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村は数十年来の大事件に騒然としていた。
夜な夜な人を襲うという人狼が、人間の振りをしてこの村にも潜んでいるという噂が流れ始めたからだ。
そして今日、村にいた全ての人々が集会場に集められた……。
見習いメイド ネリー が参加しました。
―海辺・桟橋―
海面を吹き抜ける風が髪を浚う。
塩気の強い風は冷たく、頬へ触れると少し痛い。ネリーは、日中の勤めを終え、雑貨屋へ寄ってから集会所の前を通り、桟橋へ出るのが好きだった。
村に物騒な気配が漂い始めてからも、その習慣は然程変わらない。
桟橋へ立つ。
足下では、木の板を隔てて波がぶつかり合う。
磯のにおいを深く吸い込む。
濃い潮の香りには、生命を感じる。
生物は海から生まれたのだそうだ。
月明かりに照らされて、海面に小島が浮かび上がる。
月明かりの中、黒い影のようだ。
海は生命に満ちているのに
あの島には、死人が眠っている。
ネリーは、この不思議な対比に時々、不安に近いような、言いしれぬ微かな違和感を感じる。
その島は嘆きの島だとか
そういった名前で呼ばれている。
ふと、潮騒が
慟哭に聞こえた。
波の音ばかりが聞こえる。
時折、寄せられた小舟たちがぶつかり合って軋む。
[あらすじ]
とある村に人食いの怪物「人狼」がやってきました。
人狼は村人になりすまして夜な夜な人間を襲います。
やけっぱちになった村人は、怪しい者から処刑するという方法で人狼を退治することにしました。
皆さんは、人狼事件の起こった村の村人、または村に居合わせた人です。
皆さんは、警察に事情を説明されて、公民館を利用した集会場に連れて来られた容疑者です。
投票箱を設置しました。一日一票、怪しいと思う人間の名前を書いて投票しましょう。夜が明ける前に、必ず集会場に投票しに行って下さい。
多数決によって、一日一人処刑する者が決まります。
村は、海辺にある人口の多くも無く少なくもない、事件が起こるまでは普通の村でした。水面下では何があったか知りませんが、ともあれ村人は皆、普通に生活していました。
既に何人かの被害者が出ているようですが、まだ村人は生き残っているようです。あなたの家族に被害者が居るかも知れませんね。
村には、電気水道ガス電話の類は通っているようです。家庭によっては薪を使っているかも知れません。インターネットは無さそうです。パソコンは良いとこ「巨大計算機」の時代でしょう
教育施設もあるようです。他には、BAR、図書館、宿屋、などを始めとして、雑貨屋などがあるでしょう。その他は地図を参照して下さい。また、自宅などの施設は必要に応じて地図へ書き込んで下さい。場所に関しては早い者勝ちです。
銃刀法はユルめのようです。
海岸線は海水浴には不向きですが、桟橋もあり小さな船が何隻か停泊しているでしょう。
陸から見える小島には、墓地と、新たに建てられた処刑場があります。
持てる能力をフル活用して生き残りましょう。推理しましょう。
勿論、あなたが生き残りたければ、の話ですが。
………
プロローグと初日のうちは、表でのプレイヤー発言をして下さって結構です。
質問や、設定打ち合わせなどにお使い下さい。
その際は/PL/などの記号を使って、プレイヤー発言であることを明示してください。
[ネリーの背後から、唐突に声を掛ける者が居た。]
驚かせないで下さい。アーヴァインさん。
いつも見回り、ご苦労様です。
…集会所へ?
何かまた、事件でも起こりましたか。
私が、容疑者?
………やめて下さい。やめて。一体どういう事。
説明して頂戴。いえ、説明されたって関係ありません。一体あたしが何をしたって言うんです。
[アーヴァインに半ば強引に手を引かれ、海へ背を向けて集会所へと向かう道行きで、ネリーはこの自警団長が、狂いでもしたかと思い、狂人に手を引かれているという自分の想像に秘かに震えた。
アーヴァインの、有無を言わさぬ口調と眼差しが、怖かった。それを気取られまいと、きっと彼を睨み付けながら歩いた]
―集会所―
…処刑?!
[ネリーはいよいよ、自分の正気を疑う]
どうしてあたしが処刑されなくちゃいけないんです。あたしはただ、真面目にお仕えして…
一体何なんです。あなたが人殺しなんじゃないのですか?!
[手渡された小さな紙切れ。
これに、処刑したい――人狼だと思う人間の名前を書けと言う。
アーヴァインは、処刑は明後日からだと言い残し、足早に集会所を出た。
広く、それ故に寒い集会所でネリーは一人呟いた]
…どうして私がこんな所で待たされないといけないの。
私が当日、現場に出入り出来ただなんて。
他にも人が来るって一体どういう事。
私の他にも容疑者が居る?
その中に本当に殺人者が居たら一体どうするのかしら。殺人者と同じ部屋になんて…
[だがアーヴァインの背後の警察に逆らう勇気までは起きず、ただ無意識に肩を抱く]
処刑…。
[大体、無罪の人間を処刑してしまったらどうするのだ、とか。何故私が処刑されなくてはいけないのかとか。様々な思いが巡るが結局ネリーが選んだのは従順だった。
アーヴァインが渡して行った紙…処刑とか投票とかいう、ネリーの馬鹿らしいと思う目的に使用される物では無く、もう少し一般的な目的を持った紙へと、ペンを乗せる。
調書。名前、職業、この村に於ける略歴。
酷く簡単な内容だと思った。
それが益々、命が軽んじられているように感じさせた]
■1. 名前:ネリー・バーキン (Nellie Barkin)
■2. 職業:家事使用人 25歳
生まれ育ったのは遠方だが、数年前から使用人としてこの村へ住んでいる。
日頃は使用人としての家事の為にあまり出歩く事は無いが、週に一度以上は教会へ足を運び、祈りを捧げるなどしているようだ。
書生 ハーヴェイ が参加しました。
―― ットン。
細い体が床に降り立つ。大きくは無いけれど、その音は良く響いた。
余韻を楽しむような沈黙の後、舞台の上に立つ体が、優雅に折れた。
宙、高くで揺れる、頼りないブランコ。
ワァッ、と、沸き立つような歓声が起こったのはどこからか。
視線を釘付けにしたその人は、紅い口唇で微笑った。
半円状の、簡素な建物の壁には、文字が躍っている。
此処は、
島にやってきたばかりの、サーカスのテントの中 ――
[数日前に、このサーカス団はやってきていた。
本日は公演の初日。
最終演目であった空中ブランコは、その人物の最後にして最大の見せ場だった。
白い肌に、紅い口紅。
よく映えるその細いパーツ。
パーフェクト、と、誰もが口をそろえるだろう演技をやってのけたその人物は、舞台から降りると、黒子の一人に声をかけられる。
この人物、島に来て、ずっとテントの設営だけをしていた。
本来ならば、演目に予定はなかったと、此処ならば、問題ない。
黒子の話を聞きながら、微笑みはやがて消えうせ、恐ろしいまでに静かな、濃茶の瞳がそっと伏せられた。]
[可憐な花びらがこぼすのは、鈴のような笑い声でも、やさしい言葉でもなく。
否定することもできない純粋な罵倒。
そして何より驚くべきことは、すらりとしたその身体からは想像できない、 男 声 。
そう、「彼」が演じる予定はなかったのは当然である。
このサーカス、メインを、「女性」と評していたのだから……。]
[彼は、楽屋へ戻る。それはもうものすごく急いで。
大きなテントの裏口から、続いて作られた小さなテントへ。迷うことなくその中の一つ、扉を開ければ、人影を見て思い切り息を吸い込んだ。]
お 前 、 一 体 ど こ に い た ん だ !
[その顔は彼にそっくり。瓜二つ。違うところといえば、腰まで伸びた髪。そして、彼とは反対の、左の耳につけられた紅いピアス。
鏡を見ていた彼女は、ゆっくりと彼を見て、微笑った。]
[怒りの声もなんのその、本当の舞台の主役だったはずの女性は、右から左、言葉を聞き流す。
やがてさすがに演目でも疲れていたのに、こんなところでも疲れてしまった彼は、何を言う気力もなくした。というか相手にするだけ無駄だと思い知ったのかもしれない。
そのままの勢いで、演目に明日も彼女が出ないことに合意してしまった彼は、ため息を吐いて彼女をテントから出す。
二人きりの姉弟であれど、顔立ちはそっくりであれど、その性格は天と地ほどに違う。]
……疲れた……
[ぽつり。万感の思いで呟いた。]
[紅茶を飲んで一息をつく。その後、落ち着いた状況で、来訪者のしらせ。
彼は、(化粧をしたままで胸に膨らみも作ったまま)その人物を招き入れた。
彼は知らなかったけれど、島を回った姉なら知っていただろう。その人物は自警団の男。
声を聞いて驚いていた男を軽く流して、椅子を勧める。
険しい顔の男が、やがて口を開いた。]
……つまり、あなたはおれたちを疑っていると。
[話を聞くにつれ、彼の顔は険しくなった。]
人狼が、いるんですか。
そうですか。
ええ、確かに移動サーカスですから、疑いやすくはあるでしょうね。おれたちは余所者ですから。
わかりました、集会所へ行きましょう。
[島の中はあまり出歩いていないが、彼にそっくりな彼女を見知った者ならいるだろうか。
そう思って姉の名を呼ばれたら相手を殴る。絶対蹴る。
険しい顔で(それはアーヴァインから話を聞いたときより険しかったかもしれない)、集会所への道をたどる。
森の近くに設営されたテントからは、けっこう分かりやすかった。
その建物の前で、アーヴァインに再び出会う。]
……ええ、わかりました。この中ですね。
[なんでこんな面倒なことに。
色々な面でそう思った彼は、集会所の扉を開けた。]
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