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村は数十年来の大事件に騒然としていた。
夜な夜な人を襲うという人狼が、人間の振りをしてこの村にも潜んでいるという噂が流れ始めたからだ。
そして今日、村にいた全ての人々が集会場に集められた……。
冷たい風の吹く季節。
山間の崖の上への道を繋ぐ吊り橋。
渡った先に待ち構えるのは館と、一本の林檎の樹。
葉の間には青さを残す実が、熟す期を待ちながら静かに揺れていた。
書生 ハーヴェイ が参加しました。
─ 吊り橋 ─
……いつも、思うんだが。
[風に揺れて軋む吊り橋。
慎重に歩みを進めつつ、零すのはため息一つ]
なんで、こんな行き来のし難い所に住んでんだ、あの旦那は。
[文句を言いながら、一度足を止めた。
以前借りた本と、祖父から預かってきた荷物の入った鞄が重い。
肩にかけたその紐を握り直して、また、ゆっくりと歩き出す。
吊り橋を渡りきるのと同時、零れ落ちたのは深いふかいため息一つ]
……さて、もう一頑張り、と。
[自分を鼓舞するように呟いて、先へと進み。
屋敷の傍ら、風に葉を揺らす林檎の木の下まで来ると一度立ち止まり。
未だ青さを残す実に気づいて、僅かに目を細めた。**]
巡礼者 ユージーン が参加しました。
『………ざぁぁぁぁ………』
[不意に強い風が吹いて木々を揺らす]
……ふ…
[山道を歩いてきた男は、風から身を庇うように片手でフードを押さえ、もう一方の手はマントの袷を握り締める]
これは、思った以上に荒れそうですね……
善は急げとばかりに来てしまいましたが、やはり様子を見るべきだったか。
まあ、ここまで来て引き返すのも得策ではありませんが……
もう少しちゃんと着込んで来るべきでしたかね。
[マントの下は巡礼者用の旅装束とその下に薄手のセーター一枚。
この季節に山を歩くには軽装過ぎたのだけど]
これも、まあ、神の思し召し、と言うことなのでしょう。きっと。
[そう言って、少し歩いて辿り着くのは古い吊り橋と、その向こうに見える屋敷]
ああ、あれが……
[麓の村で聞いた話を思い出して呟く]
不意の訪問でも拒まれないとは聞いていますが……
ともあれ、今はこの吊り橋を越えてしまうのが先ですね。
風が吹かないといいのですが。
[先ほどの強風を思い出して、ほんの僅か躊躇う気持ちはあったけれど]
………神の、ご加護を。
[胸元に下げたロザリオを一度握り締めて、そう言ってゆっくりと橋を渡る]
[渡り終えて、大きく息を吐く]
この体でこれは少し厳しかったですね……帰りも渡らないといけませんが。
[やれやれ、と言った様子で顔を覆う髪に手を当てる。
その下に隠れた片目は光を失っているのだけれど、それを気付かれないように伸ばした髪]
さて、行きましょうか。
あまり遅くに訪問するわけにも行きませんし。
[そう零して、目の前の屋敷へと向かおうとして、少し考えて、表玄関ではなく裏に向かう]
失礼いたします。どなたか居られますか?
[裏口でそう声をかければ、使用人の女性が対応に出てくるだろう]
[誰何の言葉に丁寧に頭を下げて男は言う]
突然の訪問失礼します。
私、巡礼の旅をしている者で……いえ、布教や勧誘や、まして物乞いに来たわけでもありません。
旅の最中に各地での伝承や逸話を調べるのを趣味としているのですが、麓の村で、この屋敷には珍しい書物がたくさんあると聞きまして……
よろしければ、参考までに拝見させていただければと。
[始めは胡散臭そうに見ていた使用人が、そこまで聞くと表情を緩める。
「そういう事なら表から来るといいですよ。ここの旦那様はその様な方も歓迎する方ですから」と]
え?いや、でも…よろしいのですか?
[問い返しに使用人は頷いて、それを見て少し考えたあとで]
解りました、では表玄関からお邪魔させていただきますね。
ありがとうございます。
[そう言って、もう一度表玄関で裏口で述べた物と同じ言葉を告げれば、快く迎え入れられて]
[書庫へと案内されるかと思えば、通されたのは広間で、
「暫くごゆっくり」と出されたお茶に恐縮しながら頭を下げる]
……噂は本当だったんですねぇ……
[来る者は拒まない、との話を思い出してそう呟いて、
書庫へと案内を受けるまで、山歩きの疲れを癒そうとお茶を口にして**]
某家の下働き ラッセル が参加しました。
― 吊り橋前 ―
…… 慣れぬ。
[長い時間を使い吊り橋を渡り終えた直後。
赤毛の青年は曲げた膝に手を置いて、大きく息を吐き出した]
山道は仕方ないとして。
この吊り橋の不安定さはどうにかならぬものか。
しかし……
[若い容姿には不釣り合いな、芝居がかってすら聞こえる口調で心情を洩らし。
息を整えた後で、体勢を立て直した]
ふぅむ。
今年は少しばかり早かったか。
[その目に映る林檎の木。
昨年訪れた時に比べて、赤色は未だ少ない]
となると、今回は届け物だけになるな。
[館の主にささやかな品を届け、代わりに林檎を貰って帰るまでが仕事のうち。
つまり林檎が熟れる頃にまたここに来なくてはならない、らしい。
渡って来たばかりの吊り橋をちらと振り返って]
……仕方あるまい。これも修行のうちと思わねば。
[などと言いつつも、表情に苦いものが浮かんでしまうのは仕方のない事だった]
― →館 ―
[林檎の木の傍らに未だ人影>>1があったならば、風邪を引くぞ、と一声掛けて。
自分は館の玄関まで来て、呼び鈴を鳴らす]
毎度の届け物に来た。
[立場的には同じか、もしくは上である筈の館の使用人に対しても、上から目線な物言い。
しかし応対する側は慣れたもので、突き出された品は無事受け取られ]
ああ、ではそうしよう。
[ついでにお茶でもと勧められるのも、それに応じるのもまた、いつものことだった]
― 館/広間 ―
おや、客人がいたか。
……見ない顔だな。
[そうして通された広間にて。
見知らぬ先客>>6に対しても、口調も態度も他に対するものと変わらない**]
お嬢様 ヘンリエッタ が参加しました。
─ 屋敷・自室 ─
[窓辺に下げられた鳥かごの傍。
少女が中にいる白いカナリアを見上げている]
─── 今日はなかないの?
[いつもは美しい声を聞かせてくれるのに、今日はまだその声を聞くことが出来なくて。
少女は強請るようにカナリアに声をかけた]
[白いカナリアは昨年亡くなった母の形見。
父であるアーヴァインが母の代わりにと少女──ヘンリエッタに与えたもの。
カナリアが奏でる歌声は、死んだ母の声のように思えて。
毎日毎日世話をして、歌うような美しい声を聞き、寂しさを紛らわせていた]
……あとで、聞かせてね。
[なかなか鳴いてくれないカナリアをしばらく見詰めていたが、鳴く気配が無かったため、ヘンリエッタは残念そうにしながらカナリアに声をかける。
ほんの少し、溜息をついてから少女は視線を窓の外へと向けた]
[ヘンリエッタの部屋からは敷地と村を繋ぐ道、吊り橋を目にすることが出来る。
今日は風が強いようで、木々を揺らす音と共に吊り橋も揺れるのが見えた]
お天気、あれそう…?
……そのせい、なのかな。
[窓の外を見ていたヘンリエッタの視線が再びカナリアへと向かう。
カナリアは相変わらず沈黙したまま、止まり木でじっとしていた]
……あ、お客さま?
[その後もしばらく窓に張り付いていると、時間を置いて何名か、吊り橋を渡る姿が見えた。
まぁるい瞳を瞬かせて、ヘンリエッタは小首を傾げる。
屋敷をあまり出ないヘンリエッタにとって、父に用向きがある者であっても貴重な話し相手となり得る。
パタパタと身嗜みを整えると、3階にある自室を出て階下へと降りていった]
─ 1階・広間前 ─
[軽い足音を奏でて1階に降りて来たは良いものの。
自室からでは誰が来たのかまでは判別出来ていなくて。
客が通されているであろう広間の扉の前まで来て、足が一度止まった]
………すぅ………はぁ………
[その場で大きく深呼吸。
身体に走った緊張をほんの少しだけ和らげて、そっと両手を扉のノブに添える。
最初は扉をすこぅしだけ開き、中の様子を窺う*つもり*]
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