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そして、物語は動き出す。
目覚めたものが何処へ向かうか、それは一人一人の思うがままに。
どうやらこの中には、村人が3名、占い師が1名、霊能者が1名、守護者が1名、囁き狂人が1名、智狼が1名いるようだ。
おお、どうやら全員、揃ったようじゃな。 皆に大事な話がある。
先日から噂になっておるので、皆も聞いておるやも知れんが……この地に『人狼』と呼ばれる脅威が潜んでいるらしい。
噂の真偽の程は定かではない。 何事もないとは思うが、皆、念のため気をつけてな。
[戻ろうとしたけれど、声が届いて。]
ええ、と。
止めたほうがいいの?
じゃあ、手伝うよ。
猫君、落ち着いて。ね?
あとでマタタビとってきてあげるから。
[ひょいと顔を覗かせて、そんなことを言った。]
あー。まあ、な。
でも、秘密にしといてくれると嬉しい。
[怪我をしたままならまだ咎められるだけで済むから良いのだが、治った後となると、一々説明するのも面倒だ。手間だけの問題ではなく。
紙袋から一つ取り出した包みを解き始め]
……そんな高いところから落ちてはないよ。
崩れるところは見た。
岩が右腕にぶつかって、それで切ったくらい。
[簡潔に答え、摘んだ薄紅色の飴玉をお喋りな少女の口に導いて、唇に触れされた。
口止め料代わり。]
[少しばかり瞬いた後、頷いた。
猫以外に何がいただろう、という顔。
鳥の鳴き声を聴いて、そっちと勘違いしたということで片付けたかも知れない。
そうこうしているうちに辿り着いた先。
緑と黒、光と影と。
色彩に目を細めて、じっと見入る]
良いな。
[低く感嘆を洩らした]
みゃ!?ふみゃーっ!!
[毛を逆立てて迫って来た先住猫に、思わず尻尾が逆立った。さすがに人目が多いので、慌てて仕舞いはしたものの、あんまり意味はなかったかも?]
[ちょうど踵を返したアーベルに薄情者と内心罵りつつ飼い猫に手を伸ばす。そこはそれ慣れと言うヤツで首根っこをふん捕まえたところで「ミギャァ」と哀れな声が上がった]
ほれ、落ち着けってばツィムト。
お前なんでそんなに荒れてるのさね…って、あらま。
[飼い主の宥めにも反応しなかったくせに、マタタビと言うアーベルの声にぴたりと動きを止める。窺うように目付き悪く見上げる瞳孔は細い]
─森─
[鳥だったら首輪じゃなくて足輪、と。
考えがわかったら、真面目に突っ込んだかもしれない、というのはさておき]
さっき、見つけて、いいなぁ、と思ったのです。
[感嘆の声に、嬉しそうににこり、と笑った]
……このイメージでお願いして、大丈夫かしら?
うんうん、良い子だね。
そうやって良い子にしてたら、明日、朝にはちゃんとまたたびを届けるよ?
悪い子にしたらだめだよ。
[(本当の)猫に言い聞かせている。]
崩れるところ見たんだ!
[わっと歓声を上げてなおも追求しようとした口に、飴玉が飛び込んだ。
口の中に広がる甘みを味わって、にんまり微笑んだ。
追求する機会はいくらでもある。]
はみゅうう…
[飼い主の手に捕まえられて、薄茶猫が気を逸らしたのを見て、へにょりと身体の力を抜く]
マタタビ?
[が、次の瞬間、アーベルの口から出た言葉にぴくんと反応]
マ、マタタビはダメにゃ!あれは、危険にゃっ!
[またまた壁に貼り付きました、おもいっきり]
……何、してんだか。
[少女の笑みに一時的な口封じにしかならないだろうとは感じつつ、騒ぎの源、奥へと足を向け、少し離れた位置から覗き込むようにする]
ヨハナ婆、猫増えたの?
[突っ込まれ要素には多分気付いていない。
笑顔での依頼に、少しばかり考える間を開けて]
少し、掛かるが。
[小さな瓶に納めるには、少々手の込んだものになろうか。
日数と代金、恐らくどちらも指して。
それでも良いならと、承諾の意]
ほれ、そもそもお前さんも泥棒なんぞしてるから、ツィムトが目を付けるんだよ。
これに懲りたらちゃァんと対価を払って手に入れるんだねェ。
[飼い猫に目を向けていたからティルの尻尾には気付かずに言って、唸るように喉を鳴らす猫を逃げないよう抱き上げる。
「グルルゥ」と唸ってるのは悪い子じゃなく番猫としての務めだと言いたいのだが、猫妖精以外にそれが通じたかはさて]
[視線を感じて、其方を見る。
林檎の話をしていたからヨハナの元に来ているのも予想出来る範囲ではあった]
うん? 用事済んだら帰って寝直す。
[返す声には、喧嘩の名残は微塵もない]
構いませんよぉ。
[かかる、が何を意味するのか承知の上でこくり、頷く]
ユーリの細工は丁寧ですからねぇ。
ゆっくりお待ちしてますから、まずは、今のお仕事に集中してくださいね。
[笑いながら言った直後、肩の鳥がばさり、と大きく羽ばたいた]
好き嫌いの問題じゃない、よ!
マタタビは、だめ!ぜったい!
[どっかの標語みたいな台詞とともに頭をぶんぶん。ヨハナの言葉ではなく番猫の唸り声の方に、肩を縮こまらせた]
みゅう…分かってるよう…
[お菓子をくすねるのに罪悪感は無いが、縄張り荒らしはいけないという自覚はあるらしい]
[なんだか拍子ぬけした。]
……それならいいけど。
[それから猫の様子を見て、にこにこと笑った。]
うん、良い子。
おとなしくなったね。
約束だから、ちゃんとまたたびを持ってくるよ。
ねえ、ヨハナおばあちゃん、良いよね?
泥棒猫、ねえ。
……なるほど。
[騒がしい少年を一時見つめ、数度、頷いた]
まあ、人の世には人のルールがあるんだから程ほどに。
許容してくれる人ならいいけどさ。
お菓子!
待って、待って!食べないで!
[リディの声を聞くとそわそわと、ヨハナの顔を見上げる]
明日、栗、取って来る、よ!食べていい?
ありゃ……ツィムトはティルが嫌いなんだねぇ。
[廊下の様子を人事のように言うと、おとなしくなった猫を珍しげに眺めた。
騒ぎが収まった様子を見ると、席に戻りクリームをたっぷり乗せたパンを手に取る。]
あァ、準備を任せてすまなかったね嬢や。
先に食べてて構わないよ。欲しかったら猫の子も行くさね。
[リディへと労いの声を投げて、観念した様子のティルを猫の子呼ばわりし腕の中の飼い猫を撫でる]
その子はちゃァんと明日栗を採ってくるからねェ、唸るのはおやめ。
あァありがとよ、アーベル。少しくらいなら構わないさね。
ほれ、ツィムトもマタタビもらえるから機嫌をお直し。
ああ、そうだ、ヨハナ婆。
俺、栗焼きあがる前に行ったよね?
告げ口したとは思わないけど、ギュンター爺、知っててさ。
まあ、それはいいとして。
今の子にも教えたよね。
噂好きは構わないけど、一応は黙ってて欲しいな、っと。
[口止め料も含めて石を渡したのだからと言外に含めて老婆を見た]
[頷く様子に、交渉成立を認識し。
それから、唐突に羽ばたいた鳥を見やる]
リーリエ?
どうか、したんです……か?
[鳥への問いかけは、疑問系になって途切れ。
紅の瞳が、空へと向く]
……あら。あらら?
[感じ取ったのは、言葉にできない、違和感]
[一段落した所でようやくエーリッヒに向き直り]
あァ、待たせてすまなかったねェ。
…あーと、団長さんにゃ言って無いが、嬢には言っちまったねェ。
すまないすまない。
[バツが悪そうに苦笑して謝った]
少し、少しね。わかった。
ちゃんと少しにする。
[猫がどんな反応をしても、優先順位はヨハナ。]
……あ、お茶がさめちゃうね。
おれも飲もう。
[首を傾げ。
釣られるように空を見上げる。
上がった声に、もう一度視線を戻し、首を傾げる。
魔力の類は持ち合わせていない所為か、どうかしたのか、とでも言いたげな。]
いや、まあ、緊急事態だったみたいだから。
それでもいつもなら、広まっても俺が叱られるだけだからいいんだけどさ。
[素直に謝罪するヨハナに首を振る]
用事はそれだけだから、取り分減らしてもなんだし帰るよ。
そうさね、お茶にしようか。
坊も詫びじゃないが礼も兼ねて飲んで御行き。
[喧嘩の終わった様子の二人に声をかけ、自分はキッチンへお茶菓子を増やしに行く。
人が増えた分、菓子を増やせば食べ盛りの子等から文句は出まい]
少しにしておけば、長いことたのしめるよ?
[不満げな猫にそんなこといって、エーリッヒを見た。]
[帰るのか、誘いに乗るのか。]
[じーっと見ている。]
母さんもこんなおやつ作ってくれたら良いのになぁ。
[ようやくやってくると、自分を追い越す早さでパンを口に詰め込むティルの鼻をつつく。]
クリーム鼻についてる。
んん……なんでしょう、これ……。
[唐突に感じた違和感に、眉を寄せ。
もの問いたげな視線に、困ったような表情を向ける]
上手く、言えないんですけど……何かが、村を包み込んだみたいな、感じが……。
悪いものでは、ないみたいなんですけど。
[少なくとも、自分の持つ力とは、異質であるのはわかるのだが。
それが何、とは、明言できない状態で]
ん?
森番さんと、アーベルさんはお友達?
[彼が言っていた「エーリ君」が目の前の金髪の青年とは思いも寄らず、会話を交わす二人を珍しげに見た。]
ふみゃ?
[リディに鼻をつつかれると、長く舌を伸ばしてぺろんと舐めた、一緒にリディの指も舐める勢い]
美味しいにゃ♪
[口の回りについたクリームも舐めて、にんまりと満足そうに笑う]
おれが居候してるのが、エーリ君の家だよ。
[と、エーリッヒを見たまま、リディに返す。]
……それなら、おれも帰る。
だってエーリ君一人だと、転ぶでしょう?
まァ、噂好きは否定できないし気をつけるさね。
取り分は明日追加で栗が来るから構わないが…帰るのかい?
[エーリッヒの言葉に苦笑のまま頷いて、帰ると言う声に片眉を上げた。だがアーベルは食べさせたくないとか言っていたし、どうしたもんかねと見比べる]
そう、しんどいなら無理はいけないね。
後でお見舞いにでも持たせるさ。
んー…… 宿、貸してるだけ。
[肯定とも否定ともつかない台詞]
後、森番さん、じゃなくてエーリッヒって呼んでくれると嬉しいな。
俺はじっちゃには及ばないから。
……ついでに、君の名前も教えてくれるとうれしい。
[その感覚を知らないため、説明されてもよく分からないようで、首を傾げてみせ。
少し考え込むようにして]
…悪くないなら。
[取り敢えずは良いんじゃないかと、分からないながらそんな結論に達したらしい]
なんで転ばないといかんのか。
[アーベルの言葉に真顔で突っ込みを入れる]
……まあ、お好きなように。
俺は帰っても寝るだけだから、此処にいたほうが楽しいと思うけど。
[ヨハナに見比べられて、なんとも言えない、といった様子で肩を竦めた]
そんなに気を遣わなくても。
元々俺、あんまり食わない性質だから、平気平気。
エーリ君。
[二人の青年を交互に見比べ、ぽむとクリームのついた手を叩く。]
森番さんはエーリヒさんね。
覚えました!
[少々発音が怪しいものの、名前を繰り返し頷いた。]
あたしはリディア・マッキンリーです。
街から引っ越して来たの。
うーん、悪いものではないみたいですけど。
だからって、良いものとも限らないのが、困るのですよねぇ……。
[その懸念がある意味大当たりなんて、今は誰も知らない訳だが]
とりあえず、後でちゃんと調べて見た方がいいかも知れないですねぇ。
もっとも、悪いものなら、守護妖精様が弾いてくださると思うのですけど。
食わない性質だから気にかけるんだろに。
[林檎の森番(祖父)が亡くなってから、その点に関しては余り信用出来るとは言えない目でエーリッヒを見て溜息]
[エーリッヒに自己紹介をして顔を上げると、元泥棒少年に振り向いた。]
む。あたしは美味しいよ!
このクリームには負けるかも知んないけど。
[美味しくないと言われたのが何となく癪で言い返してみた。]
転べっていってるんじゃなくて、
転びそうだって言ってるだけじゃないか。
[眉を寄せた。]
それに、転ぶところが見たいのであって、別に心配とかしたわけでもないよ。
[エーリッヒが帰るなら、その場に挨拶をして、この家を出ていくことになる**]
食べないと大きくなれないのに……。
あ、エーリヒさんはもう大きいから良いの?
[大人達の会話を横目に簿そり、呟く。]
あたしはもっと大きくならなきゃいけないんだもんね。
[そう言い訳して、3枚目のパンに手を伸ばした。]
うん、そう。
リディアね、俺も、覚えた。
[怪しげな発音を咎めもせず、笑って、リディアに頷きを返す。
ちなみに溜息を吐くヨハナの言葉は聞こえていたが、聞こえていない振り]
街からか、俺、街って行った事ないんだよな。
ずっと森で暮らしていて、村に出たのも君くらいの時だしさ。
環境違って戸惑うかもしれないけど、まあ、いいところだから。
[食べたり食べられそうになったり、傍目には微笑ましいやりとりの二人(もしくは一人と一匹)を見て]
そっちの泥棒猫は、なんだっけ?
む。美味しいもん。
[じいと見つめられてたじろぎつつ、最後のパンを飲み込んだ。]
ごちそうさまでした。
[お茶が終われば片付けを手伝ってから家へと帰る*つもりだ*。]
[ミリィに言われた言葉に尤もと思ったようで、難しい顔をした。
調べたほうがいいというのには、同意を込めて頷いたものの。
守護妖精の名が出た時、表情に微妙な何かを滲ませたのには、気付かれたかどうか]
んみゃ?
[エーリッヒに視線を向けられると、むう、と膨れる]
だから、泥棒猫じゃなくて、ティル=カッツェ!
[いちいちフルネームを言うのが呼び名が猫のまんまの原因かもとか、もちろん思いつきもしない]
[聞こえない振りのエーリッヒにもう一度溜息を大げさについてから、食べ終えたリディに微笑む]
はいはい、よく食べてくれたねェ。
作った甲斐があるってもんさ。
[手伝いは喜んで受け入れるが、まずはお茶を飲んでから]
まァ…今の坊は独りじゃないし、アーベルに任せるさね。
[噂によると今晩はシチューらしいので食の心配はいらないだろうとあっさり引っ込める。明日のシュトゥルーデルも喧嘩が終わったなら分けてもらえるだろうと楽観して二人を見送るだろう*]
ティル=カッツェ、ね。
猫と名乗りつつそう言われても、ちっとも説得力がないわけだが。
……いい研究対象になりそうだよな。
[何を思ったか、人の良い、というには程遠い笑みを浮かべた]
[表情に混じった微妙な何かに、一瞬きょとり、と瞬くものの。
問うより僅かに早く、再度羽ばたいた鳥に、意識がそちらへ向いた]
……リーリエも、落ち着かないですねぇ。
ボク、診療所に戻りますね。
準備して、色々と調べてみます。
気のせいなら、いいんですけど、ほんとに……。
[むぅ、と眉を寄せたまま、小さく*呟いた*]
お前、その言い方、悪人っぽいにゃ!
[エーリッヒの笑い顔に、顔をおもいきりしかめて、言い放つ。遠慮だの会釈だのには無縁の猫一匹]
[例え問われても無口な彼のこと、はっきりとは答えなかっただろうが。
かつてこの地で人として暮らしたという守護妖精、それに対しては色々と複雑な思いがあったりするらしい]
外まで送る。
[1人(と1羽ではあるが)にするのは色々と不安だったか、そう言って。
森の出口までは着いて行くことにする]
それじゃ、お邪魔しましたっと。
[あまり礼儀のなっていない挨拶を残して、賑やかな家を後にする。
好きなようにと言った手前、付いて来るアーベルに厭う言葉をぶつけることはなかったものの]
さっきのが本音なら性根が悪いし、嘘なら素直じゃないな。
[どちらと取っているかまでは言わず、そんな台詞を投げた。
気怠さの表れか、会話なく並ぶでもなく、普段よりは少し遅い足取りで先を歩んでいたが、小屋に程近くなったところで抱えていた紙袋から飴玉とは異なる長方形の小さな袋を取り出して、背後に投げる]
約束破んのは嫌いだから。
[こっちからした覚えもないけど。
そう付け加え、相手が受け取ったかを見ることもなく、扉を開く。
*袋の中には、一本の石のついたペン*]
[すっかりじと目で、帰っていく二人の青年を見送ってから、リディと競争するようにパンを平らげ満腹になる]
ごちそうさま!
[満足そうにヨハナにそう告げて、入って来た裏口へと向かう。表の方から帰らないのかと聞かれたなら「来た所から帰るんだよ」と当然のように答えたろう]
また明日!
[薄茶の猫と一瞬視線を交わし、てってと外へと駆け出していく]
[森の出口まで来て、そのまま診療所に帰るミリィを見送り。
自分は今一度森の中へと引き返す。
先程蔦を見た場所とは、また違う方向へ。
やがて森の音に混じり、微かに聞こえて来る歌声。
何処かにあるという不思議な森の詩を。
気分転換の為で他人に聴かせる気はないから、誰かの姿を見たなら即座に止めるだろうけれど**]
ええと、大丈夫ですよぉ?
[送る、という言葉にきょと、とするものの。
強く断る理由もないので、森の外までは一緒に歩く。
その間も、白い鳥はどことなく落ち着きなかった]
ほんとに、どうしたんでしょう、リーリエ。
[なだめるように撫でつつ呟き。
森と村の境界線でユリアンと別れると、真っ直ぐ診療所へと向かう]
―診療所―
ただいまですよぉ、ブルーメ。
[門をくぐり、箒に声をかける。
こちらも、鳥と同様落ち着かない様子]
あららぁ、ブルーメもそわそわしてますねぇ……。
んん、これはちゃんと調査しないと……あら?
……今の?
[外見的には、小さな子供だったけど。
それにしては、動きが機敏だったような。
ついでに、何か違和感も感じていたり]
……ほんとに、何が起きてるんでしょう。
悪いことじゃなきゃ良いのですけど……。
[小さな声の呟きに、鳥はくるると鳴き、箒は一回転して同意を示す。
ともあれ、庭に突っ立っていても仕方ない、と*診療所の中へ*]
性根が悪くても良いよ。
[ヨハナの家を出るときは、ちゃんと挨拶をした。
[だけれど、このときばかりは機嫌のよくない声。]
エーリ君はどじっこじゃないか。
……ばーか。
[小さな声で悪態付いて、いつもよりもゆっくりと行く後を追う。]
[と、唐突に放り投げられたものを、慌てて両手でキャッチ。]
[うまくキャッチできずに、あわあわと手の上で遊ぶその袋。]
――え?
[掴んだそれ、聞こえた声。]
[扉の中に消えた彼を追うことなく、手の中の袋を開ける。]
……エーリ君のばか。そんなことするから、居心地いいなって思っちゃうんじゃないか。
[あんなにダメといったのに、小さな石がてっぺんについた、気に入ったペンがその手の中に。]
[小屋の扉を開けて、エーリッヒの姿をまず探す。]
エーリ君!
ありがとう!
[言わなきゃいけない言葉はそんなくらいで、感謝の気持ちに抱きついてしまえと。]
[それからまずは部屋に戻り、袋にたくさん入ったピアスをふたつ選んで、耳につける。]
……ん、これでまたふたつ。
ペンはダメ。
[今度はペンをやるものかと決めて、台所へ。]
[置かれた食材に手を合わせてから、やがてシチューの香りが家の中に広がった**]
―自宅―
よし、と。
[お茶とお菓子にお腹は満たされた。
両親が家に戻る迄は、まだ時間もあるだろう。
スコーンと魔法瓶の入ったリュックサックを背負い、勢い良く立ち上がる。]
いってきまーす!
[誰もいない家に声をかけて家を出た。
目指すは、崖崩れの現場。]
[大人達に見とがめられないように、街道は通らず森を抜ける。
昼間の太陽でも渇かせなかった湿気が足を湿した。
ぶるり、身を震わせて空を仰ぐ。]
んー、もう少し道の方へ寄るかな。
[地図に視線を落とし、思案顔で呟いた。]
んと、太陽があっちの方で、山があっちだから………。
[柔らかく湿った土を踏み、道なき道をふらふらと進む。
慣れない場所に不安はあったけれど、それよりも好奇心の方が大きかった。]
あ、なんだろ、この茸。食べれるかな。
[街で育った少女には森の全てが珍しく、辺りをきょろきょろと見回しながらの道はなかなか進まない。]
誰かが植えたのかな。
変なの。茸が輪になって生えるなんて……。
[秋になったとはいえ未だ青の残る草の上、薄茶の茸が円をつくり並んでいる。
小さなその輪を見つけると近寄ってぐるりと見回った。]
円の中だけ、草が枯れてるんだ……。
[昔話に詳しくない少女には、それが妖精の輪と呼ばれるものであることが分からない。]
―森―
[店に戻るべく出口を目指す。
幼い頃から慣れているとはいえ、流石に暗くなると拙い。
仕事を抱える身のこと、尚更迷っている場合ではなかった。
というわけで、順調に道を進んでいた…のは良かったのだが]
[何だかずんぐりむっくりした影が横切って行ったような。
細かい作業の多い仕事柄、視力は然程良いわけでもない。
故に瞬いた間にいなくなったそれは見間違いとも取れたが、幻覚にしては色々と濃い。
辺りを見回すも、とうにその影はない。
目には未だ釈然としない色が*残っていた*]
しかしまァ、賑やかだったねェ。
お前にゃ災難だったが…おや、眠ってるのかいツィムト?
[片付け終えて皆を見送り、揺り椅子で腰を伸ばす。足元の寝床に丸まった薄茶猫は、去るティルを一睨みした後は眠ったようだった。飼い主の声にも耳を動かさない猫に静かに笑って椅子を揺らす]
さァて明日は表から来てもらう為にも裏口は閉めとくかねェ。
菓子作ってる最中に泥だらけにされたり箒振り回されちゃ堪らない。まァたお仕置きしなきゃ行けなくなるさね。
[言葉の割りに婆は楽しげに明日の手順を脳裏に浮かべる。
いつも開けてある窓から辺りに夕食の匂いが漂い始める頃、ようやく腰を上げた。
裏口にしっかりと鍵をかけてから、一人と一匹分の夕食を用意]
起きたらお食べ、ツィムト。
あたしゃ先に食べて寝るから、夜の番はよろしく頼むよ。
[ツィムトの分以外は片付けて、眠る準備の仕上げは一皿のミルク。いつも鍵を開けてある窓の外に皿を置いて、妖精へ短く感謝する]
妖精さん、いつもありがとねェ。
それじゃァ、ツィムト。おやすみ。
[のそりと動き出した薄茶猫に声を掛けて灯りを消し、二階の寝室へ上がる。月と星の光だけが照らす窓辺にずんぐりむっくりした影が過ぎり、皿のミルクを一気飲みして去っていく姿を見ていたのはツィムトだけだった*]
―森の中―
[ぐるりぐるり。茸の周りを廻ってみても答えは出ない。
気がつけば、空の端が淡い紫に燃えていて。
少女はあわてて村への道を辿り*始めた*。]
―― 早朝/森 ――
[青年の朝は早い。夜も明け切らぬ頃に目を覚まし、木々の合間に覗く深い青紫と鮮やかな橙の入り混じる空を仰ぐのが常だった。
森に住まう小動物の多くも、まだ寝床で夢に浸る時刻。
鳥の囀りも疎らで、木の葉のさやめきばかりが聞こえる。
朝露が地面に落ちる音すら響く気がした]
……さて、と。
[ぐるり、右肩を回す。腕に痛みはないものの、若干の熱は残っていた。
どうにも、魔法との相性は悪い。
その事実を知っているのは、ほんの一握りの者だけれど]
[……耳に届く音は静かなのに、森がざわめいている。
そんな奇妙な感じを覚えたのは歩み始めて少ししてからの事。
森の出口、村の外へと近付くにつれて、それは強まっていく。
首筋に手をやり頭を僅か左に傾けた。
眉根を寄せた表情には、困惑と、それより強い不快の色が窺える]
……。
[そっと近付いてみるも、音の原因となったものはもう通り過ぎてしまったらしく、何もいなかった。
小動物にしては大きな揺れと音。人だとしたら、大人にしては素早い。子供だとしたら、こんな朝早くにというのは少々不可思議で。
得体の知れない存在に、厭な予感が胸中を過ぎった。
そして恐らく、それは間違っていない]
─診療所・自室─
ふわ……。
[思いっきり、眠たげな声と共に目を覚ます]
うう……おかしな夢を見たのですよぉ……。
[ため息混じりに呟いて、ベッドから起き出した。
小さく欠伸を漏らしつつ、身支度開始。
しばらくお待ちください]
[丁寧に髪を編み、いつものように黒を基調とした装いを整える]
……さすがに、御師匠様も戻られてませんねぇ。
[帰ってきていたらそれこそ何者なのか、と突っ込む者はなく。
ともあれ自分と、鳥の分の食事を用意して済ませ、庭へと出る]
ブルーメ、何か、変わった事はありましたかぁ?
[玄関横で、普通の箒のふりをしている箒に小声で話しかけ。
返るのは、やはり、違和感を感じる、との返事。
むぅ、と言いつつ眉を寄せ、しばしその場に立ち尽くす]
……とりあえず、一巡りしてみましょうかぁ。
御師匠様の代わりに、往診もしないとならないですし。
[小さな声で呟くと、箒を軽く撫で、白い鳥と共に門を潜る]
あ、でも。
先に、色々と確かめた方がいいのかしらぁ?
[門を潜った所で立ち止まり、困ったように首傾げ。
とりあえず、村の中央にある広場へと足を向けた]
[先の茂みを過ぎると、音の原因と思われるものは見当たらなかったが、代わりのように、少し開けた場所に円を描いて生える茸があった。
ほんの数日前にはなかったはずのそれの正体を、青年は知っている。
宴の跡との説の根強い、妖精の作った環。
枯れた茸の作る円の内部は、秋になったというのに、外部よりも青さを増した草が茂っている。
妖精の祭りの後と考えれば、それらはなんら、不思議に思うこともないのだが]
─広場─
[行き交う人たちと挨拶を交わしつつ、やって来た広場。
祭りの名残は既になく、あるのはいつもの……よりは、どこか不安げなざわめきで]
おはようございまぁす。
[そんな中でも常と変わらぬ暢気な口調で立ち話をしている主婦たちに声をかけ。
けが人や病人の話はないかとか、その他色々情報収集開始]
[時間をかけて、色々と話を聞いたものの、今自分が聞きたい手合いの話は聞けず。まぁ、病人やけが人がいる、という話がなかったのは幸いだが。
それらが一段落した所で、またも始まるのは、一人で大丈夫なのかコール]
……本当に、大丈夫ですってばぁ……。
ボクだって、子供じゃないんですよぉ?
[そう言ってむくれる様子が子供っぽい、という自覚はないようです]
―店―
[早朝。
短い仮眠から目を覚ました。
簡単な食事を済ませて、他に作業のあるらしい家人への挨拶もそこそこに、昨晩の作業の続きに取り掛かる。
丸から輪の形へと変貌を遂げた薄青の石は、渡された時よりも光沢を増していく。
完成するまではそう遠くないだろう。
真剣にただ作業を続ける姿は、昨日見たものなど忘れたかのよう*]
んん……それにしても。
[主婦軍団のお喋りからどうにか離脱し、広場の隅で軽く腕組み]
この違和感は、他の方は感じていないのかしらぁ……?
確かに、そんなに強いものではないけれど……。
[ぶつぶつと呟き、紅の瞳を空へと向ける]
んんん、朝だね。
エーリ君、朝ごはん食べたかな。
昨日のシチューはおばちゃんには好評だったけど。
[伸びをして、活動開始。]
そういえば、昨日……あれって、なんだったんだろう。
へんな子っていうより、変な……妖精なのかな。
わかんなかったけど。
[窓の外を見るけれど、そこにその影はない。]
ま、いっか。
ちゃんと食べてから、今日の食材を確保しないと。
―朝/マッキンリー家の食堂―
ん、分かってるってば。
今日はちゃんと暗くなる前に家に帰るし、手伝いだってするよ。
[バターをたっぷり乗せたパンを口に詰め込みながらうんうんと頷く。
日の落ちた後に帰宅して、たっぷりとしかられたのは昨日のこと。]
べ、勉強もね。分かった。
[デザートのプディングを飲み込むと、延々と続きそうな母の言葉を遮るように立ち上がる。]
じゃ、取りあえず行って来ます!
これ、ウェーバーさんちに届ければ良いんだよね?
[食卓の脇に置かれた卵の籠を手に取ると、逃げ出すように家を出た。]
―自宅―
さァて、頑張るかねェ。
こんなにたくさん作るのは久し振りだから腕が鳴るよゥ。
[森番ほどではないが年寄りの朝も早い。朝一番に汲み置きの水で顔を洗って身支度すると、朝食よりも先に生地の作成に取り掛かる]
…ふゥむ、こんなところさね。
後は寝かせておいて、と。
おや、ツィムトどうしたんだい?
[生地を寝かせている間に朝食の用意をし、窓の外を睨んでる薄茶猫に声を掛ける。聞こえた証拠に片耳がこっちを向いたが、背を丸くして窓を見たまま振り返りはしない]
―雑貨屋―
あ、おじさん、ありがとう!
ちゃんと受け取ったよ。
エーリ君ったらツンデレなんだから。
[色々違う]
うん、本当に嬉しいんだ。
これすごく気に入ったから。
ん、安物でも、なんだろう、持ったときにすごく気持ちよかったから。
なんていうの? 相性が良かったんだよね。
それに、今まで使ってたペンは、なくなっちゃったし。うん、気に入ってたけど、仕方ないよ。
今朝もきれいになくなってるねェ。
それにしちゃァご機嫌斜めだが、妖精じゃなく他所の猫にでも舐められたのかい?
[昨夜、窓辺に置いた皿を手に尋ねても「ミ゛ァゥ」としか返らず、ただの婆に猫の言葉は判らない]
そうかい、じゃァ好きなだけ見ておおき。
[適当に返事してしばらく放っておく事にし、朝食を取り始めた]
─広場─
……悩んでいても、仕方ないですねぇ。
とりあえず、往診をして、それから調査、です。
[そう、呟いた矢先、元気のいい声の挨拶が飛んで来て]
あらぁ?
おはようございますですよぉ。
[そちらを見やり、挨拶を返す。
夏に越してきた少女の事は、何度か見かけていたので知っていた]
「毬なし虫なし籠一杯♪」
―― 森の中 ――
[歌うように呟きながら、手にした猫のヒゲで、つん、つん、と落ちている栗を突ついて行く。その度に、つやつやとした栗の実が、ぴょこん、ぴょこん、と毬の中から飛び出していった。飛び出さないのは虫入りということらしい]
[これがギュンターに伝わったら、エーリッヒが色々アレなことになるのは、気付いていない。]
で、何か手伝うことある?
仕方ないじゃん、お金は持たない主義なの。
それに、他のものを売るのもダメ。だって、あれはおれのものなんだからね。すぐなくなっちゃうよ。
[にこりと笑って]
了解、ちゃんと薬貰ってくるよ。解熱剤と咳止めだね。あとお水っと。
そしたら、ええと、そのピアスがいいな。
うん、お使い程度だし値段なんて気にしてないよ。おれが気に入ったってことが大事なんだから。
─診療所─
[庭の掃除は、箒の大事な仕事、という訳で。
今日も今日とて落ち葉かきをしていたのだが。
違和感のせいで勘が鈍ったか、近づく気配の察知ができなかったらしい。
手を振られた箒、は、としたように動きを止めて、倒れた。
無意味に死んだフリ]
[考えこむように暫く腕を組んでいたが過ぎていくのは時間ばかり。
森は眠りから目覚め、この世界に生きるものたちの声が空間を満たす]
ん、一旦戻るか。
[独り言ちて、歩み出した。
真っ直ぐ小屋へは戻らず、向かう先は実の成る木々の元]
おねーちゃん、ぼーっと空見てどうしたの?
お腹でも減ってる?
朝ご飯はちゃんと食べなきゃ駄目だよー。
[空から視線を戻し、挨拶を返した年嵩の少女にくすりと笑った。
彼女が診療所で働いているのは知っていたけれど、今は未だ見習いの身、敬語を使う必要はないと見ているらしい。]
……えーと。
何でぱったり倒れたんだろう。
[とっても真顔で呟いた。]
お薬ってどこに行けばもらえる?
[とりあえず近付いて、つんつんした。]
[つんつん。]
―― 森の中 ――
[やがて、籠一杯分の栗を拾い終えると、よいしょと抱え上げて、歩き出す。村の方ではなく、森の外へと向かって]
ん〜、ん〜、ん〜…
[森の端まで来てから、空を見上げ、えい、と前方に足を蹴り上げる]
んにゃ!
[半ば予想通りに「ナニカ」の力に足は弾かれて押し戻された]
─広場─
ちょっと、考え事をしてたんですよぉ。
大丈夫、朝ご飯はちゃんと食べました。
朝を抜くと、一日大変ですからねぇ。
[笑う少女に、こちらも笑って返す。
敬語を使われない事は、気にしてはいなかった。
むしろ、使われる方が疲れる、というのは、親しい者なら周知の事で]
朝から元気に、どちらへお出かけですかぁ?
[ちょいと失敬した林檎をデザートに食後のお茶を飲む頃には、薄茶猫も窓の外からミルクに浮いたクリームのお裾分けに興味を移した。スプーンで猫用の皿にすくってやり、婆は振り子時計の針を見て腰を上げる]
そろそろ詰め物の準備もしないとねェ。
ツィムトや、わたしゃしばらくキッチンに篭るから好きにおし。
[「ミ゛ャー」と満腹でおっくうそうに鳴いた飼い猫を置いて、皿を片付け林檎を刻み出す。ナッツや干し葡萄、昨日ブレンドしておいた香辛料を混ぜ合わせる音が、楽しげに響き出した。
それに暫く耳を傾けた後、薄茶猫は開いた窓から外へ滑り出た]
─診療所の箒─
[実は、倒れた後の事は考えていなかったりする箒である。
というか、大抵の者は倒れて見せれば目の錯覚、と思って通り過ぎるし、それ以前に、いつもならもっと早く気付ける訳で。
ひそかに、守護箒失格、とか考えて凹んでいるかも知れない。
だからという訳でもないのだろうけど、つつかれてもまだ普通の箒のフリ。
というか、主以外には言葉が通じないわけで。
聞かれても困る、というのが本音かも]
んん、別におれは怖がらないんだけどな。
妖精さん?
[つんつんつんつん]
……まあいいや。
とりあえず探しにいこう。
場所しってたらちょっと向きを変えてくれるだけでもいいんだけどな。
無理かな?
[朝食は用意されていたシチューで済ませていたから、大した食事は青年には必要ないのだけれど、木の実の収穫はまた別らしく。
進んでいく途中で、聞こえる歌声。
その先を追って見つけるのは籠を抱えた小さな姿]
……おや、泥棒猫。
今日は栗泥棒か。
んみゃ?!
[泥棒猫と呼んだのは、昨日、準天敵に認定したばかりの青年だった。思わず、身構えたのは、個人的には不可抗力]
泥棒じゃない、よ!ヨハナに頼まれたんだから!
[妖精さん? という言葉に、箒、唐突にぴょい、と起き上がった。
それから、全力否定するように、ふるふるふるふる竿を振ってみたり。
妖精じゃないよ! アーティファクトだよ! と主張しているのだが、普通に考えても通じない、と気付いたのはしばらくしてから。
そして、気付いた途端、脱力したように、またぱったりと倒れた。
竿の先は、一応広場の方を向いていたりする]
うんうん。朝ご飯は大事だもんね!
お姉ちゃん小さいから一杯食べた方がいいよ。
[少なくとも自分よりは背の高い相手に向かい、そう言うと手にした籠を軽く持ち上げた。]
ウェーバーさんちにお使い。
母さんが、持ってけって。
違うなら、身構えなくたっていいだろうに。
[別の意味で構えられているのだと、気付いていないわけではなく]
……さっきのもお前か、妖精の環の近くにいたの?
[念の為、というように訊ねて、上から下までをじっと見る]
……妖精じゃないんだ?
んん、まあ良くわかんないからいいや。
[真顔で呟いた。]
ん、わかった。あっち?だね?
ありがとうね、箒さん。
助かったよ。
またね。
[散々、村から菓子をくすねておいて、今更泥棒じゃないも無いものだが、本人、全く悪びれる様子はない]
お前は、悪人面だから!
[しかもそれ、理由になってません]
妖精の輪?今日は近づいてないよ、危ないもの。
[小さいから、という言葉はちょっとずき、ときたかも知れない。
昔から、小柄な身体には軽いコンプレックスもあったりするので。
とはいえ、相手に悪気がないのはわかるので、色々は押さえた。頑張って]
……そうですねぇ。
でも、小さいから、中々一度に食べられないのですよぉ。
[なんか苦しいな、と思いつつ、こんな言葉を返してみたり]
ヨハナの御婆様の所にお使いですかぁ。
[そういえば、お菓子はどうなかったのかな、とか。
ちょっと気になったかも知れない]
あ、いた。
ミリィちゃん、薬ちょうだい。
雑貨屋の人からの依頼です。
[見つけた姿に駆け寄った。]
あ、リディちゃんだ。
おはよう。
今日は林檎の食べられるね。
[にこにこ笑顔。]
[ボールの中で混ぜ合わされた林檎達は、皺だらけの手で力強く押されてしんなりと馴染んでいく。
手を拭いてオーブンに薪を入れて温め、天辺の上にバター入れた器を置いてゆっくりと溶かす。その間に十分休ませた生地を透けるほど伸ばして溶かしバターを塗り、馴染んだ林檎を端に置いて幾重にも巻いた。
生地と中身がなくなるまでそれを何度も繰り返し、出来上がった何本かをオーブンに入れてようやく婆は息をついた]
ふゥ、さすがに重労働だねェ。
美味しく焼けるといいだがなァ。
[火の具合を見ながら、使い終わった道具を片付けていく]
はっはっは。
そういう事を言うのはこの口かね。
[乾いた笑いを発して、籠を抱えていては動きも鈍かろうと、ティルの頬へ手を伸ばす。大人げないこと、この上ない]
ほー、危ないって?
[問いかけながらも抓ろうとするのは止めない]
みぎゃー!いひゃいにゃーーっ!!
[籠を抱えたままでは、うまく逃げられず、あっさりと抓られ、じたじたばたばた]
妖精の輪より、お前の方があぶにゃいにゃーーっ!!
[懲りない]
……はぁい?
[唐突な呼びかけに、きょとり、としつつそちらを振り返る]
ええと、お薬ですかぁ?
雑貨屋さん……何のお薬でしょ?
[いきなり薬と言われても困るわけで、首を傾げながら問いかけた]
[その頃、昨夜の縄張り荒らしのずんぐりむっくりを探して巡回中だった猫は、森のどこかから聞こえてきた声に四つ足を止めた。
ぴんと耳を立てて話を盗み聞きする。
と言っても、人間の言葉はなんとなくわかるといった程度なので悪人面とかが何かまでは判らない。が、なんとなく同じ言葉を誰かから言われた記憶があったので、うろんげな目付きで茂みから頭を覗かせて声の主達を見上げた。
一応「ミ゛ァゥ゛(よぉ)」と鳴いたのは飼い主の知り合いの森番青年への挨拶と、(元)泥棒猫への牽制もかねている]
[最後の一磨きを終え、ぐ、と伸びをした。
光に透かして、満足気に頷く。
魔力を含む石は、光の加減により微妙に色を変化させる。
ふと時計を見。
もし自分がいない間に依頼主が来たなら、品を渡しておいて欲しい旨を親に告げ。
店から表の通りへと出て行く]
うん。昨日お茶をごちそうになったから、そのお礼。
[相手の押さえた表情に気づくよりも早く、新たにかけられた声に反応し振り向く。
手にした卵が心配になりそうな勢いで手を振った。]
アーベルさんもおはよう!
林檎のって何!?
[食べ物の話題に素早く反応して目を輝かせる。]
ええとね、確か、風邪薬。
っていうか、ええと、確か熱を下げるやつと、あとは咳を止めるやつ。
ほしいんだって。
だから、あとで届けるから、あとで下さい。
急ぎって言ってなかったよ。
はいはい。
[ぱっと手を離して、頭をぽんぽん、と叩いた。
こちらもこちらで、悪びれた様子はさっぱりとない]
妖精の環の危なさはどんなのなわけ?
ん、林檎のは、林檎のおかし?
名前なんだっけ。
エーリ君が作ってってヨハナおばあちゃんにおねだりしたんだって。
[本人が聞いたら怒りそうな言い回しで告げた。]
いっぱい、とりたての林檎を昨日あげたから、おばあちゃんの手ですごく美味しいお菓子になると思うよ。
リディちゃんの分も、ちゃんとあるかもね。
たくさん作れるくらいだったみたいだから。
うみゅう…
[頭をぽんぽんされて恨めしそうな目で青年を見上げる、聞こえて来た薄茶猫の笑い声にも、ぷう、と膨れて]
教えない、よ!
[あっち向いてぷん!]
お茶会でも、あったのですかぁ?
[リディの言葉に、首を傾げ。
勢い良く振り回される籠に、人事ながらすこーしだけ中身を心配した]
風邪薬……解熱剤と、咳止めですか。
急ぎでない、という事は、常備薬としての処方かしら。
それでも、一応、見には行った方がよさそうですねぇ……ブルーメのリボンの事もありますし。
[箒が落ち込んでいるなんて夢にも思わず、最後にぽつりとこんな呟き]
[オーブンから漂うのは甘い林檎とパイに似た香ばしい小麦とバターの香り。
焼き立てを大きなミトンを嵌めて天板ごと取出し、熱々の焼き立てシュトゥルーデルを切り分けていく]
よォし、いい感じに火が通ったねェ。
後は味だが…ぁちっち!
[一番端を口に放り込み、またもや目を白黒させた。猫舌の熱いもの好きはこの年だからもう治らない]
林檎のお菓子……焼き林檎かな、パイかな。
タルトもいいな。
エーリヒさんもお菓子が好きなんだ………。
[頭の中では青年の語るままのエーリッヒ像が出来上がっている。]
それは是非とも行かなければ。
ちょうどお使いに行くとこなんです。
雑貨屋さん自身は風邪っぽくなかったけどね。
もしかしたら隠れて風邪なのかもしれない。
[少し悩むように雑貨屋を見た。]
常備薬ってことじゃないのかな。
よくわかんない。
ほしいっていうから、お遣いに来たんだよ。
ほら、物々交換ってやつ?
ブルーメのリボン?
ミリィちゃん、新しいリボンつけるの?
[よくわからずに、きょとんとしている。]
また独りでうろうろしてるのな、お前。
[届けたのはやはり無意味だったか、とは思いつつ、警戒心を見せる薄茶の猫に対して呟き]
……なら、直接実験してみたら分かるかねえ。
[あっち向いた隙に、今度はティルの首根っこを掴みにかかる。
ツィムトにとっては昨日の自分を思い出させる動きだろう]
うみゃみゃ!
[実験という言葉に悪寒を感じて、掴もうとする手から擦り抜ける]
だめにゃー!あそこに近づくと、どこに飛ばされるか分からないにゃーっ!
[思わず薄茶猫の後ろに隠れてみたり]
[ちょうど良く漂い始めた甘い林檎とバターの匂いにはっと顔を引き締める。
早く行って自分の分を確保せねば。]
じゃ、あたし行ってきます。
お姉ちゃん、アーベルさん、またね!
[勢い良く片手を上げると張り切って駆け出した。]
[暴れて踏み潰される心配がなくなると薄茶猫は大胆にもティルの足元に来て匂いを嗅いでから見上げた。膨れた頬にも無頓着だ]
「ゥ゛ナァーゥ゛(昨夜、ミルクを飲んだのはお前じゃねえな)」
[昨日ティルへと踊りかかった猫は当然、少年が出した尻尾を見ていた訳で、妖精なら姿を変えて飲みに来たのかもと考えたらしい。
それからエーリッヒの方に視線を移し、説明してやら無いとまた抓られるぜと言う風ににやぁりとティルを見た]
ミルクは飲んでないにゃ?
[薄茶猫の声には、律儀に答えるあたり、猫同士の礼儀ということらしい]
だって、説明にゃんてできないし…
ですねぇ、御師匠様がいらっしゃらない状態で、体調を崩す人が増えると、ちょっと大変なのです。
[リディの呟きに、こちらも小さく呟き]
あ、はい、また後で。
[駆け出すその背を見送った]
物々交換でお使いなのですかぁ。
あ、リボンをつけるのは、ボクじゃないのですよ。
[リボンの話題には困ったように。
まさか、箒が動くところを目撃されていたとは思っていないから、どう説明したものかと悩んでみたり]
へえ。なるほど?
崖崩れやら森の違和感とやらとも関係あるのかね。
[隠れられていない少年を見下ろしつつ試すように問いを重ねた]
[誰も届けろなんて頼んでねえとか縄張り巡廻も仕事だとかでエーリッヒを睨んで鳴く間もなく、動き出した二人に尻尾を踏まれそうで棒立ちになる。
後ろに隠れたティルに「ミ゛ゥ(無駄だろ、それ)」と突っ込んだのはややタイミング遅め]
え、違うの?
ミリィちゃん似合うと思うけど。
[素でそんなことを言った。]
じゃあ、ミリィちゃんのお友達とか?
子供はいないだろうし。
―自宅―
ほ、ほゥと、いやァ熱かったねェ。
[慌てて冷たい水を飲んで一息。もう一度慎重に味見をし、にんまりと満足気な笑顔になった]
上出来上出来、これなら坊も文句言うまいさね。
…と、アーベルもちゃんと分けてやるよう多めに渡しとか無いと。
[熱々の内に焼けた分を切り分けて籠に入れ、一度オーブンの火を落とすか悩む]
早く焼いた方が美味いが冷めるしねェ。
それにツィムトがいないと鼠が怖いし、さて困った。
はぁ?
[似合う、という言葉に。素でぽかん、とした]
ええと、うん、お友達と言えばそうですねぇ。
[正確には自分で造った存在なので、ある意味子供と言えるかもしれないのは、ややこしくなるのでさておき]
子供って。
そんな年齢に、見えますかぁ?
[猫に鳴かれたとしたって気にするわけもなく、猫妖精の正体を悟っていたとしてもそれを言うこともなく。ともあれ、その反応に答えは期待出来ないと理解したか、「そ」と短く答えて、距離を置いた]
で、ヨハナ婆ん家行くのか、お前は。
おやま、ちょうどいいところに。
[聞こえてきた元気のいい声に、急ぎ玄関へと出て行く]
あらまァ、おはようさん。朝からお使いなんてえらいねェ。
昨日もちゃんと片付けるしいい嬢ちゃんに育ったもんだ。
[手にした籠から用件を察して褒める。褒め殺しておく]
[隣の青年が手を上げたのを見て、少し首を傾げたが、然程気にはしなかったらしい。
2人の間近まで歩いて行く。
勿論話の内容は分かっていないが]
[褒められると照れくさかったのかえへへと笑った。]
これ、お母さんから。
うちの今朝鶏が生んだ奴です。
昨日、お茶をごちそうになったお礼にって。
[籠を両手で差し出すと、そわそわした様子で家から漂う林檎の匂いに鼻を動かす。]
―森―
[ティルの返事にそうだろうなと薄茶猫は頷き、いつになく好戦的っぽく見える森番の青年に首を傾げた。普段はもう少しやる気なさそうなんだがとか、似たような印象を互いに抱いてるとか知られたらまた首根っこぷらーんされそうである。
「ミ゛ャァゥ(昨夜のずんぐりむっくりは妖精の輪から来たのか?)」
それなら妖精のミルクを飲む権利があるから構わないんだがとティルに鳴いて、距離を置いた二人を見上げた。
ティルが飼い主の所へ行くなら見張りについていくつもりだ。何せ今お菓子を焼いてる真っ最中]
「約束」したから、ね。
[青年が諦めた様子なのは判ったものの、いまいち信用できないという顔で睨みながら頷いた。栗の一杯入った籠はしっかり抱えたままだ]
うん、にあうにあう。
リボンって大事だよ。
[よくわからない]
お友達なのか、そうか。
お友達のリボンなんだね。
うん、子供いるようには見えない。
ええと、おはようございます。
[つられた手をおろして、ユリアンにご挨拶。]
産み立て卵は何を作っても美味しいからねェ、助かるよ。
お母さんにありがとうって言っといとくれ。
[礼ならば遠慮なく受け取って、照れながらそわそわする様子に困った顔を作ってみせる]
あァ、コイツはちょいと頼まれもので焼いてるシュトゥルーデルなんだが…もう行き先は決まっててねェ。
もしも、焼き立てを今、届けてくれるなら、
貰い主がお礼にご馳走でもしてくれる…かもしれないんじゃがなァ。
[近付いたら子供という単語が聞こえたので瞬いた。
次にミリィを見て、首を傾げる。
いるのか?とでも言いたげに。
断片しか聞いていない為、誤解が生じているらしい。
アーベルに改めて挨拶されて、こちらも軽く頭を下げた]
[猫の心境と言語が分からないのは、互いにとって幸いなことだろう]
……そ、約束ね。
なら、俺も行くかな。
昨日買い忘れたものもあるし。
[節約しないと今月厳しいな、などと生活感の滲む呟きを零して、ティルの意向は聞かずに足を向けた]
ユーリ、昨日はわざわざありがとうですよ。
[やって来たユリアンに、笑って言うのは、蔦を見に付き合ってくれた事と、帰り際に途中まで送ってくれた事、両方への礼]
……大事……なんですかぁ?
[それから、アーベルの言葉にむぅ、と言いつつお下げ髪を引っ張る。
三つ編みの先を束ねるのは、服と同じ黒の紐。
お世辞にも、飾り気はない]
ですよねぇ。
子供に見られた事はありますけど、親に見られた事はまだないですし。
[首を傾げるユリアンの様子に一瞬きょと、と。
誤解されているとは思いもよらず、何か物問いたげな様子に、どうしたのかとこちらが悩んでみたり]
……どうか、しましたぁ?
[悩んでもわからないので、とりあえず聞いてみた]
ええと、はじめまして?
[わかんなくなったので、とりあえず挨拶だけをちゃんとしておいた。]
[それからミリィを見て、こっくり頷く。]
うん。大事って、聞いたよ。
女の子はリボンなんだって。
よくわからないけど。
ミリィちゃんもリボンつけてみたらどうだろう?
きっと可愛いよ
[にこにこと言って]
そうだよね。
ミリィちゃんを親に見るのは無理があるよ、うん。
[行き先は決まっている、と言う言葉にがっくり肩を落とし、その後に続いた言葉にぱっと顔を上げた。]
はい!
宅配リディ、喜んで配達させていただきます!
誰に届けるの?
みにゃ?ずんぐりむっくり?
[薄茶猫の声の方に気を取られていて、青年が歩き出したのに気付いたのは、その後だった]
ええっ?!お前も行くのにゃ?!
[気付いた途端、ものすごく嫌そうな声。しかし約束は約束だ]
うーん……。
[悩んだ。
なんだか真剣に悩んだ]
そう言われましても……。
余り、派手に飾り立てると、色々と……。
[邪気なく言われて、困ったように眉を寄せ]
……ですよねぇ。
[続いた言葉に、盛大にため息ついた。
見える、といわれてもそれはそれで複雑なのだが]
[ミリィの礼にはひらひらと手を振った。
それから、少し間が開いて]
…子供、いるのか?
[返す質問は直球だった。
本人は至って真面目である]
[ミルク一杯の代わりに家事を手伝う妖精と同じく、お菓子の代わりに栗をと約束したのなら、それは正式ではなくても猫妖精と人間の契約なのだと、猫の眷属である薄茶猫なら知っていたろうか]
ふみー
[仕方なく籠を抱え上げ、青年からは距離を置いて歩き出す。先程までと違って足取りは重かった]
いいのかい、そうしてもらえると凄く助かるよ。
[かかった、とにんまり笑いを噛み殺す。素直な子は可愛い]
届けて欲しいのは森番さんのところさね。
頼んできたのは坊…エーリッヒなんじゃが、林檎を取ってきてくれたのはアーベルでねェ。
ちょィとややこしいが、一応、アーベルに届けてもらえるかい?
籠持って来るんで、ちょィと待ってておくれ。
リボンは派手じゃないと思うけどな。
ね、そう思うよね?
[ユリアンに聞いてみた。]
あ、おれはアーベルっていうんだ。よろしくね。
でも、崖崩れのあとがなおったら、旅に出るんだけど。
……はぁ?
[真面目な様子で、しかも直球で問われて。
またも惚けた声があがった]
え、ええと、ええと。
なんで、そうなるですかっ!
[アーベルとのやり取りが誤解されてるとは思ってはおらず。
呆然から復帰したら、今度は大声が出た。
肩の上の白い鳥が、驚いたようにぱささ、と羽ばたく]
[数歩先にいったところで立ち止まって振り返り]
ずんぐりむっくり?
[首を捻る。
嫌そうな叫びには、にやりと薄く笑みが浮かべられた]
何か、問題でも。
[あったとしたって、お構いなしではあるが。
重い足取りながら歩みだしたのを見て、満足げに頷いて前を向くと歩みを再開した。慣れた様子で、いつもと何処か違う空気を抱いた森を進んでいく]
[薄茶猫は幸いにも通じ合わない森番の青年が歩き出したのを見ながら、猫妖精にそうだと鳴く。
人間の小さな子供くらいの大きさだった、としか言えないのだが。なにせ、どれだけその影が美形でも人間とか妖精基準の話なので、薄茶猫からすればただのずんぐりむっくりだ。
ティルも動き出すと薄茶猫も動き出し、結局二人と一匹がてくてく]
[その思惑には気づくことなく、張り切って相手の言葉を待つ。]
………アーベルさんのとこか……。
エーリヒさんが、林檎のお菓子が大好きなんだよね……。
[広場で聞いた言葉を思い出して、ついでに多少の誇張も含んだイメージを思い浮かべ、肩を落とす。
自分の分け前は貰えるのだろうか。]
や、でも、アーベルさんは好きじゃないかもしれないし……うん。
[ぶつぶつと算段をしながら、籠をとりに部屋の奥へ戻ったウェーバーさんを待つ。]
[リディを待たせて、自分用に残しておいた分を紙に包んで追加で籠に入れる。紙の表に鉛筆で薄く『リディ』と書いておけば察しのいい者なら感付くだろうと、籠を埃避けの布で軽く覆って玄関へ戻った。
リディの想像は知らないが、聞いたら笑い転げること確実だ]
すまない、待たせたねェ。
悪いけど早速行ってもらえるかい?
熱々の内が一番だから、よろしくお願いするよ。
[リボンの件については、急に聞かれても何のことやら、といった感じで瞬く。
次にアーベルの名乗る言葉を聞いて、…少し目を逸らし]
…ユリアン=ゲージ。
[告げた名前は何処にでもあるようなものだが、この村では少しばかり意味合いが違ってくる。
故に名字も併せて]
[大声と白い鳥の飛び上がる音に、そちらに視線を戻す。
むしろこっちが驚いた、という風な顔で。
違うのか、と言いたげに首を傾げた]
[薄茶猫はティルの鳴き声に、元気出せとでも言うように尻尾を一度揺らし先立って歩く。
猫の眷属だから約束はわかってるが栗届け終わったらそれで終了なので、その後を気にしているあたり妖精との契約の深い地を縄張りにしているのは伊達ではない。
言い負かして満足そうなエーリッヒの顔を見て、ユリアンに告ぐ危険人物とティムトの小さな脳に刻まれたのは秘密である]
[手渡された籠を受け取ると、まだ暖かいの言葉の通り、熱の籠もった湯気が手を温めた。]
はぁい。
行ってきます。
[返事は先程より少しだけ、元気がなかったけれど、足は元気に駆け出してゆく。
そう言えば、ツィムトはまだ寝ているのだろうか。
空になったミルクの皿が目に入り、薄茶猫の不在に首を傾げた。]
[ニ匹の心境は知ってか知らずか、ともあれ振り向くことはない。
向かう先、老婆の家でされている噂話を知らないのは間違いないが]
……で、本当に、何も分からないわけ?
例えば、村全体に魔法が何かが、かけられている……とか。
[あてずっぽうか、憶測か。
森の入り口まで来たところで不意に問うた。
足を止めることはなく、そのまま村へ続く道に差し掛かる]
[アーベルの声と笑顔に視線を戻し、こくりと頷く。
勝手に付けられた渾名に対しては特に気にした風もなく。
むしろそっちで呼ばれるほうが良いのかも知れないが]
[薄茶猫の懸念は当たらずとも遠からず。さすがにヨハナの家からは無理かもしれないが、帰りに他の家から菓子をくすねる気は満々だ]
それにしてもへんな人間ばかりにゃ。
[昨日の妖精を使う青年だの、箒の魔女だのを思い出し、ぶつぶつぼそり。相手も猫妖精に言われたくはないだろうが、まあ知ったこっちゃない]
はぅぅ……。
[ユリアンの驚いたような表情と、問うような仕種に、はぁ、とため息をついて]
どこからそういう勘違いが出てくるですかぁ、ユーリは……。
いるわけないでしょう、もぉ。
[何となくくったりとしつつ、肩に戻ってきた鳥を撫で]
嫌いではないですよぉ。
色んな色や模様は、見てて綺麗ですし。
でも、自分でつけるのは、また話が別なのです。
[アーベルの問いにはこんな答えを返した]
…はて、少々意地悪しすぎたかねェ。
素直にお使い頼むより面白いかと思ったんだがなァ。
[少しだけ元気の無い声に首を傾げたものの、元気に駆け出して行ったリディの背を見送りキッチンへと戻る。
天板に再び包み終えた生地を並べ、オーブンに入れた。今度は切り分けるナイフを残し、テーブルの上を完全に片付けていく。
本当は熱々を食べるつもりが、上げてしまったのだから仕方ない。
二回目のユリアンへの代金分とミリィへのお詫び分は、やがていい匂いをさせ始めた]
んんん……
女の子ってリボンが好きなんだと思ってた。
つけるのが。
ユー君、ユーリ君の方がいい?
[ミリィの呼び方に、つられて聞いてみた。]
ほうほう。
つまり知らない分からない力無しと。
[弄りネタの一つだったか否かの答えは青年の心の内にしかない。
距離を離したままに道を行き、やがて見えて来るのは広場]
子供と聞こえたから。
[呆れた声や溜息にも悪びれた様子はない。
ところで、子供という言葉に不意に脳裏を過ぎる昨日の影。
ちょっと眉が寄ったかも知れない]
[広場にまだ彼らがいるのを見つけると、籠を抱えたまま走り出した。]
おおーい!
アーベルさーん!
お届けものですよー!
[走りながら叫ぶ声は切れ切れで。
けれど疲れた様子もなく広場で会話するお使い先に駆け寄る。
先程より一人多くなった顔ぶれに、改めて挨拶した。]
馬鹿にするにゃ!力ならあるにゃっ!
[ぷんすかぷん。青年の意図がどこにあるかなぞ、元より考える気は無く、言い返す。「力」が何を指すのかはさすがに判るまいが]
へ?
[いきなり聞こえた大声に、そっちを見てきょとんとした顔]
あれ、リディちゃん。
お届けものって何?
おれにお届け物なんて、そんなにないと思うんだけど。
ええと、でもお疲れ。
ありがとう。
つけるのが好きな人の方が、多いでしょうけどね。
ボクは、そうじゃないのです。
[なんとなく、アーベルに返す口調は投げやりだったかも知れない]
聞こえたからって、飛躍しすぎなのですよぉ。
……あら?
どうか、しました?
[それから、ユリアンに向き直り。
僅かに寄った眉に、きょとり、と一つ瞬いた]
[大きな声に振り向き。
それが先程の少女と分かれば、軽く頭を下げる。
直後の別の大声が届いたなら、軽く首を傾げたかも知れない。
語尾とかの点で]
とりあえず主張する前に、語尾をなんとかしたほうがいいと思うが。
人の世に邪魔するつもりなら。
[耳を抑えたまま、目を細めて言う。
雑踏の中では何処まで届いたやら知らぬけれど]
[飛躍しすぎと言われれば頭を掻くが、相変わらず悪いとは思っていなさげだった。
問いにはやっぱり眉を寄せ]
…妙なモノを思い出した。
[モノ扱いである。
妖精王の姿なぞ知らないから仕方ないことではあるが]
あら、リディさん。
[戻ってきた少女に、声をかけ。
違うところから響いた声に、あららぁ? と言いつつ瞬き一つ]
あの声は、猫君?
[その認識はどうなのか]
うーん、どうしよう。
ユー君のままにする。
[いうだけ言ったのかと思えるほど、すぐに決めた。]
まあ、個人の好き好きだよね。
リボンだし。
泥棒猫君じゃなくて、ティー君だね。
[一応名前を言った。そっちをみた。]
妙なもの?
そういえばなにかおれも見た気がするけど、なんだったかな。
覚えてないや。
[配達先の青年の前で急停止。ぴっと肘を三角に曲げてポーズをとると言った。]
エーリヒさんちのお客さんのアーベルさん、アーベルさん。
ウェーバーさんちのおばあちゃんよりお荷物が届いております!
エーリヒさんが欲しい欲しいってねだってた奴!
[それだけ一息に言うと、両手で籠を差し出した。
差し出す瞬間、少し、いや、かなり悲しそうな顔をして。]
未だ温かいよ!
ふみゃっ!
[語尾の方にか、内容にか、まずいと思ったのは確かのようで、慌てて片手で口を押さえる。目を細める青年の顔を見る視線は、やっぱり不信気味]
お、おいら、先に行く、よ!
[広場に他の不審人物達も居る事を見て取ると、籠をしっかり抱えたまま駆け出した]
妙な、モノ?
何か、見たのですかぁ?
[ユリアンの言葉に、こちらもふと思い出したのは、昨日見た怪しい影。
その正体なんて、今は知る由もない訳ですが]
うんそう、好き好きなのですよっ。
[アーベルの言葉には、こくこくと頷いた]
……リディちゃん、ありがとう。
ええと。
食べる?
[思わず尋ねた。まだ中を見る前なのに。]
でも、エーリ君にもあげないとね。
おねだりしたの、エーリ君だし。
はい、はい……っと。
[青年も行こうとはしたもののだが、匂いの源は好物に思えて、つい釣られたのと、何より近寄った折に聞こえた少女の声の中に己の名を拾って、猫妖精とは別方向に歩を進めた]
何の話だ。何の。
[二人の後を付いてきた薄茶猫は、広間に集まる人物に敵を見つけてぴたりと四つ足を止めた。
「ナ゛ァゥ゛(ち、あいつか…)」と低く唸りながら様子見。
が、駆け出した猫妖精の姿に、はっとして注意が逸れる]
[猫と言われて思い浮かぶのはツィムトのほうだが、まさか奴が喋るわけではあるまい。
そんな思考は置いておいて]
昨日。
大人の顔の、…子供?
[森のほうを示しつつ。
妙なモノは説明し辛いらしい。
ちなみに美形云々は疎いのであまり分かりません]
うん、良いよ。
…あ。
ええと、またたび。
[ティルがいやがったのも何のその]
[ポケット探って、またたびの葉っぱを土の上においた。]
[よもや広場に大集合なんて知らず、二回目の焼きあがったシュトゥルーデルを以下略]
よォし、此方もいい出来さねェ。
首輪の代金分は…見てからにしようか。栗も届くはずだし。
[昨日の栗のクリームは予定外の客で一瓶分しか残らなかったので、また別のものを作る事にする。
自分の分は火を落としたオーブンに入れて温かいまま置いておき、ミリィの分は紙に包んでユリアンの分と一緒に籠に入れた。
いただいた卵をしっかりと戸棚に隠し、戸締りし始める]
[脇から聞こえた突っ込みに、はきはきと答える。
少なくとも広場中には聞こえる声量で。]
はい。エーリヒさんがウェーバーさんちのおばあちゃんに食べたいっておねだりした、バターと林檎が入ったお菓子です。
[その名前は、そう言えば聞いてなかった。
詳しく聞けば余計に手から離しづらくなるのが分かっていたから。]
熱いうちにどうぞって。
[こちらを見た箒の魔女やら、妖精もどきの青年やらは、きっぱり無視を決め込んで、広場を駆け抜けヨハナの家に駆けて行く。置かれたまたたびに気付かなかったのは幸いか]
栗、持ってきたよ!
[そうして今度は表の入り口から、息せき切って声をかけた。家の主が出て来たなら、かご一杯の栗を差し出してにんまり笑う]
「毬なし虫なし籠一杯」約束通り!
[お菓子を巡るやり取りを横目に見つつ]
大人の顔の、子供……。
ボクが見かけた人影と、似てるかもですねぇ。
[顔までははっきり見なかったものの。
ただならぬ気配を感じた人影を思い起こしつつ、呟く]
んん、やっぱりちゃんと調べるのが先かしら。
あ、でも、お薬の処方も……。
[天敵認定の見習い青年とか白い鳥とか地面のマタタビの葉っぱとかに薄茶猫は意識を引かれたものの、番猫としてのプライドが勝った。
が、マタタビは自分への報酬と認識してるのでしっかと咥えてから猫妖精を追いかける事にする。
傍から見れば獲ったどー!みたいに見えたかもしれないが、猫はそんなこと気にしない]
……ああ、シュトゥルーデルね。
[敢えて突っ込みは入れず、内心で頭痛を覚えるのみに留めておいた]
ヨハナ婆にお遣い頼まれたのか?
サンキュ。
あたしはこのままかぶりついても構わないんだけどなぁ。
母さんが見てたら怒るけど。
……あ!
あそこはどうでしょう?
[広場の隅、木で作られたベンチを指して*駆け出す*。]
で、そっちは何の話?
[駆け出す少女を視界の片隅に収め、随分と温度差があるように思える、硝子細工職人と治癒術師、二人の見習いの会話に首を突っ込む]
[リディとアーベルとのやり取りを眺め。
その手が振られるのに釣られて、そちらを見る。
エーリッヒを見つけて片手を上げ。
ついでにマタタビ咥えたドラ…もとい飼い猫が去って行くのも見た。
すぐに去られたので、少しばかり残念そうな表情]
あ、リディちゃん早い。
えーと、エーリ君も食べようよ。エーリ君が食べたかったんでしょう?
[じーっと見てから、*追いかけた*]
あ、エーリ。
[声をかけられ、最初に視線が行くのはやっぱり右腕。
紅の瞳は、少しだけ真剣さを帯びて]
ええと、昨日見かけた怪しい人影に関しての考察……ですねぇ。
[ミリィの返答に目を瞬かせた。
示し、見たのか?と首を傾げる。
他に見た者がいるとは思わなかったらしい]
妙なモノを見た。
[エーリッヒには端的な回答。
何とも分かり辛い]
おやま、ありがとさんだよ。
[表の玄関に出たところでやって来たティルに笑って、頭を撫でようと手を伸ばした。
そして籠を受け取ってキッチンに戻り、栗を戸棚にしっかり隠す。
追いかけてきたマタタビに素早く逃げた猫妖精が、焼き立てのシュトゥルーデルに手を出して火傷せずにすんだのはある意味幸い]
ツィムトお帰り。いいもの貰ってきたねェ。
[逃げた猫妖精に鼻を鳴らし、ぴんと尻尾を立てた薄茶猫が婆の足に擦り寄る]
お前が居るなら安心だァね。
それじゃァ、ちィとばかし留守を頼むよ。
[寝床にマタタビ持ち込む番猫に留守を任せて、店に向かおうと広場を通る]
ん、……ああ。
先に食べとけ。
[好物は好物だが、年下の前でがっつくような事はしない。
それでも見送る時間は少し長く、その間に向けられたミリアムの視線には気付けずじまい。二人の回答が得られてから漸く顔を戻した]
怪しい人物、に、妙なモノ……?
変質者でも出たのか。
変質者だって? そりゃまたなんだい?
あァ、こんにちわだよゥ。
[噂好きが先立って思わず口を出してから、挨拶。
籠を差し出すにはタイミングが悪そう…というか話が気になって耳を傾ける]
[ユリアンにはええ、と言いつつ一つ頷き]
変質者さんなら、ブルーメが撃退していますよぉ。
[エーリッヒにはさらりとこう返す]
なんていうか……子供らしくない、子供、って言えばいいのかしら。
妙な違和感を感じさせる人影を見かけたのです。
[変質者、という言葉に少し悩んだ。
…ややあって頷いた。
姿が姿だから多分仕方ない。
ヨハナの声に気付き、頭を下げ。
首輪のことを思い出したか、口に手を当てた]
あれ、ヨハナ婆。
間抜け猫は?
[泥棒から間抜けにひっそりと格下げされていた]
いや、俺も今聞いたばっかりだから、
[言いかけて、次いだミリアムの台詞に首を傾ぐ]
…………子供らしくない……妙な違和感、か。
それなら、俺も見たかもしれない。
見たというか、直接見たわけじゃないが。
変質者に子供って、また変な話してるねェ。
[素直に突っ込んでから、ユリアンの様子に籠の布を少し持ち上げた。ふわりと甘い林檎とバターの香りのする紙の包みを取ってから、籠ごと差し出す]
あァ、そうそう冷めないうちに前払いさねェ。
こっちはミリィに。約束していた分だよ。
[それからエーリッヒの言葉に片眉を上げた]
…うちのツィムトは間抜けじゃないさね。
それより坊はもらえなかったのかい?
森自体も、変な、ざわめている感じがするんだよな。
妖精の環があってさ、それ自体は、祭りの後だから格別珍しいことでもないんだが、間抜け猫……ティル曰く「危ない」ものらしいし。
[口許に手を当て、眉を寄せながら言う。
熱を残す腕が少しだけ、疼くような気がした]
おかしなのが入り込んだかな……?
あら、ヨハナの御婆様、こんにちわです。
[挨拶しつつ、ぺこり、と一礼して。
差し出された包みに、表情が一気に崩れた]
ありがとうございますっ!
御婆様の作るお菓子は美味しいから、凄く嬉しいですっ。
[にこにこしながら受け取って。
エーリッヒの言葉に、瞬き一つ]
エーリも、ですか。
んん……やっぱり、色々と気になりますねぇ……。
昨日から、妙な違和感も感じますし。
[ちゃんと、調べた方がいいかしら、と。
呟きながら、*軽く首を傾げ*]
うん? ああ、違う、違う。
昨日の泥棒猫の事だよ。先に行くって言っていたんだが。
[勘違いを訂正した後、緑の眼を瞬かせる。
他者の心配を余所に、喧嘩をした当人はと言えば、すっかり忘れ去っていた。ヨハナの表情に一瞬不思議そうになり、それから苦笑を浮かべる]
いや、こっちの話題が気になったから。
それに、食べるなら、ゆっくり食べたいし。
[好物に口許を綻ばせるさまは、なんとなく見せたくないらしかった]
[前払いと言われ、籠自体は素直に受け取った。
代金の一部でもあるからか、頭を下げて、やや丁重に。
それから少し考えて]
取って来る。
[そう告げて、店目指して駆け出す**]
こちらこそ、ツィムトが迷惑掛けたからねェ。
[ミリィの表情に婆も笑って、子供とか、森とか、妖精の輪とかに耳を傾ける。少々不謹慎かもしれないが、婆の目は楽しげに話へ興味を示していた。噂好きの血が騒いでるらしい。
それからエーリッヒを向いて]
なんだい、猫の子の事さァね。
ちゃぁんといい栗を持って来たよゥ。
ツィムトが戻ってきたのと入れ違いに消えちまってたけどねェ。
[まさかマタタビから逃げたとは思わず首を捻り、続けられた言葉に目元を皺だらけにして笑った。美味しそうに食べる様が可愛いから、坊呼ばわりが抜けないのかもしれない]
調べられるなら調べて欲しいかな。
原因わからないと、俺も、すっきりしないしさ。
[表情を崩すさまを眺めながらミリアムに言う]
ああ、でも、診療所の事もあるだろうから、無理はせず。
手伝えることあるんなら、手伝うよ。
[取って来ると駆け出したユリアンを目を細めて見送る]
うんうん、真面目な子だねェ。
磨いたか首輪になったか、出来上がりが楽しみだァ。
[既に聞こえないだろうが丁寧に頭を下げた姿を褒めてから、エーリッヒ達に向き直る。是非とも好物より気になると言う話をじっくり聞かせてもらうつもりだ*]
ああ、ちゃんと約束は果たしたんだ?
[言葉の端に微かに混じる安堵の色]
……消えたって、忙しい奴だな。
どっかに菓子を盗みに行ってたりして。
ヨハナ婆のところに敵うのは、早々ないけど。
[笑みの意味を知ると、ほんの少しだけ憮然とした表情になる。大人ぶろうとしても、老婆の前では特に、子供染みた様子は抜け切らぬらしい]
[結局は立ち話もなんだからとベンチに移動して、お子様二人に駆逐されそうなシュトゥルーデルを食べながら、会話を交えることになる。
頬が緩むのは抑えたつもりでも、*実際にはどうだったのやら*]
[用事があると話の輪から抜け、通りに立ち並ぶ店に入る。
普段、村に出て来ない青年に対してかけられる声の多くは食事の心配。料理が不得手なのは周知の事実だ。焼きたてのパンやミルクを頼むと、大抵はおまけがついて来た]
いいの?
いつも悪いねえ、サンキュ。
[両親を早くに亡くし、祖父をも喪ったという子への同情もあったろう。軽薄な笑みを浮かべる当人が、どう感じているかは分からないが。
暫く店番の女性の話し相手、というより噂の種を探された後、袋を抱え帰途に着く]
[小屋に一度戻り、荷を整理する。
ミルクは主に夜、裏口に置くためのもの。風習を知りながらも祖父が亡くなってからは止めてしまったこと。けれど今日は、祭りの後の出来事を鑑みて。
パンの袋には木漏れ日を受け黄金に煌めく瓶を入れてから、森に赴く。香ばしさに釣られ、ひとかけちぎり、蜂蜜を塗って口に*放り込んだ*]
そういえば不審者みたいなのおれも見たよ。
不審者じゃない気もするけど。
よくわかんないし、忘れてた。
[シュトゥルーデルを頬張りながら、そんな事を告げた。]
[食べる量はそんなに多くない。最初からちゃんと少なくして手をつけたので、問題はないけれど。]
んん、ご馳走様。美味しかった。
エーリ君いってらっしゃい。
あ。
おれもちゃんと、材料貰わないと。食事の。
どっかで夕食つくるの面倒くさいって言ってる人、知らない?
エーリ君とおれの分を貰うのが報酬で、お仕事するんだよ。
これでも十年くらい、んん、もっとかな? 旅してるし、おいしい料理なら作れるからね。
[そんなことを皆に聞いて、どこで食材を貰うか、甘い林檎の香りの中で*考えていた*]
娘ッ子が調べるねェ…。
[ミリィが調べるとかいう話に失礼にも大丈夫なのかという目で見ていたが、エーリッヒが必要なら手伝うらしいので口は出さずおく。どうも婆からは診療所の娘ッ子は危なっかしく見えて仕方ないのだが、動く箒の事を知らないのだから当然だ。それだけ診療所に用が無い、つまりは元気だと言う事なのだが]
あァ、ざっと見ただけだがなかなか粒揃いだったさねェ。
あれならいい渋皮煮を作れるよゥ。
…盗まずにちゃァんと交換条件すればいいのに、困った子さねェ。
おやおや、随分と褒めてくれるじゃないか。
[ティルが約束を守った事に安堵した様子のエーリッヒにそう告げて、珍しい褒め言葉に顔全体をくしゃくしゃにした]
はいよ、お口に合ったなら何よりさァ。
…ユリアンも親方さんも熱い内に食べてくれてるといいんだが。
[美味しかったと言うアーベルに笑って、去るエーリッヒを見送る。ユリアンの消えた店の方を見やってから視線を戻し、問われた内容に首を傾げた]
ァん? なんじゃィ、また夕食をかね?
あいにく今日は出歩いてないので知らないが…茸のシチューなら食べたいもんじゃなァ。あれは量を作らんと味が出ん。
あァ、さすがに二日連続でシチューは坊に気の毒じゃし茸も採ってないから明日以降で当てがなかったら、でいいんじゃがなァ。
おっと、持って来てくれたようだねェ。
ありがとよ、ユリアン。
[肝心の本日の夕食の手助けにはなっていない話をいくらかした所で、戻ってきたユリアンの手元に先程までと違う鋭い視線を向ける。
値踏みする目は年を重ねた分だけ厳しく、示される品に注がれた*]
― →店―
[息せき切って店に駆け込んだ。
預けていた品を受け取り、だがすぐには出て行かない。
少し考えた後、部屋の隅にある棚の引き出しを漁る。
ややあって見つけたのは、澄んだ音を立てる硝子の鈴。
以前作っておいたらしいそれに糸を通し、首輪に取り付けた。
ついでに空腹もあったか、台の上に置いてあった籠に手を伸ばした]
[暫く後、少し軽くなった籠を奥に持って行く。
親でもあり師でもある人と2、3言交わし、籠を手渡し。
自分は首輪を手に店を出、元来た道を駆ける]
―広場―
[広場に舞い戻り、息を整えながら、ヨハナに品を渡した。
丁寧に磨いた甲斐あって、表面は滑らかで、石であった時よりも透き通った色に見え。
だが首輪の形そのものは多少歪な部分もあるかも知れない。
流石に、サイズが小さくてツィムトの首が絞まる、などということはないだろうが。
厳しい視線が注がれるのを、こちらもやや緊張した面持ちで*見つめた*]
…面白いもん作ってきたねェ。
[しばらく見つめての第一声は興味を多分に含んだ声。
手を伸ばして輪を取り、光に透かすように持ち上げる。表裏、軽く振って涼やかな鈴の音を確かめ、そうしてようやくユリアンの顔を見て、にんまりと笑った]
ちょィと歪な所も在るが、あの大きさの石からくり貫いたんなら上等さね。ツィムトもあれ以上は大きくならんじゃろうし、まァ大丈夫じゃろ。
首輪分の色付けは期待しとくといいさァ。
―― 森 ――
[朝の見回りの続きを始めて、暫く。
“不審者”は見当たらず、代わりに見つかったものはと言えば――]
……ちょっとは歳考えて大人しくしてろよ、爺さん。
[小さく溢した悪態は聞き逃されず、今日こそは、拳骨を食らった。
腕の怪我の追求から始まった年老いても元気な自衛団長の説教は、普段は森番の仕事だと訪れる事も少ない場所に来た理由を訊ね、なんとか遮ることに成功した。
予想通り、祭り後の異常を調べに、とのことだったが]
[いつもとは異なる森の雰囲気と見かけた人物の事を話すと、ギュンターは眉間に皺を寄せて唸り始めた。妖精の祝福を受けた村では災厄に見舞われたことは殆どなく、若い者よりも内心の不安は強いらしい]
もし妖精が原因なら、好物を餌にして罠仕掛けるとか、どうだろ?
捕まえたら、何かわかるかもよ。
[言いながら、袋の中身を見せる。その数が減っているのは、実行したのか誘惑に負けて食べたのか、眼前の人物の知るところではないが。
この村に長く生きる老人は、妖精に対しては“善き隣人”の印象が強いのか、首を縦には振らず、表情を崩しもしなかった。冗談、と青年が笑う]
ああ、そう言えば、妖精の環が出来てたんだ。
でもいつもと違って、近寄ると「危ない」らしい。
[曖昧な言葉ではあっても、不安に駆られる老人の興味は引いたらしい。
寄せられた眉の下の瞳と視線を合わすと]
……よくわかんないけどね。
ミリィが違和感調べるって言ってたし、そっちに聞くほうがいいかも。
とりあえず、立ち入り禁止の看板でも立てて置く?
[首を傾げ、問いかけた。
途端、情報を得た自衛団長が、水を得た魚の如く大股で歩み去って行くのを、呆気に取られて*見送ることになるのだった*]
[示されていた金額を払い、丁寧な手付きで首輪を前掛けのポケットに入れる。現金で渡したのは、もちろん指一本分のみ]
あァ、そういや何かリクエストはあるかい?
今ならいい栗があるがねェ。
[特に無いなら渋皮煮にしようか、それを使っての菓子にしようか考えながら無口な青年に問いかけた]
─広場/少し前─
んん……そんなに大掛かりな事にはならないと思うから、大丈夫ですよぉ。
[手伝う、というエーリッヒの言葉に、思案をした後、こう返す。ヨハナの視線には、菓子へ意識を持っていかれていた事もあり、気付いてはいなかった]
それじゃ、ボクは一度診療所に戻りますね。
雑貨屋さんのお薬、用意しないと。
ちょっと、待っててくださいねぇ?
[菓子を平らげた所でアーベルに向けてこう声をかけると、足早に診療所へと戻ってゆく]
─診療所─
[診療所に戻ると、出迎えたのは何やら落ち込んだ様子の箒。それを訝りつつ、中に入って薬の準備をする。
その辺りの手際の良さだけは、普段の暢気さとは大分かけ離れているのだが]
これから、寒くなって、必要になる人が増えるといけませんし……。
少し、多めに用意しておきましょうかぁ。
御師匠様も、いつ戻られるかわかりませんしねぇ……。
[ふう、と小さくため息をついて作業を進め。
一回分に小分けした薬の包みを袋に詰め、色違いのリボンで口を結ぶ]
これでよし、と。あとは……。
[頼まれものの薬をバスケットにいれ。
その横に、色鮮やかな液体を満たした硝子の瓶を何本か入れる]
……試薬は、このくらいで十分かしらぁ?
[試薬って、なんですか]
ちぇー、しけてるにゃ。
―― 村の中 ――
[ぱりぽりぽりと固いクッキーを齧りながら、ぷらぷらと歩いている。ちなみにちょろまかして来たのは仕事熱心の余り留守がちな自衛団長の家からだったりするのだが、固くて(文字通り)湿気りかけたその味は、ヨハナの家の焼きたて菓子とは比ぶべくもない]
[ともあれ、用意した薬を持ち、再び、白い鳥と共に外に出る。
まだ落ち込んでいる箒を宥め、不審者に気をつけるようにと注意してから、再び広場へと]
─診療所→広場─
はぁい、お待たせしましたぁ。
こっちの、青のリボンが解熱剤、赤のリボンが咳止め薬になりますから。
それと、後でお邪魔しますから、と、雑貨屋さんにお伝え下さいねぇ。
[広場に戻ると、アーベルに薬を渡し、ついでに伝言を頼んで]
……それじゃ、ボクはちょっと調べ物に行ってきますねぇ。
[場にいる人々に手を振り、森の方へと歩き出した]
[シュトルーデルで満たされたお腹の筈なのに、栗のことを考えればまた口の中に唾が広がる。]
ウェーバーさんはいいなぁ。
あんなお菓子をいっぱい作れるなんて、魔法使いみたい。
[そう呟くと、呼応するように聞こえるのは隣で同じお菓子を頬張る青年の申し出。]
アーベルさんも魔法使いか……って十年も旅してるの?
すっごーい!
[ひゅうと口笛を吹いて、ミリィと対して違わないように見える相手をまじまじと見た。]
以外と年寄りなんだね。アーベルさん。
[評価は良好。
ひとまず安堵の息を吐き、頭を下げた。
ツィムト本人(?)が天敵の作品をどう思うかはさておき。
受け取った金額を掌の上で数え、ポケットの中にしまう。
リクエスト、の言葉には少し考え]
…何でも。
[あまり詳しくはないようで、結局はそう答えた。
それが色付けの分だとは気付いているのやら]
ティー君じゃないね。
[ほのぼのとリディに答えた。]
あはは、魔法使いって。
料理は慣れたら作れるよ。リディちゃんも、きっと得意になると思う。
……でも年寄りじゃないと思うよ。
一応、22歳だと思うし。
[こっくりと頷いた。]
[どこかへ行ってもどってきたミリィには、うんと頷いて。]
わかった、伝えておくね。
さて、待ってると悪いからおれも移動しようかな。
雑貨屋さんに行かないとね。
さぁて、と。
どの辺りなら、良いかしら。
[ぶつぶつと呟きながら、森へと向かう。
調べる、と言っても、実は探査や調査と言った力の使い方は、苦手な部類なのだが]
……この違和感が、何か、結界的なものであるなら。
それなら、ボクの専門分野なのですけどねぇ……。
[呟く表情は、やたらと真剣だったりする]
ご飯作って欲しそうな人だったら、自警団長さんちとか。
村の平和を守るのに忙しくって、ご飯を作る暇がないんだって。
母さんがたまにご飯持って行ったりしてたよ。
[自分の分を食べ終えて、寂しげに空になった袋をたたむ。]
22歳?
じゃあ、あたしくらいの時から旅してたの?
[推定の言葉には気がつかず、ますます目を大きく開けて、童顔の青年を見た。]
[お菓子に未練はたっぷりあっても、ヨハナの家に取って返す気はない。何しろ今、あそこには恐怖の「マタタビ」があるのだから]
ううう、すっごい良い匂いだったにゃ…
[ちらりと届いた匂いを思い出してぶるると身体を震わせる。その良い匂いこそが曲者だ。猫妖精にとってマタタビは魔薬なのだ(誤字に非ず)その魔力に取り憑かれてしまったら、二度と猫妖精の国には帰れない]
おや、そうかい。
なら任せてもらうとするかねェ。
[支払い金額に文句は無い様子なので、ツィムトの様子を見てから作る物を決める事にした。新鮮な卵もあるし腕の振るいがいがある]
それじゃァ、一度戻ってツィムトにつけてみるさね。
どォんな顔するか楽しみだ。
[にんまり笑って手を振り、家へと戻り始める]
さて、とあたしも村の平和を守る為、不審人物探しでもするかな。
[アーベルとミリィを見送って、暇になったから立ち上がる。]
皆が見てるのにあたしだけまだ見てないなんて、流行に乗り遅れちゃうよ。
あと、栗は何のお菓子になるのか調査しなきゃ行けないし、昨日は結局たどり着けなかった崖崩れも見なきゃだし……。
勉強してる暇なんて無いね!
[嬉しそうににっこり笑った。]
[しけたクッキーも齧り終え、今度はどこかでミルクでもちょろまかそうかと思っていると、森の方へ向かうお下げ髪の少女の姿が見えた]
箒の魔女にゃ?
[何やら真剣な面持ちに興味がむくむく、こっそり後をついていく]
[頷いて、ヨハナを見送り。
まだ残っている人がいたなら軽く手を上げて、広場を後にする。
次の仕事に取り掛かるべく、取り敢えずは店に戻ろうかと、通りを歩き出した]
― →通り―
─森─
[ついてくるものがいるとか、気付いた様子もなく。
相変わらず、違和感を感じる森の空気に、むぅ、と眉を寄せ。
肩の白い鳥をちらり、と見る。
鳥はこくり、と頷くと長い尻尾を器用にくわえ、羽根を一本抜き出した]
とはいえ……何となく、予測はできてしまっているのですけど……。
でも、当たっていたらいたで、どうしてなのかしらぁ?
[小さな声でぽつり、と呟きつつ、バスケットから緑色の液体の入った硝子瓶を取り出して。
瓶の中身を少しだけ、白い羽につけた]
んー……。
力の反応は、あり。
とはいえ、ボクの作れる試薬では、詳細までは読み解けませんねぇ……。
やっぱり、ちゃんと探査系も学んでおくべきだったかしらぁ……。
はぁ……召喚系とか、呪返し系なら、得意なんですけどねぇ。
[何故か青く染まった羽根を見つつ、大げさなため息をついた時。
白い鳥が何かに気付いたようにばささ、と羽ばたいた]
……リーリエ?
[きょとり、としつつ見やった鳥は、何故か背後を凝視していたり]
[先ほどちらりと聞いた話に寄ると、どうやらその不審人物の背は小さいらしい。]
敵を見んとするには、まず背丈から……。
[どこで覚えたかわからない言葉を呟いて、四つん這いで通りを歩き出す。]
―― 森の中 ――
みゃ!?
[甘い匂いにうっとりしつつ、ミリィの動作を眺めていたが、白い鳥に凝視されていると気付くと、慌てて茂みの中に隠れる]
―自宅―
[家に入り、婆は機嫌よく寝床で伸びている飼い猫に近づいた]
ほゥら、ツィムトや。いい物を持って来たよゥ。
ちょィと耳を寝かせておくれ。
[耳の後ろを掻いてやり、片手で頭を支えるようにして石の首輪をくぐらせる。何度か撫でられたかいあったのか目測は誤らずぎりぎりで通り抜ける。つまりは薄茶猫が自力で外すには少々耳が邪魔すぎるという罠]
よしよし、ぴったりじゃないか、たいしたもんだ。
目の色に合ってていい感じさねェ。
[褒められて嬉しいのか薄茶猫は青い目を細めて「ミ゛ャァン」と鳴いた。寝床から滑り出て姿勢を下げて伸びをする。そして後ろ足で首輪の後ろを掻いた時、猫は異変に気付いた。
首に鈴を付けられた猫が、涼やかな音を立てて鳴るそれを外そうと大暴れし、飼い主に宥められるのにはしばしの時間を要したとか]
……あららぁ?
[鳥の視線を辿ると、不自然に揺れる茂み]
誰か、いますの?
[とりあえず、持っていた物一式をバスケットに戻し、声をかけてみた]
ええと、こんにちは!ユリアンさん!
よいお天気ですね!
[相変わらず手は地に着いたまま、取りあえず礼儀正しいところを見せてみた。
きちんと挨拶の出来る子供は、怪しいものじゃない筈だ。]
なに、ですか?
村の平和を守る為、不審人物調査を!
あ、そう言えば、ユリアンさんも見たんでしたっけ?
小さくてオッサン顔でお菓子が好きで猫みたいな……?
[言ってるうちに何か混ざって来た気がする]
─森─
……あららぁ、猫君ですかぁ。
そんな所に隠れて、何をしてるんですかぁ?
[返って来た声に、素で返した。
白い鳥、くるると鳴きつつ、ばさりと一つ羽ばたき。
こちらはどうやら、呆れている様子]
別に大きく動かなきゃ鳴る訳でなし、気にしなきゃいいのにねェ。
せっかく可愛くしてもらったんだから我慢おし。
[鏡に向かって何とも言えない顔つきで動かなくなった猫に言い置いて、寝床でバラバラに千切られていたマタタビを今の内にと暖炉に放り込んだ。
それから栗を水に浸し、ほんのり温かいシュトゥルーデルで一息]
[挨拶されて思わず頭を下げた後、空を見上げてみた。
丁度太陽が雲に隠れたかも知れない。
そこには突っ込みを控えたが]
そこまでは小さくないが。
[訂正箇所は他にもあるだろうが、一瞬しか見ていなかった為に言ったのはそれだけだった]
─森─
何にもしてないなら、隠れなくてもいいんじゃないですかぁ?
[こて、と首を傾げつつ、素で聞いた。
それから、投げられた問いに]
ボクですかあ?
ちょっと、調べ物を。
昨日から、村の周りに違和感みたいなものを感じるので、それが何かを確かめようと思ったのですよ。
[太陽が陰った後の沈黙は気にしないことにした。
もとから無口な人だって母さんも行っていた筈。]
えっ!
もっと大きいですか?
……これくらい?
[取りあえず膝立ちになってみた。]
…それにしても。
面白そうな妖精の訪問なら大歓迎だが、崖崩れがソイツに関係してたりしたら嫌だねェ。
違和感どうのこうの言っとるのもよく判らんしなァ。
お前は何か感じてるかい?
[ただの村人である婆には封じられた事などわからず、一方的に猫に話かける。返って来たのはやる気の無い尻尾一振り]
茸採りがてら見るだけ見てみるかねェ。
お前もおいでツィムト。何か変なものを見つけたら教えておくれ。
……閉ざしてる、壁?
[ティルの言葉に、眉を寄せ]
やっぱり、結界系の術が施されているの……?
ええと、その壁は、村全体を包み込んでいるのかしら。
だとしたら……やっぱり、何かを封じるための陣……?
―― 森 ――
[ミリィが眉を寄せる様子に首を傾げる]
なあんだ、気がついてたんじゃないの?
魔女のくせに鈍いなあ。
うん、村は覆ってるんじゃないかな、森の端っこに壁があったから。
きっとあの変な妖精の輪のせいだよ。
[言いながら、特に深刻な表情は見せない。むしろ楽しそうにぺらぺらと]
あんな妖精の輪、見たことないからね!
森の妖精だって、きっと怯えてるんじゃないかな。
─森─
確かにボクは魔女ですけど、力の半分は抑えられているんだから、仕方ないじゃないですかぁ。
[鈍い、というティルの言葉に、ちょっとだけむくれてみせた。なんか色々とあるようです]
村全体を覆う陣……その力の反応は、高位妖精のもの。
なんだか、昔話の状況に近いですねぇ。
[思い返すのは、守護妖精の伝説の一端、妖精王によってかけられたという封じの陣]
……変な、妖精の輪……ですかぁ?
見た事ないって……どんな風に、変なのです?
合格ですね!
[同意を貰い、嬉しそうにきょろきょろしながら歩き出す。
数歩で立ち止まると振り返った。]
これ、歩きにくいですね……。
こんな大きさで歩けるなんて、さすが不審人物……。
って、なんで首を傾げてるんですかー!?
―― 森 ――
へへー、それじゃ半人前魔女なんだ?
[箒を怖がっていた反動か、力を抑えられていると聞くと、途端に態度がでっかくなる]
変は変なんだよ、判んない奴に説明したって、どーせ判んない。
[ふふん、と鼻を鳴らした]
[ぽかんと見送り、どれだけ経ったことやら。
元気な老人を追うことはさっくりと諦めて、好きに動くことにした。
普段よりは静かな森、賑やかなやりとりの源を辿るのは容易で]
……へー。
俺以外にはお喋りなわけな。
[二者のやりとりから幾らか離れたところで、声を発した。
少年の背後寄りのその位置は、死角になっていたのだろう]
あら。
[急に態度が大きくなった様子に、くすり、と笑んで]
……それでも、魔界の皆様のご助力を願うくらいは、簡単にできるんですよぉ?
[にこにこ。
でも、目だけは笑ってません]
それはさておき……妖精が見ても、異変を感じる妖精の輪、ですかぁ。
それを押さえるために、結界が張られた、と考えるのが妥当なのかしら。
……でも、だとしたら、守護妖精様は?
おかしなものが近づけば、退けてくださると思うのですけど……。
もっと小さかった、かな。
[記憶は曖昧らしい。
首を捻り。
それはそうと、膝立ちのまま歩く少女を見て]
…それで歩かなくても。
[やや遅い突っ込み]
あ……あらら?
[唐突に聞こえてきた声に、きょと、と瞬き一つ]
……エーリ?
いつから、いたんです、の?
[こっちも気付いてなかったようです]
むむ…。もっと……?!
[なんとか調節しようと、背を延ばしたり曲げたりしてみたけれど。
限界を感じ、がくりと地に手をつく。]
不審人物に出来るなら、あたしにも出来ると思ったんです。
こんな難しい大きさで移動するとは。
相手は何者なのでしょう。
……小人さんとかだったら可愛いんだけどなぁ。
今さっき。
この間抜け猫が威張り腐ってた辺りから?
[飛び出た猫耳を指差しながら言う。
驚いた様子も見せない辺り、やはり予想はついていたらしい]
半人前だなぁ。
猫君、少し、落ち着かないと、ですよぉ。
[取り乱させたのは、誰ですかと]
……物騒だから、使いたくないんですよぉ。
わかりますでしょ?
[それでも、小声でこっそりプレッシャーかけるのは忘れないようです。
立場が知れ渡ると、色々とややこしいのもあったりするので]
今さっき、ですかぁ。
[それなら、魔女肯定の辺りは聞かれてなかったかな、と。
内心、ちょっとほっとしていたり]
あ、それはそうと……昨日からの違和感の理由、何となく掴めたのですよ。
[それから、とりあえず見つけた話題を投げかけてみた]
帽子被っとくとか、そういう発想はないのか?
まあ、この村だから、まだいいんだろうけどさ。
妖精は善いもの、って思っている奴ばっかりだし。
[溜息を吐いてみせた]
で、なにか、分かった?
[後半はミリアムに向けての問い]
[リディが一生懸命頑張る様を、何となーく眺めていた。
やがてがくりと挫折したのを見て、その辺に落ちていた棒を拾い上げ。
流石にど真ん中は邪魔なので、隅のほうに移動して、ひらひら手招き。
地面に何やら描き始める。
程なくして頭でっかちで手足の短い、幼児みたいな絵ができあがった。
こんな感じ、と手で示す]
[切り換え先の話題は、丁度向こうの意向ともあっていたようで。
ほっとしながら、空を見上げる]
……ええとですね。
相当に、高位な妖精の力で、封じの陣が張られたらしいのです。
守護妖精様の力では、ないようなのですけど……。
陣が張られた理由は、わからないのですけれど……どうも、何かを押さえ込もうとしているみたいですねぇ。
猫君の言う、おかしな妖精の輪と、何か関わりがあるのかも知れないのですけど。
お?
[手招かれるままについて行くと、不思議な姿が土の上に立ち現れるのを夢中になって見守っている。]
おおー。
[棒の動きが止まると、ぱちぱちと手を叩いた。]
ユリアンさん、絵がうまいんですねー。
さすがは細工師。
これで奴の姿はばっちり目に焼き付きました!
そう言えば、どこで見かけたんですか?
帽子?そんなの持ってないにゃ。
[結局うまく収まらずに、猫耳をぴくぴくさせながら、むう、と膨れる。すでに正体隠すのは諦めた模様]
[これがこのくらい、と地面に手を付き、その高さまで上げた。
小人というには少し大きいサイズかも知れないが]
可愛…くはなかった。
[顔は描いていない絵を示して、付け加えた]
[自称研究家、魔女と言われてもあっさり受け入れそうではあるが、さて]
封じの陣に、守護妖精ではない、別の妖精――ねえ。
守護妖精が封じられた、とか?
それなら、崖崩れなんてことが起こったのも、理解出来る気もするけど。
[首を捻りながら言う憶測は、自分でも釈然としないのか、あまり覇気がない。
封じられたにしては、朝よりも森は何だか騒がしい。音ではなく、気配として]
うん、聞いた俺が馬鹿だった。
[猫妖精はあしらうことに決めたらしい]
ああ、そう言えば。ギュンター爺、来なかった?
ミリィに会いに行くか、妖精の環どうにかしに行くつもりだったと思うんだけど。
可愛くないのか……やっぱりオッサンですもんね……。
可愛かったら、妖精とか小人とか……あ、良き隣人て言った方がいいのかな。
[この村の年寄りに注意されたことを思い出し、少しだけ呼び名を帰る。]
そういう、素敵なものかなーって思うのにな。
まあ、いっか。
森ですね。
情報提供、ありがとうございます!
[肘を三角に曲げ敬礼すると、棒の指す方へと駆け出した。]
ほれ、いつまでも拗ねてないで。行くよ、ツィムト。
[籠を背負って火箸装備で準備完了。戸締りして家を出る。
そして森へ向かおうと村の中央を通りがかった]
守護妖精様が、封じられた……?
んん……お祭り直後の荒れ模様とか崖崩れとか。
信憑性がでちゃいますねぇ……。
[むぅ、と言いつつ眉を寄せる]
でも、そうだとして……誰が、何のために、というのも問題ですよぉ。
[土地の護り手を押さえ込む、というのは、容易いものではなく。
そうまでして、何をしようとしているのか、というのはやはり気にかかるのだが]
て、はい?
ギュンター御爺様には、お会いしてませんけど……。
妖精の環をどうにかって、それ、危ないような……。
あ!
[駆け出した後、くるりとUターンしてまた戻って来た。
かけ戻りながら、ポケットをがさごそ探る。
ポケットの中には昨日森で見つけた白い石。
有無を言わせずユリアンの手をとると、その中につややかに光るそれを押し込む。]
お礼です!
暗いところで光るんですよ!それ!
[誇らしげに笑うと、また駆け出した。]
[ぷい、と横を向いていたので、エーリッヒの手が伸びてきたのには気付かない。ギュンターの名に、少し耳がぴくぴくしたのは、さっきクッキーをくすねたせいだろう]
あ、さっきはお菓子をありがとう!
[老女の前を走り抜けて数瞬の後、もうすっかり消化されたシュトルーデルのお礼を。
首を傾げる相手には聞こえただろうか。]
[美形かは分からない上に、オッサンを繰り返されるとなんだかそんな気がしてきたらしい。
頷き、元気よく駆け出す後ろ姿を見送って。
棒は隅に放り、落書きを消そうと立ち上がった]
分かったら苦労しないんだけどね。
だから、罠でも仕掛けてみたら、ってギュンター爺に言ったけど、
[気付いていないのをいいことに、ぽふっとティルの頭に左手を置いて、わしゃわしゃと撫でる。パンと蜂蜜を入れた袋を持ったままの右手は、ミリアムの方へ向けた]
こういうのが引っかかりそうだよな。
[猫耳も纏めて撫でるものだから、当人(猫)にとっては傍迷惑だ]
……危ないとは言っといたんだがねえ。
場所言う前に行ったから、一旦村に戻ったかもしれないが。
立ち入り禁止にしといたほうがとも言ったし。
[と思えば、Uターンして戻って来るリディに瞬く。
手の中に残される白い石。
それを見た後、再び顔を上げた時には既にその姿は遠かった。
代わりに道の先にいるヨハナに気付き、頭を下げる。
貰った石はポケットの中に]
うみゃみゃみゃ!
[わしゃわしゃと撫でられて、頭が揺れる]
なーでーるーにゃ〜〜〜!
[ぶるぶると頭を振る。もう話も聞いてるのか怪しい]
おや、ちょうどいい。
ユリアンにつけたところを見てもらうかい?
[後ろを付いてきてるはずの薄茶猫を振り返るが、既に姿が無い。
どこに行ったか目で探しているとリディの礼が耳に届く]
どういたしましてサァ。
[とっくに離れた背に声を掛けたが届いたかどうか。
そして首をユリアンに戻すと、その方向に飼い猫の姿を見つけて目を瞬かせた]
おや、近づいていくなんて珍しいねェ。
人の仕掛けた罠で捕まるようなものに、守護妖精様が封じられたんだとしたら、泣けちゃいますよぉ。
[冗談めかした口調で言いつつ。
一応、経過の方は気にしているらしい]
危ない、と言っても、村の皆を危険晒さないように先陣を切るのが役目、とか。
そう、返されますからねぇ……。
[妙に、しみじみと言った]
それなら、自衛団さんの詰め所に戻っていらっしゃるかしら?
[さて、当の薄茶猫はと言えば、礼とかそんな殊勝な事を考えている訳がなく。単にきれいな白い石に気を惹かれただけだった。
石の首輪は気に入ってるし、硝子の鈴も首もとのふさふさした毛並みのおかげで普通の動きにはうるさく無いから一応許容しているが、鈴を付けられたと脳内で結び付いたら猫パンチの一発は確実である。
屈み込んだユリアンの正面を避け、伸び上がってポケットの方に前足を伸ばしてしきりに気にした様子を見せる]
[ティルの抗議は聞いちゃいない。わしゃわしゃ、続行]
それは、確かに。
[ミリアムの指摘には深々と頷いた。
後半には更に深く、頷くことになるのだが]
……そろそろ歳考えろ、って話だよなあ。
戻ってるんなら、いいんだけど、ねえ。
なにやってるんだい、ツィムト。
他所様のものをとっちゃいけないと言ってるだろゥ?
[主に他所の食卓から狩ってはいけないという意味だが、婆は制止の声を一応投げた]
[わしゃわしゃしてるのを特に止めないのは、多分、傍目にはほのぼのしているから]
でも、見方を変えると。
そんな大事ができるものがいるって可能性があるわけで、それもそれで大変……なのですよねぇ。
[呟く口調には、危機感はない。
口調には]
本当に。御師匠様も、心配されてるのですよねぇ。
戻ってなかった場合は……妖精の環、見に行ってるのかしら。
……様子、見に行った方が良いような気が……。
[正面は避けられたものの、やたらと纏わりつく猫に首を向け。
そちら側のポケットに入っているものと言えば、首輪の代金と先程貰った白い石。
少し考えてポケットに手を入れ、石を掌の上に。
…今のところあげるつもりはないが]
んんん、今のリディちゃんよりもっとずっと前かな。
たぶんね。
ずっとずっと、旅してきたから、どれくらいだかわからないや。
[リディにそんなことを言ったあとで、雑貨屋に向かった。]
[ちゃんと薬を渡した。]
えと、ミリィちゃん後で来るって。
ん、心配なんじゃないかな。なんか色々変だし?
ほら、がけ崩れといいねえ。
あ、そうそう、明日はきのこのシチューなんだけど、今日はどうしよう。
ね、ね。誰か作ってほしそうな人いなかった?
おばちゃんには好評だったし、そういう人増えないかな。
ここで受け付けてもいい?
……ケチー
……それも、確かに。
そりゃ大変だ。
この村、そういったトラブルには弱そうだし。
[今までは守護妖精に護られてきたわけだから、と顰めっ面。
それでも、青年の口調もまた、比較的軽いものではあったが]
行っておくか?
森の……騒ぎ方っていうのかな、それが変わっているのも気になるんだよな。
[本来であれば、この森には居ないはずの、見えぬものの気配が強まっていると気付くものは、さて、いるのか]
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