そう、ですよねぇ。あは。
斬らないとね、斬らないと。
ボク、その為にここに居る、んでしょう?
[にたぁり、と口の端を上げて。
虚空へと話しかける。
暫くそう虚空を笑顔で見つめていたが、突然アーベルに視線を戻して]
そぉだねっ。
ボクも、好きにやるよぉ。
[頷いた。]
−廊下−
[前向き、とかいった割には青少年は渋い顔をきっとしていた。
そんな顔で、廊下に出ればちょうど同じタイミングで日碧が現れたことに相当驚いて]
ぉわ?!
[漫画みたいに驚いた。
肩の猫は、飼い主の声に驚いて軽く落ちそうになっていたけれど]
……。
……お前、隣の部屋だったんだ。
[何を喋ろう、とか少しだけ考えたら間があいて]
[ナターリエの様子には首を傾げて]
“ちからをみせる”って何なのかなぁ。
戦えば良いみたいな、そんな事言ってた?
[自分の理解した内容が正しいのか分からないけれど、
それなら戦えば良いのだろう。
すっと右手を上げると]
誰とでも良いのかな?
やる?
[かかった声にびくりと身体が震わせて、]
……イレーネ?
何でもない、よ。
[小さく首を振る。
けれど、ブリジットの態度は、その言葉を裏切っている。]
来たばかり、だけれど。
わたし、部屋、戻ります、ね?
[呟いたきり、黙り込んでしまったユーディットの様子にしばし、きょとり、としていたものの。
唐突に虚空へと話し始めた様子には、さすがにちょっと引いたかも知れない。
よくわからん、と心の奥の方で呟きつつも]
ま、俺らにできるのは、それっきゃねーだろ。
[頷きながら、こう返して]
さて、と。
いつまでも寒空で駄弁ってても仕方ねーし……。
俺は一応、あそこに戻るが。お前、どうするんだ?
[握った右手の親指で、肩越しに建物の方を示しつつ。
軽い口調で、問いかけ]
[首を振り、広間へと入っていった姿の後を追うように足を進めた。室内には数人の人影]
やあ、どうも?
[視線の先、右手を上げたイレーネに僅か目を細めた]
――――?
[何でもないと言った彼女の様子は、何処かぎこちなく見えた。
拳の形を作った右手を所在無く浮かせたまま]
戻っちゃうの?
――ばいばい、またね。
[ちょっぴり残念そうに]
あ、ボクも戻る戻るっ。
[た、とアーベルの横に立ち、歩き出す。]
…寝込みを襲うとかってアリ、なのかなぁ。
ストリートファイトみたいに、基本正々堂々、なの、かなぁ…。
あー、でも寝込みを襲うと…楽しくないよね、きっと。
[引かれた事なんて勿論気がつかずに笑顔で建物へと視線を向けつつ、ふと呟く。]
―廊下―
――わ、…
[大きく上がった声に意表を突かれたのか、
それとも相手が思いがけず同じタイミングで出てきた事に驚いたのか。
上がる声は起伏に乏しいものの、表情までは隠しきれずに
きょとり、と翠を一度瞬いた。]
…それは、こっちの台詞だよ。フェイ。
[隣だったんだ、とゆるりと首を傾いで。
先ほど僅かに見えた渋い表情と
少しだけ空いた間に、訝しげに僅かに眉を寄せた]
――どうかした?
何か、眉間にシワ寄ってたように見えたけど。
[そう言う青年の表情は、いつもと変わりないもので。]
[否定の無いブリジットの言葉を黙ったまま聞く。
追求の必要が無いと知っているからだ]
[広間に現れたイレーネには「こんばんは」と常に変わらぬ挨拶をして。
続けられた疑問には特に返答はしない]
おや、もうお戻りですか。
ああそうだ。
後程お部屋を訪ねさせて頂きますね。
ハンカチをお返ししていませんでしたから。
[部屋へ戻るというブリジットに後に訪ねることを予め告げる]
[建物へと向けて歩きつつ。
呟かれた言葉に、はあ、とため息一つ]
……いや、寝込みはいくらなんでもまずくね?
あの放送からするに、派手に立ち回る方がお好みっぽいし。
つまんねぇ理由で勝負ナシになっても、ややっこしいだけだと思うが。
[楽しい楽しくない、には、突っ込まないらしい]
あー…いや、何でも。
純粋に、驚いただけで。
[小さく肩を竦めながら、ずり落ちかけた藍苺をもう一度肩に乗せてやると、重力の作用で細くて長い尻尾がぷらんと揺れた]
…いや、放送が、よ。
…放送っつうのかよくわかんねえけど、とりあえず聞いただろ?
お前だって。
[同意して欲しいのか、して欲しくないのか、その辺の答えは自分の中だけに。
とりあえず、問いかけることから始まった]
…………。
[建物の内部は空調が効いているとはいえ
真冬に湿った検査着は寒くて…さすがにもう乾いてはいるようだが
少女は小さくくしゃみをする。]
…ック、あはは!
[じゃんけん、という単語に一瞬ぽかんとした後。
堪えきれずに噴き出して笑った]
ああ、そうだね。
それだって立派な戦いだ。
[他の人々の様子を窺いながらも、右手で軽く眦を擦った]
[きっと、イレーネの返答を聞いていたら、力も抜けていたのだろうけれど。
姿を現したティルと入れ違いに広間を出てしまったから、知ることはなかった。
オトフリートの告げた台詞も、耳にしていたかどうかは怪しい。]
派手に立ち回る、かぁ。
どこか、コロッセオとかあるのかな?
それとも、どこでも見られてる、のかなぁ。
勝負ナシになるのは、確かにっ!キミ、やっぱり賢いねぇ。
[あはははは、と心底楽しそうに笑いながら、そろそろ建物が近く見えてきただろうか?]
[部屋に戻るというブリジットを、そうですかとだけ言って見送った後、イレーネの言葉に僅かに目を細めるが、続いたじゃんけんという言葉にふぅと気を抜くと]
じゃんけんでよければお相手しますが。
ああ、ティルさんでしたっけ。こんばんわ。
[笑うティルにはこちらが呆気にとられて]
戦うって、勝ち負けを決めるんでしょ?
他にどうやって決めるの?
[サイコロとか、そういうものの存在も彼女は知らない]
[相手をする、と言うナターリエに向き直ればにこっと笑い]
やろ、やろっ。
せぇの、じゃーんけーん――。
[1、2:ぐー 3、4:ちょき 5、6:ぱー]
{2}
そんなモンはなかったと思うが。
とはいえ、ここ全体が、でっかい舞台……って言っても良さそうだしな。
[変化に富んだ地形、気候。
明らかに、様々な状況を『演出』する意図を感じるそれら]
今朝のあれだって、どこにいても聞こえたんだろうし。
向こうは全域、お見通し、ってとこじゃねーかな。
[そのわりに、個室に監視ナシなのは余裕なのかなんなのか]
や、だから、賢いって問題じゃないから。
[楽しげな笑いに、やっぱり突っ込みを入れた頃には、建物の前までついていたか]
驚きすぎだと思うんだけど。
そりゃ、隣だとは思ってなかったけどさ。
[相手が竦める様子に、小さく苦笑しながら。
その肩に居座る友人の尻尾が揺れる様子に、薄く笑むと
軽く一撫でしようかと、手を伸ばして]
――…ああ、アレか。
まぁ…うん、聞いたよ。
[投げられた問いに、翠をゆると瞬きながら肯定を返す。
呆れ混じりの吐息こそ零すものの、
そこには危機感も、緊張感の欠片も見当たらずに]
…もしかして、それで凹んでる?
[はしゃぐイレーネに笑みを浮かべると]
はいはい、じゃーん、けーん……
[1、2:ぐー 3、4:ちょき 5、6:ぱー]
{5}
勝ち負けはそこら中に転がっているよ。
早食いでも、駆け比べでも。
[ナターリエの言葉には軽く頷いて。
呆気にとられているイレーネに笑って答えて]
でもじゃんけんは確かに楽でスマートな方法だね。
あいこが続くと時間が掛かるかもしれないけれど。
[勝負の行方を面白そうに見ていた]
[イレーネのじゃんけん勝負は先程までの雰囲気を払拭する程和やかに思えて。
思わず柔らかい笑みが漏れる。
広間を出るブリジットを気にしつつも、しばしじゃんけんの様子を眺め見る]
随分と無垢な方がいらっしゃいますね。
[しかしこの少女も既に『遊戯』の参加者に数えられている。
果たしてこの和やかさはいつまで続くのか]
お見通し、かぁ。
ボクはいいけど、ご主人様の機嫌が悪くならないといいなぁ。そゆの好きくなさそーっ。
[言いながら、玄関の扉に手をかける。]
たっだいまー♪
[上機嫌に声をあげると、広間の方から人の話し声が聞こえる。
きょと、と一度アーベルを振り返りつつ、広間へと向かった]
―→広間へ―
[自分の振り下ろした手と、ナターリエの手の形を見比べて]
――負け、ちゃった。
[ちょっと残念な顔をして、自分のぐーを見詰める]
一度負けたらもう他の人とは戦えないの?
[ティルの方を見て。
暗に『あなたとは戦えないの?』と問いかける]
そこまで考えてる奴らじゃねーだろ。
[そも、人の感情など考える集団ではない、というのが、自身の印象。
その印象のままにそう返して。
広間から聞こえる賑やかな声に、す、と蒼を細めつつも、自分も広間へ足を向けた]
─ →広間─
ああ、まったく。
…悪趣味なことだよ。
[後半は小さな声で。注意していなければ聞こえない程度だろうか]
おや、おかえりなさい。
[和やかな雰囲気にあわせるように。
広間に入ってきたユーディットにも軽く返した]
[何かから逃れようとするように、階段を駆け上る。
鞄のポケットから覗く飾りが揺れて、音を立てるのが、煩い。それは「日常」の名残にも思えたけれど。
二階に到達して――そのまま部屋に向かおうとして。
先にいる人の気配には、気づいていなかった。]
早食い、駆け比べ。
果物なら、勝てる――かも?
走るのは――飛んじゃ駄目?
[飛んでもきっと、アーベルには負けちゃうかなとか。
ユーディットは結構早かったなとか、そんな事を考えたろう]
おや、残念だったね。
一本勝負ならここで終わりだと思うけれど。
[イレーネに右手を出して]
まだできそうならいいんじゃないかな?
諦めなくても。
[やるかい?というようにかるく振った]
まさか廊下に出ていきなり人に会うなんて思ってねえもん。
[伸ばされる指先を視線で追えば、それは猫のほうに伸びて、まぁ猫のなんと気持ちよさそうなことか]
…やっぱ、俺だけじゃないんだ。
[小さく零れた声は少しだけ気落ちしたようかもしれない。
だからこそ、理由を当てられればなんともいえないような顔して頬を膨らませ]
う、うるさいな。
凹んじゃ悪いのかよ。
[己の言葉に返答したティルの後半の言葉は聞こえていなかっただろうか。
仮に聞こえていたとしても、表情は特に変わらなかっただろう]
ユーディット様、アーベル様、お帰りなさいませ。
[広間に現れた姿を見てお辞儀をする]
その辺は相手次第かな?
僕なんかは飛べないから、ハンデが欲しいところだ。
[チラリと後から入ってきたアーベルを見ながら。
あくまでも軽く返していた]
できる、できるっ。
今度は負けない、よ?
[翼をはたはたと振り、再度右手を上げる]
じゃーん、けーん――。
[1、2:ぐー 3、4:ちょき 5、6:ぱー]
{3}
─広間─
[広間が賑やかなのは何故なのか。
入ってみたなら、妙に納得したかも知れない。
オトフリートの挨拶には、よ、と言いつつ手をひらりと振り。
ティルの視線には一瞬、微かな笑みで返すに止めた]
あは。
何してるのぉ?
[ティルやオトフリートに笑顔を向けながら、ふと、ナターリエに視線を移し]
あ、初めましてぇ、だよねぇ?
ユーディット・クリューガー、です。
[にっこりと笑い、両手でスカートをちょいと持って腰を落とし、お辞儀をする。]
[先程まで耳をすます為じっとしていた少女が、
俄かにキョロキョロと周囲を見渡して。]
…………。
[目に写るのは階段。]
[でも、今の声はこっちじゃない。]
…………。
[少女は階段に背を向け、
廊下の十字路になっている部分へ足を向ける。]
僕だって、思ってないよ。
[気持ち良さそうな猫の顎下を指先で擽って。
一度ゆるりと身体を撫でてやると、満足そうにゆるりと手を離し]
…少なくとも、この建物全体には聞えてたんじゃないかな。
外はどうか、知らないけどさ。
[内容的にも、多分ね。と、軽く首を傾げながら、ぽつりと呟いて。
気落ちしたような相手の声色に気付くと、小さく苦笑を零す。]
別に。…凹んでも良いんじゃない?
むしろそういうのに凹んでる方が、フェイらしいし。
――ただ、ずっと凹んでたって、なるようにしかならないんだからさ。
[もっと気楽にしてたら? と小さく笑って。]
イレーネ様がじゃんけんをすると仰いまして。
ナターリエ様とティル様がお相手になっていたところですよ。
[訊ねてくるユーディットに簡単に状況を説明して。
イレーネとティルの勝負を見やる]
あらら、またイレーネ様が負けてしまいましたね。
[少女は一人、今まで感情の乏しかった面に
やわらかい笑みを浮かべ…それを見るのはおともだちだけだったが
半ば駆け出すように廊下の十字路に出
気がせくように、くるり。周囲を見渡して。]
[ユリアン以外にもう一人、人物がいるのなんて
まったく気にしない、まったく躊躇わない。
まっすぐ…駆け出すようにして、一気にユリアンの元へ。]
…………!
[白い頬は淡い桃色に。少女は先程よりも強い喜色を浮かべ
ユリアンにタックルをする。]
あ、こんばんわ。
[新たに広間へやってきた2人に挨拶。さらにユーディットから自己紹介をされると]
あ、どうも。私はナターリエ・ヘルゼーエンと申します。
えっと、よろしく。
――、…?
[友人を呼ぶ聞き慣れない声に、一度不思議そうに瞬いて。
声のしたの方へと視線を向ける。]
…って、あれ。
[ふと、数日前にその友人が「小人」と称した
少女の姿に気がついて、再び翠を緩く瞬いた。
…いつの間に、彼らは仲良くなっていたのかと。]
…そりゃ、そうだろうけど。
[少しだけ唇尖らせ、猫から指先はなしたご近所さんを見やる。
今朝の全館放送?に対するコメントに、ふぅん、と小さく相槌だけひとつ]
…凹んでるほうがって、何だよそれ。
なんか俺が一年中凹んでるみてえだろーっ。
[ぷ、と小さく噴出して苦笑、それから笑い声。
聞こえる自分を呼ぶ声、一瞬きょとんとして。
声のしたほうへ視線を向ける]
[泣きそうなイレーネと、焦ったようなティルの様子に、思わず零れたのは、笑み。
緊張は、微か、緩んだか。
それでも、緊張感が失われていないのは、傍目にもわかるだろうが]
……なーに、やってんだ、一体。
あは、よろしく。
[ナターリエの顔を見て、にっこりと笑う。
その笑顔は、昨日までよりも少しだけ、妖しさを含んでいるだろうか?
その後はティルとイレーネに視線を移し、にこにこと笑顔で見守る。
オトフリートの横に並べば、その図は普通に女中と執事のように見えるだろうか?]
お。
[飛び込んでくる小さな影、お友達は走るテンポに合わせて足をばたばた揺らしていたが彼女ごと抱きとめる]
よく見つけたなー?
[いいこいいこ。
頭をぐりぐりと撫でる様はフラットの傍で近くの子供と遊んでいる姿ときっと変わらない]
[負けっぱなしだなんてそんな。
けれど、二度も負けると次の相手を求める元気もなく]
負けたら“みらい”がないって。
みらい、取られちゃう――?
[みらい、が何か分かっていないようだが]
…………♪
[ユリアンに抱きとめられて、頭を撫でてもらえれば
喜色満面で、少女が猫ならばきっと喉を鳴らしただろう。]
[ユリアンと一緒にもう一人人がいるとか、本当まったく気づかない]
[戻ってきたアーベルに気付けば]
アーベル、アーベル――負けちゃった。
“みらい”が取られちゃう。
[お守りをなくしたから?
とアーベルの元に駆け寄ると、涙目で]
いやその、勝負を。
[こうした時にどうすればいいのか。
したことも自分がされたことも記憶にないために困惑したままアーベルに反射的に答えて]
今はそんなことにはならないはずだよ。
それにそれはあの声が言っただけのこと。
放さずに、諦めずにいればいい。
そうすれば繋がることもある。
[困惑の中でイレーネに返した答えは。
ある意味本心そのままだった]
[あくまで、予想だけどね。と
相槌を打つ相手に、僅かに肩を竦めながら言葉を返して。]
――あれ?一年中凹んでるみたい、って…違ったっけ?
[相手の言葉に冗談を交えて、くつりと口端を上げる。
しかし耐え切れなくなったのか、つられた様に小さく噴出した。
口許に手を当てて、くつくつと笑いを抑えながら]
感情がハッキリしてるほうが、フェイらしいって事だよ。
…ところで、その子ってさ。あの時寝てた子だよね?
[随分懐いてるね。と、友人に抱きつく少女を見やりながら
僅かに驚愕の色を滲ませて]
え?
[駆け寄って来たイレーネに、涙目で訴えかけられれば、思わずきょとり、蒼を瞬き]
負けた……とられる、って。
[なんでじゃんけんで、と思いつつ。
ティルが彼女に向ける言葉に、ああ、と呟いて]
大丈夫だよ、イレーネ。
[諭すような口調で言いつつ、頭を撫でてやる]
とられないから、平気。
とられ、ない――?
[ティルの返答には、少しだけ瞼を上げ]
放さなければ良いの?
――でもね、でもね。
どうすれば“みらい”って掴んでいられるの?
“みらい”って何処にあるの?
私も、持ってる――?
[ふと、『取られる』と思った“みらい”の形と在り処に疑問]
[上がり切ったところで立ち止まり、鞄のポケットから取り出した端末を握り締めた。飾り同士のぶつかり合う音は、意識の奥にまで澄み渡る。
大きく息を吐き出した。
歩みを緩めて、個室に戻ろうとして。
十字路の辺りに集まる人々を認める。]
……?
[出来るだけ、人と会うのは避けたかったけれど、部屋がそちらにある以上、行かないわけにはいかない。
ゆっくりと近付いていく。]
[イレーネと、アーベル、ティルのやり取りには、貼り付けた笑みを崩さずに]
未来、ねぇ。あはは。
生きていれば掴める、んだよねぇ。
[しまりない顔で笑う。]
――…、…?
[何か、見定められているかの様な少女の視線に
何かしただろうか、と僅かに眉を寄せる。
しかし会ったのはあの一回きりで、覚えも無い。]
……、えっと。…?
[子どもを扱うのは、得意ではないのだけれど。]
…………。
[金髪の人の様子に、昨日までの少女のような
無表情で判断がつかないように小さく首をかしげ。
相手のこぼれた言葉に、今度はユリアンと相手を交互に見]
大丈夫ですよ。イレーネちゃん。
あなたにもちゃんと未来はありますよ。
[イレーネにそう答える。それは先読みの神子としてでなく、ナターリエとしての私の言葉。]
ち・が・う!
[全力で否定する。断じてその認識は違うとばかりに。
そんな鬱屈とした生活など、この青少年にできるわけがないのだから]
…そりゃあどーぉも。
[べぇ、と舌を出したけれど、抱きとめた少女に向かう視線があれば一拍おいてから]
そそ、寝てた寝てた。
…妹みたいなもんかな?
[飼い猫よりなつく李雪の傍らしゃがんで]
李雪、これはエーリッヒ。
日碧って呼べばいい。
俺の、友達。
[そういいながらエーリッヒを視線で示し]
[アーベルの様子にほんのり安堵]
本当に、取られないかな。
誰かが取りにきたら、やっつければ――良い?
[でも、こんなにじゃんけんに弱くては――と
翼をしんなりさせて]
[広間の様子を微笑ましげに眺め。
横に並び立ったユーディットの言葉に目を細める]
…ええ、生きていれば未来は続きます。
生きていなければ、未来は掴めない。
[続けた言葉が何を意味するか、大抵の人には理解出来るだろう。
未来を理解していない少女が意味を解するかは分からないが]
諦めたら終わりなんだ。
[頭を撫でられているイレーネをどこか複雑そうに見ながら]
僕はそうだった。
一度取り上げられた物を奪い返してきた。
だからここにいる。
[どこか苛立ちを滲ませながら]
掴み方なんか知らないよ。
ただ必死にできることをした。それだけ。
[幾らか躊躇いはあったけれど、]
こんにち、は?
[声をかけた。
随分とユリアンに懐いたらしい李雪に、驚きの表情を一瞬、浮かべて。]
……ま、そうとも言うな。
[ユーディットの声に、ぽつり、呟いて。
イレーネからの疑問には、微か、逡巡]
……ああ。
自分の未来、自分の生き方。
それは、自分で護るもの、だ。
[それから、静かに、こう言って。
しんなりする翼に、また苦笑しつつ、ぽふぽふと]
[金髪の人とユリアンを見比べていれば、
傍にしゃがんでくれたユリアンに
お友達を片腕に抱えなおせば、ぎゅっとユリアンの服を握って。]
…………。りーぴー
[彼の言葉を鸚鵡のように発音し]
[ナターリエの言葉には、にこりとして]
みらい、あるなら探さなきゃ。
私のもの、なのに――私が知らないのは、可哀想。
[何だか違うだろう、という気もするが。
オトフリートには首を傾げて]
生きていなければ――?
[ああ、そうか]
死んだら、何も掴めないもの、ね。
アーベルも、林檎も、空も、
失くした物も、まだ知らない物も。
[少女はユリアンの服を掴んだまま、声がしたほうに
ぼんやりとした緑の眼差しを向け。]
…………。
[おともだちを抱えているほうの手を器用に小さく振って]
[オトフリートの言葉には、にっこり…というよりはにんまり、という言葉のほうが合うような笑みを浮かべ。]
そう、生きていればねぇ。
あはははは。
[苛立ちを感じて、少し戸惑ったように]
取り戻し、て。
そう、ティルは“みらい”を知ってるんだ。
なら、もうきっと放さないんだ――。
取り上げられる前に、分かるかな?
私の“みらい”が何処にあるのか。
[分からなければ、掴んでいられないから]
護る――でも、護る前に見つけなきゃ護れない。
見つけるためにも生きなきゃなの、ね?
[再度撫でられれば翼はゆるやかに一度、上下する]
護りやすい大きさが良い、な。
大きければ気付きやすい、けど。
大き過ぎたら掴んでられない。
うん、日碧。
[ガストンを抱えやすいように腕の位置を僅かに変えたりしていればブリジットの姿が見えて、しゃがんだまま手を振った]
お、どうもー。
あはは、――知ってるよ。
フェイに年中凹んでるなんて芸当、出来そうにないしね。
[向けられる舌には、然程気に留めた様子も見せず、
全力で返される否定にくつくつと笑いを零して。
続く言葉に、へぇ、と何処か面白そうな声を上げる。
鸚鵡返しに呼ばれる愛称に、ゆるりと傾げながら
少女へと薄ら笑みを向けて]
…えっと。一応、フェイの友人やってるんだ。
――李雪、で良いのかな。
[よろしく?とゆるり首を傾ぐ。一応、が余分な気がするけれど。
…と、声のする方にゆるりと視線を向けて。]
[意味を理解したらしいイレーネに静かに頷いて]
そう、何も掴めなくなります。
生きていれば未来は続く。
生きていなければ未来は続かない、掴めない。
では、『未来が取られる』とはどう言う意味か。
[そこで言葉を途切れさせる。
それは少女を試すかのような口振り]
ん、そう。
見つけるため、見つけて切り拓くために、生きる。
[静かな言葉は、目の前の少女に。
同時に、自身にも]
……大きさ、かあ……。
そだな、あんまり小さいと、大変だ。
でも、きっと、大きさは。
それぞれに、丁度いい大きさだから、大丈夫だよ。
[オトフリートの尋ねる様子に、顎に手を当てて考える仕草]
生きていれば未来は続く。
生きていなければ未来は続かない、掴めない。
[確かめるように復唱して]
未来があれば、生きている。
未来がなければ、生きていない。
[でも――と首を傾げてオトフリートを見上げれば]
私、生きてるけど“みらい”を知らない。
[小さな声で呟いただろうか]
ユリアンさんと、李雪。
仲、良いですね。
[それは、ほのぼのとした光景に見えて。
先程の話が嘘のように思え、安堵の笑みを浮かべた。]
[ユリアンとりーぴーを見て……りーぴーはユリアンのおともだち。
二人のやり取りにユリアンが危険な目にあうような感じはなくて。
りーぴーの言葉には…]
…………。
[少し躊躇ってからコクリと、ユリアンで頷く。]
…ぅ。
[否定できない]
一応ってあえてそこでつけんのかよ。
まったく、変なとこで控えめなー、お前。
亜哥が、[リーチェ]って呼んでたから、そのまんま、李雪。
[ぽんぽん、と李雪の頭を撫でながら日碧に説明]
[オトフリートをチラリと見て]
さて、ね。
僕は手放すつもりは無い、というだけだから。
それが叶うかどうかも知らない。
[どこか突き放すような言い方で]
見つかるのじゃないかな?
…見つかるといいね。
[けれど最後は皮肉ではない笑みと共に]
両手で持てるくらいが良い、な。
それで、少し温かいと良い、な。
小さいと失くしちゃう、冷たいと手が痛い。
熱いのは――嫌い。
[きりひらく、という単語には少し不思議そうに]
中から何か出てくる、の?
きって、ひらく――。
まぁね。
俺、年下の子に好かれるの得意なんだ。
[それは認めてやるとばかりに肩で色違いの瞳の猫が一声長くにゃーって鳴いた]
だからそのうち、君とも仲良くなれると思うー。
[へらって笑った。
妙な自信がありそうな笑顔]
そだな、あったかいのが、いい、な。
[言葉は、ほんの少し、途切れたやも知れず。
生きるというのが、単純な事ではないと。
決して長い人生ではないが、それなりに知ってはいるから]
ん……切って、何かを出すっていうか。
未来を持って、進んでいく道を、作ってく……って、感じかな。
[向けられた視線に、緩く、首を傾げる。
淡い金の髪の青年は、ここで会うのは初めての人物で。]
……ええと。
はじめまして?
羨ましい、よ?
失くしちゃいけないものを知ってる、んだもの。
少なくとも、みらいを掴んでない私より――きっと安心。
[私は上着の中の短刀すら失くすような子だから、とふと零して]
見付かったら、見付かったよって。
見せてあげる、ね。
[それは無邪気に、笑った。
見せようと差し出す事すら、危険であると知らずに]
[見上げてくる少女が紡ぐ呟き]
未来を知らない、ですか…。
知らぬだけで『持っていない』わけではないと思いますよ。
元々未来とは手で触れられるものではありません。
貴女が歩む先に未来は現れる。
貴女が望む未来とは限りませんが、ね。
未来とは貴女の行く先。
その行く先が続くか否か。
続けば生き、続かなければ──死ぬ。
そして、誰かに途切れさせられることも、ある。
つまりは、そう言うこと。
[これで少女が理解しようがしまいが、これ以上のことは言わぬだろう]
[ティルの言葉には、ふ、と薄く笑って]
手放すことになるか、その手に留められるかは、この先の流れ次第。
己の力量と──運にかかっています。
……年下?
[自分に向けて、言っているのだろうか。
思わず繰り返してから、ユリアンを、じいっと見る。]
そんなに変わらない、……と思うんですけれど。
[むう。
だから、で繋がれたその台詞に、納得いかなさげ。]
道を作る、ための道具――?
でも、アーベルは飛べるから道がなくても平気。
[じゃないの?――と、不思議そうに]
嗚呼、でも。
下に道が見えると、行く先が分かりやすい――のかな。
[言い詰まる様子に、何処か得意げに笑みを向けて。
続く言葉に、不思議そうに緩く瞬いた。]
…そう?
[変かな、と緩く首を傾ぐ。さらりと金が揺れた。
…控えめな心算は、なかったのだけれど。]
亜哥って、…嗚呼、あの人か。
…この子と知り合いだったりするのかな。
[リーチェか、と口許に指先を当てて
何か考え込むように、少女へと再び視線を向け。]
ん?そなの?
でも年下っぽいなぁっておもって。
ちょっとでも差は大きいぜー、何せここの間
[といって自分と日碧の間で指を振り子のように動かし]
だって1年あいたらこの差だもんよ。
だから、仲良くなれる自信があるって言うのもあるかな。
あははー。
ボクには良くわかんないや。
[にこにこ笑いながら、ぴょいっと飛んでソファに深く腰掛け、ぷらぷらと足を*揺らしながら会話を聞いている*]
そ う な の 。
[ここは譲らないとばかりに胸を張って。
しゃがんでいるから、間抜けではあるけれど]
…やー、どうなんだろ。
その辺よく知らないけど。
[知り合いなの?と李雪に視線向けて尋ねるように*首をかしげた*]
[オトフリートの答え合わせには納得がいったのだろうか?
その感想は]
知らない――だけ。
そう、なのかな。
きっと――そう、だね。
私、知らない事ばかり。
私、目を持ってるけど目の中を知らない。
私、胸を持ってるけど胸の中を知らない。
それと、一緒――?
オトフリートが言うみらいは、道みたい。
アーベルの言うみらいとは、違う――?
みらいが道みたいだったら、掴めないよ。
踏み外さないように歩く事はできる――かもだけど。
飛べても、ずっとは無理だからな。
飛ぶ方が、疲れるし。
[不思議そうな言葉には、苦笑して]
……行く先がわかり易ければ、間違えそうな時に、止まる事もできる。
かも知れない。
俺も、自分の道がどこに向かってるか、わかってないし、ね。
[進むと決めた道と、実際の道が同じであるとは限らない。
特に、この場においては。
それと感じているためか、ほんの一瞬、蒼は険しさを帯びて]
[少女はりーぴーの視線を受けてきょとん。
知らない名前、知らない名前の人と知り合い…は
ないのではないのだろうか?]
…………?
[そう考え首コテン]
……つまりは、子供っぽいってことです?
これでも、17なんですけれど。
[捻くれた方向にとってしまうのは、乙女心というべきなのやら。
揺らされる指を追って、二人を交互に見る。]
一年……。
[後が続かなかったのは、同い年に見えたからか、……それとも、もっと差があるように見えたからか。]
仲良くなれる、なら。
それは、うれしく…… は、あります、が。
[向こうに立つ少女の姿を認めて。
投げられた挨拶に、一度思案するようにゆるりと首を傾ぐ。
僅かに、翠を瞬いて。]
――…、初めまして。ですね。
…フェイと、お知り合い?
[暫くの沈黙の後返すのは、肯定にも挨拶にも取れる言葉。
友人と慣れたように会話する様子に問いを投げて]
ええと。
ここで知り合ったので、出来たての知り合い?
[……かなり、奇妙な言いようだ。
端末を握ったまま、口許に指を添えて、更に首を傾ぐ。]
あ、……と。
ブリジット=エメスです、よろしくお願いします。
[眼差しの転調に僅かに眉を寄せ]
向かう先があるから、道を作るんじゃない――の?
[向かう先が分からないなら、歩く必要はあるのだろうか?
今いる場所に居続けてはいけないのだろうか。
夢、目標、そんなものは知らない。
だから、留まる事がいけない事とも思わない。
同じ景色は飽きるから、別の景色を見たいとは思うけれど]
…えっと、君――李雪が寝てる時なんだけど
その人が、君の事を知っているような雰囲気だったから。
[もしかしたら、本当に知ってる人だったのかなと思ってさ。
李雪の不思議そうな様子に、苦笑交じりに肩を竦める。]
判らなかったら、良いよ。
何となくそう思っただけだし。
…僕だって知らなかったよ。
取上げられそうになるまではね。
…ああ、見せて貰う時は。
僕もそれに見合うだけの覚悟をつけておくよ。
それはとてもとても大切なものなのだから。
[そこまで言うと壁際に戻って黙り込んだ。
他の者との会話は聞きながらも、後は*口を挟まずに*]
まぁ、似たようなものでしょうか。
形が無いと言う点では、異なりますが。
未来の捉え方は人それぞれ。
解釈も異なりましょう。
私が思う未来は、そのようなイメージなのですよ。
道は確かに掴めませんが、塞がれたりしたら──。
進めなくなるでしょう?
[不思議そうなイレーネに別の表現を含めて告げる]
まぁ…今は理解出来ずとも、いずれ理解出来る日が来るでしょう。
それが輝かしいものとなるか、暗雲立ち込めるものとなるかは別として。
[ぶりじっとの言い淀みにもう一つ首をかしげ。
リーピーの言葉には………
説明を聞いても思い当たる人がいないので
わからなかったら良いよの言葉に甘えておくことにし。]
[……それに、仮に知り合いだったとしても、
”大切な人”以外は今の少女には対して興味を起こさせないのもあって]
…………。
[判らなかったら…を肯定するように頷く]
[眉を寄せつつ投げられた言葉に、あ、と声を上げて]
……そっか、そういう見方もあるか。
[零れる呟き。
既存のものに──他者の用意したものに頼るなど、自分らしくない、と。
ふと、そんな事を考えて]
そーだな。
行きたいところに向けて、道を作った方が、早いよな。
[それが、多分。
自分がここで成そうとしている事に、適した手段なのだろうから]
みらいって、見付けるのが大変なんだね。
[話を聞く限り、とてもとても大切なものらしいのに]
きらきらしてるとか、美味しそうな匂いがしてるとか。
そんな見つけやすいものだったら良いのに。
[でも、それなら他の人にも奪われやすいだろうか?
少し距離を取る少年には小さく手を振って]
塞がれたら、飛べば良いの。
飛べないなら、回り道をすれば良いの。
[パンがなければお菓子を食べれば良いのよ、という
故人の傲慢な言葉にもその響きは似ていただろうか。
無知とはかくも]
色んな、かいしゃく。
かい、しゃく。
[分からない単語はこの際スルーして]
林檎を赤いと言う人と、白いと言う人と。
美味しいと言う人と、酸っぱいと言う人と。
硬いと言う人と、柔らかいと言う人と。
[そんな違いなのかな、という考えに落ち着いて]
――、…そう。
[自信を持ったように言い張る友人に、一つ頷きながらも
しかし何処か納得がいかないのか、僅かに眉を寄せた。
と、少女の言葉に再び視線をそちらへ向けると
妙な物言いにも納得したように一つ頷いて。]
――出来たての知り合い、か。なるほどね。
コイツ、屈託無く誰でも知り合いになっちゃうし。
…ああ、ゴメン。僕はエーリッヒ。
――エーリッヒ=ハイゼンベルグ。
[続く言葉が自己紹介らしいことに、はたと気付くと
慌てて、よろしく、と。簡潔に名前だけを告げる。]
[アーベルの言葉には笑顔で]
川の向こうに行くのに、遠い遠い橋を探すなら。
飛ぶか、泳ぐか、舟を探すか作る方がきっと早い――もの。
[ね、ね、間違ってないよね?
と、本来の話題から外れているような気もしなくはないが
問う姿はとても真面目で]
ん。
[金髪の小さな少女がが頷く様子に、同じように一つ頷いて。
…はた、と何かに気付いてゆるりと首を傾ぐ。]
…そういえば、さっき君。
――くしゃみしてなかった?
[小さく聞えてきた其れの持ち主なのではないかと
ふと、思い当たって。
寒いんじゃないの、と翠を一つ瞬いて問い。]
ん、その方が早い。
[真面目に問うイレーネに、頷いて。
それから、ふと、ある事を思い出す]
……そういやお前。
昨日言ってた探し物、どした?
[イレーネの返答はあくまで三次元におけるもので。
理解は無理だったか、と判断する]
…ええ、普通の道ならば、それも可能でしょう。
普通の道ならば、ね。
解釈は、大体それで合っていますよ。
[林檎を白いと言う人は居るのだろうか、とも思ったが、突っ込む必要性も無いと考え、イレーネの言葉を肯定する。
何だか幼い子供にものを教え込むような心境。
柄でもないと思いつつ、イレーネに答えて行ったのはどんな思いが*あったのやら*]
ああ。
……そんな感じですよね。
[先程の、年下云々の話題を思い出して、同意の頷きを返した。
告げられた名前を、やはり、舌の上で転がす。]
エーリッヒさん、ですね。
仲良く出来たら――
[嬉しいです、と続けようとした声は、気が抜けたのか、手から滑り落ちた端末が床にぶつかる音に遮られた。
飾りが、ジャラジャラと鳴る。混ざり合う音色は、さまざまに。]
わ、と。
[慌ててしゃがみ込み、拾う。]
…………。
[こくり]
[りーぴーに問われれば、また頷いて。
つづく問いには…少し考えてから首を横に小さくふり。
……かわりに、ユリアンにぴったりくっついて
……ユリアンほっかいろ]
探し物――。
起きてずっと、お話してたから。
まだ、探せてない。
[そして『これから行ってくるの!』と元気に答えた事だろうか]
普通じゃない道――?
[道しか歩けないならばそれはつまらない事だ、と。
もし彼女がもっと賢ければ言えただろうか?
林檎について突っ込まれたならば、
林檎の皮は赤く、身は白いから――と答えた事だろう]
オトフリートのお話は、難しい、ね。
でも、面白い、ね。
そんな感じと言うか、…
本当にそうなんです。コイツは。
[返る同意に、友人を指差しながら、
笑いながらも――案外真面目に一つ頷いて。
突如音を立てて床へと落ちる端末に、わ、と短く声が上がる。
拾うべきか、と思案する一瞬の内に、
素早く拾い上げた本人の手元へと舞い戻って。
相手へと視線を向けていたものの――ふと、小さく吐息を零す。]
……、大丈夫ですか。
[静かにイレーネと他の面々の問答をにこにこと聞いていたが、スッとイレーネに近づくと]
難しく考える必要はないよ。
未来はちゃんとイレーネちゃんの中にある。
それを見つけることは難しいけど、きっと見つかるよ。
だから、安心すればいい。知らないことだって、これから知っていけばいいんだから。
[そう言って優しくイレーネの頭を撫でてやる。]
そっか、なら、気をつけて、な。
[これから、と言う言葉に小さく息を吐く。
それでもやっぱり心配ではあるらしく、一人で大丈夫か、と念を押すように問う。
状況を思えば甘い、と理解しつつ──それでも。
気にかけてしまうのは、*性分なのか、それとも*]
……驚かせちゃった?
ごめんね。
[小さな子がいたんだ。
そう思い出して、李雪に向け、へらりと笑みを浮かべた。
エーリッヒからかけられた声に慌てて立ち上がり、]
大丈夫です、……すみません。
[視線を向ける。]
[昨日出合ったばかりのナターリエに撫でられて、
最初は少し呆気にとられて彼女を見上げていたけれど。
ゆるやかに表情は綻んで]
皆が、見付かるって言うなら。
大丈夫、きっと大丈夫――なんだね?
[見付かった時には手遅れだとか、そんな怖れは考えず。
だって、彼女の優しげな様子を見ていれば
本当に安心して良いのだと思えたから]
[気をつけて、と声をかけられれば]
うん、無理な事はしない――から。
大丈夫。
[じゃあ、行ってくるね――と。
手を振りながら、ぱたぱたと*走り去った*]
[友人に引っ付く小さな少女に、一つ瞬いて。
あまりもの懐き具合に、けらりと小さく笑いを零す。]
ちゃんと暖めてあげなね、フェイ。
この子が風邪ひいたら、君の責任っぽいよ。
[何処か面白げに、友人へと一度視線を向けて。
慌てて立ち上がる女学生に、ゆるりと一度瞬くと
そちらへと翠を向ける。少女の視線と、かち合って]
嗚呼、大丈夫なら――、良いですけど。
[僅かに、目を細める。
ゆるりと僅かに首を傾ぐと、金がさらりと*揺れて*]
…………。
[ぶりじっとの手の中の端末…につけられた
にぎやかな飾りに目を奪われつつ、
りーぴーの言葉にユリアンが何か言うかもしれないけれど
ぴっとりくっついたまま周りの会話を*聞くだろう*]
[揺れる飾りは、創作動物のマスコットに、ビーズ細工らしきものに、取り取りの五つ玉に、赤い紐に結ばれた鈴に――不思議と、その音色は、殆ど聞こえなかった。]
はい。
[眉を下げて、申し訳なさそうな笑み。]
……私、部屋に戻りますね。
また、後程、
[先程までのブリジットならば言わなかったであろう台詞を口にして、三人に背を向ける。機敏な動きに、*スカートが翻った。*]
[手を振り、去っていくイレーネを優しい目で見送っていたが]
じゃあ、私もちょっと出かけてきます。
ここがどういうところか、ちょっと興味があるので。
[そう言うと、広間を*あとにした。*]
[私がここに居る理由。
それは、蛇に誑かされた愚かなお嬢様……と言うのは、表向きの理由。
私を誑かしたことになっている彼は、組織がSchwarzes・Meteorへ送り込んでいたスパイ。
彼いわく、この遊戯に勝ち残った者は総帥アルトゥル=ウルリヒに会うことが出来ると言う。
彼の未来。それを直接見ることが出来れば、Schwarzes・Meteorを打ち倒す楔となるのではないか。
無論、組織の虎の子である彼女を放り込むことに反対の声も上がった。
しかし、組織としてもSchwarzes・Meteorとの抗争に対して何らかの決定打を欲していたのか。結果として、私はここに居る。
だが、私の護衛として共に遊戯に組み込まれるはずだった彼は、ここにつく前に消息が掴めなくなってしまった。
ここに入る前に組織から伝えられたことによると、未だ彼がどこに消えたかは分からないらしい。
組織の目的を果たすために、私は生き残らないといけない。
身を守るため、最低限の訓練などもここへ来る前に受けては来たが、あまりに不安。あまりに不十分。
どうにかしないと。どうすれば。]
「みらい」とかなんとか言う話を、足をぷらぷらさせながら聞いていた。
未来。
未だ来ぬもの。
手に掴んだ時にはそれはもう「現実」となり、いつになっても追いつくことはできない。
それは、彼女にとっては「約束された生」でしかなく。
虚空を見つめ、ふ、と目を閉じるといつしか夢の中へと迷い込んで行った。]
[半眼になりながら会話に耳を傾ける。
だが意識は少しずつ思考の中に沈んでゆく。
奪い返したのは「未来の欠片」
取り戻せなかったのは「過去の思い出」
それでも諦めることが出来ない「現在の可能性」
不安、後悔、苛立。
元が不安定な制御能力が揺れる。
パチリという音が鳴った]
[どれくらいうとうとしていたかは分からない。
何によって、意識が眠りから引き戻されたかも分からない。
ゆるりと目を開くと、眠っている者も起きている者もいるだろうか。
なんだかいやな夢を見ていた気がして、目の裏が重たかった。]
…あは。
[無理矢理笑う。]
[拙い。
即座にそう思考を戻せたのは幸いだったか。
残っている人数が減っていることにも気付かず、無言のまま広間を出、そのまま建物からも出る。
足早に廃墟を抜け、広場のようになった場所へ。
そこで足を止め、膝を突く。周囲の空気全体が帯電し始めていた]
[何時の間に、部屋を抜け出したのか。
彼女の姿は廃墟と化したビル郡の中にあった。
瓦礫に腰を下ろして、膝を抱え、ぼんやりと、何処かを見つめていた。
風が、ウェーブのかかった髪を流していく。]
[広間に起きている人がいたならば挨拶をしつつ、ふらりと部屋を出た。
自分の部屋へと戻り、顔を洗う。
なんとなく重い目を瞬かせ、あけたままの窓から外を見た。
見える風景は有限。
どこかに、入り口出口がある、場所…。]
…よ、っと。
[窓の桟に足をかけ、壁に鎌を突き刺して足場をつくると、ひょいと屋根の上へと上がった。
風が、冷たい。]
[無作為に飛び交う電子の流れ。
この状態の時に誰かに触れるわけにはいかない]
…ハァ。
[深く呼吸をしながら少しずつ押さえ込んでゆく。
どうにか火花は散らない程度まで整えて、傍にあったベンチの名残を残す石に腰掛けた]
何時以来だよ、こんなの。
まったく、らしくない。
[そのまま一晩、ここで過ごすしかないかなと思った。
部屋に戻れば備品を壊さない自信が無かったから]
[そう遠くない場所で、何かが光ったような気がした。]
……なんだろう。
[近付くのは、無用心かもしれなかった。
けれど、いつまでもここにいても、仕方ないのは確か。
立ち上がり、ふらりと歩みだす。
片手には、普段の癖か、端末を握っていた。]
…ん?
何か、光った?
[屋根の上から見下ろすと、ぱちぱちりと断続的に光が見えた。
背伸びをすると、その光は徐々に間隔を伸ばしていっているようで、きょとりと首を傾ける。]
なんだろ?
[ひょい、と屋根から飛び降りる。
片手に握った鎌は夜の闇の中で平たく広く形を変え、まるでグライダーのようにそれにぶら下がる形で光の元へと滑空した。
人影が見えれば、その前にたん、と着地する。]
おっと!
[気を抜いた直後だったからか、その気配に気が付くのが遅れ。
慌てて右手を軸に小さく跳んで距離を取った。
目の前に着地する影を認めて]
…よく降ってくる人だね。
[薄く笑う。パチリと再び火花が散った]
こ、こうもり……?
[にしては、大きすぎる。
ならば、巨大蝙蝠だろうか?というのは、単純過ぎる考え方。
広場に降り立ったそれ――ブリジットの位置から、少年の姿は窺えていなかった――を、幾らか離れた場所から、怪訝そうに見る。]
[滑空中、誰かの近くを横切った気がしてチラリと顔を向けたが、顔を確認する事は無理だった。
着地してその手のものがぐなりと曲がって銃の形になって手の中に納まると、小さく跳んだ人物の方に顔を向けてにこりと笑…おうとしたが、ぱちりと散った火花に驚いた表情。]
あははは、そういえば昨日も降りたところで会ったねぇ。
光ってるの、キミだったんだ。
どうしたの、それ?
[散る火花から目線を離さず、手の中の銃は後ろに回さずに握ったまま、首を傾けた。]
さて、ね。
僕の能力のこと、全く知らないわけでも無いだろう?
[言いながら煩わしそうに右手を振った。
伸びた電光はユーディットからは離れた場所へと。
大きな瓦礫の手前で散ってバチッという音を立てた]
ね、そこの人も。
今苛立ってしまうと危険なんだ。
できれば出てきて欲しいな。
わ……っ
[音を立てて、散る火花。
手を当てるのは遅く、声は零れる。
……ばつの悪そうな顔をして、影から出た。]
ごめんな、さい。
そういうつもりじゃ、なかったんだけれ、ど。
[先日とは違って――放送の件を聞いたゆえか、二人の間に流れる空気に、奇妙なものが混じっていることには、気づいているようで。自然、及び腰になる。]
[バチ、と音を立てて火花が散ったならば、にんまりと笑顔。]
あはははは、イライラしてるんだ。
ボクに当たらない方がいいよぉ、斬っちゃうかもしんないからねぇ。
[笑いながら、火花の散る先に目線を動かした。]
あ、ブリジットさん。
こんばんはぁ。
[こちらにも、上機嫌な笑顔。]
…いや、こちらこそすまない。
八つ当たりみたいになってしまったね。
[どこか及び腰のブリジットには首を振って。
その間もユーディットの銃からは目を離さない]
やっと得た機会だからね。
もっと上手にやるつもりだったのだけれど。
だから斬られたくはないな?
[繋がるような繋がらないような答えを返す。
トントンと地面を蹴っている様子はまだ平静には程遠い]
ブリジットさん、元気ないねぇ?
[声はブリジットにかけつつも注意はティルに集中していて]
機、会?
なぁに、それ?
[トントン地面を蹴る足に、にこにこ笑いつつも目線は流して。
黒銃を握る手はきゅ、と強くなりつつも]
何か、光るのが見えたから……
鬼火かな、なんて。思って。
[普段の物言いを心掛けても、それには程遠い。
笑みも、上手くは浮かべられなかった。]
機会……?
……、斬るとか、どうとか。
物騒ですね。
……ユーディットさんは、元気そうですね。
生き生きとして、見えます。
[今となっては、ユーディットの言う「斬る」は、到底、単なる冗談とは思えない。そして、その感覚に相違はないだろう。]
うん、ボク元気だよぉ。
すっごく機嫌もいいんだ、ボクもご主人様も。
分けてあげたいくらいだよ、あははははは。
[満面の笑みでブリジットを見る。
視界の端、ティルの姿は見落とさないように気をつけつつ]
…いや、何でもない。
僕は僕の思うように動きたい、という話。
[余計なことを言った。後悔が過ぎる。
だからそれでその話題は切り上げるように]
確かに物騒だ。
けれどそれが僕らの生活には馴染んでもいたから。
[薄い笑みを浮かべたままブリジットに軽く首を傾げてみせ]
勝負というとついそちらが浮かんでしまう。
悪い癖かもね?
……、
そんなに、楽しいことですか?
今の、状況。
[ユーディットの笑顔とは対照的に、
ブリジットの表情は暗い。]
ティルは、そうなんだ。
わたしの生活には、馴染んでない、よ。
……………。
[そうは言いながらも、勝負と言われて思い浮かんだのは、彼女も――
そして、ここに「招待された」という事実が示すことは、一つで。]
掛かっているものが大きいから、かな?
[ユーディットの言葉に左手の力を抜く。
いつでも力を入れられるように]
馴染んでない、か。
それでもここにいる人なんだよね…。
[窺うようにチラリとブリジットに視線を走らせた]
ブリジットさんは、楽しくない?
そっかぁ、残念だねぇ。
ボクは楽しいんだよぉ。
予感に、ワクワクするっ♪
でもねぇ、ブリジットさんもそぉだけど、004ちゃんとか、イレーネさんとか、ナターリエさんとかも…なんだろ、ちょっとなんだか違うよねぇ。
まぁ、ボクは全然それでも構わないんだけどねぇ。
[ほんわかした雰囲気の広間を思い出して、にこにこ笑みながら言う。
黒い銃を持った手はそっと前に持ってきて、いつでも何かあったときに動かせるよう、両足の幅は肩幅くらいに開かれる。]
――……わたしは、馴染みたくないもの。
ただ、平穏に、 いきていたい。
[それは、贅沢な願いなのだろう。]
わたしの言葉は、そのためにあるものじゃ、ない。
[ユーディットの構えにも隙はない。
動けぬがゆえに苛立ちは募り]
言葉…?
[でもそれをギリギリのところで抑えて。
ブリジットの方をちらりと見た]
あはははは。
やらなきゃやられる。
そういう世界は…シンプルでいいよぉ?
[ティルの言葉と行動を見ながら、トントン、と2,3歩下がりつつブリジットに笑いかける。]
ボク、寒くなってきたからもう戻るよぉ。
まったね〜♪
[底抜けに明るい声を出しながら、屋敷の方へと軽く*走り出した*]
…そう。
[後ずさるブリジットは視界の端に捉えたまま]
シンプル、ね。
そこは同意しておく。
[去ってゆくユーディットに息を吐いた。
相手を知っているだけに緊張を解けなかった。ともすれば暴走しそうな力を抑えるのと同時ではそれなりに消耗もするわけで]
…巻き込んでごめんね。
僕はまだ戻らない。
それじゃ。
[それだけ言うと廃墟群の更に奥へと姿を*消した*]
シンプル、だけれど……。
[嫌だよ。
否定を紡ぐ前に、ユーディットは去ってしまった。
ついで、ティルが立ち去るのにも、何を言うのでもなくて。]
わかってる、
わかってるよ。
そうしなくちゃ、いきられないんだって。
[独り呟く言葉は、自身に言い聞かせるよう。]
[駆け出して行ったイレーネを見送った後、またふらり、外へ。
宛もなく、廃墟群の中を歩いていく]
未来……か。未来、ね。
[呟く口元を掠める笑みを見る者は。
今は、なくて]
はー……ガラじゃねぇってのに。
[呟く声は、呆れ声]
だいったい、これから騒動起きるってのに。
沈んでどーする、俺。
[早口に呟き、目に付いた廃ビルへと足を踏み入れる。
廃墟や廃ビルと言った空間での戦いは、得意とするものの一つ。
得物の──意思を取り込んで変質する糸の特異性を存分に生かすのであれば、戦場とできそうな場所の目星はつけておくべき、と思ったのだが]
……ここは、ちぃと使えそうにない、な。
[呟きながら、内部を見回す。
かつてはバーか何かがあったのか、辛うじてそれとわかるカウンターなどの設備や、装飾の残滓が見え隠れする、空間]
仕方ね、他……っと。
[他当たるか、と。
呟いた矢先、蒼の瞳が黒光りするものを捉えた]
……へぇ。珍し。
[それが何か、を見定めた時、口をついたのはこんな呟き。
足は、引かれるようにそちらへと]
ピアノ、か……こんなとこに良くもまあ、こんなん残ってたなぁ……。
[この辺りが五十年前の『変異』による破砕区域か、その後の組織間抗争による破壊区域かは知らぬものの。
いずれにしろ、そんな空間に、こんな物が残っているのは珍しい事で]
……鳴ったら、ちょっとしたお宝だな。
[冗談めかした呟きと共に蓋を開けて、煤けた鍵盤に指を一つ、落とす。
予想外に返る、澄んだ音]
……おっと。
[思わぬ反応が嬉しくなり。つい、本来の目的も忘れて音を紡ぐ。
連なる音は旋律へと変化して、廃墟へと零れる]
[頭で理解していたとて、
心で割り切れなくては仕方がない。
だけれど、否、だから、酷く不安定だった。]
体調、崩したら、拙いよね。
――じゃないんだから。
[小さく、声を落とした。]
[広場から、崩れたビルの並ぶ廃墟へと戻っていく。
手にした端末の飾りは指に絡めとられて、音は鳴らない。
代わりのように薄く唇を開きかけて、
微かな音色を聴いた。
光の次は、音。
先程よりは、警戒のいろが浮かぶ。
けれどやはり気になるらしく、足は止まった。]
[音を聴く者がいる、という可能性には意識は回らないようで。
こちらも今はいない、姉に教わった旋律を、ゆっくりと紡いでいく。
静かな曲が多いのは、無自覚の苛立ちを鎮めたい思いの現われかどうかは、定かではないが]
っと……。
[それでも、感覚はやがて、人の気配を捉え]
……誰か、いる?
[手を止めて、音の代わりにに問いを外へと]
[音色を拾い集めるうちに、細められる緑の瞳。
其処に危険は感じられず、訪れるのは、むしろ安堵。それと、ほんの少しの寂しさ。 誘われるようにゆっくりと、歩み出した。
わざわざ「招待者」が用意したか、それとも過去の名残りか。
とうに機能を失った店の残骸を慎重に避けて歩み、]
え? ――きゃ、
[……投げられた問いに意識が逸れて、避け損ねた。
近くの棚の上に残っていた装飾品が、派手な音を立てて落ちる。]
あぁぁ。
[何処かの執事の事は言えない。
と思ったのはともかくとして。]
[短い声と、物の落ちる派手な音。
身構えたのは一瞬──しかし、それはすぐに、とけて]
……なに、してんだか……大丈夫かー?
[そこにいるのが誰か、何が音を立てたのかを大体把握すると、ため息混じりに問いかける]
だ、大丈夫――
[です。
言いかけて、止まる。
落ちて来た物はぶつからなかったものの、引っ掛かった瓦礫は、しっかりと黒のタイツを裂いていた。膝の辺りに血が滲む。]
……!
替え、少ないのに……!
[怪我よりも、重要なのはそちらのようだった。
事実、痛みはさしてなかったから。]
……いや。
気にするのって着替えより、怪我だろ普通。
[上がる声に、口をつくのはこんな言葉。
この辺りは価値観の違いによるものなのだろうが]
ちゃんと、手当てしといた方がいいぜ。
こういうとこの瓦礫にゃ、何が混ざってるかわかりゃしねぇしな。
タイツないと見えるじゃないですか……!
[至って大真面目だ。
苦労しながら瓦礫の群れを抜けて、少し、開けた場所に出る。
ようやっと、音の主の顔を見た。]
……じゃ、なくて。
ええと。
アーベルさん、ですよね、弾いてたの。
邪魔したのなら、すみません。
[頭を下げて謝罪。
それから、ポケットをがさごそと漁って、]
……あ、そっか、貸したまま……?
[ハンカチの行方を思い出して、独りごちる。
鞄になら、予備があるはずだったのだが。]
はあ。
そういう問題なんか。
[やっぱり良くわかっていないらしい。がじ、と蒼の髪を軽く、掻いて]
いや、別に邪魔じゃねぇが。
物珍しくて、鍵盤はじいてただけだし。
[言いつつ、また、音を鳴らし。
何やら探しているらしい様子に気づいて]
貸したままって……縛っとくもん、ないんか。
[っても、俺もないしなー、と、ぽつり。
なけなしの物は先日のクリーチャー戦の血の始末で、既に臨終していた]
―昨夜:回想―
[暫しの会話の後に友人達と別れると、階下へと足を向ける。
広間にはまだ幾人か人が揃っているかも知れなかったが
気付いていないのか、見知らぬ振りをしたのかそのまま通り過ぎて。
カツ、と小さく足音を響かせて玄関ホールへと辿り着いた。
周囲に人の気配が全く無い事を確認すると、その足取りは真直ぐに――
しかし、外へと続く扉では無く、壁際へと向けられる。]
[何の飾り気も無い壁を目の前にして、ぴたりと立ち止る。
無機質な白を見つめながら何を思い出したか――ひとつ溜息を零した。
僅か細めた瞳に浮かぶのは、何処か、冷たさの滲む色で]
――…、ああもう。
よりによって。
[一人でこなす方が、幾らかマシじゃないですか。
苛立ちの含む呟きを零しながら、目の前の壁へと掌を当てる。]
[す、と掌を滑らせて、或る一点で、其の動きが止まる。
ゆると翠を瞬くのと同時、音も立てずに隠された扉が開かれた。
しかし、突如現れた其れに驚愕の色も浮かべずに。
待ち受ける相手が相手だけに――…全く気が進まないが。
出向かない訳にもいかない。再び、溜息を零して。
ぽっかりと口を開けたエレベーターへ、足を踏み入れる。
白の壁が再び音も無く、青年の姿を*消して*]
そういう問題なんです。
[こくこくと頷いた。先日の繰り返し。
無いものは仕方ないと諦めて、なるべく足に意識を向けないようにすることにした。]
珍しい? でも、弾いて――
ああ、こんなところにあるのが、ですか?
確かに、そうですよね。
大分昔のなのかな?
造り自体も古いみたいだから……。
[顔を動かして、ぐるりと周囲を見渡す。]
なんで、こうなっちゃったんでしょうね。
(…面白いと来たか)
[自分と対話してイレーネが漏らした感想。
無知なる者はかくも意図を理解出来ぬが故に幸であり不幸であるものだ、と思う。
少女がこの意図を理解した時、この感想はどのようなものへと変わるのだろうか]
[広間に人が少なくなると、自分も広間を辞し。
廊下にまだ人が居た場合は挨拶をしてから個室へと戻る]
─そして現在・個室G─
[自室にて乾かしていたハンカチを手に取る。
長く干していたために水分は完全になくなっていた。
皺の残るそれを出来るだけ丁寧に畳む。
付着していた血はある程度取れていたが、うっすらと残っている箇所があったりもした]
…血は、なかなか落ちないからねぇ。
[仕方ないか、と僅かに肩を竦めた]
……ああ。そ。
[繰り返しの問答に、これ以上はキリがない、と判断して、その話題はそれまでに]
ああ、残ってるっていうのが、中々珍しいな。
こういうモンは、大抵お宝狙いの連中がさっさと片しちまうから、残ってる事は少ないんだ。
[かく言う自身も、そんな仕事を請け負う事は多いのだが]
……なんで……って。
この廃墟が出来た理由、か?
[軽く、問いつつ、また鍵盤に指を落としていく。
紡がれる旋律。
『冬って、ほんとはあったかいんだよ』
そんな口癖と共に紡がれていた音色を、静かに織り成して]
ああ、えっと……
[言葉に詰まったのは、
他にも意図があったからか。]
そうです。
なんで、壊れちゃったのかな、って。
やっぱり、『異変』のせいなのかな?
[旋律を妨げないように、声は小さく。
吐き出す息は仄かに白く染まる。]
[詰まる言葉に、蒼は一瞬だけそちらを見て、また、鍵盤に戻って]
さてね。
『変異』のせいか、組織同士の撃ち合いのせいか、ざっと見ただけじゃ判断はできんかな。
わかるのは、ここが壊れてて、何でかピアノが残ってた、って事だけ。
でも、俺にとっては、目の前にあるその事実だけで十分……知ったところでどうにもできやしない過去の事で悩んだって、時間の無駄だろ?
どうにもできやしない。
……それは、そうですけれど。
もしかしたら、誰かが残したかったのかもしれない、
なんて考えたりするのは、意味のない事でしょうか。
[視線を楽器へと滑らせる。]
……意図なんて、ないのかもしれないし。
先を見なくちゃいけないのは、
わかっていますけれどね。
意味のあるなしは、自分で決めればいい。
あると思えばある、ないと思えばない。
[それだけの事、と。
なんでもないような口調で言って]
先……ね。
ま、確かに、今は先を見にゃならん時だな。
立ち止まっても振り返っても、逃げ道はない。
[静かな言葉と共に、旋律が止まる]
行く先を決めている以上、前に進むだけ。
人によって、真実は異なりますしね。
信じた事が、全て。
[目を伏せた。]
――アーベルさんは、もう、決めているんですね。
[声には羨望のような色が滲んだ。
止まる旋律に、ゆっくりと眼を開く。]
優しい音。
寂しくも、あるけれど。
真実なんて、一番曖昧なもんだからな。
[呟きつつ、ふ、と、薄く笑む。孤狼のそれはすぐに消えて]
……決めるも何も、俺の選択肢は、最初から一つだけ。
俺が従うのは、自分の意思と、『誓い』。そして、『約束』。
それ以外のものに指図されるいわれは、ない。
ただ、自分の思うとおりにやる。
[それだけさ、と、告げる口調は常と変わらず飄々と。
それでも、音を表す言葉に、やや訝るような響きがこもる]
……優しくて、寂しい……?
そう。
言葉ひとつでつくれるものですから、ね。
……真実なんて。
[ブリジットの顔に、笑みは無い。
時を経て、尚、存在するピアノを見つめたまま。]
やくそく、かあ。
そうですよね。
約束は、守らないと。
[彼女の唇から零れる単語は同じでも、
彼のものとは異なる響きを帯びる。]
[怪訝そうな声に、ぱちりと瞬いて、アーベルへと目を移した。]
……わたし、何か変な事言いました?
うーん、想い…… っていうのかな、
何か、込められたものが感じられて、それが優しくて。
でも、遠いようにも思えて、それが寂しくて。
……あたたかいけれど、寒い、感じ?
ううん、違うなあ。
[眉を寄せて、ブツブツと。]
[笑みのない表情で綴られる言葉、そこに込められるものは計り知れぬまま]
……ああ。
『俺は』、破れないから、な。
[呟きは、独り言めいて。
視線をこちらに向けての言葉には、がじ、と蒼の髪を掻く]
……想い、ねぇ……。
ねーさんは、今の曲弾く時、
『冬って、ほんとはあったかいんだよ』
って、必ず言ってたけどな。
[かんけーあるのかね、と、呟きつつ。
一つ、二つ、連ならない音を鍵盤から弾く]
ねーさん?
[端末を挟んだ両の手で、口許を抑えるようにしながら、反射的に問い返した。]
冬はあったかい…… ですか、
不思議な感じですね。
全てを包んでくれるような雪は、優しくて好きだけれど。
……曲だけじゃなくて、
アーベルさん自身の、もあるんじゃないかな。
[再びくしゃみ。]
……そうします、
というか、そうしようとしていたんでした。
[小さく頷いて、早速、瓦礫の合間を擦り抜けようとして、立ち止まり、振り返る。]
アーベルさんは?
ああ……俺を育ててくれたひとの、一人。
[問いには、さらりとそれだけを]
ま、意味はよくわかんないんだけどな。
いつもそう言ってたよ。
って……俺自身、の……。
[少女の言葉には、更なる疑問を感じるものの、余り引き止めるのも悪いか、と問いとしては投げず]
ああ、まだいくつかやる事があるんでね。
それが終わったら、戻るさ。
[だから気にすんな、と。軽い口調で告げる]
ん――そうですか。
[視線を一度下げてから、戻す。
離れてしまえば、薄闇の下では、互いの表情は見え難い。]
わかりました。
それじゃ、気をつ――
[……戦わねばいけない相手なのに、心配をするだなんて、滑稽だ。そんな思考が過ぎり声は途絶えるも、]
気をつけて。
[平静を装って、紡いだ。
それきり振り返らず、片足が気になるか、やや危なっかしい動きで、*去って行った。*]
[去り際の言葉。それに思わず、くく、と笑う]
気をつけて、ね。
[そりゃむしろそっちがだろう、と。
呟く脳裏を過ぎったのは、先日の浴衣の時の事か。
少女の姿と気配、それが完全に消えたなら、蒼の瞳は再び鍵盤へと落ちる]
……ま。
一応、理由は聞いてんだけどな。
[言う必要もねぇし、と。
小さな呟きが、冷えた大気に溶ける]
……さて。
現状打破のために、真面目に動くとするかね。
[立てた左の手に、拳にした右手を打ち当てつつ言って、気持ちを切り替える。
鍵盤に元のように蓋をするとその場を離れ、違う廃ビルの中へと足を踏み入れた]
[きちんと扉から戻って自室に戻ったのは大分前だろうか、それとも少し前だろうか?
ベッドに大の字になって暫くうとうとしていたようで、薄く目を開くと天井が見えた。
ゆっくりと体を起こす。]
…ふあぁ。
[大きく欠伸をすると、冷蔵庫から果物を取り出してかぶりついた。]
…そういえば、砂漠って見てないなぁ。
ね、見に行きましょーか。
[虚空を見つめて、呟く。
しゃくしゃくと、口に入れた洋梨が音を立てた。]
[部屋に戻りタイツを脱いで、傷口を洗う。
水音を聞きながら、ぼんやりと呟く。]
……真実に、約束、か。
[霞がかる思考。
違和感はあるのだけれど――何が、かまではわからぬままに。
手当てを済ませて、眠りについた。
それは、ブリジットにとっては、深く、深く。]
−過去→現在へ−
[畳んだハンカチを手に部屋を出る。
向かう先は、このハンカチの持ち主の部屋]
[階段を挟んですぐの場所にある部屋──Kの部屋の扉をノックする]
ブリジット様、いらっしゃいますか?
[相手が休んでいるとは知らない。
コンコン、と言う音と共に声をかけた]
ん――
[額に当てていた手をずらして、ゆっくりと目を開く。
着替えるのも億劫で、セーターとタイツを脱いだだけの格好だった。直す、という考えには至らなかったらしく、緩慢に身を起こす。]
はい……?
[寝ぼけ眼。警戒心はゼロに近い。
薄く扉を開いて、しぱしぱとまばたいた。]
[少しだけ開いた扉。
そこからブリジットを覗き込むような形で]
あ…もしかしてお休み中でしたか…?
も、申し訳ありません、起こしてしまったよう……でっ!
[寝ぼけたような印象を受けると勢い良く頭を下げ……ようとして良い音が鳴った。
扉からブリジットが見えるような位置に移動していたために壁際に居たわけで。
そのまま頭を壁にぶつけた]
[思い出して、探して、逢えて。
とてもうれしくて、うれしくて、うれしくて…離れたくなくて。
もう一度実感したくて、ぎゅっと。]
[うれしいがみちると、忍び込むのはふあん。]
…………。
[思い出したこと、探したこと、逢えたことに夢中で、
すっかり置いてけぼりになっていた、朝聞いた言葉を思い出す。]
[難しい言葉、遠まわしな話しぶり。]
[招待…してもらった記憶はないの、気がついたら”ここ”にいたから。]
[権利、遊戯…参加。存在、発揮、機会。]
…………。
[思い出す言葉の意味を判ろうと、
少女は難しい顔で考え込む。]
[……理解したのは、自分が定められしことから言うと、
ユリアンを勝ち残らせないといけないのだと言うこと。]
…だ…だいじょうぶ、です…。
[ズキズキと痛む箇所を押さえながら、涙目で答えて]
ああ、そうでした。
これをお返しししにきたのです。
[そう言って持っていたハンカチをブリジットへ差し出す]
…それとお話があるのですが、少々よろしいでしょうか?
……。
[あんまり大丈夫に見えないんですけれども。
その台詞は、飲み込んだ。
差し出されたハンカチを受け取り、ああ、と視線を落とした。膝には絆創膏。]
お話、ですか?
ん……と…… どうしようかな。
[異性を部屋に入れるのは抵抗があるのか、返答は鈍い。]
[患部を摩る手を止めて]
出来れば他の方がいらっしゃらない場所でお話したいのですが…。
漆黒なる流星が『遊戯』のために放った二つの流星の欠片の話を。
それと、貴女の決心はついたのか、を。
[含みのある笑みを浮かべる。
先程までの情けなさは影を潜めた]
漆黒なる、流星?
[ぴたりと動きが止まる。
まるで、理解していない――と言ったように。]
……ええと。
何か、勘違い、されていません?
[首を傾げる。
けれど、ともかく部屋先でする話ではないと思ったのか。
躊躇いの後に、中へと促した。]
[洋梨をかじりながら、窓から飛び出した。
そのままゆっくっり、南部へと散歩気分で歩き出す。]
行ってないのは、こっちだよね。
[砂漠へと、向かう。]
―北部―
[幾つか並ぶ硬質な岩の一つへと腰を落ち着けて。
後ろに軽く手を付いて空を仰ぎ見る。下弦の月に、薄く翠を細めて。]
…本当、面倒ですね。
[昨夜には見当たらなかった渋い表情を浮かべ。
ぽつりと零した言葉は、冷えた寒空に白く溶けて、消えた。
ポケットから零れる携帯端末のストラップが
地に転げて、小さくチリンと音を立てる。]
─中央部・廃墟群─
[あの後結局、建物には戻らなかったのか、それとも戻ってまた出てきたのかは、定かではないものの。
廃ビルの一つの屋上付近、鉄骨に両足を引っ掛けた姿勢でぶら下がり。
一人。ぼんやりと逆さまの世界を見つめて]
……ま、取りあえず、ここでやりあうなら、それなりに、と。
しっかし……。
[はふ、と。
零れるのは、欠伸一つ]
さてさて、どっからどーやって先へ行きますか、ねぃ、と。
勘違いなどしておりませんよ。
[中へ促すように扉が開かれると、「失礼致します」と声をかけてから中へ。
扉が閉まるのを確認してから、再びブリジットへと向き直った]
ご存じないはずはないのですけれどね。
貴女はSchwarzes・Meteorに名を連ねていらっしゃるはずですから。
違いますか?
──ブリギッテ=エメト。
[笑みを浮かべたまま、他のものならば知るはずのない組織の登録名を呼ぶ]
[紡がれる名がスイッチとなったように、ゆるりと瞬く。
その後に開かれた眼は、冬の如き冷たさを宿していた。]
……さて。
上もまた、面倒な趣向を凝らしてくれたらしい。
……ま、ここでぶら下がってても、名案はでねーけどな。
[はふ、と。
出るのは、欠伸とため息がいいところで]
……取りあえず、動くか……。
[ぽつり、と呟きつつ、反動をつけて鉄骨の上へと飛び上がる。
ん、と言いつつ軽く、身体を伸ばしてから、周囲を見回し。
ふわ、と舞う、銀の羽。
翼のみを得て、跳ねるよに、廃ビルの上を翔けて行く]
[視線を音の方へ向けると、面白くないと言った風体のまま。
岩の上へ転がる小さな鈴を指先で弾いた。
紐に繋がった根付に引っ張られて、再びチリと短い音を立てる。
一度翠を瞬いて、小さく吐息を零した。]
まぁ、クリーチャーと出くわしても、手入れが面倒ですし。
流石にちょっぴり寒くなってきたところですし、帰りますかね。
――っと。
[そのまま弾みをつけて、高さを物ともせずに、飛び降りる。
難無く着地を果すものの、勢いでポケットから端末が転げ落ちて
地面へと高い音を立てて転がった。 思わず、眉を寄せる。]
…あーあ。
[――壊れてなきゃ良いけど。
ぽつりと独りごちながら、ゆると拾い上げる。
液晶画面を見やって、寄せた眉が更に深まった。]
[どれくらい歩いただろうか、たまに小走りになったかもしれない。
目の前に、広大な砂漠が広がる。]
…ふわぁ、広いー。
しかも砂だから…刺さらない、ね。
[ぽふ、と足で砂をかき混ぜる。
眉を寄せ、溜息をついた。]
[跳躍を繰り返し、進む。
翼の揚力を得て高所を駆けて行くのは、昔からの『遊び』の一つ。
こうやっていると、気持ちがすっきりする、というのが持論。
実際には、疲労が大きいのだけど]
……いよっ……と!
[中央部と北部の境界線が見えたなら、最後の足場を勢い良く、蹴り。
跳躍、そして、羽ばたきのない滑空の飛翔。
そこに他者がいる可能性などは、全く気に止めず。
ふわり、荒野へと舞い降りる]
─ →北部・荒野─
[雰囲気が一変する様子に笑みを深めて]
我らは駒でしかありませんから。
面倒であろうが無かろうが…自分達が楽しめれば良い。
それだったら。
『アタシ達も楽しむしかないんじゃな〜い?』
[唐突に軽い口調へと変わる。
が、オトフリートの口は動いていない。
その代わりに足元からオトフリートに亀裂が入り、壁の塗料が剥がれ落ちるようにパラパラと剥がれて行く。
剥がれた下から現れたのは、ワイシャツにワインレッドのベストとパンツを着込み、真紅のロングストレートの髪を持つ女性らしき姿。
尤も、その身体に女性特有の凹凸は無いが]
とりあえずアタシとアナタ達が対立する理由も益も無いってことだけは言っておくわね。
それとアタシのことは『ルージュ』と呼んでチョーダイ。
こっちがアタシのホントの姿なの☆
[唐突に姿を現しペラペラと喋る。
相手の意向などお構い無しだ]
ところでアナタ、この遊戯に躊躇ったりはしてないわよネ?
さっきまでのアナタだと、迷ってる感じがしたからぁ、ちょっと心配〜。
[腕を組み頬に手を当てて、少しだけ疑わしげな視線を向ける]
[半分以上、黒に染まった液晶を見つめて小さく吐息を零す。
――これは、使い物になりそうに無いな。
ぼんやり考えて、小さな鈴を鳴らしながらポケットへとねじ込んだ。
硬い岩場に勢い良く落とせば、仕方が無い。]
……、?
[と、月光を遮って一瞬出来た陰にゆるりと仰ぎ見る。
滑空した影が、ゆるりと降り立つのを視線で追って。]
んーーーっ……。
[左腕を思いっきり上へと向け、右手は左の肘の辺りを掴むような姿勢で身体を伸ばしつつ、翼を大きく広げる。
月の光を受け、翼は銀の煌めきを夜空へと]
ふうっ……やっぱ、こっちは違う寒さがあるな……。
[呑気な口調で呟いた所に感じた、人の気配に]
……っと。
よぉ、散歩か?
[振り返る事無く、ただ、声だけを投げた]
……なるほど。
[腰を下ろし、片手をベッドに突いて、足を組む。
素足が晒け出されるのを、気にした風も無い。
相手が異なる姿へと移り変わるのにも、さして驚いた様子もなく、口許に手を添えて頭を傾けた。
先程までのブリジットであれば、相当に慌てそうなものだが。]
それならば、付けた理由も納得出来る――か。
[ぽつりと落とした独り言は、極小さく。]
「私」に躊躇いは無いさ。
「あれ」は、実験の産物だ。
[ひらりと手を振り、寝起きで乱れた髪を掻き上げた。]
――わ。びっくりしました。
[てっきり気付いていないかと思っていた。
と言っても、口に出す言葉は、何処か暢気なものだけれど]
散歩、…まぁ、散歩ですかね。
ちょっと予期せぬところで気分を害したので、気分転換に。
――其方も、散歩ですか?
[ゆる、と首を傾いで。]
ま、そんなとこかね。
[伸ばした腕を下ろしつつ、問いに答える]
考えてたらちょいと煮詰まったんで、気晴らしに。
[さらりと言いつつ、ふと、微かな違和感]
へぇ。
これ見て驚かないってのも、珍しいねぇ。
[くく、と笑いつつ、ふぁさ、と軽く翼を揺らめかせ]
―中央部:屋敷―
ただいまーっ。
[玄関の扉をばたーんと開き、建物へ入る。
広間へと歩いて行き、入るとソファにごろりとうつぶせにごろりと横になった。
膝を曲げ、ぱったぱったと揺らす。]
これで、殆どの地形は見ましたよねぇ?
あは。
実験の産物、ね。
別物と考えて良さそうね。
躊躇いが無いなら良いわ。
いくらサポートで送り込まれたと言ってもそれ以上のお守りは勘弁だもの〜。
[面倒〜、と大袈裟に肩を竦める]
アタシの役割はこの『遊戯』を盛り上げること。
基本的にそのために動くわ。
アナタ達がどう言う理由でここへ送り込まれたのかは知らないけどね。
ここに送り込まれる理由は様々だもの。
はー、でもすっきりしたわ。
ずーっと演技しっぱなしだったし、面識のある仲間は何だか頼り無さげだったし。
もう一人の可愛い子は役に立つのかしらぁ。
−今から巻き戻される時間の話−
[むすとした表情少しだけ残したまま、青少年は日碧とブリスを見送る。
それから、李雪を部屋へと送ろうとしたのだが]
…。
[ぴったり離れやしない]
…李雪、ちょっと、離れない?
[さりげなく、さりげなく、押し返そうとしたけれど離れやしないものだから。
…ぽり、と頬をかいて青少年は少し視線を天に泳がせ、それから]
…飯、食うか。
[幸い、自分の部屋はそれほど遠くなかった。
適当に食事を取らせ、眠るようであれば寝台を貸し、自分が寝るまで寝ないといわれたらしょうがないから嘘眠り。
それから、今に至る。
青少年の体は、今なお彼の部屋に*ある*]
単純に捉えれば、そうなる。
[詳細の説明はどうせ不要、というよりは面倒臭がるだろうと。]
そのようにしてくれ。
「私」の理由は「実験」だよ。
それ以外に、言う必要もない。
[無感情だった表情に、初めて、笑みのようなものが浮かぶ。
それは、ただ、唇の端を微かに吊り上げただけのものだが。]
ああ、なかなかの演技だった。
私には到底真似出来ないな。
もう一人、ね――意欲はあるようだ。
[ベッドの端に置いていた端末を持ち上げる。チリリ、と鈴が鳴った。]
─北部─
…………あれ?
[気がつくと、いつの間にか私は大きな岩があちらこちらに転がる荒涼とした場所に立っていた。
どうやら、考えに没頭してこんなところまで来てしまったようだ。
少しでも自分の有利になるように、入念にここを見て回らないといけなかったはずなのに。
そう思ってしょんぼりしていると、頭上を飛んでいく何かが目に入った。]
……何でしょう、あれ?
[そう呟くと、それが飛んでいった方向へ歩き出した。]
おや、じゃあ奇遇ですね。
…で、その煮詰まった考えとやらは、解けそうですか?
[薄く笑みを浮かべながら、ゆるりと首を傾ぐ。
揺らいだ翼から揺らいだ風に、さらりと金が揺れて。]
やー?多少ビックリはしましたよ?
――でも別に、今時何があっても珍しくないかなぁ、って。
[今まで色んな人、見てきましたし。
笑う相手に、翠を一度瞬いて。]
それだけはっきりすれば十分よ。
使えるか使えないか、それだけが分かればね。
実験ねぇ…。
うちの組織も規模が大きいからどこで何してるかなんて分からないものねぇ。
知らなくて当たり前だわぁ。
[頬に手を当てたまま、ふー、と溜息をつく。
しかし演技を褒められるとにっこりと笑みを浮かべて]
そぉでしょー?
アタシ女優なの。
あれくらい出来ないと女優としての面目が立たないわぁ。
[真紅の瞳を細め、真っ赤に彩られた唇の両端を吊り上げる]
意欲があるなら何よりだわ。
けど自滅とは穏やかじゃないわね。
アタシが支えてあげなきゃいけないカシラ☆
[うふふ、と少し怪しげな笑み。
白磁の肌、その頬がうっすら朱に染まっているのは見間違いではないだろう]
[それの飛んでいった方へよっとこどっこいしょと岩をよじ登ったりながらやってくると、そこに居たのはアーベルさんと、……ええと誰?]
えっと。どうもこんばんわ。
何をされていらっしゃるんでしょうか?
[ほんの僅かに警戒心を滲ませつつ、2人に近づいていく。]
ま、それくらいしかする事ねーしな。
[今の内は、と付け加えつつ、言って]
さて、どうなるか。
考えること自体、意味ねぇのかも知れんけど。
[問いにはくく、と笑いながらこう返す]
なるほど、確かに今時珍しくもないか、こんなんは。
[色んな人、という言葉に、軽く、肩を竦め]
……っと……あれ、あんた。
何してんの?
[呼びかけと、近づく気配にそちらを振り返り。
蒼の瞳を一つ、瞬かせる]
知らなくとも、ね。
同じ組織に属するだけで、味方という概念も薄いからな。
[笑みは数瞬の後に消え失せる。
いろが無く、無機質だった。]
私とて、"Schatten"の名は耳にしてはいたが、
「こう」だとは知らなかった。
[女優発言に関しては、さして感慨も無いらしく、特に付け足しもしない。
……恐らく、「もう一人」ならば、違った反応を示すのだろうが。]
この世界はいつだって穏やかではないさ。
その手も、きっと、振り払うのだろうな。
…、おや。どうもこんばんは?
んーと…お散歩、という所でしょう、…かね?
[偶然ばったり会ったので、井戸端中です。と
女性の声に気付いて、ゆると首を傾いで]
――貴女こそ、
こんな足場の悪い場所までどうなされましたか。
[危ないですよ?
と、岩場をよじ登ったりしている相手に、近付いて。
危なそうならば、手を差し伸べようかと]
せめて、娯楽施設でもあれば――やる事も増えそうなんですけど。
暇を潰すにも、気分転換するにも。
珍しがるのは兎も角、毎回驚いてたら、ね。
僕の心臓が持ちませんよ。
[ぽっくり逝っちゃいます。とけらりと笑みを零して。
続く言葉には、ゆるりと翠を一度瞬いた]
……、其の口ぶりですと。
貴方の周囲の方は、驚かれる人が多かったんですか。
[エーリッヒの返答と問いに]
あっ、そうなんですか?
えっと……私もそんなところ……ですかね。
[下見を兼ねようとして、すっかり忘れていたことは敢えて言わず。
手を差し伸べられれば、一瞬躊躇するもののその手を取って、引き上げてもらうだろう。]
―東部・湿地帯―
[広間を出て飛び立った後、彼女は東を目指した。
巨大烏賊に気付いた時に見た風景はこんな感じだったか。
羽ばたきを抑え、徐々に高度を下げると苔の生えた岩に降り立つ]
――臭、い。
[ユーディットによって屠られた烏賊の屍骸が異臭を放っている。
だが、その身は既に半分以上なくなっており、
屍骸を貪る者の存在を知らせる]
ナイフ、探さなきゃ――。
全くだわ。
アタシなんて上司すら敵よ。
[尤もそれは私怨なのであるが。
思い出して腹が立ったのか、少し難しい顔をしている。
相手が己の女優発言に特に反応しないのと同様、こちらも相手の表情が乏しいことは気にならないようで。
相手への興味が薄いようだ]
あの姿だと意外に便利なのよー?
相手を油断させられるしぃ。
シャッテンは表向きの姿。
執事の顔と、裏家業の顔も持つ。
本当の姿を欺くための二重の仮面とでも言うのかしら。
まぁこんなことしてる半分は暇潰しだけどぉ。
[どこまでが本気でどこまでが冗談なのか分からない笑みを浮かべる。
暇潰しの部分は本当っぽいが]
やーん、振り払われちゃうの?
つれないわぁ、出来るなら仲良くしたいところなのにぃ。
……ある意味、ここ自体が『娯楽施設』みてーなもんだろ?
ま、こっちにゃ迷惑極まりねぇがな。
[言葉は、どこかはき捨てるよな響きを帯びる。
が、それはすぐに掻き消えて]
そこまで柔な作りだったら、そっちの方がどうかと思うが……。
[ぽっくり、という物言いに、呆れたようにこう返す。
続いた疑問には、まあな、とどこか曖昧に返して]
じゃあ、貴女も奇遇ですね。
散歩目的で、全員が此方に来てるなんて。
[まぁ、確かに暑い所よりは散歩向きでしょうか。と
僅かに言いよどんだ言葉には、気を止める様子を見せずに。
小さく笑うと、触れる手を握って引き上げる。]
此処まで来るのに、危なかったでしょう。
怪我は、ありません?
[探し回る事、小一時間。
藍色の鞘を見つけたのは、生い茂る羊歯の中]
あった――。
[汗ばむ額を手で拭いながら、ほっと安堵の息を吐く。
烏賊の屍骸から北東にしばらく行った所、
恐らく、湖へ向かう途中で転んだ時に落としたのだろう]
ごめん、ね?
もっと大事に、持ってる――から。
[両手で鞘を包み込み、上着の内側へ仕舞う。
そして、満足そうに飛び立とうとしたその頭上に――
巨大な影が落ちた]
そんなものだろう。
[目の前の人物の場合、自身の行いにも問題がありそうに思ったが。
わざわざ口にする必要も無い。]
――確かに、あれだと油断もするだろうな。
ちなみに、実際の「腕」の方は?
主に、家事の。
[口調だけは、冗談めかしたもの。
敢えて、戦闘の方は問わなかった。]
「周りは全て敵」だよ、ルージュ。
[仲良くしたいと願う相手に向けて、簡潔に述べた。]
さて、他に用件は?
…あー、それはちょっと勘弁して欲しいですね。
暇つぶしには不向きですもん。
[へら、と何処まで本気なのか笑みを向けて。
続く言葉と、呆れた様子におや、と一度翠を緩く瞬いた]
いやー、世の中には居るかもしれませんよ?
見た者を心臓麻痺させるような風貌で、世の中をのし上がるツワモノが。
そうしたら、僕のガラスの心臓なんて間違いなく一発でぽっくりです。
[紡ぐ言葉は、至極真面目な響き。
返る曖昧な応えには、不思議そうに首を傾ぐも
深く追求することはせずに。]
北は、岩場。
東に湖があって、西に木があって。
南は、砂だからきらーい。
[ぷらぷらと、膝から下を揺らしながら呟く.
そのまま、いつしか*うとうとと*]
[見上げれば、鶏にも似た巨大な鳥。
探し物に夢中だったからとはいえ、その羽ばたきを
耳に入れなかったのは不注意にも過ぎたが]
鶏――?
[暢気に姿を見上げる彼女を何と認識したのか。
怪鳥の足が伸ばされ、大きな爪を持つそれが自分を
鷲掴みにしようとしているのだと分かれば慌てて地を蹴り、
後方へと飛び退る]
ご飯じゃないよ、ないよ。
食べるならあっち――っ。
[腐り始めた烏賊など、怪鳥とは言え食べないだろうが]
[エーリッヒに引き上げてもらい、パンパンと軽く服についた土を払うと]
ありがとうございました。そうですよね、暑いよりは涼しいほうがいいですよね。
[そう言ってにっこりと笑う。
だが、危なかったでしょうという言葉にふと思案する。
そういえば、中央部以外にはクリーチャーの類が放たれているという話。ぼんやり歩いていた間に遭遇してもおかしくはなかったはず。
だが、思考はそこで行き止まり、運が良かったという結論に。]
ええ、大丈夫です。幸い、危ない目には遭わなかったようですから。
[飛び立てば、怪鳥も追うように羽ばたく。
風圧で崩されるバランス。
振り向けば、再度伸ばされる足が見えて]
や―だ――っ。
[あんなものに掴まれては堪らない。
彼女の頭の中では更に、怪鳥の雛鳥が大量に口を開けて
餌を待っているところに放り込まれる己が姿まで連想され。
ふつ――と、一本何かが切れた]
ご飯じゃないって、言ってるの――っ!!
[振り上げられた翼、その羽先が怜悧に光を反射する。
硬質に、鋭角に、形を変えた無数の刃を備えて
叩きつけられた翼は次の瞬間には紅に染まっていた]
油断させる実績は折り紙つきよぉ。
裏家業の方もそれで何度も仕事こなしてるものぉ。
家事の腕?
さぁ、どうかしらぁ。
イイオトコにだったら振舞ってあげても良いわぁ。
[真っ赤な唇の両端を吊り上げて、はぐらかすように答える]
アタシの腕だったらそのうち分かるんじゃないかしら。
何せここは『遊戯』の場だもの。
[相手がぼかした問いの答えを曖昧に答えて。
全て敵と言われると大袈裟に肩を竦めた]
寂しい限りね。
けど、アタシ達が対立するのは得策じゃないわ。
こんなところで生を終わらせたくはないでしょ?
[少なくとも自分はもう少し人生を楽しみたいと思っている。
ここで途切れさせるのは、本意ではない]
そうねぇ、不安要素は無くなったし、後は良いかしらぁ。
[紅い唇に人差し指をあてて、少し考えるようにしてから答える。
答え終わると足元から影が布のように伸び上がり、ルージュを包んだ。
漆黒なる影が霧散した後、そこに立っていたのはシャッテン──オトフリートだった]
それではこの辺りでお暇すると致しましょう。
女性の部屋にあまり長く居ては失礼ですしね。
[その口調、物腰はルージュのそれとは異なる、今まで皆に接してきたものになっていた]
勘弁してほしい、って言っても、聞きゃしねーだろーが、な。
[ぼやくような物言いは、こちらもどこまで本気なのか。
続いた言葉には、何やら思案の素振り]
……お前、『狩り』系の仕事には向かんな。
[ぽつり、呟く。
突然変異で発生した暴走クリーチャーの中には、視覚破壊兵器も多いらしい]
……っていうか、それ、運だけの問題かね……。
[それから、ナターリエとエーリッヒの会話に、思わずぽつりと呟いてみたり]
如何致しまして。
ほら、暑いと気分転換に散歩に出ても…暑さでイライラしません?
寒くてイライラするって、あまり聞きませんし。
[女性が服を叩く様子を見つめながら、
向けられる笑みに、此方も薄く笑みを浮かべて。
続く言葉には、そう、と一つ頷いた。]
――それなら良かった。
あまり、安全な場所とは言えませんしね。
[ポケットにねじ込んだ端末を引っ張り出す。
半分黒く潰れた液晶を見やって、あ。と一言言葉が洩れる。]
一発で端末がいかれちゃう位には――
足場も、悪いですし。
そうですね。私も怖いのはちょっと。
[そう言って苦笑い。そして、アーベルを見やると]
でも、私もアーベルさんのその銀色の羽は美しいと思いますよ。
[そう言って、アーベルに微笑みかける。]
[耳を劈くような怪鳥の悲鳴に顔を顰める。
骨を切断するには至らなくも、力任せに刺さったそれは
めきりと音を立てて怪鳥の足を軋ませた。
両足を地に着け、左翼で眼前をさっと庇う。
相手に突き立てた右翼を引き抜き、
相手の血流が幾分収まったところで宙に飛び立てば、
勢いの良い羽ばたきに、浴びた血液が振り払われ周囲に散った。
痛みに気取られ動きが止まっている隙に、一気に高度を取る。
高さは力に変わる――両翼を一纏めに束ね、重力を乗せて
翼の全質量と全体重を乗せた一撃をその頭上へと振り下ろした]
それでは、私には無縁な話だね。
残念な事だ。
[家事の腕に関しては軽く答え、
「その他」の腕については頷きのみを返す。]
対立が得策でないのは、確かだな。
無益に敵対する気は、少なくとも今のところは無い。
生を終わらせたくも――ないだろうから、ね。
[まるで、他人事のような言い草。]
何かあれば、また来ればいい。
「ブリジット」ではなく、「私」の方にね。
それから――奴の方でも無いほうが、いいかな。
[目の前の相手を見て、思案げに言う。具体的に何を思ったかは、さておき。]
刺されそうだ。
[赤から黒へと変わる彼に眼を細める。]
そうだな。
異性の前で、このような格好でいるのも失礼だろうしね。
[彼女の口調は変わらない。
緩く首を傾げる仕草は、ブリジットに似ていた。]
…聞いてくれませんかね? 僕ら用の娯楽施設の導入。
暇なのは、あまり性に合わないんですけど。
――危なすぎる暇つぶしは、個人的には好みじゃないんです。
[趣味で時間を潰すなら、もっと平和的なのが良いですね。
とか、何だか論点がズレているが、気付くことはなく。
続く言葉には、きょとりと翠を瞬いた。]
狩り、ですか?
やった事ないので、向いてるか如何かは知らないですけど――
まぁ、貴方が言うなら、向いてないんでしょうね?
[けら、と笑う。然程気に留めてない様子。]
[それは相手を昏倒させるには十分な威力で。
怪我をした足の所為で千鳥足にもならず、
ばたりとその場に巨大な体躯は倒れ込んだ。
地に落ちる前に両翼を開くと再び上空に舞い戻り、見下げる。
ぐってりと伸びた姿にはふと同情を抱き]
――ごめん、ね?
でもでも、“せいとうぼうえい”だもの。
[物騒な場所からは早く帰ろう。
ひらり翼を翻し、紅を散らしながら少女は南西へと飛び去った]
―→中央部建物・玄関前―
……え。
[ナターリエの言葉に、惚けた声と共に、一つ瞬く。
いきなり言われて驚いたのか、素で言われて驚いたのかは、定かではないが]
ああ……それは、どうも?
[それでも、すぐにペースを取り戻し、冗談めかした口調で言いつつ、一礼してみせる。
ふわり、と。銀色の羽が舞った]
[そこで、はっと気がついたのか、エーリッヒの方を向き]
そういえば、自己紹介をまだしてませんでした、よね?
はじめまして、私はナターリエ・ヘルゼーエンと申します。
どうぞ、よろしくお願いします。
[そう言ってぺこりと一礼。もし、近い将来闘う運命にある相手だとしても、礼を欠いてはいけない。]
聞いていれてくれるくらいなら、最初っからあるんじゃねーの?
ま、廃墟ん中には、古いモンが色々と残ってるらしいから、探せばなんか出てくるかも知れんが。
[ピアノの話はしないものの、そう言って。
論点のズレには呆れたような表情を僅か、覗かせたが、突っ込みは避けておいた]
『狩り』系のターゲットには、ゲテモノ多いからな。
心臓にいいぞ、かなり。
[きょろりきょろりと周囲を見渡しながら]
――建物の近くは、何もいないの、ね?
[十分な高度を保ちながら地上を眺めれば、
帰りの道中でも怪物の類を発見する事はできたようで]
あまり――遠くには行かない方が、良いみたい?
[ふと、高い空を見上げて]
――でも、それってつまんない。
こんなに広い、のに。
こんなに高い、のに。
[何処か釈然としない様子で、今度は俯いた]
…ブリジット様は未だ戸惑いが多い様子。
相対する者は少ない方が良いですよ。
では何かあればまた。
そちらも何かございましたらお呼び下さいませ。
…折角あちらを出せる相手が居ると言うのに私でなければいけませんか。
その方が良いと仰るのでしたら、そのように。
少々残念ですが。
[苦笑の後に承諾するように頭を下げて。
未だ口調の変わらぬ目の前の相手には深緑の瞳を細めて]
『アタシは心は女性よぉ?』
[口は開かず、声だけが聞こえた]
それでは失礼致しましょう。
出るところを誰かに見られても面倒ですので…。
[そこまで言うと再び影がオトフリートを包み込んだ。
ズズ、と言う音と共に影は小さく床に沈んで行く。
影が完全に床に沈んでしまうと、そこには何も*残らなかった*]
忠告は感謝する。
私としては、影でも赤でも、どちらでもいいのだが。
もし、他者に見られては面倒だろう。
[残念がる様子を見やりながら、端末を片手で弄る。
奴、が誰を指すか――齟齬らしきものには気づいたが、面倒だと思ったのか、敢えて訂正する事もない。]
それは失礼。
[声には、短い謝罪。
沈み行く影を見送り、ストラップを指先で弾いた。]
…ああ、えっと。ご丁寧にどうも。
エーリッヒです。――エーリッヒ=ハイゼンベルク
[こちらこそよろしくお願いします、と。
頭を下げられ、慌ててつられたように軽く会釈を返して。
握り締めたままだった端末についた鈴が、チリリと音を立てる。]
廃墟の中の娯楽施設、か。…何かあるんですかね。
まぁ、探してみるだけの価値はあるかな。
[青年の言葉に、ゆるりと首を傾げて考え込む。
危ない目に会うのは、好ましくないのだけれど――
暇つぶしを探すのも、良い暇つぶしだろうし。]
ゲテモノですか。
――それは、きっと向いてませんね。僕。
ここのクリーチャーたちも、なかなか面倒でしたし。
[何を思い出したか、小さく溜息。]
ま、何がどんだけ残ってるかは、わからんがね。
廃墟ん中は、クリーチャーの気配もねぇから……ま、あれだ。
急な崩落にだけ気をつければ、危険はねーし。
[予測がつかない分、クリーチャーより厄介な感もあるが。
そう言った部分も含めて、廃墟群というものには慣れているせいか、口調は軽い]
ここのクリーチャーは、まだ、素直だろ。
突発災害級と比べれば。
[ここで戦ったものを思い出しつつ、呟く。
比較対象は、絶対間違っているが]
[アーベルの惚けた声に、フフっと微笑むと]
娯楽……そうですね、何かいい物があるといいですね。
[しかし、一転。表情を曇らせると]
ゲテモノ……ですか。私もきっと向きませんね。『狩り』には。
[そう言って、たははと苦笑い。]
まぁ、宝探しみたいで面白そうですし?
近々暇なときにでも探してみます。
――崩落は、あれです。其のときは其のときで。
[運次第ですよね、と。何処かお気楽な返事。
慣れている訳では無さそうだが、ただ危機感が無いのか
軽い口調に釣られたのか、へらりと笑みを向けて。]
…素直、なんですか?
突発災害級は、出会ったことないんで判らないですけど。
[それはそれで凄そうですね、と小さく呟いて。
何処か楽しげに、液晶の壊れた端末を軽く放り投げる。
繋がった小さな鈴が、微かに白金の音を*鳴らして*]
あの廃墟が、いつのものか、にもよるだろうが……。
場合によっちゃ、お宝もあるかもね。
[壊れた理由が『変異』の破砕か抗争の破壊かでは、時代的なズレも多少はある。
当然、前者の方が歴史的価値の高いものは多いわけで]
……っていうか、そも、あんたの場合は、荒事自体が向いてない気もするが。
[苦笑するナターリエに、素で突っ込みを入れつつ]
ま、そうとも言う。
[エーリッヒの運次第、という言葉は、さらっと肯定した]
ああ、素直で直線。
突発災害級は……ま、文字通りのモンだからな。
[何度か狩ったそれを思い出しつつ、ちょっと遠くを見やってため息一つ]
……さって……。
いつまでも、冷えるとこで立ち話、ってのもなんだし。
俺は、そろそろ戻るけど……お前らは?
[軽い口調で、二人に向けて問う。
返る二人の返事がどうであれ、建物まで戻る事は変わらず。
……戻ってイレーネに探し物の結果を聞き、襲われた話を聞いたなら。
無事を安堵しつつ、多少、*小言は言うかも知れない*]
[ふと、垂れた翼の隙間に紅い色を見留める。
先程の怪鳥の血がまだ残っていたようで]
――っ。
[ばさばさと、嫌な思い出でも払うかのように乱雑に羽根を振るう。
やっている内に何だか遣る瀬無くなってきたのか、
完全に汚れが落ちたのにも気付かずその動作を続ける。
その姿を帰ってきたアーベルが見たなら、
どうしたのかと問うだろうか?
そうすれば、探し物が見付かった事も、
その後怪鳥――コカトリス――に襲われた事を話すだろう。
小言には、自分は悪くないもんと最初は愚図ったが、最後には
不注意で接近を許した事は自分の非として*理解しただろう*]
[荒事自体が向いていない気が、と言われ]
……そうですね。私なんてここに集められた他の方々と比べれば。
[そう言って、僅かに顔を伏せる。]
[突発災害級。予知越しに見た事はあれども、籠の鳥であった私は、実物を見たことはなく。
その実際の威圧感は感じたことはない。しかし、聞く限り]
……怖いですね。そんなものが人を襲うなんて。
[そう言って、肩を掻き抱く。]
[そして、そろそろ戻るというアーベルの言葉に頷くと]
そうですね。戻りましょうか。
[そう言って彼に付いていくだろうか。
イレーネから結果を聞いたアーベルがイレーネに小言を言えば、おろおろと2人の間を右往左往し、イレーネが非を認めた頃には、おろおろとしながらも*仲裁に入るだろう*。]
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