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学生 ラッセル に 1人が投票した
医師 ヴィンセント に 6人が投票した
医師 ヴィンセント は村人の手により処刑された……
次の日の朝、お嬢様 ヘンリエッタ が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、書生 ハーヴェイ、学生 ラッセル、雑貨屋 レベッカ、双子 リック、吟遊詩人 コーネリアスの5名。
-深夜:雑貨屋2階-
[たくさん話をし、家に帰ったがぜんぜん寝付けなかった。
身体は疲れているのに目が冴えてぐるぐる思いがめぐる。]
けほ、けほっ。
…セキも出てきたわ。やっぱり風邪みたい…。
[窓を開け、冷たくなってきた風を感じる。
たくさんの事を聞き、たくさんの事を知った。
遠く、なり続ける音楽の中、きゅっと両手を合わせて握りつつ、祈る。]
お願い…。
ニーナを…連れ戻して。
アーヴァインさんと…
…ヴィンセントさん、どうか無事で…。
[きゅ、と目を瞑る。
祈りの言葉は夜の帳へと*消えて*]
―早朝・ホテルの自室―
[眠った形跡の無いベッドの横で、銀の髪をくしゃりと掻き混ぜる。僅かに乱れて額にかかった髪は、憔悴の様子を顕しているように、見えなくもない]
ふ……
[零れるのは、吐息か笑みか]
―レストラン―
[重い足取りで、レストランのドアを開ける。いつにない沈んだ表情に顔を向けたマスターが、怪訝そうに首を傾げた]
………コーヒーをお願いします。………出来ればウィスキーを垂らして。
いえ、食事は要りません。
[具合でも悪いのかと、問うマスターには黙って首を振り、カウンターに座る。そのまま誰かに出会うまで*そこにいるだろう*]
――ええ、悲劇の始まりを。
私は高みの見物をさせていただきましょう。
[くくく…と男の笑い声が空間に響く。
喉の奥で噛み殺しなどしない。もう、我慢する必要はないのだから]
くくく…ははははは!
……?
[ゆらゆら、
覚束なくて、
ふわふわ
まるで夢心地。
けれどいつもと違うのは、]
アリス?
……アリス、どこ?
[テディベアがいないこと。]
[ぱちぱち、
幾度も瞬きして、
きょろきょろ、
辺りを見回して、
けれど霞みがかって解らなくて、]
ここ、どこ?
寒い、
[――夢なら醒めたらいいのに。]
[演目の始まりを待ちながら、新しい抜け殻へ施したメイクの出来栄えに目を細める。
やはり真白に塗り潰された小さな顔には、金のウサギが片目を覆い、可愛らしい鼻の先っちょは焦げ茶色。頬にもご丁寧に細い髭が薄茶色で描かれて。
ピンクのパフスリーブのワンピースの上、白のエプロンドレスがふわりと揺れる。
髪にはリボンとレースの代わりに、二つの長い耳がゆらゆらと覗き。腕に抱かれた茶色のクマは、首から大きな金の時計を下げていた]
大変可愛らしいですよ、ヘンリエッタちゃん。
アリスくんと一緒に、鏡の迷宮で皆さんを出迎えてあげなさい。
[幾重にも反射する鏡の迷宮で、少女を捕まえられるでしょうかね、と密やかに笑う]
アリスくんならここですよ。
もっとも、触れられはしませんが。
[聞こえてきた心細い声に楽しげに囁いて、虚空へと消える]
[身体が眠る宿の一室。
傍らに置かれた鞄の中には、扇子もゼリービーンズも*ない*]
─サーカス広場・昨夜─
危険だから……と言って、止まる君じゃあないんだよな。
[リックの言葉に、浮かぶのは苦笑。
少年の行動力は知っている。
それだけに、心配な部分がない……とは、言わないが]
ただし、無理はするなよ?
君に何かあったら、ソフィーさんが大変だ。
[冗談めかした言葉を投げ。
再び、青の妖精を見やってから、その場を離れる。
サーカスが盛り上がればそれに比例してざわつくような感触が増すような、そんな気がしていた]
─骨董品店2階・早朝─
[朝、夜明け前に目を覚ましてすぐに窓を開ける。
流れ込むのは、冷えた空気と音楽。
ふう、と一つ息を吐いて、手にした短剣を握り締めつつ目を閉じる。
しばしの、静寂。
開かれた目には、怪訝そうな色]
……なんだ、これ……何か……違う?
[何がどう、と。説明はできないのだけれど。
新たに『視える』方へと増えた気配の内の一つには、強い違和感が感じられた]
……ヴィンセントさん……あんた、一体……。
[何者なんだ、との呟きは、しかし。
もう一つ増えた気配が誰かを『視た』瞬間の驚きに飲み込まれる]
な……なんで、あの子が!?
[いつも熊を連れていた、赤の少女。
彼女がそこにいる、という事、それが意味するのは]
……笑えねえ。
[苛立ちを帯びた呟き。黒猫が案ずるように低く、鳴いた]
[支度を整え、階下へ。
いつもと変わらぬ様子の祖父と話をしつつ、朝食の準備を始める。
食事をしながら交わす会話も、いつもと変わらない。
サーカスの事や、町の事。
茶飲み友達の一人の孫娘がいい年頃だとか言う話は完全に黙殺しつつ。
茶飲み友達の話題に便乗して、ごく何気なくヘンリエッタの話題を振るが、祖父はそれに怪訝な顔をして見せた]
……あれ、そうだっけ?
[他の誰かの話と勘違いしとらんか、という祖父の言葉には曖昧に返す物の、それは確信を得るには十分なもので。
食事とその片付けの後、黒猫を伴い、家を出る]
さて……どうしたもんか。
……だ、れ?
[何処かから聞こえて来た囁き声は、
まるで彼と話すときのようだったから、
投げたのは初めての問いと同じもの。
けれども一瞬感じた気配は闇に溶け、
答えが返って来ることもない。]
[ここ、と言われて意識を向け――
ぐらり揺れる感覚の後、
目の前には時計を提げた熊と、
化粧の施された兎の少女の姿。]
アリス、
……と、わたし……?
[彼女の揺らぐ睛は常より薄くて、
少女の伏せた眼は常より昏くて、
まるで光が失われて闇に沈むよう。]
やだ、
ひとりはやだ、
寒いの、
[頑是無く首を振り、]
ひとりぼっちじゃ、駄目なの。
[抱き締める熊はいなくて、
代わりに固く目を瞑って、]
やっと、
見つけたのに。
[*赤が、薄れて、消える。*]
大丈夫だよ、何かなんて起きるわけないじゃないか。
ハーヴェイさんは心配性だなぁ。
まあとりあえず。
今日はいったん、母さんのところに戻ろうかな。
[その日、鏡の迷宮に増えた愛らしい一つの影。
真白な貌の片側に金のウサギを施され、ピンクのワンピースの上から白いエプロンドレスを纏う。
金色の時計を下げたクマの縫いぐるみを腕に抱き、長い耳を揺らす白兎の少女。
鏡に映る彼女の姿を見つける者は、その正体に気付く者は、*果たして――?*]
そうですか、コーネリアスさんが。
それで、ヴィンセントさんが、と。
僕ですか?
いえ、御好意で下宿させて頂いているだけですし、其処まで親しいとは。
――でも、そうですね。考えてみます。
おはよ、母さん。
別に。どうもしないよ
あ、母さん。これさ、昨日落ちてたっていったじゃん。
誰が買ってったのか、覚えてる?
……そっか。
ううん、なんでもないよ。
じゃ、ちょっといってくる。
これね。
ヘンリエッタっていう子が、買ったんだよ。
おれが、ずっと、たりないって思ってたとこに。
……なんでもないよ。
でも、今度は、母さんにもちゃんと紹介するね。
─メインストリート─
[家を出て、歩いていく道すがら、考えをまとめていく]
状況は変わらない……どころか、悪化している。
そこの流れだけ見れば、魔術師殿の策が外れた……って事になるだけだが。
[それだけと思うには、ヴィンセントから感じた違和感が気にかかる。
そして、ヘンリエッタが『視える』側にいる事。
ピエロと妖精。
パズルは少しずつ、組みあがっていくだろうか]
じゃ、いってくる。
母さんもレベッカさんのところ、行くんでしょ。
……レベッカさんは忘れてないんだね。
ううん、なんでもない。よかったなって。
じゃあ。
[呼びかける声に、思考を一時中断して、そちらを振り返る]
っと、リックか。
……ヘンリエッタ嬢、どこかで見たか?
[唐突な問いかけは、どこか、確かめるような響きを帯びていただろうか]
ああ。
家のじいちゃんは、見事に忘れていたが。
[それから、いなくなった、という短い言葉に、微かに眉を寄せて]
どうして、それがわかるんだ?
どうして。
なんだろね。
あんまりよくわかんないけど。
ずっと、探してたんだ。
誰だかも、何かも、わからなかったけどさ。
ようやく見つけたのが、ヘンリエッタだったんだ。
……ずっと、話してたんだけど。
いきなり。
引き剥がされたみたいに、痛かったから。
いなくなったんだって、わかった。
そんなかんじかな。
……良くわからんが……。
どうやら、君らには、何かしら強い繋がりがあった……って、感じでいいのかな。
そして、それが異変を伝えてきた、と。
[リックの説明を、自分なりにまとめて、一つ、息を吐く。
それから、声を潜めて]
……ヘンリエッタ嬢、な。
ニーナたちと同じ状態になってる。
サーカスに女の子の新入りがいたら、偶然じゃなくて完全な作為、だな。
……こうなると、昨夜の呼び戻しの話も、だいぶ疑わしいかね。
ヴィンセントさん……なんか、違って『視える』しな。
強い、つながりなのかな。
ずっとね。二人で、話してたんだけど、そういうことなのかな。
サーカスにはいったと、思うよ。
ラッセルさんも一緒だったっていうから、何か知ってるかなって思って探してるけど。
…………そっか。
きっとね、ヘンリエッタなら、すぐわかるよ。
ヴィンセントさんが違って見えるって、どういうこと?
ラッセルが?
[そう言えば、昨日は姿を見なかったな、と思いつつ]
……それだけのつながりがあるなら、きっとすぐに見つかるさ。
[微かに笑って。今までなら頭を撫でるところだが、その手は肩の黒猫に]
ああ、なんていうかな……。
アーヴァインさんやエレノアさんや、ニーナ……それから、ヘンリエッタ嬢。
こっちのみんなは、普通の時と変わらない感じで『視える』んだが。
ヴィンセントさんには、他のみんなと違う……みんなにはない、影みたいなものがついて『視える』……って感じ、かな。
上手く言えんのだが、妙な違和感が着いて回る……。
うん、ラッセルさんが。
また具合悪そうだったって言ってたな。そういえば。
大丈夫だったのかな。
おれにはそういうの、わかんないけど。
……違和感があるなら、きっとなにかあるんだろうね。
サーカス、行く?
どうなんだか……とにかく、話も聞きたいし、捜した方がいいだろうな。
まあ、俺も良くわかってない。自分の力の事ながら、ね。
ただ、何事もないって事はないだろうな。
[ふう、と一つ息を吐いて言って。
サーカスへ、との言葉には一つ、頷く]
そうだな……取りあえず、まずはあそこに行ってみるのがいいかも知れん。
ああ、そうだな。
……それで埒が開かなければ……。
[魔術師殿の所に行くようだな、と呟きつつ]
どっちにしろ、町のどこかにはいるはずだし、そんなにしないでも見つかるだろ。
[肩の黒猫にな? と問うように声をかければ。
黒猫は肯定するように*なぁう、と鳴いて*]
-早朝:雑貨屋二階-
[結局まったく眠れなかった。
日が顔を出すのと同時に扉を開けて駈け出した。
程なくして、いつものレストランの扉を荒々しく開ける。]
はぁ…はぁ…ま、マスター…おはよう…
え、うん、大丈夫…ありがと…。
[マスターが出してくれた水を、一気に嚥下する]
ヴィンセントさん…起きてきてるかしら?
…まだ?
[名前を言って、反応が返って来たことに大きく息をはいて安心する]
…起こしに行きたいところだけど…さすがに失礼よね。
ここで待とうかしら?
あぁ、ニーナが戻ってるか見たらいいんだわ。
マスターありがと、ちょっと急いでるの。
またあとでくるわ。
[いつも嬉しそうにモーニングを食べるのを知っているから目を丸くするマスターに手を振って、再び扉を出て診療所へと向かった]
さて、如何しましょうか。
このまま此処で、見ていますか?
それとも此処を出て、“彼女”の糧に?
勿論、此処に居たって返しはしませんよ。
漸く手に入れたのですから――
[またもぜいぜいいいながら診療所の扉を開ける。
流石にすぐに言葉が出ない。]
ぜぃ…ぜぃ…ぁ、あり…がと…ぜぃ…。
…よる、年波には…勝てない、わね…。
[水を持ってきてくれた若い看護婦に微笑みながら、一気に飲む。
息が整うのにはしばらく時間がかかった]
ふぅ…いや、もう体調は大丈夫よ。昨日お薬もらったし。
えっと…
[こくり、とつばを飲み込んで]
ニーナ、来てる?
…あぁ、そう…。
や、ごめんなさい。ちょっと知り合いの子でね…。
[首を傾げる若い看護婦にはそういってごまかし、俯くと]
え?
昨日ヴィンセントさんが同じ名前を言ってたって…ヴィンセントさんは覚えてるのね?
[ガシ、と若い看護婦の腕を掴む。思わず怯んでこくこく頷きながらも不可解な表情を浮かべている看護婦の前で、力が抜けて床に座り込んでしまった]
よか、った…。
じゃあ、失敗したって事なのかしら。
何にせよ、ヴィンセントさんがおきてくるのを待たないとね…。
あぁ、あそこに泊まっているコーネリアスさんにも会えれば話、聞けるかしら。
[顎に手を当てて考えていたが、ひとつ頷いて立ち上がると]
ごめんなさい、お騒がせしたわね、ありがとう。
もしヴィンセントさんがこっちに来ちゃったら、私が探してたって伝えてもらえるかしら?
[言いつつ診療所の扉を開けて外へ出た。
足はそのままレストランへと向かう。
今度こそモーニングを食べながら、ヴィンセントが降りてくるのを待つことにした。]
…あら?
[先程は誰もいなかったように思えたカウンターの逆の端に、コーネリアスがコーヒーを飲んでいるのを見つけた。
クラムチャウダーに夢中で気がつかなかったのか、コーネリアスのいつもと違う様子に気がつかなかったのか。
クラムチャウダーを食べ終えると、コーヒーを手に持ったまま隣へと移動する]
おはようございます、コーネリアスさん。
具合、悪いのかしら?
[顔を覗き込んだ]
隣、よいかしら?
[頷かれたならば隣に座り、首を横に振られたならば「なら質問だけ」と]
ね。
どうなったのかしら?
診療所見てきたけど、ニーナは戻ってない様子だったわ。
アーヴァインさんは、ヴィンセントさんはどうなったの…?
[早口で捲くしてじっとその奥まで見ようとするかのように、瞬きもせず瞳を*見つめる*]
今日和。ヴィンセント先生いらっしゃいますか?
いえ、昨日わざわざ診に来て頂いたので、御礼をと。
そうですか、未だ。
ではまた伺います。
―レストラン・朝―
[やってきたレベッカに疲れたような顔で首を振ると、その問いに目を伏せる]
すみません……私にはどうなったのかは、判りません。
ただ、ヴィンセントさんが未だに目覚めないということは、失敗、だったのだと思います。
ただ、マスターもヴィンセントさんのことは覚えているようなので、今までと違っているのは確かです。皆さんの…いえ、レベッカさんの願いの力が届いているのかもしれません。
だとしたら……
[その先は言わずに、顔を上げ、レベッカの瞳を見つめ返す。冬の闇を思わせる深い紫紺の瞳が、誘うようにゆらめいた]
[ヴィンセントが目覚めない、という言葉に、目を見開いてゆっくりと手で口を覆った。
コーネリアスの瞳に、赤茶色の瞳が吸い込まれるように釘付けられて]
だとしたら…?
私に…ニーナやアーヴァインさんを、呼び戻せる?
ヴィンセントさんを…起こせるのかしら?
…もしかして、エレノアの奥様も?
[呟くように、手の内側で口だけが言葉を綴る]
こんにちは
えぇと、銀髪の魔術師さんいる?
そっか、今いないんだ。
それざゃあ他の演目は?
また、新しい団員さん入った?
だとしたら、えぇと。
どこにいるか知りたいなぁ
ほら、悪趣味なピエロはやだけど、妖精さんはかわいかったし
私なら…?
[甘い声に、紫紺の目を見つめる目は少し瞼を一度閉じ、開いた時には光を薄める。
とろんとした目で、うわごとのように呟く。]
昨日の夜、祈ったわ。
もう、私意外の人が傷つくのは、いなくなるのは、嫌だったから。
いなくならないように、願ったのに…ニーナは戻ってこない。ヴィンセントさんは、目を覚まさない…。
あんなに、ヴィンセントさんを護りたいと、願ったのに…私の願いは届かなかった。
それでも…私に、出来るのかしら…。
ヴィンセントさんは、この町の住人ではありません。
きっと、あの方を本当に護りたいと思っていたのは、あなた一人だけなのでしょう。
ですから、力が足りなかった。
けれど、あなたは…あなたなら、ハーヴェイさんにも、リックくんにも、そしてラッセルさんにも友として愛されている。
きっと彼等があなたを護ってくれますよ。
[コーネリアスの言葉が、甘く頭に響く。
なんだかぼうっとするのは、風邪のせいか、寝てないせいか、それとも。]
足りなかった…のね。
私を護ってもらう必要は、ないわ…。
私はいいの、私はいいからニーナやヴィンセントさんを。
私は、何をしたらいい?
どうしたら、助けられるの?
[熱っぽい目でコーネリアスの腕を掴もうとした]
落ち着いてください、レベッカさん。
[腕を掴もうとした手をそっと握る]
私が、あなたをヴィンセントの元へ送って差し上げます。
さあ、一緒に行きましょう。
[そのまま手を取り、立ち上がる]
ええ、そのとおりですよ。
ニーナも一緒です。あなたを待っていますよ。
[幼子に言い聞かせるように優しく囁き、レベッカの手を引いてレストランから外へと連れ出す]
[最後の問いには答えず、ただ微笑みを浮かべて、女の肩を抱くようにメインストリートを歩いていく。傍目には仲の良い恋人同士のようにも見えただろうか]
─サーカス広場─
ああ、そっちは任せるよ。
[鏡の迷宮へと向かうリックを見送り、ぐるり、周囲を見回す。
流れる音楽と、ざわめき。
人のざわめきは気にならないものの、音楽は妙に耳につくような、そんな感じがして]
に、しても。
ニーナたちの事が、このサーカスに関わりあるとして……わからんのは、一体、何のためか、って事だよな。
[パズルを組み上げるのに、足りないピースは多分、それ。
何故、何のために。
それがわかれば、見えるものもあるかもしれないのだが]
魂と、身体とを、引き離して……か。
みんなはここから離れた様子はない……というか、ここに捕えられている、と考えても……いいのか?
呪術的、魔術的な目的のためにそういう事をする……ってのは、まあ、聞かない話じゃないけど。
……しかし、仮にこれがそのために存在してるんだとして……。
[言いつつ、ぐるりと周囲を見回して]
……何故?
まあ、いずれにしろ、傍迷惑の極みだが。
[蒸気オルガンの音色は、今日も楽しげにサーカス広場を包んでいる。熱に浮かされたように遊び戯れる人々の間、レベッカの手を引いて、滑るように天幕へと向かって歩く]
……っと。
[呼びかけに、物思いからさめて]
ああ、ラッセルか、ちょうど良かった。
[振り返り、目に入った笑みはいつもと変わらない……ようだが、何故か違和感めいたものが感じられ。
黒猫は挨拶するようにゆらりと尾を振るが、大きな眼には怪訝そうな光が宿るだろうか]
ヘンリエッタ嬢がどこにいるか、知らんか?
聞く所によると、最後に一緒にいたのが君で……その後、あの子の事は町から忘れられたんでね。
もしかすると、何か知ってるかな、と思いまして。
[問う口調は、ごく何気なく。
天幕へと向かう銀髪は、人ごみに埋もれて、彼の目には捉えきれぬものの。
黒猫はするり、肩から滑り落ちて足元へ]
[今日の催しは、まだ天幕の中では始まっておらず、その中は暗く、外の賑やかさからも隔絶されたように、しん、と静まり返っている]
ヘンリエッタ――あの女の子、ですか?
確かにサーカスまでは一緒に来たんですけど、・・・その後はぐれてしまって。
忘れられ――ッて。
それじゃ、アーヴァインさんと一緒・・・?
[見開かれる碧。驚くような表情の中にあって、それは埋め込まれた硝子玉――人形の眼のようにも見えたかも知れない。]
ええ、静かですね。
[にこりとレベッカに微笑みかける]
あの光の傍に行きましょう。ニーナからも良く見えるように。
[舞台の上を指し示し、招き上げようとする]
[ふわり、魂が集まって。ぼんやりと白い女が現れる。
けれども、その顔は日を追うごとに青ざめて。]
シャロ…。
柱の中の娘を撫でようと、近くによるけれど、
その柱には触れられず。
[やがて、ゆるりと降りれば、二人の男を見るだろうか]
ああ。
アーヴァインさんや、ニーナと同じように、ね。
そして、俺にはここにいるあの子が『視えた』。
これも変わらない。
[静かに話す彼の足に、黒猫はすり、と擦り寄った後。
ふい、と人ごみの中へと駆けて行くだろうか]
なんか……あんまり、驚いてるように、見えんな。
[硝子玉のような、碧。
どこか淡々としたそれに、気づいて。
違和感の元はそれだろうかと思いつつ、こう、呟く]
娘がそう望むのならば、いくらでも。
けれどもそうではないようですわ。
肉体を支配できても、精神を支配できていない証拠ですわね?
[言葉として発された制止に、皮肉げに眉をゆがめて笑う]
さあ、わからない、黒猫さん?
娘のみえたあなたなら…何か…。
どうして?
私にもそれはよくわかりませんわ。
でもどうやら…[視線でコーネリアスを示し]あの男が、
元凶のようですわね。
あなたも彼のお仲間?
先ほど主だなんて、聞こえたけれども。
[黒猫に気づかせようと、ふわりふわりと歩き回りながら、
ラッセルの言葉に返す]
[駆け出した黒猫は一度足を止め、鳴き声を上げる。
大きな目に映るものが何か、それは他者には知る由もない、けれど。
魂を視る力を持つ青年と長く共にあった黒猫にも、その力は伝わっているかも知れない。
黒猫は、青年の方を振り返り、高く鳴いて、また駆け出す]
ニーナも?
嗚呼、そう言えばヴィンセント先生が・・・・
『視えた』って、如何いうことですか?
[碧はただ青年を映すのみ。]
そうですか?
十分、驚いていますけど――
少し、慣れたのかも知れませんね。
ああ、すみません、何か余計なものが見えてしまって……昨夜も寝ていないもので、幻覚だったようです。
[振り返るレベッカの手を強く引く]
あの光は、この世で最も美しいものの放つ光。
さあ、傍に近付いて、良く見ましょう。
あなたも、きっと魅了されるはずですよ。
こんばんは、レベッカさん…。
――シャロは、つらかったわね……。
[見てはくれぬであろう彼女に礼をしながら、娘を思う]
……すみませーん。
ええとね。
銀髪の魔術師さん、どこにいるかしってる?
え? さっきはいないって言われたけど
そっかぁ。
じゃあここのどこかにいるのかな。
[コーネリアスに強く手を引かれ、バランスを崩して階段でつまずき、舞台に手をついた。
黒猫の声が聞こえた気がして、振り返る]
ウィッシュ…?
説明すると長くなるんだが……。
俺は、生まれつきなのかなんなのか、魂の姿が『視える』体質でね。
ここの敷地内に、姿を消したり昏睡状態になったりした人たちがいるのが『視えた』って事さ。
……ま、約一名、違和感が付きまとうんだが、もしかすると、ここの空気と近いかも知れんね、その違和感。
[詳細を省いて説明する。
黒猫の声と、走り出した事には気づいていた]
慣れた……ねぇ。
それだけにしちゃ、だいぶ目が虚ろに見えるんだが……。
体調は、良くなったんだろ、確か?
そう、聞いたけれど。
……まぁさ。
見世物の一番すごいのって言うくらいだし?
厳重に注意しておかないとねー?
そういうもの、先に見たら悔しがるだろうし。
……ヘンリエッタを返してもらうように、いえるしね。
[黒猫の名を呼ぶレベッカの肩に手をかけ、耳元に唇を寄せる]
気のせいですよ…ここには動物は多い。
さあ、レベッカ……行きましょう。
あぁ、えぇ。
ニーナを…ヴィンセントさんとアーヴァインさんを、助けなきゃ、ね。
[再び目を半分閉じ、コーネリアスの言葉に頷く。]
・・・・そうだったんですか。
魂の姿が。
約一名、とは?
[あっさりと頷き、碧の眼を細め――]
ええ、気分はすっかり。
虚ろって、――そんなに変ですか?
[黒猫はぴたりと足とめ振り返り。
大きな瞳に少年を捉えれば、促すように短く鳴くだろうか。
微妙な焦りが、その声にはあるやも知れず]
――。
貴方の中には、二人の人がいるのかしら?
私が話したのは、どちらだったのかしら…。
これも貴方がしたことなのかしら?
[銀髪の魔術師が、レベッカの手を引くのに声を掛けて]
昨日、呼び戻しに挑戦する、と言ってた当事者だが。
そして、どうやら誰も戻った様子はない……。
これは、俺の推論だけど。
……戻すつもりは、最初からなかったのかも、な。
ま、あの二人がどっちもサーカスの関係者だとしたら、ね。
魂抜かれたアーヴァインさんやニーナが、ここの新入り扱いで芸やってんだし。
[さらりと言いつつ、肩を竦めて]
まあ、元々ぼーっとしてるかな、って印象はあったけど。
……今の君の目、まともにこっちを見てるようには、ちょっと思えないかな。
うっわー、マジシャンさん。
思い人のいる女性の方をそんな風にするんじゃないって、教わらなかった?
あのね。
ヘンリエッタ、かえして。
それに、レベッカさんも。
駄目だよ、ここのサーカスに、みんないるから。
多分、マジシャンさんが、よく色々知ってると、思う。
ううん、多分。
ヘンリエッタはここにいたから、マジシャンさんは、嘘ついてる。
私が、嘘を?
ヘンリエッタさんが、サーカスに遊びに来ていては、なぜいけないんです?
[意味が判りませんね、と肩をすくめる]
[ふわりと、一つの魂が少女の姿を形作る。
昨夜より、幾分か薄くなった掌に気付いて視線を落とす。
弱まっているのだろう魂を感じ取り、きゅ、と掌を握った。]
──エレノアの奥様。…と、ラッセル君の方?
[魂に響く聞覚えのある声に、ゆるりと視線を上げる。
勘を取り戻しつつあるのか、気配の場所を辿って。
ふわり、一度姿を消して──
次に姿を現したのは、女性の魂と、彼女が対峙する銀髪の魔術師の下]
[リックの後ろに控えた黒猫は、天幕の中の様子を不安げに見やっていたものの。
氷柱の異変に気づけば、ぞわりと毛を逆立て、威嚇の声を上げるだろうか。
それは、滅多に警戒を示す事なき黒猫には、ある種異様な様子と言えて]
酷いですね。
そんなに何時もぼんやりしてますか、僕。
――それより。
如何いうことですか、それ。
二人って、誰のことですか?
アーヴァインさんや、ニーナが・・・・って。
[表情が一転、険しくなる。避けられなければ、その腕を掴もうか。]
[リックの前に飛び出したレベッカの姿に、弾かれたように白い光が霧散する]
何……?
[紫紺の瞳が僅かに驚きの光を浮かべた]
つまり貴方は、ラッセルさんがそれを望んだと言いたいのね。
今、自分のありように自信のない彼に、
わざわざその言い方をするのは、卑怯だわね?
[銀髪の魔術師にそういいかけたところで、少女の魂が形をなす]
ごきげんよう、ニーナさん。
……お互い、さびしい身の上になってしまったようですね。
本に埋もれてる時のぼんやりぶりは、ある意味見事だと思うが。
[さらりと言って。
その表情は、すぐに険しくなる]
魔術師殿と、ヴィンセントさんの二人だが。
アーヴァインさんたちは……。
[言いかけた所に、微かに感じる、強い違和感。
ざわつくような感覚が、強くなる]
……話は、後だ! なんか、起きたかも知れん!
[言いつつ、走り出す。伸ばされた手は、それによって空を切るか]
ふふ……ははは!
なるほど、それが貴女の力というわけでしたかレベッカさん。
では、やはり、あなたを先に送らなければならないようですね。
[リックの叫びには、冷たい視線を向ける]
ほう、君に出来るかな?ちびすけくん。
──あぁ、ラッセル君だ。
[《DOLL》の方じゃないのね、と。
返る声に僅か眉を寄せながら、ゆるりと瞬く。]
うん、いるよ。…嬉しく無い事に。
──ラッセル君は、戻れない、の?
[呼びかける声に、小さく苦笑を挟みながら短く答えて。]
ごきげんよう奥様。──私は、慣れてますから。
でもこれ以上私の大切な人たちには、
同じ思い…させたくないですから。
[嘆いてる場合でも、なさそうですしね。
女性の言葉に、ふわりと笑みを零し。]
――邪魔はさせませんよ。
それが主の命、ですから。
[空を切った手を更に伸ばし、追いすがろうとする。冷えた声は届いただろうか。]
魔術師の造り出す氷が、力任せに割れるとでも思っているのか?
ああ、お前は魔術を信じぬのだったかリック。
[笑みを浮かべたまま、リックとレベッカに近付いていく]
……主?
[冷えた声に、思わず足を止めて、振り返る。
ざわつくような感触に、伸ばされた手を振り払おうとしつつ、後ろに飛びずさって]
……どういう意味だ、それは!
駄目よ、リック君。
離れて…。
今度こそ、護らなきゃ…。
[リックとコーネリアスの間に身体をねじこむように前に出た。
リックを包むように手を伸ばし。]
信じるわけがないよ。
おれが信じるのは、ヘンリエッタと、ミスやミズ、あとは見えるもの。
魔術なんていうのは、ただのまやかしだ。
それに、
割れるものは、どうやったって割れるんだからね!
[ふわり気配に引き寄せられたかのように、
ゆらり人をかたちづくるのは揺らめく赤。
けれどそれは、とても頼りなくて、
今にも闇に溶けてしまいそうに。]
……?
[不思議そうに首を傾げる仕草は、
いつもよりさらに幼くて、
そこには恐怖も何もない。]
《DOLL》は、ずっと隠れていたみたいだから。
知らなくても、仕方ないのかも、ね。
[僅かに眉を寄せて、]
私も、少し聞いただけだから…、詳しくは判らないけれど。
…「彼」は、君の身体を手に入れようとしてる。
──急いで、「君」を取り返さないと。
そのままの意味、ですよ。
[“ラッセル”は決して浮かべることの無かった、左右対象の不自然な笑みを湛える。]
――やれやれ。
大人しくしては頂けませんか。
無駄ですよ、レベッカさん。
あなたに見える力は、あなたには退けられない。
そう、こんな力はね。
[レベッカを強い力で押しのけ、リックの腕を掴もうとする]
[コーネリアスの悲しげな表情を見、困ったように一度目を伏せて、まっすぐにその紫紺の目を見た]
でも、助ける為と…
あれは、嘘だったの?
そのままの……ね。
つまりは、君もここの関係者である、と。
[左右対称の不自然な笑みに、低く、呟く]
この状況で大人しくできるようなら……俺はとっくに、彼岸の住人になってるぜ?
[冗談めかして言いつつ、タイミングを計る。
長々と相手をしてはいられない。
なら、どうするか。
肩から提げた鞄の紐を握る手に、力がこもる]
いいえ、嘘ではありませんよ、レベッカさん。
私は、貴女達を助けて差し上げるために来たのですから。
この退屈な、現実から。
…エッタちゃん?
[浮かび上がるように現れた赤の少女の姿に、青を僅かに見開いた。
──ふわりと、少女の近くへと]
大丈夫?…まだ、平気?
[魂の力を失えば失うほど、あの氷柱に引き寄せられやすい。
幼い子なら、尚更。
彼女が此方へ来ることを、自分は止められはしなかったけれど、
せめて吸い寄せられないように。小さな掌を握ろうと]
[尻餅をついたレベッカの様子に、黒猫は案ずるような声を上げる。
それから、魔術師の手が少年に伸ばされる様子にせめてもの抵抗といわんばかりに、爪を立てようと試みて]
ええ。
ワタシは主に造られしモノ、人形《DOLL》ですから――
[偽りの笑みを浮かべたまま、じりじりと近くへ。]
――それは困りましたね。
あまり、手荒な真似は好みでは無いのですが。
人形……作り物、って事かよ……!
道理で、普通の動物にゃ避けられる訳だ。
[近づかれるだけ、後ろに下がる。その内、背後は怪しくなるだろうか。
その時どうするか……と思った時、ふと、鞄の奥のものを思い出して]
俺だって、荒事は好きじゃないんですけどねえ……。
しかし。
その主さんは、なんだってこんな厄介な事をしてくださる訳かな?
[黒猫の爪と、レベッカの体当たりを避けて、ぐるりと身体を反転させる、リックの頸に伸ばした手は離れたが、その腕は掴んだままで、ため息を一つ]
まったく、どうしてそんなに逆らうのか。
永遠の安寧、永遠の美……過去の哀しみ、過ちからの解放。
全てはお前達の望んだものだろう?
[少年の問いに、少しだけ。言葉を詰まらせる。
自分は、明確な答えを知らない。──けれど]
《DOLL》は長い間ずっと、ラッセル君の身体を乗っ取ろうとしてた。
でも、簡単に行かなかったのは──多分。
身体と魂は、強い力で結ばれているんじゃ、ないかな。
だから、私も「戻った」時に、ちゃんと戻って来れたんだろうし。
[あくまで、予想だけどね。
苦笑交じりに、ふわりと笑みがこぼれる。少女の姿が揺れた。]
元は、ラッセル君の身体だもん。
ラッセル君が戻ろうと思えば、きっと──戻れる。
だから。
[願って。君が想うとおりに。
赤の少女の手を取ったまま、囁くように。]
誰がそんなものを望んでるって?
そんなの望んでるのは、あなたじゃないの。
おれは、大人になりたい。
永遠なんて望んでない……!
ただ、一緒に、ヘンリエッタと、いられて、大きくなれたらいいんだ。
余計なことするな!
大人にか、それがお前の望みなら、叶えてやる事も出来るぞ。
ヘンリエッタと共に大人になり、永遠に共にいる事も出来る。
そう、魂はそのままで構わない。
ヴィンセントのように、我と共に在る事を望むなら。
[少年の髪を白い指が掬い取り、囁く]
…私は、ニーナ。
ニーナ=ベルティって、言うの。
[あの時は自己紹介、してなかったね。
瞬く薄紅に、小さく笑みが映る。遠い光に、僅かに目を細めて。]
掌はもう、平気?
[些細な問いを投げながら、僅かに、小さな掌を強く握る。
何処かへ行ってしまわないようにと]
[避けられてべたり、と床に手をつく。
そのままくるりとコーネリアスに向き、再びその腕にかじりつこうと飛びかかる]
過去の悲しみ、過ち。
それを消してどうするの…
そこから、学んで消さずに、何のための生だというの…!
そんなものいらないよ。
与えられるばかりが子供だと思ってない?
おれは、自分で考えて、自分で生きていたいんだよ。
誰かにそうやれって強制されるのなんて御免だね。
ええ。
あの黒猫だけが寄って来てくれるのが、嬉しかったようですよ。
“ラッセル”は。
[まるで他人事のように、人形は笑う。]
――御知りになりたいですか?
今暫く静かにして頂ければ、分かると思うのですが。
ニーナさん。
もしかして貴方が昔見たサーカスというのも、
「これ」なのかしら…。
[ふ、と手のひらを握り締める彼女と少女にほほ笑みながら]
……ニーナ。
[名前を繰り返して緩く首を傾け、]
ての、ひら?
[覚えがないというように、
周りの存在にも、
不思議そうなかおをして。]
ウィッシュは、な。
俺と一緒にいたせいか、特殊な色々に慣れちまってたからねぇ……。
ま、それで喜んでいただけたなら、何より。
[口調だけは冗談めかして言いつつ、鞄を肩からずらして中の紅い天鵞絨包みを握り締め]
生憎、それじゃ、遅い気がするんでね。
……やっぱり、自分で確かめさせてもらうよっ!
[言葉と共に包みをつかみ出し、同時に鞄を投げつけ、走り出す。
短剣の他に入っているのは、手帳やら飴玉やら。
それ自体の衝撃よりも、一瞬の目くらましになればと、そう、思って]
[リックとレベッカの返事に、肩を竦める]
残念ですねえ。
では、さようなら。
[そのままリックの身体を掴んで持ち上げようとする]
同じサーカス団に二度も会うと言うのも、妙な縁ですよね。
記憶もおぼろげで──殆ど覚えていませんでしたけど。
その時も、今と「同じ」。
[女性の問いに、苦笑交じりにこくりと浅く頷いた。
…覚えているのは、ただ怖いという感情だけ。
その時は、ただ待っているだけだったけれど。]
うん、ニーナ。
向こうに戻ったら、覚えててくれると、嬉しいな。
[僅かに青を細めて。
しかし顔色を変えないまま、ふわりと少女へ笑みを向けたまま]
何か、覚えてる?「ここにくる前」の事。
ここ?
……ここ、どこ?
前って、なに?
[落とされることばは遠くて、
けれど眼差しは、
ぼやける視界に蜂蜜色の髪を捉えて。]
うん。
願って──想って。
[少年の言葉に、再び、呟く。
自らに言い聞かせるように、歌うように。]
その「想い」が、『人形』には持てない私たちの力だから。
[少女が薄れてしまっているのは、
取られてしまわないように、
少年の近くに在りたいと願って、
羽飾りへと託して来たから。]
[追おうとした相手が足を止めた事には、走り出したためか気づく事はなく。
そのまま、感覚の導くままに走って行く。
黒猫がどこに行ったかは、はっきりとは判らずとも、ざわめきが強くなる方へと向かえばいいような、そんな気がして、天幕へと走る。
黒猫は気配に気づいて、高く、高く鳴くだろうか。
その声に導かれるように飛び込んだ天幕で最初に目に入ったのは]
……リック!
レベッカさんも、無事かっ!
[コーネリアスの気がそれたところで、腕にしがみつこうと再び飛びついた。
瞬間、黒猫の声とハーヴェイの声が重なって聞こえた気がした。]
リック君…!
[動きの止まった腕は、リックの動きに逆らえず、その身体を離す]
まったく、使えない人形だったな。
[冷たい視線を駆け込んで来たハーヴェイに向けた]
何処、だろうね。私も判らないけれど──
みんなの、エッタちゃんの大切な人が、居ない場所。
[ぽつりと、呟いて。
ふと、少女の視線が少年を捉えているのに気付いた。
そうと、小さな掌を握って]
見える?
君を、待ってる人が、居るよ。
折角、手に入れたんだ。
そう簡単に――
―――ッ
[びくり、身体は跳ね、碧は見開かれる。
数瞬後には糸が切れたかのように、力を失いうなだれ、]
使えない、とまで言い切るのはどうかと思うけどねぇ。
[冷たい視線を向けるコーネリアスに、口調は軽く言い放ちつつそちらへ向かおうとし]
……っ!
レベッカさんっ!
[レベッカへと向かう光に、足を速める]
…ラッセル君の方は、大丈夫だね。
次は、私。
レベッカさんにまで、手出しは──させない。
[少女の手を離し消える。瞬間、白の光を遮るように、姿を現した。
実体を持たない自分が庇ったところで…どうする事も出来ないのかも知れないが
ただ、「今度も」何もせずに見ていられなかったから。]
そう…。では、戻れる方法がある、ということね…。
ラッセル、さん…。
[ぐらりと力を失った少年のもとに、近寄り。
もちろん彼を助け起こすことは出来ないけれど]
[リックに目標を逸らされて、光は少しだけ躊躇うように速度を落とし、しかし、再び生き物のように動いて、レベッカを追っていく]
……はっ……気に入らないね、そういう考え方は。
[コーネリアスの返事に、低く、呟いて]
レベッカさん、動いて!
ここであなたが捕らわれて、それで終わるなんて保証、どこにある!
・・・・有難う。
もう、大丈夫。
[先程まで聞こえて居た声も、気遣うように近寄る影も、今はもう分からない筈だけど。]
――行かないと。
哀しいことを言ってくれるな。それに下品だよ、リックくん。
[白い光はレベッカに届こうとしている。しかしもうそれにも興味を失ったように、踵を返し、舞台の上の氷柱の方へ戻ろうと歩き出す]
よかった。──皆を、お願い。
[きっと、この声は届かないだろうけれど。
赤い髪を持つ少年の言葉に、ふわりと、青の髪が揺れて]
ヘンリエッタを、返せ。
おれはいかない。
勝手に、永遠がどうのこうのほざきやがって。
おれは、
そんなもの望んでないし
他の誰が望んだんだよ
勝手に町の人たちを、いなくさせてるお前なんて、嫌いだ!
レベッカさん、よけてよ!
レベッカさんがいなきゃ、おれも母さんも、いきてけないし。
下品だって構わないね
あんたがしたことの方が、よっぽど下品で、悪趣味だ!
ひとりぼっちでさびしいのはお前だろ!
[レベッカがリックを護るように動く様子に、一つ息を吐いて]
……結局、あんたは、何がしたいんだよ!
[氷柱の方へと戻ろうとするコーネリアスを追うように踏み出しつつ、問いを投げる。
握り締めてきた魔除けの短剣、それを握る手に力がこもって]
[舞台の手前で、足を止め、静かに振り返る]
我が求めるのは永遠の美。
そして、それはもうすぐ我が手に。
[背後の舞台の上、白い光を放つ氷柱の中で、銀に覆われた真白な麗人が、ふるり、と瞼を震わせた]
永遠の、美……?
[帰って来た返事に、小さく呟いて。
氷柱の中のそれを、見る]
……ばっかみてえ。
[続けて口をついたのは、呆れたような声]
お前達に理解できるとは思わぬさ。
[薄く笑って、リックの言葉には首を振る]
言っただろう?人の手で、この氷は壊せはしない。
[昨夜も一度“連れて来られて”いたから、その記憶を頼りに天幕へと辿り着く。]
――コーネリアスさん・・・
貴方、が?
[足を踏み入れ――銀髪の団員の姿を、意志持つ碧が捉える。]
理解したいとも思わんね、そんなもの。
[低い言葉は、吐き捨てるように]
……人の手では、ね。
じゃあ、猫の手なら壊せるのか?
或いは、人ならざる力を持つ者なら?
……どっちにしろ……やってみなけりゃ、わからんさ。
[やって来たラッセルを振り返り。
先ほど対峙した時とは、違うものを感じ取って、一つ、瞬くか]
……そうか、じゃあ、遠慮なく試させていただきますかね。
[再び、コーネリアスへと向き直り、さらり、言い放つ]
ウィッシュ、来い!
[離れていた黒猫を呼ぶ。猫はラッセルに向けて一声鳴いてから、肩へと]
やってみないで諦めるのは、どうにも性にあわないんでね。
[言いつつ、ずっと握っていた魔除けの短剣を包む天鵞絨を解く。
汚れを落とし、磨き上げられたそれは、波打つような刀身と、美しい文様と装飾が目を引くか]
これか?
あんたたちが来る前の日に、家のじいちゃんが買わされた代物さ。
クリス……とか、言ったかな。
どこぞの国の、魔除けの短剣らしいぜ?
[静かに答えつつ、ゆっくりと舞台へ向けて歩き出す]
そんな迷信を信じるとは、リックに笑われるぞ?
[笑みは再び唇に戻ったが、その声は冷たく、視線は先刻までの無関心な様子から一変して、鋭くハーヴェイの持つ短剣を睨み据える]
やめておけ、ハーヴェイ。無茶をすれば、お前の魂も我が手に落ちる。
[光の筋に半分捕らわれたまま、力弱くふたりのやりとりを見る。
あぁ、ハーヴェイ君が何かするのなら…]
私は、ハーヴェイ君に災いが起きないように…
[強く、祈る。]
ま、俺も自分がおかしな能力持ちだったりなんだりがなければ、迷信だと言ったかもしれんけどね。
[くつり、と笑って。
また、数歩、歩みを進める]
悪いね、俺は天邪鬼なんで。
止められると、逆らいたくなるわけですよ。
どうにも、何かあるように見えるなぁ。
[レベッカを狙っていた白い光も気になれど
そのハーヴェイの動きを邪魔しそうなコーネリアスをとめるため、
彼女の腕から離れ、走る]
[リックの動きを視界の隅に捉えつつ。
コーネリアスがこちらに近づこうとするのを見れば、ふ、と笑みを掠めさせ]
……さっきとだいぶ、態度が違うんじゃないか、魔術師殿!
[どことなく、楽しげな口調で言いつつ、地を蹴り、走る。
コーネリアスの横をすり抜け、氷柱に近づこうと]
[明らかに態度を変えた魔術師の“声”。]
古い物――まるでそれを知ってるみたいな口振りですね。
[聞こえない筈のそれが聞こえたのは、一度“墜とされた”影響か。]
[倒れはしなかったものの、リックの勢いに押されて数歩よろめき]
止めろ…!
[ハーヴェイに向かって伸ばした手は空を切る]
止めろと言われて……。
[聞こえた声に、返す声は、どこか楽しげだろうか]
はいそうですか、とは聞けません、ってね!
[そのまま、駆ける。
氷柱の目の前に達したなら、それを突き立てようと。
意識した訳ではないものの、切っ先は、氷柱の中の美女へと向かう形になるだろうか]
[そして、ハーヴェイが氷柱に辿り着く寸前に、氷柱の前に銀の魔術師は姿を現す。氷の棺を護ろうとするように、両手を広げて……]
……っ!?
[直前に現れたコーネリアスに、僅か、戸惑いは過ぎるものの。
勢いをつけた突きの動作は容易くは止められず、魔除けの刃は魔術師を貫く]
……何故?
[とっさに口をついたのは、短い、問い]
[パキパキと音を立てて、氷の棺に無数の亀裂が走っていく。レベッカを襲おうとしていた光はいつの間にか消え失せて、代わりに、氷柱の中央から、白い焔のような輝きがゆらめき立つ]
[倒れ伏した魔術師の身体からは、その焔と対を成すかのような黒い……光の無い焔が燃えたって、白い焔と混ざり合う]
[そうして、焔は瞬く間に、舞台一杯に広がって、天幕へと燃え移った]
……って!
[唐突な出来事にしばし、呆然としていたものの。
黒猫の上げた声にはっと我に返り、舞台から離れる]
……一体、何がどうなって……。
とにかく、ここにいたら危険だ!
早く、外へ!
レベッカさん、呆然としてない!
焼け死んだら、それこそ元も子もないんだから!
[怒鳴るように言いつつ。ラッセルの様子が視界の隅を掠めれば、僅かに眉を寄せて]
……消えた?
[一度振り返って眺めた先、白い姿が見えたようにかんじた。
しかし、そのままラッセルのそばにより手を差し出して]
早く行こうよ!
焼けちゃうから!
[やがて、外に脱出できたなら、彼等は知るだろう。そこに既に、サーカスは無く、遊び戯れていたはずの人々の姿も無く…ただ何もない、元の広場と、彼等が戻って欲しいと望んでいた人々の姿だけが残っていることを]
[とん、っと音を立て、黒猫が床に下りる。
黒猫は一声鳴くと、ととと、と駆けて、立ち止まる。
誘導するようなその動きは、こちらは安全と告げているようにも見えるだろうか]
……とにかく、今は急いで出る!
細かいことは、それからだっ!
[怒鳴るように言いつつ、一瞬振り返った焔の中心。
白い姿は見えたか、それとも。
だが、すぐにそれを振り切るように黒猫の方をむいて、皆を促して]
早く、逃げよう。
ほら、レベッカさんも!
早く逃げないと焼けちゃうよ!
早く、ここから出よう!
[ラッセルがたったのも確認して、レベッカを急かす。
ハーヴェイが、黒猫が、進む方向へと行けば、恐らく出られるだろう。
そう*思って*]
[広がりゆく焔の中でも焼かれる事はなく、
白き姿を瞬きもせずに見つめていたけれど、
果たして、
紅の睛と紫紺の瞳、
光と闇が交わる事はあったのか、
ほんの数瞬の間ではそれも定かでなくて。]
寒いの、
寒かったの?
温かく、なれればいいのに。
[彼の聲を聞いて、
はたり、瞬きをして、
くるり、踵を返す。]
帰れるのかな――
ううん、
帰ろう。
[天幕から転げ出て後ろを振り返る。
白い焔を上げるそれが、ふわと揺らめいた気がしたのは気のせいだろうか。
光に掴まれた腕がじんと痛み、それが何かを思い出させる気がしたが]
…私は。
[黒猫について向かった出口の前で、もう一度立ち止まり、振り返る]
……あ。
元、取り損ねちまう……かな?
[思わず口をついた冗談めいた呟きに、黒猫が呆れたような声を上げる]
……ま、いいか。
違う意味で、元は取ったようなもんだし……な。
[そんな呟きを漏らしつつ、天幕の外へ]
[立ち上がり、先に行く者に従って、出口を目指す。
出る直前でふと振り返り、黒い影の消えた辺りを碧は見つめ、]
――・・・
[口唇は微かに動くか。]
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