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おやまあ。
[暢気な声を上げきょとりと眼を瞬かせて]
余程に眠かったのだろうかね。
[転がる鞠は代わりに白い手の内に収まる]
おやおや、ねいろ坊、今日は御酒も呑んでいないというのにねえ。
[倒れるように眠りに落ちる子供の姿を目に止めて、酒杯を置いて歩み寄る]
[朱が走れど誰も見ず。
はくと水飴口にして、緑の天蓋見上げたる。]
[天狗が隠す「ほしまつり」
されど此処にも星はない。]
はてさて、何処にあるのじゃろ…
[咥えたままに立ち上がり、白き夜を流離おうか。]
[音彩が烏に抱き上げられる様子に、ほ、と息を漏らしつつ]
……一緒がよいのだと思う、風漣も。
[見やる紅緋は、やや、不安げか]
[やがて敷かれた布団の上に、そっと小さな身体を横たえ、ふうと小さな吐息を零す]
何がそんなに怖いやら。
ねいろ坊は、怖いものから逃げて、こちらへ来たのかねえ。
[リーン…リーン…鈴が鳴る。此処へ戻れというように。]
どうせ逃れは出来ぬなら、好きにさせても良かろうに…。
[天邪鬼に呟いて、鈴に逆らい歩み往く。
甘露がのうなってしまうまで、あてもなく白き野を踏み分けて、]
[ぽつり、白に落つ色に伸ばす。]
おや、これは…?
さてさて、そなた迷い子か。
[白の袂に差し入れて、ゆらり琥珀は振り返る。
見やるは遠く水車小屋、その傍にある館かな。]
川の字になってでも寝ようかい。
この人数だと河にでもなりそうかな。
逃げて来たか、はてさて。
ここが逃げ場となるのなら好いのだけれども。
安らぎの地となるのならば幸いだけれども。
[瞼に浮かぶは童の笑顔、耳に残るは哀しげな声。]
…戻るか。腹も持たぬしな。
[棒弄びて呟くは、己に言い聞かせるように。
やがて館へと歩み出せば、リーンと笑うよに鈴が鳴った。]
さて、どうなるかは、坊次第。
[あやめの言葉に応じながら、さらり、眠る子供の額を撫でる]
さて、ねいろ坊の心は、俺には解らないが…こわいものは誰にでもあるからねえ。
ふう坊にだってあるだろう?
そうだね、
誰にしもあるだろう。
なければ人というより、
心を持たぬ人形だからね。
けれども無理に思い出す事もない。
……さて、そろそろかな。
[其れは食事への言か白の君の帰還にか]
[掠れた風漣の声に首を傾げ、声をかけようとしたところで、小さな腹の虫の音が聞こえたか、入り口に目をやって、ふと笑み零す]
おや、えいか嬢、遅くまでどちらへお出かけで?
[支度に行き交う童子たちの横を通り、座敷へと歩み往く。
夕餉にか集まる姿を見れば、無言のままに頭を揺らして。
すいと琥珀を流せば、布団が敷いてあるを見やるだろうか。]
…はてさて、そなたが守りかは知らぬが。
寂しかれば寄り添うもよかろ。
[迷い子袂から取り出して、白の褥に色落とす。]
[よもや腹の虫を聞きしとは思わぬも、烏の問いに琥珀が逃げる。
ややあって返る声は、愛想なく。]
さて、何処じゃろな。
[聞いて何とする、と手に残る棒を弄ぶ。]
[えいかの手にした棒を見れば、その行き先は自ずと知れて、僅かに目を細めるも、それ以上は言うのをやめた]
どこぞで迷子になられたかと、案じましたが。そうでないなら重畳。
夕餉も出来ているようですよ。
[どうぞ、と言って、己は、道具箱を引き寄せる]
[あやめの声に、僅か揺れるも。掛けられし声には頷いて、]
ああ。腹が減ったでな。
[返す言葉は天邪鬼。理由なくば戻らなかったかのよに。]
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